月別アーカイブ: 2013年10月

5たびのトゲアリの実験

5たび、トゲアリの侵入の実験をすることにしました。
この度用いるのは、いずれもコンクリート製人工巣と拡張蓋を併用して飼育しているコロニーです。どれにも全て女王アリがいます。

全部で12コロニーです

全部で12コロニーです

㉛ クロオオアリ(S/N:NESTCON 01001)2011年 2度目
㉜ クロオオアリ(S/N:NESTCON 01003)2011年
㉝ クロオオアリ(S/N:NESTCON 01004)2011年
㉞ クロオオアリ(S/N:NESTCON 01005)2011年
㉟ クロオオアリ(S/N:NESTCON 01006)2011年
㊱ クロオオアリ(S/N:NESTCON 01021)2012年
㊲ クロオオアリ(S/N:NESTCON 01022)2012年
㊳ クロオオアリ(S/N:NESTCON 01030)2012年
⒂ ムネアカオオアリ(S/N:NESTCON 01026)2012年
⒃ ムネアカオオアリ(S/N:NESTCON 01027)2012年
⒄ ムネアカオオアリ(S/N:NESTCON 01028)2012年
⒅ ムネアカオオアリ(S/N:NESTCON 01029)2012年 2度目

ところで、9月30日のブログで報告したばかりですが、順調に寄生ができたと思っていた「⑹ムネアカオオアリ(S/N:NESTCON 01025 拡張蓋)2012年」と「⑮クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01043)(死体)2013年」のトゲアリの女王アリが、10月2日に死にました。また、闘争中だった「⑭(S/N:NESTCON 01005拡張蓋)2度目(無)2011年」のトゲアリの女王アリも10月3日に死にました。そこで、「⑮クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01043)(死体)2013年」については、2度目になりますが、同日トゲアリの女王アリを侵入させました。

この度の実験で、トゲアリの女王アリのストックがかなり減ってしまいました。ケガをしていない個体は7匹(19日採集6匹、21日採集1匹)、ケガをしていたりケガはしていないけれどもクロヤマアリに襲われたことがある個体は6匹(12日と17日採集は各1匹、19日と24日採集は各2匹)となりました。トゲアリの女王アリは、もう採集できないと思うのですが、近々の、日中の一番暖かい頃に、いなくて元々と考えて出かけてみようと思います。

一度も産卵しない女王アリ

10月3日時点で、今年採集した女王アリの中で、全く家族を持たない女王アリが5匹います。
その内訳は、
①クロオオアリ コンクリートの塊の下にいた 左右触角鞭部短い 卵が散乱 幼虫までは育てた(S/N1035)
②クロオオアリ 芝地を歩いていた 右触角鞭部先端無 卵が散乱 卵で死滅(S/N1065)
③クロオオアリ 9月24日のブログ「異常な個体差」の第1例目:羽化を介助できない 左触角鞭部先端無 蛹までの子育てには異常なし(S/N1015)
④⑤ムネアカオオアリ 結婚飛行以来、一度も産卵していない(S/N3015 S/N3016)

結婚飛行以来1度も産卵していない女王アリ

結婚飛行以来1度も産卵していない女王アリ

※ちなみに、卵を産まずに死んでいった女王アリは、他にも6匹いますが、その内の4匹は7日〜13日後に死にましたから、本来卵を産むはずの日数が過ぎても産卵しないで死んだことになります。

これら5匹が、今も生きているのは、女王アリの寿命が元々長いのと、蜜を与えてきたからでしょう。
①②③がいずれも触角を負傷しているのに対し、④と⑤は、体には異常はありません。しかし、結婚飛行以来、一度も産卵していないのです。考えられることは、翅は落としているのですから、交尾はしたのでしょうが、雌雄どちらかの生殖機能に異常があったのでしょう。

主にクロオオアリの女王アリの生存率・子育て成功率

今年の6月に採集した主にクロオオアリのコロニーの様子を、ほぼ3ヵ月過ぎた9月12日に調べています。
今年の採取日ごとの匹数は次のようです。(黒:クロオオアリ 赤:ムネアカオオアリ)

6月5日   黒5匹   赤4匹
6月6日   黒7匹
6月15日   黒4匹   赤3匹
6月16日   黒33匹 赤2匹
6月17日   黒27匹
7月8日   黒2匹  赤1匹
計   黒78匹 赤10匹

まず、9月12日時点での女王アリの生存率です。

①全体では
黒78匹中56匹生存 赤10匹中6匹生存 なので 黒72% 赤60% 黒赤で70%

②採集時の負傷別では
 黒無傷55匹中43匹生存 なので 78%
 黒負傷23匹中13匹生存 なので 57%
赤無傷9匹中6匹生存 なので 67%
赤負傷1匹中0匹生存 なので 0%
黒赤合わせると 無傷64匹中49匹生存 なので 77%
負傷24匹中13匹生存 なので 54%

今年は、ムネアカオオアリの個体数が少ないので、クロオオアリのみを取り上げることにします。無傷の女王アリでは、人工飼育下で、ほぼ3ヶ月後まで女王アリが生きている割合は、78%となります。
この数値を昨年のクロオオアリの場合と比べてみます。昨年は9月1日のデータで、採集後80日目に当たります。今年とほぼ同時期と考えてよいでしょう。サンプル数は56匹です。
その昨年のクロオオアリの女王アリの生存率は87%でした。今年は昨年と比べると生存率が低いことが分かります。

また、注視したいことは、採集時に負傷していた女王アリの生存率です。クロオオアリの場合、6割弱の57%が生き残っています。

次は、子育て成功率です。「子育て成功率」という特定の定義はないのですが、ここでは、昨年の規定同様、女王アリが死んだサンプルも含めて「働きアリが1匹でもいる割合」とします。また、以下では、9月12日の調査以降の実態を踏まえて推察している部分もあります。

①全体では
黒78匹中53匹成功 赤10匹中4匹成功 なので 黒68% 赤40% 黒赤で65%

②採集時の負傷別では
 黒無傷55匹中36匹成功 なので 65%
 黒負傷23匹中10匹成功 なので 43%
赤無傷9匹中4匹成功 なので 44%
赤負傷1匹中0匹成功 なので 0%
黒赤合わせると 無傷64匹中40匹成功 なので 63%
負傷24匹中10匹成功 なので 42%

ここでも、クロオオアリのみを取り上げることにします。今年のクロオオアリの場合、人工飼育下で、無傷の女王アリでは65%が子育てに成功しています。昨年は73%です。子育て成功率も、昨年と比べると低くなっています。
負傷していた女王アリでは43%で、数値は低いのですが、負傷していても子育てができることが分かります。

トゲアリの食性

トゲアリは何を食べているのでしょうか。その全体像は把握できていませんが、たまたま出会して撮影した写真がありますので、トゲアリの食べ物の一部を紹介しておきましょう。

ND4_0035

ND4_0529

ND4_7599

ND4_7819

 

以上の4例は、地上・樹上の違いはありますが、いずれも生きていた幼虫を襲ったものと思われます。

ND4_7919

 

上の1例は、同じ幼虫ですが、既に死んでいた幼虫のようです。

ND4_7612

 

上の1例は、小さな昆虫の成虫のようです。翅がついているように見えるので、死んでいたのを見つけたのでしょう。

ND4_8046

 

上の1例は、定かではないのですが、鳥の糞のように見えました。

いずれも蜜源ではなく、タンパク源です。蜜源も摂取していると考えられますが、その現場に出会っていません。そのタンパク源ですが、幼虫が多かったのですが、写真の幼虫は運びにくいので、それだけトゲアリの狩りの現場に出会す機会が多くなったのでしょう。幼虫は、運ばれるのではなく、その場で解体していることも分かります。そのあたりは、クロヤマアリとは違いがありそうです。

新たな捕虫器

5月31日のブログで捕虫器「モス・キャッチャー」について述べましたが、この度、もう一つ捕虫器を購入しました。
商品名は「シュアー捕虫器 MC-24MB」と言います。「モス・キャッチャー」よりも高額ですが、この商品の特徴は、昆虫を捕獲して殺すというよりは、昆虫を生きたまま捕獲することを目的にしているところにあります。下部がネットになっていて、この中に昆虫が入ります。

シュアー捕虫器

シュアー捕虫器

ネットは上方で縛ることができるので、生きたままでの採集がしやすくなっています。ネットの目はとても小さく、とても小さな昆虫も捕獲できました。

ところで、捕獲した昆虫を餌にするためには、殺さなくてはなりませんが、どのようにして殺すかが問題です。これまで、「モス・キャッチャー」の時には、押しつぶして殺していましたが、この機会に、もっとよい方法はないかと考えてみました。そして、思いついたのが冷蔵庫の冷凍の部屋に入れて殺すことでした。この方法は、うまくいきました。30分もすれば、ほとんどの昆虫が死んでいました。凍りつくのは防ぎたいので、1時間未満にするとよいことも分かりました。
ネットの部分を縛ったまま、冷凍の部屋に入れています。その後、シャーレに入れて、すぐに餌として与えない時には、冷蔵庫の冷蔵の部屋に入れておきます。
この方法がうまくいったので、「モス・キャッチャー」の場合も、同じ方法に切り替えました。ずいぶんとアリ用の昆虫の餌作りが楽になりました。

写真で見るトゲアリの戦いの様子

これまでにアップしていないトゲアリの戦いの様子の写真を載せておきます。

以下の5枚の写真は、いずれもオオアリの首に咬みついている場面です。こうなるとトゲアリが寄生に成功する可能性が高くなります。

ND4_0445

ND4_0874

ND4_0453

ND4_0715

ND4_0321

 

以下の2枚の写真は、トゲアリがオオアリと互角に戦っている様子です。

 

ND4_0721

トゲアリがクロオオアリの触角に咬みついています

ND4_0732

トゲアリはクロオオアリの触角に、クロオオアリはトゲアリの脚に咬みついています

以下の5枚の写真は、トゲアリが劣勢です。

働きアリに雁字搦めにされています 多くの場合、まだ振り払って逃げることができます

働きアリに雁字搦めにされています 多くの場合、まだ振り払って逃げることができます

よく脚を狙われ、失うことがあります

よく脚を狙われ、失うことがあります

首に咬みつかれています

首に咬みつかれています

オオアリに腹柄節を咬まれることがよくあります

オオアリに腹柄節を咬まれることがよくあります

胸部の棘を咬まれています

胸部の棘を咬まれています