月別アーカイブ: 2013年6月

触角の有無と卵の散乱

6月5日・6日に女王アリを採集したクロオオアリの7家族とムネアカオオアリの1家族の卵が孵化し、まだ小さいのですが幼虫になっていました。6月15日〜17日に女王アリを採集したクロオオアリとムネアカオオアリの家族の卵は、まだ孵化していませんでした。

ところで、卵が散乱しているのがありました。

卵が散乱している 脱脂綿に埋まっている卵もある

飼育番号No.7 卵が散乱している 脱脂綿に埋まっている卵もある

この女王アリは6月6日にコンクリートの塊の下で見つけました。左右共に触角の鞭部が途中からなくなっています。また、下の写真の女王アリは、右の触角の鞭部の先端がなくなっています。

やはり卵が散乱している

飼育番号No.17 やはり卵が散乱している

下の写真の女王アリは、右の触角を柄節の付け根から全て失っています。写真では卵がまとまっているように見えますが、視野の外に卵が3個あります。

写っていないところに卵が3個ある

飼育番号No.73 右触角を全て失っている 写っていないところに卵が3個ある

こうしてみると、触角の有無と卵の散乱とは関連しているように思えます。

そこで逆に、触角の一部を失っている女王アリの子育ての様子から見てみましょう。
27日の時点で生き残っている触角の一部を失っているクロオオアリの女王アリは12匹で、この数には上記の3個体が含まれていますので、卵の散乱の個体率は3/12、つまり、25%になります。これに対して、触角に異常がない個体の場合の卵の散乱の個体率は0/52で、0%です。

以上のデータからは、触角の一部を失っていても卵が散乱しない場合が多いものの、およそ4匹に1匹の割合で卵が散乱すること、そして、触角を失っていなければ、通常は卵は散乱しないことがわかります。はやり、触角の有無と卵の散乱には関連がありそうです。

異常に大きい働きアリの誕生

人工巣インテリアリで飼育しているクロオオアリの家族に、異常に大きな働きアリが生まれました。

羽化してまもなくの様子 先輩たちが羽化の介助をしている

羽化してまもなくの様子 先輩たちがまだ羽化の介助をしている 20日午後6時前

22日

22日の様子

この働きアリは、自然界の大きな巣の大型働きアリと較べても、更に大きいように思えます。この家族は2011年に生まれた家族で、働きアリの数はこの大きな働きアリを入れずに26匹です。2年間を経過した家族としては大きくありません。

この家族と他の家族との飼育環境の違いの1つに、今年の春に途中水がなくなり幼虫の多くが死んだことがあります。そのためか現在は繭が1つで、幼虫はなく、卵が多数あります。

巣作りの初期の段階で、大きな働きアリが生まれた事例については、「1匹だけ育った働きアリ」「年を越して再度の子育てに成功するか?」の結果で触れていますが、これらと同じことが起こったと考えられます。いずれも、幼虫が少ない(他にいない)ために、養分を多く摂取し、それで体が大きくなったのでしょう。

「年を越して再度の子育てに成功するか?」の結果

今年の3月31日のブログ(「年を越して再度の子育てに成功するか?」)で紹介した全身が黒いムネアカオオアリですが、子育てに成功していました。
最初に成虫になったのは、体の大きな働きアリでした。その後で、小さめの働きアリも羽化し、3匹の家族になっていました。3月31日のブログでは、冬の間、たんぱく質を含まない蜜を与えていたと書いていますが、その後、ローヤルゼリーも入れた蜜を与えていました。

ところが、今日見ると、体の大きな働きアリが死んでいました。簡易小型飼育器アンテキューブの2つの部屋を仕切る壁に空けている通路の穴に、体を突っ込んだままの状態でした。穴の大きさは、巣作り初期の成虫がまだ小さい頃の1年は問題のない大きさなのですが、この働きアリは体が大きく、行きは通れたものの、蜜を飲んで腹部が膨れたために、帰りに腹部がつっかえたようです。穴につかえた時、後戻りすればおそらく穴から脱けられたと思うのですが、家族の待つ部屋へ必死に戻ろうとしたのでしょう。その内に力尽きたようです。大変かわいそうなことをしてしまいました。

腹部から引っ張ると体を穴から抜くことができました。そのまま、家族のいる部屋にもどしておきました。

ND4_8339

全身が黒いムネアカオオアリ(S/N016) 繭は5個ある

しばらくして見ると、女王アリがこの亡くなった働きアリを食べていました。人間には、とても異常で悲しいことですが、アリの世界ではとても合理的な行為なのでしょう。妙な意味でリサイクルなのです。

下の写真は、別の女王アリの写真ですが、この女王アリも子育てに成功しそうです。こちらは、単独で冬を越したクロオオアリの女王アリです。

単独で冬を越したクロオオアリ

単独で冬を越したクロオオアリ(S/N075)  繭は7個ある

3月31日に7例あげた単独で冬を越した女王アリの内、ムネアカオオアリとクロオオアリがそれぞれ1例ずつ、「年を越して再度の子育てに成功」したことになります(他は繭なし)。成功する確率は低いのですが、女王アリに直接餌を与えることで、個体によっては、子育てをやり直すことができることがわかります。

清里で女王アリを採集

クロオオアリとムネアカオオアリの女王アリの2度目の採集に出かけました。
東京での出張を挟んで、6月14日(金)から17日(月)にかけて、主に山梨県の北杜市高根町で採集しました。高根町と言ってもピンと来ない人が多いと思いますが、大字名の「清里」と言えば、まだまだ多くの人に知られています。「昭和50年代」にいわゆる「清里ブーム」が起こり、私も旅した1人です。今の清里はすっかり落ち着いていて、静かなリゾート地です。思い出が強く残る清里駅前の風景は、今も残っていますが、観光客は消えてしまいました。

今回の採集場所に清里を選んだのは、この地に郷愁があったことと、採集には標高がこの時期としては適切だと考えたからです。JR清里駅の標高は1275mです。前回の採集場所は標高が850m前後で、6月5日に訪れた時にはもう大部分の羽蟻が飛び立った後でしたから、1000mを少し越える高原を選んだのです。

15日、清里の中心部から141号線を北へ少し行ったところの駐車帯(標高1371m 35.942366, 138.450499)で、クロオオアリの巣を見つけました。巣口からは羽蟻が見えます。

新女王アリが見えます

羽蟻の女王アリが見えます

羽蟻の女王アリと雄アリが見えます

羽蟻の女王アリと雄アリが見えます

やはり、ここまで標高が高いところでは、羽蟻の結婚飛行はこれからのようです。

最初に採集できたのは同じ日の15日で、清里から更に北の141号線の駐車帯(標高1033m 36.049893,138.471307)でした。ここは、長野県で松原湖に近いところです。巣口には羽蟻の姿はありませんでしたが、石を持ち上げるとそこにクロオオアリの女王アリがいました。

1匹目の女王アリを見つけた石の下の様子

1匹目の女王アリを見つけた石の下の様子

2匹目はここで見つけました

2匹目はここで見つけました

1つの石の下に2匹いました

1つの石の下に2匹いました  右下に女王アリが見えます 中央上の窪みにいた女王アリは卵を3個産んでいました

全部で4匹になりましたが、この内上の写真で言うと一番下の写真にいた女王アリの1匹だけが卵を3個産んでいました。このことから考えられることは、結婚飛行を終えてまだいくらも日が経っていないだろうということです。1日から3日位なのでしょう。

この場所では歩いていたムネアカオオアリの女王アリも1匹採りました。また、更に少し北にある駐車帯(標高1019m 36.054737,138.467367)でも、歩いていたムネアカオオアリの女王アリを1匹採りました。

清里には、いくつかの公園等がありますが、この内、美し森駐車場(標高1473m)〜展望台(標高1531m)〜美し森ファーム(標高1563m)にかけては、クロオオアリもムネアカオオアリも姿を見ませんでした。また、更にその北にある「サンメドウズ清里スキー場」でも両者とも姿を見ませんでした。それらの少し南に位置する清泉寮(標高1390m前後)近辺や、西方の八ケ岳牧場の駐車場(標高1421m)でも両者共に姿を見ることはありませんでした。

クロオオアリやムネアカオオアリの働きアリの姿を見たのは、清里の森(標高1330m〜40m前後)と清里丘の公園(標高1180m前後)で、クロオオアリだけなのは「道の駅南きよさと」(標高835m前後)です。

これらの内、まとまった数のクロオオアリの女王アリが採れたのは、清里丘の公園です。16日と17日の2日間で、クロオオアリの女王アリが60匹で、ムネアカオオアリの女王アリは3匹でした。クロオオアリの60匹の内、13匹は負傷していました。

丘の公園のパターゴルフ場は良く整備されていて、芝地がとてもきれいです。コースの芝生はよく刈り込まれていましたので、女王アリがその上を歩いていると少し離れたところからもすぐにわかりました。また、コースの外も芝生が短く探しやすい場所でした。

よく整備されたパターゴルフ場

よく整備されたパターゴルフ場

こんな風に歩いている女王アリを見つけやすい

こんな風に女王アリが見つけやすい これは17日の朝の写真で、この女王アリは負傷していた

この清里中心の4日間の採集旅行で、クロオオアリの女王アリは65匹、ムネアカオオアリの女王アリは5匹、それとクロヤマアリの女王アリを2匹採集することができました。

マーキングを撮る

クロオオアリやムネアカオオアリは、巣から出てきて、何匹かで組んで遠征することがあります。

ND4_0535その様子をよく見ると、先頭を歩くアリは、スムーズに歩いているのではなく、チョンチョンと一瞬止まりながらリズミカルに歩いています。ついていくアリたちは、 そんな風ではなく、普通に歩いているようです。

その様子をビデオで撮影して見てみましょう。一眼レフカメラで撮影しましたので、ピントが合いにくく、見づらい映像になってしまったのですが……。

1分5秒

クロオオアリのマーキングの様子(1分5秒)

14秒

ムネアカオオアリのマーキングの様子(14秒)

確かに、先頭のアリだけが絶えずマーキングをしながら歩いているのがわかります(ビデオは再生速度を落として見ることもできます)。ついていくアリたちもマーキングをすれば、より確かな道しるべになりそうなものですが、なぜ先頭のアリだけがマーキングをしているのでしょうか。

その理由は、あくまでも仮説ですが、遠征隊員?の個々の動きを見ているとわかるような気がします。隊員たちは、整然と列を組んでついていっているわけではありません。かなりばらばらな感じになったりもします。もし、全ての隊員がマーキングをしていると、外れた方向にもマーキングされることになり、先頭のアリが歩いた道と区別がつかなくなるのでしょう。先頭のアリが、そのアリの偶然の判断で任意の方向へ歩いて行く場合でも、その道が1本であることが重要なのでしょう。そうであることで、はぐれてしまった隊員も、やがてマーキングを見つけ、同じ場所へと向かうことができるのではないでしょうか。

働きアリの寿命(その2)

2012年8月31日2013年3月25日のブログで触れたクロオオアリの家族3匹(女王アリと働きアリの2匹)ですが、その内の大きな働きアリが死んでいました。

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この死んだ働きアリは2011年7月生まれで、最初にそのクロオオアリの家族の一員になったアリでした。23ヵ月間生きていたことになります。
上の写真がその働きアリです。ばらばらになっているのは姉妹の働きアリや母親(女王アリ)が食べたからです。よく見ると内部がなくなって殻だけになっています。

やはり、クロオオアリの働きアリはかなりの長生きのようです。
同じく2011年に女王アリが死んだにもかかわらず、最初に生まれた働きアリが生き続けている家族が2例あります。これらも2013年の3月25日に紹介している働きアリたちで、クロオオアリは8匹が、ムネアカオオアリは5匹が生きています。こちらの働きアリたちは、3年目を越えるのはもう目前です。果たして、クロオオアリやムネアカオオアリの働きアリの寿命は、長いものでどのくらいなのでしょうか。是非とも探究したいテーマです。

クロオオアリの巣を襲うクロヤマアリ

下の写真を見てみましょう。

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あちこちに黒いものが見えますが、これはクロオオアリの死体です。中央には大きな腹部の残骸が見えますが、クロオオアリの女王アリなのかも知れません。右上に巣口があり、出入りしているのはクロヤマアリのようです。

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これは、巣の規模は小さいのですが、やはり巣口にクロオオアリの死体がたくさんあります。

このような巣がこの辺りにはとてもたくさんありました。確認のため、それらの死体と出入りしているアリを持ち帰りました。

これは確かにクロオオアリの死体です

これは確かにクロオオアリの死体です

これは確かにクロオオアリの死体です。大きな腹部はやはり女王アリのようです。

やはりクロヤマアリのようです

やはりクロヤマアリのようです

巣口から出入りしていたのはやはりクロヤマアリのようです。

大腮の様子

大腮の様子

側面から

側面から

大腮の形からもサムライアリではないことがわかります。

この辺りには、クロオオアリの巣がいたる所にありました。それらの巣から、毎年羽蟻が飛び立ち、さほど遠くない場所に新たな巣ができると考えられます。それを毎年繰り返しているとすると、クロオオアリの密度は高まるばかりです。

ところで、クロヤマアリは、クロオオアリと比べて、ひとつの巣の中の働きアリの数が多く、また動きが機敏です。ですから、クロヤマアリがクロオオアリを襲えば勝てるでしょう。襲う目的は、クロオオアリの卵や幼虫や蛹を食べるためでしょうし、殺した働きアリも食べているのでしょう。働きアリ以外は、食べても残骸は残らないので、巣口の周りには働きアリの残骸だけがあったと考えられます。

また、クロオオアリを全滅させた後の巣穴は、そのままクロヤマアリが使っているようです。クロヤマアリはひとつの巣に複数の女王アリがいると言われていますから、その中の女王アリが1匹でも引越をすれば、女王アリがいる巣になります。しかも、穴掘りをしなくても即巣穴が手に入るわけです。

ちなみに、以上は、クロヤマアリがクロオオアリの巣をまるごと襲うと考えての話ですが、そうではなく、クロヤマアリがクロオオアリ(死んでいたものや襲ったもの)を自分の巣に運んで食べた跡ではないかと考えることもできないではありません。けれども、そう考えなかったのには、理由があります。巣口の周りにある死骸のほとんどがクロオオアリであることや、その死骸の数が多いこと、そして、そのような巣がそう広くない場所にあちこちあることなどから、それだけの数のクロオオアリが、通常クロヤマアリの餌食になるとは考えられないからです。

クロヤマアリがクロオオアリの巣を襲うということは、あまり知られていませんが、私が観察したこの場所では、ごく普通に行なわれているようです。

負傷した女王アリも産卵するか

持ち帰った女王アリは17匹でしたが、帰宅した時点で1匹が死んでいましたので、16匹を飼い始めました。その内訳は、クロオオアリが12匹、ムネアカオオアリが4匹です。

ところで、今回持ち帰った女王アリは、例年とは違うところがあります。それは、16匹の内の半分の8匹が、傷を負っていたということです。例年ですと、結婚飛行を終えた直後の女王アリを採集していましたが、今回は、これまでのブログでお話しましたように、結婚飛行の直後でない場合がほとんどであると考えています。傷を負っているのは、地上を歩いている間に襲われたと思われます。ただ、それは幸運なのですが、命は落とさなかったのです。

負傷しているのは、左触角が短いのが2匹、右触角が短いのが2匹、左右共に触角が短いのが1匹、右触角が短く左の前脚の腿節が全部なくなっているのが1匹、右触角が短く左の中脚の脛節が途中からなくなっているのが1匹、右の後脚の脛節が途中からなくなっているのが1匹、の計8匹です。それらは、地上を歩いていたものや、出入り口が開いた浅い穴の中にいたものや、コンクリートの塊の下にいたものや、建物の網戸にいたものなどです。いずれも、私が見つけたという点が問題です。本来なら、結婚飛行を終えた直後から穴を掘って、その中に身を隠していなくてはならないのです。

体に傷を負っていない女王アリは、地面を歩いていたのが多いのですが、芝地の穴の中にいたのもいます。やはり、私に見つけられたという点が問題です。

右触角が短いムネアカオオアリは、7日の夕刻には死んでおり、同じく右触角が短いクロオオアリは、8日には死んでいました。

6月9日の14匹

6月9日の14匹 上2段が健全な女王アリ、下2段が負傷している女王アリ

6月9日現在、生きているのは14匹になります。まだ産卵をしていないのは、健全な女王アリ8匹の内の3匹、負傷している女王アリ6匹の内の1匹で、割合的には負傷している女王アリの方が、産卵率は高くなっています。

女王アリは負傷していても、産卵をしたのですから、おそらく子育てもできるのでしょう。今後が楽しみです。

この芝地で4匹を採集した

この芝地でクロオオアリばかり4匹を採集した

ルリアリの一家を採集

ルリアリは、台所で時々見かけていましたが、とても「かわいい」アリです。「かわいい」というのは、小さいというよりも、姿形が可愛いのです。頭部が、体の割には長く愛嬌があるのです。

5月17日、そのルリアリをたまたま庭で家族ごと見つけました。アルミのフェンスに布を巻き付けていたのですが、不必要になったので取り払いました。すると、そこで巣を作っていたのです。まだ2年目の家族なのでしょう。小さな規模の家族でした。

右へと女王アリが退避しています

右へと女王アリが逃げていきます

働きアリはあまり採集できませんでしたが、大部分の子どもたちと女王アリは採集できました。簡易小型飼育器のアンテキューブに入れて飼育することにしました。

下の写真は6月9日に撮影したものです。蛹が成虫になり、働きアリの個体数が増えてきました。

ルリアリの蛹は繭を作らない

ルリアリの蛹は繭を作らない

ルリアリには、ローヤルゼリー入りの特製の蜜の他、グラニュー糖の粒を与えていますが、食べるところは観察できていません。また、小さな昆虫を与えています。昆虫は分解されて、殻だけになっていますから、食べているのでしょう。その他には、脱脂綿に水を含ませています。働きアリの腹部を見るとそれなりに膨らんでいますから、今のところ、この飼い方で良いようです。

少し標高の高いところでは

前回のブログで取り上げている女王アリの採集場所は、少し離れた2箇所ですが、いずれも標高が850m前後のところです。
それらの地点では、既に大部分の羽蟻が直前に結婚飛行を終えていたわけですが、と言うことは、少し標高が高いところでは、結婚飛行はこれからかも知れません。
そこで、同じ地域の山へと車を走らせました。途中に駐車場とトイレがある公園があり、そこで観察することにしました。標高は990m前後です。
道はアスファルトで舗装されていて、道の脇のコンクリート製の溝との間の割れ目をうまく利用して、クロオオアリがいくつか巣を作っていました。案の定、そこにはまだたくさんの羽蟻がいました。

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羽蟻がたくさん巣から出ていた

すぐ近くの別の巣

すぐ近くの別の巣 葉の上にたくさんの雄アリがいる

これの別の巣

これも別の巣

これらは6月5日の様子です。結局、この日、これらの巣からは羽蟻は飛び立ちませんでしたが、ほんの少し道を下ったところにあるクロオオアリの巣からは、何匹かの女王アリが飛び立つのを見ることができました。

飛び立とうとしている女王アリ

飛び立とうとしている女王アリ

ただ、私が見た限りでは、巣の出入り口には雄アリもいたのですが、女王アリだけが、時々飛び立つといった具合でした。

ところで、ムネアカオオアリの女王アリの方はと言うと、山側の茂みの中から何匹かが出てきました。

山側の茂みから出てきたムネアカオオアリの女王アリ

山側の茂みから出てきたムネアカオオアリの女王アリ

結局、この日この公園では、ムネアカオオアリの女王アリを2匹採集するにとどまりました。クロオオアリの女王アリは採集できませんでした。

次の日にもこの公園を訪れましたが、前日と違い、夕刻になっても巣から出て来る羽蟻はいませんでした。2日目はこの公園では、1匹も女王アリを採集することができませんでした。

ところで、天気が昨日より違っていました。夕刻前には、曇になっていました。そして、午後8時を過ぎた頃、雨が激しく降ってきました。
それで、この日、羽蟻が飛び立たなかったわけがわかったように思えました。もし、結婚飛行をしていたら、新女王アリは雨の中で穴を掘ることになります。小降りならまだしも、激しい雨の中では、せっかく掘りかけた穴は、あっという間に埋まってしまったことでしょう。

まだ、結婚飛行をする前の巣では、巣の出入り口から羽蟻が外の様子を窺っています。いつ巣から飛び立つか、外の様子を見ていると考えられますが、様々な気象的な要素を捉える能力があるのではないでしょうか。アリには、ある意味、天気を予知できる能力があると言えるでしょう。(例えば、モンシロチョウには天気を予知する能力があるのかと言うことです。裏返して言えば、天気を予知する必要があるのかということでもあります。モンシロチョウは、雨が降ってきて始めて、葉の裏などに身を寄せるのでしょうか。)

女王アリの採集へ

いよいよクロオオアリとムネアカオオアリの女王アリの採集の時期です。これまで3年間、同じ場所で大量に採集できましたので、今年も同じ場所へ出かけました。
過去3年間では、6月8日(2010年)、6月8日(2011年)、6月14日(2012年)の日に結婚飛行があり、クロオオアリとムネアカオオアリの合わせて100匹を越える女王アリを採集してきました。
今年は6月4日に自宅を出、翌日に当地に着きました。

当地に次の日まで留まったわけですが、結論を先に言えば、2日間で17匹を持ち帰りました。帰宅してみるとその内の1匹が死んでいましたので、実数は16匹です。

なぜこんなにも少なかったのか、それはごく明白な理由で、当地の新女王アリは、既に大部分が結婚飛行済だったからです。当地の施設の方の話では、「1週間ほど前」に女王アリをたくさん見たそうです。それが2〜3日続いたとのこと、確かに同一場所でも、結婚飛行は特定の一日だけに集中して行なわれるのではなく、何日かに分けて行なわれることが、これまでの観察で分かっています。それは、1つの巣においても、言えることで、1つの巣でも何日かに分けて羽蟻が飛び立ちます。

以下の写真は、既に結婚飛行が大量に行なわれた後であることを示すものです。

女王アリの腹部と思われます

女王アリの腹部と思われる

クロヤマアリの巣へと運ばれた女王アリの死体

クロヤマアリの巣へと運ばれた女王アリの死体

大きな巣だが羽蟻の姿がない

クロオオアリの大きな巣だが羽蟻の姿がない

羽蟻の姿がないムネアカオオアリの巣

羽蟻の姿がないムネアカオオアリの巣

巣に羽蟻がいると、天気が良ければ午後には巣の出入り口に必ず姿を見せるのですが、上の下方の2つの写真のように、その羽蟻の姿がありません。これらの巣では、もう結婚飛行が完了していることを示しています。ちなみに一番下のムネアカオオアリの巣は継続観察をしている巣の1つです。

しかし、同じ場所ですが、幸いにもまだ羽蟻が残っている巣もありました。

羽蟻の姿が見える

羽蟻の姿が見える

この巣も継続観察をしている巣で、昨年はこの巣から羽蟻がたくさん飛び立つ様子を観察しました。その時と比べると、明らかに羽蟻の数が少なく、既に大多数の羽蟻が飛び立った後であることが伺えます。

今年の当地の天候を振り返ってみますと、一時梅雨に入り(5月27日〜30日までが曇)、その後で晴天(5月31日から)が続きましたが、そのことが羽蟻の飛行を早めたようです。今年も6月の8日前後だろうと決め込んでいたのが間違いだったのです。