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識別成分塗布

トゲアリの女王アリは、オオアリのコロニーに寄生する際、オオアリの働きアリを捕まえて、働きアリの体表面の成分を、前脚の刷毛のような形状のところを使って、自分の体に塗るのですが、この行動をここでは仮に「識別成分塗布」ということにします。
これまで、飼育環境で寄生させた際は、識別成分塗布を常に観察してきましたが、自然界ではどのように行われているのでしょうか。ここでは、3例を紹介します。

例1

大型の働きアリが寄ってきていました 9月8日12時47分撮影

大型の働きアリが寄ってきていましたが…… 9月8日12時47分撮影

大型の働きアリはもういません 同日12時48分

大型の働きアリはもういませんでした 同日12時48分

例2

キイロシリアゲアリから攻撃されています 9月13日5時50分撮影

キイロシリアゲアリから攻撃を受けています 9月13日5時50分撮影

2時間以上経ってもまだその場にいました 同日8時7分撮影

2時間以上経ってもまだその場にいました 同日8時7分撮影

例3

9月17日6時9分撮影

9月17日6時9分撮影

同日6時16分撮影

同日6時16分撮影 もう1匹トゲアリの女王アリが歩いていました

例2の場所は、9月6日のブログ「トゲアリの女王アリを大量に採集」と同じ場所で、クロオオアリの巣口の横です。例3の場所も、すぐ横にクロオオアリの巣口がありました。また、トゲアリの女王アリが、クロオオアリの働きアリを抱きかかえているところの写真は撮れていませんが、その識別成分塗布をしていたトゲアリのすぐ横にも、クロオオアリの巣口がありました(下の写真)。

識別成分塗布が行われていた場所 クロオオアリの巣口がある 9月17日6時5分撮影

識別成分塗布が行われていた場所 すぐ横にクロオオアリの巣口がある 9月17日6時5分撮影

このように、例1は不明ですが、識別成分を塗布しているトゲアリを見つけた場所には、すぐ横にクロオオアリの巣口がありました。これは、「クロオオアリの巣口の近くを探していると識別成分を塗布しているトゲアリが見つかった」と言うことではありませんので、トゲアリの女王アリは、クロオオアリの巣口に近づいて、あるいは偶然巣口の近くを通った時、クロオオアリの働きアリに出会って、識別成分塗布をすると言えそうです。

ちなみに、歩いているトゲアリの女王アリを追っていた時、女王アリとクロオオアリが出会うことがありましたが、女王アリは慌てて逃げました。数多く見ていないので確言できませんが、通常はトゲアリの女王アリはクロオオアリと出会うと逃げていくようです。

ところで、識別成分塗布の後のトゲアリの行動ですが、見て確かめることはできませんでした。ですから、状況からの判断ですが、例3と直前の写真の例では、トゲアリの女王アリはクロオオアリの巣に入ったと思われます。いずれも、識別成分塗布の時間は、時単位ほど長くはなく、10分とか20分とかその程度のようですので、キイロシリアゲアリから攻撃を受けていた例2のトゲアリは、寄生に失敗していたのだろうと思います。

トゲアリの羽アリ

9月8日の早朝に初めて巣口にいる羽アリを見たのですが、雄アリについては地上も含めて見たこともありませんでした。
9月9日の早朝の観察では、車のムーンルーフ(天窓)から道側のB巣を間近に見ることができましたので、ピンセットで雄アリを1匹捕らえました。

ND4_4889

ND4_4894

ND4_4884

円の目盛りは1目盛り0.5mmです。雄アリの体長はおよそ8mmぐらいであることがわかります。

雌アリは10日の深夜に、巣口から離れて幹を下ってきていた1匹を捕らえました。

ND4_5016

方形の1目盛りは1mmです。羽がとても長いことがわかります。

雌雄の羽アリは、無水エタノールに浸けて標本にしています。

トゲアリ同士の化粧

トゲアリ同士で化粧をし合っているところを見つけました。

9月17日7時1分撮影

9月17日7時1分撮影

飼育しているオオアリの巣に、複数匹のトゲアリの女王アリを入れた際に、同様なことを見たことはありましたが、自然界で見るのは初めてでした。
なぜこのようなトゲアリ同士で化粧し合うことが起こるのか、それがどのような意味を持つのか、謎です。人類よりも遥かに長い間をかけて進化してきたはずなのに、是正されなかった本能の欠陥のように思えるのですが、それとも何か積極的な意味でもあるのでしょうか。

トゲアリの休憩

トゲアリの女王アリは、いつも地上を歩き続けています。見つけた時にはいつも歩いているのです。ですが、それは、歩いているから見つけやすいのかも知れません。

たまたま、次のような場面を見つけることができました。女王アリが落ち葉の陰に入り出てこないようになりました。

落ち葉の陰で休憩 9月8日12時23分撮影

落ち葉の陰で休憩 9月8日12時23分撮影

そっと落ち葉を取り除いても、そのまま休憩していました。

リラックスしている 同日12時32分撮影

リラックスしている 同日12時32分撮影

交尾後に地上を歩く日数(3)

マーキングの実験は、もう一ヶ所でも行っています。去年も今年もよく女王アリを見かける側溝です。
17日、午前8時前から、そこにいた11匹の女王アリの内10匹にマーキングしました。
18日、午前9時前後に見てみると、マーキングのある女王アリが2匹、マーキングのない女王アリが3匹いました。19日の午前11時半頃には、マーキングのあるなしともに全く姿を見ませんでした。

以上の実験と観察から、「交尾後何日か地上を歩いている」という仮説は、正しかったようです。(下記のようにまとめると割合としては少ないようです。)

1日24時間相当 40匹中10匹 25%
2日48時間相当 40匹中3匹 7.5%
3日72時間相当 40匹中1匹 2.5%

ただ、更に大きな疑問が湧いてきます。それでは、トゲアリの女王アリは、数日の間にどこへ消えてしまったのだろうか、という疑問です。死んだのではないかと言うことについては、昨年飼育して検証していますが、数日で自然死することはありません。だとすれば何かに襲われて死んだのでしょうか、それとも宿主の巣へと入り込んだのでしょうか。
ちなみに、どこかで仮住まいを始めて、年を越して春になってから、宿主へ寄生すると言う説もありますが、女王アリは単独では、長くは生きられないことを昨年度の実験により確かめています

交尾後に地上を歩く日数(2)

13日にマーキングを施した5匹のトゲアリの女王アリは、その後、地上を歩いているでしょうか。
16日にそのうちの1匹をマーキングしたほぼ同じ場所で見つけました。

マーキングした女王アリが歩いていた

マーキングした女王アリが歩いていた 8時23分撮影

マーキングの模様からM3であることがわかります。3日=72時間ぶりの再会です。このM3にマーキングした時、その日に交尾を了えたとは断定できませんので、このM3は少なくみても72時間以上地上に留まっていたと言えます。夜間どうしているかの観察はできていませんので、ずっと歩き続けていたのかどうかはわかりません。

この16日は、早朝に結婚飛行が行われたらしく、たくさんの女王アリが歩いていました。そこで、まず、歩いているところをケースを使ってその場に捕らえました。

フィルムケースを被せて捕らえたところ 8時51分撮影

フィルムケースを被せて捕らえたところ 8時51分撮影

それから、捕らえた場所でマーキングを施しました。上の写真には、20ケースありますが、更に5匹を加えて、併せて25匹になりました。

次の日17日に調べてみると、まだ日の出前の午前5時半頃から、ペンキがついた女王アリを7匹見つけました。いずれも前日マーキングを施した場所で見つけ、その周辺も探してはみましたが見当たりませんでした。ちなみに、マーキングしていない女王アリも6匹いました。
18日の午前9時前後には、やはり同じ場所で調べてみると、マーキングしている女王アリは2匹、マーキングしていない女王アリは3匹いました。19日は午前11時半頃に調べましたが、マーキングしていない女王アリも含めて、女王アリの姿は全くありませんでした。(ちなみに、21日には同じ場所の別の箇所で女王アリを3匹見つけています。)

つづく

交尾後に地上を歩く日数(1)

ところで、トゲアリの女王アリは、交尾後地上を歩いているのですが、その日歩いている女王アリは、その日に結婚飛行を終えた女王アリなのでしょうか。午前中の大体同じ時間帯でも、日によって採集できる女王アリの数には大きな差があります。天候により、結婚飛行が行われたり、行われなかったりする日があると思うのですが、それでも、わずかながら地上を歩いている女王アリがいるのです。

クロオオアリの女王アリの場合、結婚飛行は夕刻頃行われ、通常は日が暮れる頃には穴を掘り始めて、土の中に入っていきます。ですが、中には、穴を掘る場所を探し続けたり、何らかの事情で穴掘りを途中であきらめたりして、次の日も歩き続けている女王アリもいます。このような日をまたいて歩いている女王アリは、途中でいろんな危険に出会ってよく怪我をしているものです。(トゲアリの女王アリの場合、少量見つける際も、怪我をしている女王アリはほぼありませんが、これは、トゲアリの女王アリは敵に襲われても怪我をしにくい体つきをしているからだと考えます。)

私は、予てから、トゲアリの女王アリは、交尾後何日か地上を歩いているのではないかと考えていました。いつ採集しても怪我が少ないことについては、既述のように説明できます。交尾後何日か地上を歩いていると考えるのは、他のアリと違って、トゲアリの女王アリの場合は、自分で巣穴を掘ったり、既成の空間を巣にしたりしないので、巣となる場所(寄生する巣)を探さなくてはならず、それに時間を要するからです。

そこで、この仮説を検証することにしました。地上を歩いている個体を識別するために、カー用品の小さな刷毛付きのタッチペンペンキを使いました。

9月12日、まずは、トゲアリの女王アリを捕まえずに歩いているところをマーキングすることができるかやってみました。

1例目 腹部に上手にマーキングできました

1例目 腹部に上手にマーキングできました

2例目 ペンキを付けすぎてしまいました

2例目 ペンキを付け過ぎてしまいました 苦しんでいました

このようにマーキングはできることがわかりましたが、マーキングすることで死んでしまうようなら、仮説を検証することにはなりませんので、ペンキを付けすぎたトゲアリは持ち帰り、様子を見ることにしました。このトゲアリは、長生きしていて、9月25日現在も生きています。

9月13日には、早朝に5匹のトゲアリの女王アリにマーキングしました。

M1

M1

M2

M2

M3

M3

M4

M4

M5

M5

つづく

トゲアリの結婚飛行に出会いたくて(7)

9月16日は、朝の8時少し前から観察に出かけました。1時間強留まりましたが、この間にトゲアリの女王アリを24匹採集し、別の25匹にペンキでマーキングしました。つまり、この日の朝は大量に女王アリが歩いていたのです。
このことから、16日に結婚飛行が行われたと考えました。
そこで、このことを確かめるために、次の17日の早朝に観察に出かけました。
道とは反対側のB巣の巣口を見ると雄アリが1匹いましたが、その1匹だけのようでした。そして、1分後には、その雄アリも巣の中に入ったらしく、羽アリは見当たりませんでした。

4時59分撮影 雄アリが1匹いた

4時59分撮影 雄アリが1匹いた

5時ちょうど撮影 1分後には羽アリは見当たらなかった

5時ちょうど撮影 1分後には羽アリは見当たらなかった

これは、明らかに13日の早朝の様子とは違います。やはり、結婚飛行は終わってしまったようです。
C巣の様子を見てみると、その時は気付きませんでしたが、写真には羽アリが1匹写っていました。けれども、この巣も、結婚飛行はもう既に終わっているようです。

C巣 5時38分撮影 よく見ると羽アリが1匹写っていた

C巣 5時38分撮影 よく見ると羽アリが1匹写っていた

今年こそは、トゲアリの結婚飛行を見ようと思い、また見ることは可能だと思って楽しみにしていたのですが、結局のところ、「少しの気のゆるみ」のような次第で、結婚飛行を見ることができませんでした。ですから、トゲアリは1日の時間のいつごろ結婚飛行を行うのかと言う、最も重要な研究テーマには迫るとはできなかったのですが、それでもわかったこともたくさんありました。来年の研究へと繋げたいと思います。

トゲアリの結婚飛行に出会いたくて(6)

ところでC巣の様子ですが、朝を迎えても、ほぼ羽アリの姿を見ることはできませんでした。このことから、この巣では、既に羽アリが飛び立つ日を過ぎてしまったと考えられます。残念なことですが、念願のトゲアリの結婚飛行を見る機会を1つ失ったことになります。

わずかに1から2匹羽アリがいます

4時1分撮影 わずかに1から2匹羽アリがいる

4時17分 この時には羽アリの姿はなかった

4時17分 この時には羽アリの姿はなかった

6時50分 この時も羽アリの姿はない

6時50分 この時も羽アリの姿はない

そして、これ以後も、羽アリの姿は見ませんでした。

 

トゲアリの結婚飛行に出会いたくて(5)

日付が変わって13日(日の出時刻5時37分)は、午前4時頃から観察を始めました。

午前4時台のB巣の様子

道側のB巣の巣口 4時ちょうど撮影 羽アリがたくさんいる

道側のB巣の巣口 4時ちょうど撮影 羽アリがたくさんいる

道側のB巣の巣口 4時23分撮影

道側のB巣の巣口 4時23分撮影 やはり羽アリがたくさんいる

道と反対側のB巣の巣口 4時ちょうど撮影 ここにも羽アリの姿がある

道と反対側のB巣の巣口 4時ちょうど撮影 ここにも羽アリの姿がある

巣口から離れて、下の方へ歩いていく羽アリも見かけました。

4時29分撮影

4時29分撮影

4時32分撮影 樹の根元にも巣口があり、その近くまで下りてきた羽アリ

4時32分撮影 樹の根元にも巣口があり、その近くまで下りてきた羽アリ

午前6時台のB巣の様子

6時38分撮影 日の出から1時間が経っている

6時38分撮影 日の出から1時間が経っている

6時55分撮影 羽アリがたくさん見られた

6時55分撮影 羽アリがたくさん見られた

ちなみにB巣では5時台も羽アリが出ていました。

午前7時台・8時の様子

7時19分撮影 少なくなったが、まだ羽アリの姿があった

7時19分撮影 少なくなったが、まだ羽アリの姿があった

8時5分撮影 羽アリはいない

8時5分撮影 羽アリはいない

8時5分撮影 ここにも羽アリはいない

8時5分撮影 ここにも羽アリはいない