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アリの小型人工巣を開発

簡易小型飼育器

簡易小型飼育器を開発いたしました。交尾後から約1年間の飼育・研究・観察用に設計したものです。大変コンパクトな大きさで、縦・横ともに54mm、高さは31mmです。
2部屋に分かれており、片方は巣穴、もう片方はえさ場です。
巣穴の部屋の蓋は、紙用の糊で固定されています。また、直径7mmの穴があり、シリコン栓でふさぐようになっています。この部屋は、通常開けないで使いますが、女王アリとその家族を引越させる時などには、糊の部分を濡らすことで簡単に開けることができます。通常、この部屋への出し入れは、シリコン栓の開け閉めで行います。
巣穴の部屋とえさ場の部屋とは、直径3mmの穴でつながっています。この穴を通り抜けることができるのは、働きアリだけです。つまり、女王アリは巣穴の部屋から出られないようになっています。えさ場の部屋の蓋は、開け閉めができます。そのままお使いになっても構いませんが、上の写真のケースの右上側をよく見ていただくとわかると思いますが、セロハンテープを貼ると、セロハンテープがちょうつがいの役目を果たすようになります。この蓋には、直径7mmと1.5mmの穴があり、7mmの方はシリコン栓を開け閉めします。
えさ場の部屋には、外径が15mmで高さが10mmのアクリルパイプが2つあります。このパイプは厚み3mmの台座に接着されています。但し、その台座は床面には固定されていません。写真手前のパイプには砂糖を、奥のパイプには水を入れるようになっています。蓋にある2つの穴は、蓋を開けないで、砂糖や水を補給するためにあります。7mmの穴から砂糖を落とすとパイプ内に落ちます。また、1.5mmの穴へは化粧用品の注射器の針を差し込んで給水します。(約1mL入ります)
写真のクロオオアリは、前年から巣作りを初めて、1年と2ヶ月目に入った女王アリとその家族です。この時点でのコロニーの大きさとしては、中ぐらいです。だいたい交尾してから1年後のクロオオアリの家族の様子が、この写真からわかると思います。また、交尾直後の女王アリを飼育することもできます。この場合は、巣穴の部屋に直接水分を補給します。
この簡易小型飼育器は、たくさんの女王アリを飼育し、餌などの条件を変えて対照実験を行う時に特に役立ちますが、通常の飼育・観察用としても、十分有用な仕様となっています。
○材質:板部 透明アクリル板(カット面磨きなし)厚み3mm

砂糖をなめる働きアリと
部屋をつなぐ3mmの穴をくぐり抜けようとする働きアリ

設計図

詳しくはこちらをご覧下さい。

庭に出した大型の人工巣のその後

6月18日に大型の人工巣に住むクロオオアリの家族を庭に出したのですが、7月15日に気づいた時には、この家族は引越した後でした。ほぼ1ヵ月が経っていたのですが、そのほとんどの期間、確かにこの人工巣に住んでいました。ですが、いつ引越したのかは、特定できません。
引越した後の人工巣には、いろんなものがいっぱい運び込まれていました。

外に通じる2つの穴を通って運び込まれたいろいろなもの

側面から見ると、容器に空けた下の穴は塞がれていました。(上の穴は塞がれていませんでした。)

下の穴は塞がれています

こちらの巣穴の出入り口も塞がれています。

通路も塞がれています

ただ1ヶ所だけ、こちらの出入り口は開いていました。

通路が塞がれてなくて、出入り口も開いています

上から見ると開いていることがよくわかります。

出入り口が開いています

引越先を知りたくて、辺りを探しましたが、穴を掘った時に出てくる盛り土や巣穴らしいものは見つけることができませんでした。引越した後の人工巣には、働きアリや幼虫などの死骸はひとつもありませんでしたので、何かに襲われたのではないと思います。どこかに無事引越したのでしょう。

革新的なアリの人工巣を開発

人工巣セット:開発名「インテリアリセット」

これまでは、飼育年数1〜2年のコップ型の人工巣を提供してきましたが、この度、何年でも飼育できる人工巣セットを開発いたしました。
その開発のコンセプトは、学校で多人数でも観察しやすく、また世話もしやすくすることと、インテリアとしても優れたデザイン性のあるものにすることの2点でした。
この人工巣セットは、次の3つの部分で構成されています。

①人工巣:開発名「インテリアリ」

人工巣:開発名「インテリアリ」

「インテリアリ」裏面

一番の特徴は、フォトフレーム仕様にした点です。これまでにないこの全く新しい造りにより、分解と組立が容易にできるようになっただけでなく、本体が乾燥しやすくなり、カビの発生をより抑制することができるようになりました。
本体は、石膏でできています。コンクリートと較べると、明らかに耐久性には欠けます。そこで、おもて面だけですが、巣穴の部分だけでなく掘っていない平面にも、つや消しクリヤラッカーを4回吹き付けて表面を保護しています。ただもう一点、コンクリートと較べて、白色をしているのでアリの生活廃棄物による汚れがどうしてもよく目立ちます。ですから、パット見は、明らかにこの白色の石膏の方がきれいで、アリの体の色とのコントラストが高く観察しやすいのですが、この色に関して言えば、一長一短といったところです。
使用しているビスとナットとワッシャーは、ステンレス製なので、錆びる心配はありません。このビスは、キャップスクリューとか六角穴付きボルトとか呼ばれるもので、前面のデザインのポイントにもなっています。
透明板は、ガラス色の3mmのアクリル板を使っています。4辺のカット面は磨いてあり、とてもきれいな仕上がりになっています。
下方左右には10mmの穴があり、裏面へアクリルパイプでつながっています。この穴は、えさ場に通じたり、人工巣を拡張してもう一つの人工巣につなげたりするためのものです。50cmのビニールホース1本とシリコン栓2個が付属します。
裏面左には、支え用のスティックがあります。これは、3cmの高ナットと六角穴付きボルトからできていて、ボルトを回すことで、わずかに本体の傾きを変えることができます。

○石膏部:縦118mm 横191mm 厚み30mm
○アクリル板:縦148mm 横221mm 厚み3mm(ガラス色 カット面磨きあり)

②餌器:開発名「モートフィーダー」

餌器単体にはホースは付属しません

ふたを取って撮影しています

この餌器の最大の特徴は、堀(moat)があることです。壁が二重になっていて、その間に水を入れます。高さ5cmの外壁と2.5cmの内壁の間には18mmの幅があり、水は約200ml入るようになっています。外界とは外径10mmのアクリルパイプでつながりますが、そのアクリルパイプの上まで水が入ることで、外壁とは水で遮断されます。
この堀があることで、ふたを開けた際にアリが逃げるのを防ぐ効果があります。但し、その効果は限定的です。アリの体は泳げるようにはできていませんが、それでも20mm足らずの堀は、溺れることなく泳ぎ渡ることができます。それも、たまたま堀に落ちてバタバタしている間に向こう岸に着くというのではなく、よく観察しているとわかるのですが、渡る意志を持って水面へと入っていきます。そして、決して上手ではないバタバタ泳ぎで外壁にたどり着くのです。彼らは、このことを学習するように思えます。ただ、泳ぎ渡ろうとするのは平時のことが多く、驚かせた時に堀を渡ろうとするようではありません。ですから、やはり、堀に水を張っておくことは、取り扱い易くする上で意味があります。当研究会ではそのように考え、製作には手間がかかるのですが、堀を設置したのです。
また、常時堀に水があることで、飲料用に水を別途与えなくてもよいと利点があります。
ふたについては、本体より大きめで、左右上下ともに15mmの余分の幅があります。中央には、1.5mm径の穴が9つありますが、このふたはただの1枚のフラットな板です。この方がふたが素早く開閉でき、世話などがしやすいのです。
ふたは、アクリル板ではなく、敢えてPET樹脂板を使っています。アクリルの給水率は0.3%程あり、わずかですが湿気から給水して反りができます。これに対して、PET樹脂の給水率は0.13%程で、アクリルよりも反りが少なくてすみます。全光線透過率では、アクリルの方が5%程優るのですが、反りを考慮してふたのみPET樹脂板を使用しています。(注:一連の写真のふたはアクリル製です。PET樹脂板では、カット面がパープル色に近い色になります。)
シリコン栓が2個付属します。

○本体:縦130mm 横210mm 高さ53mm(パイプの突起部を除く)
○えさ場の広さ:縦82mm 横162mm
○ふた:縦160mm 横240mm
○材質:
本体部分 透明アクリル板(カット面磨きなし) 厚み3mm
ふた   PET樹脂透明板(カット面磨きなし) 厚み3mm

③コの字型ディスプレイ

コの字型ディスプレイ

このコの字型ディスプレイは、人工巣セットに入っていますが、なくても飼育には支障はありません。ただ、あればよりコンパクトなスペースで観察・飼育ができます。上にモートフィーダーを置き、下にインテリアリを置きます。幅も奥行きもモートフィーダーの本体の大きさと同じです。

下の写真は、横から見たものです。

セット全体を横から見ると

○横210mm 奥行き130mm 高さ148mm
○材質:透明アクリル板(カット面磨きなし) 厚み3mm

この人工巣セットをご提供いたします。詳しくは、こちらをご覧下さい。