月別アーカイブ: 2012年9月

庭のアリ006

実体顕微鏡に一眼レフを取り付けて撮影するのですが、カメラの液晶では画面が小さ過ぎますので、21.5型のフルHDモニターを使っています。このモニターとはカメラのHDMI端子で繋ぎます。こうすることで、実体顕微鏡を直接覗くことなく、ズームとピントを合わせることができます。

標本006

全身を捉えた写真ですが、偶然とは言え、なかなかおもしろいポーズをしています。

全身側面1

全身側面2

このアリも透き通ったとてもきれいな色をしています。前伸腹節刺は、とがっています。

前伸腹節刺側面

前伸腹節刺背面

腹面から見ると、

腹面1

腹面2

触角です。

触角

9月25日のブログで、このアリを取り上げた際には、疑問符を残しながらも、ハリブトシリアゲアリではないかと書きましたが、今回実体顕微鏡で見ると、前伸腹節刺の形がハリブトシリアゲアリではないことが分かりました。このアリは、キイロシリアゲアリでした。

庭のアリ005

9月20日のブログでも取り上げましたが、トビイロシワアリによく似た少し小さいアリも実体顕微鏡で調べて見ました。

標本005

やはり、トビイロシワアリによく似ています。違いは、大きさと前伸腹節刺のようです。

標本005の前伸腹節刺

トビイロシワアリの前伸腹節刺

その他の写真もご覧下さい。

全身側面

頭部・胸部

触角

このアリは、針を出して死んでいました。

刺針

このアリの名前は、やはり分からないままです。

庭のアリ004

実体顕微鏡での撮影では、照明が一番のポイントになります。私の場合は、LEDのリンクライトを使っています。
これまでに紹介しているアミメアリやアメイロアリなどの写真で、特に 腹部にリンク状の輝くものが写り込んでいますが、これはこのリンクライトの光です。
次に紹介する標本004のアリでは、頭部や胸部がしわ状になっていますので、このリンク状のものは見られませんが、腹部にはやはりリンクライトが写り込んでいます。

標本004

全身側面

頭部・触角

胸部側面

前伸腹節刺

このアリは、やはりトビイロシワアリです。

庭のアリ003

標本003
透き通るようなきれいな飴色をしています。

全身背面1

全身背面2

長目の体毛がたくさん見えます。

体毛

前伸腹節刺は丸っこく見えます。

前伸腹節刺背面1

前伸腹節刺背面2

前伸腹節に1対の気門がはっきり見えます。

前伸腹節気門

その他の写真もご覧下さい。

触角

側面

頭部

このアリは、やはりアメイロアリです。

庭のアリ002

実体顕微鏡で写真を撮るにはそれなりの装置が必要です。私の場合は、実体顕微鏡とデジタルカメラをつなぐアダプターを用意しました。こうすることで、既に持っている一眼レフカメラが使えるようになり、高画質な写真やフルHD画質の動画が撮れるようになりました。

標本002

全身側面1

全身側面2

腹柄節1

腹柄節2

大腮

このアリについては、9月10日に紹介しましたが、その時には名前が分かりませんでした。しかし、1週間ほど経って、release-windknot さんから「ルリアリ」だとコメントをいただきました。実際、腹柄節の形からもルリアリだと分かります。

庭のアリ 001

庭に元々から棲んでいるアリをこれまで紹介してきましたが、種名について更に検証しました。実体顕微鏡を導入することでこのことを検証できるようになったのです。
この実体顕微鏡は、最高倍率が63倍で10倍ズーム付きです。

標本001

全身背面

全身腹面

前伸腹節刺

頭部背面

頭部腹面

触角

やはり、このアリはフタフシアリ亜科アミメアリ属のアミメアリです。

庭で久しぶりにクロオオアリを発見

確かな時期は覚えていないのですが、おそらく今年の春の終わりごろ以来だと思うのですが、庭で久しぶりにクロオオアリを見つけました。塀に砂糖水を垂らして、庭に元々からいるアリを呼び寄せて調べようとしていたのですが、その砂糖水にクロオオアリが来ていたのです。

庭で久しぶりに姿を見たクロオオアリ

なんと久しぶりなのでしょう、庭に移植したクロオオアリが巣から外に出て餌探しをしていたのです。まだ、どこかでちゃんと生きていたのだなという安堵というか、嬉しさのようなものを感じました。9月1日に庭に移植したクロオオアリの巣を調べて、まだ生きている家族があることは分かっていたのですが、庭を歩いている働きアリを、春の終わり以来一度も見ていなかったのですから、餌はどうしているのか、とても心配だったのです。
でも、今日、少なくともある巣では、餌を探して生きていたということが分かったのです。
ところで、この働きアリは、どこに棲んでいる家族の一員なのでしょうか。極近くに1号巣があり、9月1日には、少なくとも1匹の働きアリがいることを確認しています。また、春の終わりに庭で働きアリを見つけたのも、この1号巣の働きアリでした。
しばらくすると、この働きアリは、砂糖水から離れ、どこかへと帰り始めました。後を追っていけば、 どこに巣があるか分かるはずです。すると、案の定、1号巣の方へと行きました。

1号巣の上を歩くクロオオアリ

ところが、この働きアリは、1号巣のレンガから下へ降りていき、再び地面を歩き始めました。
「ひょっとしたら、あの家族なのかもしれない」─ その時そう思いました。というのは、この働きアリが、かなり大型であることもそう思わせたひとつの要因ですが、2年間人工巣で飼い、今年の6月18日に庭に出し、7月15日に気付いた時にはどこかに引越をしていたあの家族が、きっと庭のどこかで生きているはずだと信じていたからです。
その働きアリは、再び地面を歩き始めて、それからほんの少し歩いたところで、突然姿を消してしまいました。

どこに消えたのだろう!

消えた辺りの枯れた葉をそっと取り除いたのですが、穴らしいものがありません。本当に不思議です。

穴らしいものがない

ところが、もう一度、その辺りを別の角度から見ていると、なにやら穴らしいものがありました。

何か穴のようなものがある

そこで、細長い草の葉を穴の中に突っ込んだのですが、何の反応もありません。まわりの草の葉を取り除いておこうと、草の葉を引っ張ったところ、穴のある辺りの地面が盛り上がってしまいました。

穴の辺りまで土が崩れてしまった

この穴の周りには、穴を掘った後のちょっとした盛り土がありません。本当に、ここにアリの家族が棲んでいるのでしょうか。また、ここを巣の出入り口にして棲んでいるとしても、そのアリの家族は、極近くの1号巣の家族なのでしょうか。それとも、他の家族 ─ 大方それは3年目を迎えていたあの大きめの家族なのでしょうか。
しばらくして、塀の砂糖水があるところを見ると、さっきと同じ大きさの働きアリが来ていました。きっと同じアリなのでしょう。

さっきと同じアリらしい

砂糖水をなめていましたが、腹部が膨らまない内に移動して、今度は何やら塀をなめ始めました。

何をなめているのでしょうか

そこには何もないように思えるのですが、アリにとっては何か食べ物があるのでしょう。でも、それではお腹が膨らみそうもありません。お腹が膨らむまでは巣に帰らないでしょう。
そこで、近くに氷砂糖も置いていたので、この氷砂糖に水を垂らしました。するとしばらくして、この働きアリはこの氷砂糖を見つけました。

氷砂糖を見つけた

まもなく、お腹が膨らんでいきました。

お腹が膨らんだ

やがて、帰り始めました。追って行くと、

例の穴に入って行くクロオオアリ

例の穴に入っていきました。この穴は、確かにクロオオアリの巣穴なのです。
やがてまた、同じアリと思われる働きアリが砂糖水のところにやってきて、巣穴に戻っていきました。
なかなか仲間の働きアリが出て来ないので、どうなっているのだろうと思っていると、少し小型の働きアリが砂糖水の方へと歩いていくのを見つけました。この働きアリは、先程からの働きアリと砂糖水があるところで出合い、挨拶を交わしてから砂糖水をなめ始めました。同じ巣の仲間です。

少し小型の働きアリ

やがて1号巣のレンガの上を通り、

帰路のもう一匹の働きアリ

同じ巣穴に入っていきました。

巣穴に入る働きアリ

しばらくの間、観察を続けていると、2匹の働きアリが砂糖水の場所にいる写真も撮ることができました。

2匹の働きアリ

夜の8時に行って見ると、大きい働きアリが砂糖水のところに来ていました。夜も活動しているようです。

庭に元々から棲んでいるアリ(5)

庭に棲んでいる6種目のアリを捕らえました。外塀を歩いていました。

塀を歩いていた

大きさは4mm位です。

体長は4mm程

腹部は濃い色をしています。体の裏側は、

下から見ると

こんな感じです。3匹のアリたちが何か話をしているように見えます。

何をしているのでしょう

横から見るとこんな感じです。

横から見ると

このアリは、フタフシアリ亜科のシリアゲアリ属のハリブトシリアゲアリのように見えるのですが、種名は同定できませんでした。

アリの標本作り

アリの標本を作って見ようと思います。
『アリの生態と分類 ─南九州のアリの自然史─』(南方新社)という本に詳しく書かれていたので、参考にしました。ただ、あまり本格的にしようとは思っていないので、かなり原則をゆがめての標本作りとなりました。
2mL容量のスクリュー管瓶を50個用意し、この50個が入るアクリルケースを作りました。

2mLのスクリュー管瓶が50個入る標本ケース

管瓶のひとつひとつに番号を振り、コンピュータでこの番号に照合させてデータを入力します。
管瓶には、無水エタノール(エチルアルコール)を入れます。早速、「001」にはアミメアリを、「002」にはルリアリを入れました。
写真を撮影した後で、 「003」にはアメイロアリを、「004」にはトビイロシワアリを、「005」には名前が分からないトビイロシワアリによく似たアリを入れました。

庭に元々から棲んでいるアリ(4)

昨日出逢ったアリの種を同定するために、更に調べてみましょう。
そのために、アリの体長が測れるこんな撮影用のケースを作りました。

撮影ケース

中央の円の外径は20mmあります。格子の部分は縦横ともに40mmあります。また、ケースの上方には、スライド式の蓋があります。写真は、この蓋を少し開けた状態です。中の厚みの内寸は8mmです。
アクリル製で、立てて使います。実体顕微鏡のように、当初はカメラで上から撮影しようと考えましたが、 カメラが照明器具等で重くなり、スライド台にカメラを取り付けると無理が生じたために、真横から撮影するようにしたのです。
この撮影ケースには、生きた状態でアリを入れます。

大きい方の黒っぽかったアリ

上の写真のアリは、昨日「黒っぽいアリ」と表記していた大きい方のアリです。体長が3mm程であることが分かります。おそらくフタフシアリ亜科のトビイロシワアリだと思われます。ただ、アリ図鑑のトビイロシワアリよりも、体長が少し長いようには思うのですが。
昨日出逢った小さい方の黒っぽいアリと飴色のアリはというと、

飴色のアリ

どちらも体長が2mm強のようです。飴色のアリの方は、アメイロアリのようです。
このアリは、よく熟れたキイチゴの実の中で時々見かけていたように思います。

キイチゴの実 時々この実の中にアメイロアリがいたように思います

小さい方の黒っぽいアリは、前伸腹節刺(ぜんしんふくせつし)をよく見ると、トビイロシワアリとは違っています。長目で先が針の先のようとがっているように見えます。やはり、別の種なのでしょうか。
顕微鏡で小さい方の黒っぽいアリを観察して見ると、

シルエットを強調しています 前伸腹節刺がかなりとがっています

前伸腹節刺がよく目立ちます。
下の写真は、上と同じ画面を落射照明で撮影したものです。

上と同じ画面 落射照明による

では、トビイロシワアリの方はというと、

前伸腹節刺が短めで、かたちがちがいます

前伸腹節刺の長さも形もちがいます。
やはり、別の種なのでしょう。

庭に元々から棲んでいるアリ(3)

この白いタイルの上にもアリがいます

上の写真は私の家の門ですが、この白いタイルの上に何種類のアリがいるのでしょうか。足下の世界を覗いてみましょう。
まず、一番よく目に付くのは、以前にも紹介したアミメアリです。

アミメアリ

どちらが往路でどちらが復路なのか分からないのですが、毎日同じ場所で行列が見られます。その道に砂糖水を垂らしてみました。

砂糖水を吸い始めたアミメアリ

90秒の動画もご覧下さい。ビデオの後半では、腹部を上下にリズミカルに動かせて、砂糖水を吸っているのが見られます。

アミメアリ 90秒の動画

別の場所にも砂糖水を垂らしてみました。すると、2種類のアリが 集まってきました。

2種類のアリ?

飴色のアリと黒っぽいアリです。しかし、よく見ると黒っぽいアリで大きさが違うアリがいます。

大きさの違う黒っぽいアリ

この黒っぽいアリは、2匹ともに腹柄節が2節あり、形もよく似ています。同じ種なのでしょうか。
この砂糖水の場面も動画に撮りました。

120秒の動画

飴色のアリが黒っぽいアリにちょっかいを出しています。でも、黒っぽいアリは、あまり動かず、耐えているか無視しているように見えます。
さらに別の場所に砂糖水を垂らしておきました。しばらくして見ると、とてもたくさんのアリが集まっていました。

アリが真っ黒になるほど集まっています

ビデオで拡大して見ると、形が先程の黒っぽいアリと同じであることが分かります。ですが、こちらは黒っぽいアリの中の体長が大きい方のアリで、みなほぼ同じ大きさをしています。

先程の黒っぽい大きい方のアリと同じです

同じ頃、台所では、ルリアリがやはり砂糖水に集まっていました。

台所の砂糖水に集まったルリアリ

庭に元々から棲んでいるアリ(2)

台所で、時々見かけるアリがいます。とても小さいアリで、肉眼ではよく姿が捉えられません。
そこで、105mmのマイクロレンズに接写リング(3本連結68mm)をつけて撮影しました。

背後のます目の間隔は1mmですので、体長は2mm程度であることがわかります。
さらに、デジタル顕微鏡で撮影しました。

頭部から胸部にかけて

胸部から腹部にかけて

腹部

この顕微鏡は、写真もビデオも撮れて参考価格が19800円です。とてもリーズナブルです。落射光もありますが、光量が少ないので、カメラ用のリングライトを当てて撮影しました。
中段の写真を見ると、腹柄節が一対見られます。このアリの名前をいくつかの本で調べましたが、わかりませんでした。

庭の在来種のアリ(1)

庭にクロオオアリを移植しようとしているところなのですが、元々庭にはどんなアリが棲んでいるのでしょうか。調べてみることにしました。
これまでに、見かけたのは3種ほどですが、その気で調べてみれば、その他の種も見つかるかも知れません。
それらの中で、今日は1種類だけを捕らえました。

ブロック塀を往来していました(クリックで拡大)

よく庭で見かけていたアリで、体長が2.5mm位の小さなアリです。上の写真の背景にあるのは私がパソコンで描いたスケールで、1mm違いの円を描いています。線がぼけていますが、緑色の円は直径が5mmの円で、このアリの体長がちょうどその半分ぐらいの2.5mmであるのがわかります。
横から見ると、

胸部から腹部にかけて節の盛り上がりが2つあります(クリックで拡大)

胸部から腹部にかけて節の盛り上がりが2つあり、フタフシアリ亜科のアリのようです。
さらに胸の上の方をよく見ると、

刺が見えます(クリックで拡大)

まっすぐ伸びた刺が見えます。このアリは、アミメアリです。
アミメアリの家族には女王アリはいなくて、このような働きアリが、働きアリを生むそうです。家族ごとよく移動するアリで、定着した巣は持ちません。

2年目のムネアカオオアリ

昨年採集し、現在飼育しているムネアカオオアリの家族は、4家族です。その内、もっとも働きアリが多いのは27匹いる家族です。以下はその家族の動画です。

30秒間の動画 クリックしてスタート

働きアリも女王アリも腹部がよく膨れていて、十分に餌を腹部に蓄えています。女王アリと半分ほどの働きアリはほとんど動いていません。手前右寄りにいる働きアリは、ひっくり返ったりしていますが、この働きアリは成虫になったばかりのようです。胸の色がまだ薄いのでそれとわかります。
2年目を迎えていますが、まだまだ小さな家族です。自然界ではどの程度の家族になっているのか 知りたいところですが、調べたことがまだないのでわかりません。ですが、予想としてはほぼ同じ規模だと思います。なぜなら、自然界では、餌は多様で、豊かかも知れません。しかしその反面、人工巣の中の暮らしとは違って、一歩巣の外に出れば危険がいっぱいですから。

人工飼育におけるクロオオアリ・ムネアカオオアリの女王アリの生存率・子育て成功率

人工飼育におけるクロオオアリ・ムネアカオオアリの女王アリの生存率・子育て成功率を調べました。
まず、昨年の7月22日のブログから引用します。 これは、クロオオアリについての記述です。

「子育て成功率という特定の規定や概念はないのですが、ここでは、現時点において、繭のある家族の割合を取り敢えずそのように呼ぶことにします。生存している個体数が110匹で、繭が1個でもある個体数が79匹です。したがって79÷110×100で、約72%になりました。逆に言えば28%もの割合で、順調に子育てができていないということになります。自然界に比べて、現時点での生存率は比べ物にならないほど高いと考えられますが、生存率に関係なく、この子育て成功率は一定だと考えます。28%の女王アリが、今後、遅れた子育てをどこまで成功しうるのかは、これからの観察となります。
なお、現時点での女王アリの生存率は89%です。」

では、今年はどうだったのでしょうか。交尾を終えた6月14日から80日目に当たる9月1日時点で調べてみました。
サンプルとしては、クロオオアリ56匹、ムネアカオオアリ35匹を対象としています。
まず、女王アリの生存率です。

クロオオアリの女王アリ: 87%
ムネアカオオアリの女王アリ:80%

次は、子育て成功率ですが、昨年は、繭のある家族の割合でしたが、今年は働きアリが1匹でもいる割合としました。また、先の引用の記述とは違い、既に死んでしまった女王アリも含めて計算しています。(昨年のクロオオアリでは64%になります)

クロオオアリ:73%
ムネアカオオアリ:74%

したがって、採集してきた女王アリの3割弱が、死んだり、順調にコロニーが作れなかったりしたことになります。
昨年は交尾後45日目の、今年は80日目のデータとなりますから、単純に比べることはできないのですが、今年のデータの方が、生存率が下がったことや、子育て成功率が上がったことは、可能性としては理解できることです。

アリのえさ トンボ

人工巣の中のクロオオアリに、まだ生きているシオカラトンボを与えてみました。

クリックすれば動画が始まります

こちらは横から見たところです(クリックして動画)

トンボが動かないように、トンボの足を引っ張っている働きアリがいましたね。
下の写真は、アキアカネですが、クロオオアリが食べた痕です。胸部の中が きれいに空洞になっています。

胸部の殻だけを残して、中が空洞になっています

では、トンボの胸部の中はどうなっているのでしょうか。

羽を動かす筋肉が見えます

胸部を縦に半分に割ってみると、そのほとんどが羽を動かす筋肉でできていることが分かります。人間の目で見ても、アリが好みそうな良質のたんぱく源に見えます。
では、これを今年巣作りを始めたクロオオアリに与えてみましょう。

女王アリ自らが食いついています(クリックして動画)

上のビデオでは、働きアリだけでなく、女王アリまでこのトンボに食いついています。これは大変珍しいことです。この家族は、コンクリート製の人工巣にいますが、巣穴の中ではなく、コンクリートの上で暮らしています。そこで、女王アリのすぐ横にトンボが置かれたわけで、その状況の中で、こんなことが起こったのです。
しばらくして上から見ていると、今度はトンボの筋肉のところを噛んでいました。食べているのでしょうか。これも大変珍しいことです。

上から見ていると(クリックして動画)

 

庭のクロオオアリ

久しぶりに、庭に移植したクロオオアリの家族について記述します。

最初、庭にクロオオアリの家族を移植したのは、2011年の7月26日でした。移植した家族は、10家族で、いずれもその年の6月8日に結婚飛行を終えた女王アリの家族で、移植した時点では働きアリはいずれも1匹でした。
今年2012年の4月8日に観察した時点で、4号巣と9号巣は全滅しており、7号巣は女王アリのみとなっていました。そこで、4・7・9号巣については、新たに同じ2011年6月8日に子育てを始めたクロオオアリの家族と入れ替えました。
更に、4月10日には新たに5家族を庭に移植しました。
以上をまとめると、4月10日時点でのそれぞれの巣の働きアリの数は、次のようになります。

1号巣 8匹   2号巣 1匹   3号巣 15匹
4号巣  8匹   5号巣 3匹   6号巣 4匹
7号巣 9匹   8号巣 何匹かいる   9号巣 10匹
10号巣 7匹   11号巣 11匹   12号巣 7匹
13号巣 6匹   14号巣 7匹   15号巣 7匹

次に、2012年8月31日の各家族の様子を記録しておきます。(写真説明中の括弧内の数字は2012年4月10日の働きアリの数)

1号巣

働きアリ1匹確認(8匹)

2号巣

確認できないが生きている模様(1匹)

3号巣

働きアリ最低2匹確認(15匹)

4号巣

死滅 死骸確認(8匹)

5号巣

女王アリ・働きアリ・幼虫・繭確認(3匹)

6号巣

女王アリ・働きアリ・幼虫・繭確認(4匹)

7号巣

死滅していると思われる(9匹)

8号巣

確認できないが生きている模様(何匹かいる)

9号巣

確認できないが生きている模様(10匹)

10号巣

確認できないが生きている模様(7匹)

11号巣

女王アリ・働きアリ確認(11匹)

12号巣

死滅 大きなムカデが入っていた(7匹)

13号巣

死滅していると思われる(6匹)

14号巣

死滅しているかどうか判断できない(7匹)

15号巣

確認できないが生きている模様(7匹)

以上かなり希望的観測で現時点での生死を判断しています。本当のところは、生死についてはかなり心配しています。というのは、これほどたくさんの家族を庭に移植していて、しかも夏なのに、働きアリの姿を見ないのです。いや正確に言えば、以前1号巣の働きアリがほんの数回出ているのを見たことと、庭のイチジクの木に一度1匹働きアリがいるのを見たきりなのです。ひょっとすると希望的観測に反して、ほとんどが死滅しているのかも知れません。
人工巣で飼えば、安全な環境で生存し続けることができるのですが、自然界ではそうはいかないのでしょう。 大きなムカデが入っていた12号巣では、家屋の基礎の部分にハエトリグモの仲間がいて、この巣から出てきた働きアリが現に襲われたところを私が助けた話を以前書きましたが、そのクモは逃げましたので、同じことが繰り返されて、働きアリが少なくなっていったのかも知れません。自然界でクロオオアリが種を保存していくには、たいへんな困難があるに違いありません。