月別アーカイブ: 2013年3月

年を越して再度の子育てに成功するか?

現在、簡易小型飼育器「アンテキューブ」で飼育しているクロオオアリ・ムネアカオオアリの中で、子育てに失敗し働きアリのいない個体が7例あります。

 

S/N 採集日 採集場所 8月頃までの様子 8/27 9/02 10/23
007 ムネアカオオアリ 2012/07/26 野麦峠 不明  働きアリなし  不明  子全てなし
016 ムネアカオオアリ 2012/07/27 駒ヶ岳しらび平 不明 不明 幼虫10匹
073 クロオオアリ 2012/06/14 駒ケ根市 8月3日には働きアリが2匹いた  卵1 子全てなし
075 クロオオアリ 2012/06/14 駒ケ根市 少なくとも2つの繭があったが、その繭がなくなっていた(8月17日)  繭1 子全てなし
076 クロオオアリ 2012/06/14 駒ケ根市 少なくとも2つの繭があったが、その繭がなくなっていた(7月28日)  なし 子全てなし
080 クロオオアリ 2012/06/14 駒ケ根市 繭までは育てていた  繭2 子全てなし
085 ムネアカオオアリ 2012/06/14 駒ケ根市 産卵はしたが、繭まで育てた形跡なし  卵7 子全てなし

これらの女王アリは、死ぬことなく冬を越したのですが、冬の間、水と餌を与えていました。餌は糖分のみで、次のようにして作ったものです。
小さな容器に砂糖を入れて少量の水を加えます。よくかき混ぜて砂糖を溶かします。そこに蜂蜜とメープルシロップを少量加えてよく混ぜます。コツは、先に水で砂糖を溶かしておくことです。固体の砂糖と蜂蜜やメープルシロップを混ぜたのでは、砂糖はなかなか溶けません。その後で水を加えてもなかなか溶けないのです。
メープルシロップにはたんぱく質はほぼ含まれてなく、ほとんどが炭水化物です。また、蜂蜜も主成分は炭水化物で、たんぱく質はほぼ含まれていません。砂糖(白砂糖)には、たんぱく質は含まれてなく、ほぼ全てが炭水化物です。(下表 五訂 日本食品標準成分表)

 

黒砂糖

白砂糖

ハチミツ

メープルシロップ

エネルギー(kcal)

354

384

294

250

ビタミンB1 (mg)

0.05

0

0.01

ビタミンB2 (mg)

0.07

0

0.01

0.02

ビタミンB6 (mg)

0.72

ビタミンC (mg)

0

3

0

Ca (mg)

240

1

2

75

K (mg)

1100

2

13

230

Fe (mg)

4.7

0.1

0.8

0.4

Cu (mg)

0.24

0.01

0.04

0.01

Mg (mg)

31

1

1

17

Zn (mg)

0.5

0.3

1.5

Na (mg)

27

1

7

1

P (mg)

31

微量

4

1

パントテン酸 (mg)

1.38

0.05

0.13

葉酸 (mg)

10

1

1

ナイアシン (mg)

0.8

0.2

タンパク質(g)

1.7

0

0.2

0.1

炭水化物(g)

89.7

99.2

79.7

66.3

女王アリには、何日かおきにこのシロップと水を飲ませましたから、冬を越すことができたのです。個体の生命を維持するだけならば、タンパク源はいらないようです。
ところで、子育てに失敗した女王アリが再び子育てをすることができるのでしょうか。同じ年内にはそれが不可能であったことは、昨年の観察からわかっていますが、1年後の春を迎えて、再び子育てができるのでしょうか。
S/N016以外は、10月23日時点で、卵も幼虫も蛹もいませんでしたが、この春になって産卵する個体も出てきています。3月21日と3月31日の卵の数を併記しますと、S/N007:8→8個、S/N073:0→7個、S/N075:0→3個、S/N076:0→0個、S/N085:6→14個となります。1個体を除いて産卵を始めました。また、S/N016は、3月31日時点で新たに卵を7個産んでいました。その他に幼虫が1匹育ちつつあり、死んでミイラ状になった幼虫が4匹確認できました。これらは、昨年の10月23日にいた幼虫10匹の中の5匹だと考えられます。

S/N016 ムネアカオオアリだが、全身が黒い

S/N016 ムネアカオオアリだが、全身が黒い

いずれにせよ、1匹だけで冬を越した女王アリが、春を迎えて子育てを始めようとしているのです。この子育ては成功するのでしょうか。今後の観察が待たれます。
なお、蛇足になりますが、例えこの子育てが成功しても、自然界ではあり得ないことです。働きアリのいない女王アリは、自らは餌を得ることはできませんから、次の春を迎えることはできず、死滅するしかないのです。

※S/N016は、全身が黒いのでクロオオアリのようにも見えますが、全体に光沢があり、ムネアカオオアリだと分かります。(クロオオアリにはあまり光沢はありません) 7月27日に駒ヶ岳のしらび平(標高1680m辺り)で採集しました。

アリの人工巣 システム飼育器(永年飼育型)を開発

ベースステーション「アンテキューブⅡ」・拡張ユニット「アンテモジュール」(クロオオアリ・ムネアカオオアリ用)を開発(2013年4月1日提供開始) 交尾後から永年飼育可能

ベースステーション「アンテキューブⅡ」 (側面にもシリコン栓が1つ付属する)

ベースステーション「アンテキューブⅡ」 (側面にもシリコン栓が1つ付属する)

拡張ユニット「アンテモジュール」

拡張ユニット「アンテモジュール」

システム飼育器を開発いたしました。この飼育器は、初代「アンテキューブ」をベースにした「アンテキューブⅡ」と、これにつなぐ拡張ユニット「アンテモジュール」の2製品で構成されます。このシステム飼育器は、交尾直後から使用できるように設計されており、「アンテモジュール」を併用することで、大家族になっても継続して飼育できます。大きさは、初代「アンテキューブ」と同じで、大変コンパクトにできており、縦・横ともに54mm、高さは31mmで、「アンテモジュール」も同じ大きさです。
「アンテキューブⅡ」は、2部屋に分かれており、片方は巣穴、もう片方はえさ場です。
巣穴の部屋の蓋は、紙用の糊で固定します。また、蓋には直径7mmの穴があり、シリコン栓でふさぐようになっています。この部屋は、通常開けないで使いますが、女王アリとその家族を引越させる時などには、紙用の糊で固定していますので簡単に開けることができます。通常、この部屋への出し入れは、シリコン栓の開け閉めで行います。
えさ場の部屋の蓋は、開け閉めができるようにします。上の写真でいうと蓋の左側にセロハンテープを貼ることで、セロハンテープがちょうつがいの役目を果たすようになります。この蓋には、直径7mmと1.5mmの穴があり、7mmの方はシリコン栓を開け閉めします。
えさ場の部屋には、外径が15mmで高さが10mmのアクリルパイプが2つあります。このパイプは厚み3mmの台座に接着されています。ただし、その台座は床面には固定されていません。写真手前のパイプには水を、奥のパイプには砂糖を入れるようになっています。蓋にある2つの穴は、蓋を開けないで、水や砂糖を補給するためにあります。7mmの穴から砂糖を落とすとパイプ内に落ちます。また、1.5mmの穴へは化粧用品の注射器の針を差し込んで給水します(約1mL入ります)。
巣穴の部屋とえさ場の部屋とは、直径3mmの穴でつながっています。この穴を通り抜けることができるのは、働きアリだけです。つまり、女王アリは巣穴の部屋から出られないようになっています。
以上は初代「アンテキューブ」と同じですが、この「アンテキューブⅡ」には、次の2つの機能が加わります。
一つは、巣穴の部屋の側面に穴が空いていることです。直径7mmの穴が1つあり、この穴の大きさは、女王アリが十分に通れる大きさです。

直径7mmの穴が1つある

直径7mmの穴が1つある

この穴と同じ大きさで、全く同じ位置に穴があるのが「アンテモジュール」で、この「アンテモジュール」を併用することで巣を拡張することができるのです。

アンテモジュールを1つ使うと

アンテモジュールを1つ使うと

アンテモジュールを3つ使うと

アンテモジュールを3つ使うと

アンテモジュールを5つ使うと

アンテモジュールを5つ使うと

ちなみに、上の組み合わせの例では、併用する「アンテモジュール」の数が奇数個になっていますが、もちろん偶数個を併用することもできます。
ベースステーションと拡張ユニット、または拡張ユニット同士の結合の仕方ですが、セロハンテープを使うとよいでしょう。底面と両側面に貼ると安定します。また、セロハンテープですので、分解も容易になります。
「アンテキューブⅡ」で追加されたもう一つの機能は、 巣穴の部屋に水入れがあることです。上の写真右側がそれです。高さ6mmの壁で仕切っていて、およそ0.4mLの水が入ります。巣穴の部屋に水を常時蓄えることができることで、まだ働きアリがいない初期の女王アリを容易に飼育することができるようになりました。
「アンテキューブⅡ」には、上の写真には写っていませんが、直径7mmの通路を塞ぐシリコン栓が付属しますので、単独で使用することもできます。1年間は、ベースステーションのみで飼育し、2年目から拡張ユニットを連結して飼育することもできます。
なお 、「アンテキューブⅡ」の一品一品に、シリアル番号を記載したシールを貼っています。このシールは、耐水性ですので、濡れても文字がにじむことはありません。シールの地は、通常は半透明で、濡れると透明になり、乾きかけは白くなりますが、また乾くと元の半透明に戻ります。

 ○材質:板部 透明アクリル板(カット面磨きなし)厚み3mm

設計図

設計図

ご注文方法等、詳しくはこちらをご覧下さい。

続 もう子育てが始まっています

21日にも、アリの子育てが始まっていることを書きましたが、その続編として加筆します。

2010年6月採集のクロオオアリの家族 卵・幼虫・蛹を分けて置いていた

2010年6月採集のクロオオアリの家族 卵・幼虫・蛹を分けて置いていた

上の写真は、21日にも掲載していますが、ふと見ると、卵と幼虫と蛹(繭)をきれいに分けて置いていました。いつも見られるとは限らないので、早速写真を撮りました。

人工巣インテリアリと餌器モートフィーダーのアリたちも、子育てを始めています。

インテリアリの一室

インテリアリの一室 クロオオアリ

幼虫などが見当たらないのは、モートフィーダーで育てているからです。

モートフィーダーの中

モートフィーダーの中

よく見ると、もう繭もありました。この人工巣も、冬の間ずっと書斎に置いていましたから、比較的気温が高く、早くから幼虫が育ち始めていたのでしょう。

次は、ムネアカオオアリの人工巣インテリアリの様子です。

インテリアリの一室 ムネアカオオアリ

インテリアリの一室 ムネアカオオアリ

この部屋にも幼虫などがいませんね。同じく、モートフィーダーの中にいました。

モートフィーダーの中

モートフィーダーの中

このモートフィーダーには、いつも蓋をしていますから、空気の入れ替えがなく、そのため巣穴の中と同じように落ち着けるのでしょう。

コンクリート製のコップ型人工巣でも、子育てが始まっています。これらのコンクリートの人工巣は、冬の途中から屋根裏に置いていましたから、気温は低い状態でした。幼虫もまだ小さいようです。

2012年飛翔のクロオオアリの家族

2012年飛翔のクロオオアリの家族

2012年飛翔のムネアカオオアリの家族

2012年飛翔のムネアカオオアリの家族

卵を壁に掛けている家族もありました。気のせいでしょうか、何だか嬉しそうです。

クロオオアリ

クロオオアリの家族

新女王アリ 予約受付開始

新春恒例企画  クロオオアリ・ムネアカオオアリの2013年新女王アリ 予約受付開始!
ご提供価格 1匹 1000円(送料別)送料着払い

2013年5月下旬から6月中旬に採集する予定です。 採集後すぐにお送りいたします。子育ての初めから観察できます。

販売条件:

①採集できる女王アリの個体数は、年によって大きく変動します。予約順で配付致しますので、お届けできない場合もございます。(ムネアカオオアリの女王アリの方は、個体数が少なくなる見込みです。)

②人工飼育におけるクロオオアリとムネアカオオアリの女王アリの生存率はそれぞれ87%と80%、子育て成功率(働きアリが1匹でもいる家族の割合)はそれぞれ73%と74%(昨年クロオオアリ56匹、ムネアカオオアリ35匹のデータ 交尾から80日経過時点)です。したがって10匹の内3匹弱は、子育てに失敗する可能性があります。このことをご了承の上お申し込み下さい。更に詳しくは、こちらをご覧下さい。

③プラスチック製のクリーンカップに脱脂綿を敷いた状態でお届けいたします。この容器のままで、最初に働きアリが羽化するまで飼育できます。

④届いた時点、あるいは届いた日を入れて3日以内に女王アリが死んだ場合は、電話またはメールにてご連絡下さい。送料無料で女王アリをお送りいたします。但し、お買い上げの個体数を上限に1回のみと致します。(例:3匹お求めで、届いた日を入れて3日以内に3匹とも死んだ場合、日をまたがっても、3匹まで送料無料で女王アリをお送りいたします。)

⑤女王アリを採集した時点で、メールにてお知らせ致します。ご入金が確認でき次第、送料着払いにて順次発送致します。(ゆうちょ銀行へのお振込となります。振込手数料をご負担下さい)。

⑥予約のお申し込みは、こちらでお受け致します。

働きアリの寿命

昨年2012年の8月31日のブログ「1匹だけ育った働きアリ」で紹介した女王アリと働きアリ2匹の家族ですが、今も皆元気にしています。

ND4_6338

上の写真はその働きアリ2匹ですが、この働きアリは2匹共に2011年の夏から秋にかけて生まれました。ですから、今年で2回目の春を迎えようとしています。

また、同じ年から巣作りを始めて、やはり2011年に女王アリが死んでしまったクロオオアリとムネアカオオアリの巣にも、今でも働きアリがいて生活しています。

クロオオアリの巣の方は、昨年の夏には働きアリが10匹いて、今では8匹になっています。ムネアカオオアリの巣の方は、同じく夏に8匹いて、今は7匹になっています。いずれも、少し数が減りましたが、元気に生活しています。

クロオオアリ

クロオオアリ

ムネアカオオアリ

ムネアカオオアリ

これらからわかることは、クロオオアリやムネアカオオアリの働きアリは長生きだということです。大体になりますが、成虫で約20ヵ月生きていることになります。昆虫は、変態の期間を入れれば長生きするものはいますが、成虫でこれほど長く生きていられる仲間は少ないでしょう。アリが高度な社会生活をしていることと、何か関係があるのでしょうか。

2年目を迎えるクロオオアリ・ムネアカオオアリのコロニーの大きさ

昨年の10月23日に、簡易小型飼育器で飼っている1年目のクロオオアリとムネアカオオアリのコロニーの大きさについて記述しました。

クロオオアリ(サンプル数27家族の平均)
成虫: 13.5匹 幼虫:2.3匹 繭・卵なし
ムネアカオオアリ(サンプル数15家族の平均)
成虫: 12.7匹 幼虫:14.1匹 繭・卵なし

今回、ほぼ5ヶ月後の3月21日に、前回と同じ対象のクロオオアリとムネアカオオアリのコロニーの大きさを調べました。

クロオオアリ(サンプル数24家族の平均)
成虫: 12.2匹 幼虫:1.9匹 卵:0.2 繭なし
ムネアカオオアリ(サンプル数13家族の平均)
成虫: 12.2匹 幼虫:13.3匹 卵:0.1 繭なし

比べて見ると成虫の数と幼虫の数が少しですが減っていることがわかります。また、卵を産み始めたことがわかります。

もう子育てが始まっています

冬の間、書斎に置いていた3度目の春を迎えるクロオオアリの家族の人工巣では、もう蛹が多く見られるようになっていました。

ND4_6284

2010年6月採集のクロオオアリの家族 写真には写っていないが卵もある

秋に幼虫になっていた命が、そのまま冬を越して蛹になったと考えられます。繭の大きさは小さめですから、小さい働きアリになりそうです。秋の終わりからはタンパク源になるものは与えていませんが、それでも成虫になることがわかります。

簡易小型飼育器アンテキューブで飼育している、昨年採集のクロオオアリやムネアカオオアリの家族にも、変化が見られます。これらの簡易小型飼育器は、冬の途中から屋根裏の部屋に置いていましたから、気温は低めでした。昨年の秋に記述しましたように、ムネアカオオアリの方が幼虫の数が多かったのですが、下の写真のようにたくさんの幼虫が育ち始めています。

ND4_6323

2012年6月採集のムネアカオオアリの家族

こちらの女王アリは、新たに卵を産んでいます。

ND4_6321

 

下方には幼虫が見えますが、黄色く見えるものは何なのでしょうか。他の家族でも、同じようなものが見えます。拡大してみると、

ND4_6315

 

この黄色いものは、死んだ幼虫のようです。冬の間に死んでしまったのでしょう。