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新しいスタイルの簡易な飼育器

創巣期のクロオオアリとムネアカオオアリの飼育用に、新しい飼育器をかなりの数利用しています。

上の写真がその飼育器です。今年はクロオオアリとムネアカオオアリの女王アリを合せて300匹以上採集していましたので、働きアリが生まれてからの飼育器が不足し、大量に必要になっていました。そこで、自作のアクリル板を使っての飼育器作りを諦めて、飼育器本体を安価に購入しようと考えました。百均で探してみると、適当な大きさの容器を見つけました。それは「Seria」で見つけた物で、外寸が81×114×40Hmmで、ポリスチレンでできており、蓋を上から被せるようになっています。
その蓋に径9mmの穴を2ケ所空け、パイプの餌器を差し込みます。このパイプの餌器については、これまでにもこのブログで数回紹介していますが、更に詳しく触れておきます。(以下、創巣期の場合)
パイプはアクリル製で、外径9mm内径6mmで、長さは46mm(長さは容器に応じて任意)です。

端から5mm離れたところから幅1.6mmの切れ込みがある

そして、端から5mm離れたところから幅1.6mmの切れ込みを入れています。

蜜器として利用する時には、この切れ込みがある方にシリコン栓(上径8×下径5×高さ15mm)をします。

切れ込みとシリコン栓の間に微妙にすき間ができる

すると、切れ込みとシリコン栓の間に微妙にすき間ができます。次に、切れ込みの方を下にして蜜をパイプの中に入れます。

蜜を入れているところ

この時、マイクロピペットを使っています。まだ創巣期のコロニーの場合、分量は50μL(マイクロリットル)程度にします。切れ込みがある側面が下方になるようにパイプを斜めに持ち、切れ込みの少し上方の壁面に蜜を付けます。蜜は、切れ込みとシリコン栓の間の微妙なすき間辺りに垂れていきます。

蜜は切れ込みの内側に留まっていて、パイプの外には出てこない

蜜器用の25ホールの架台

パイプの反対側にもシリコン栓をします。この時、シリコン栓をきつくパイプに入れると、蜜が切り込みから出てくる場合があるので、緩めに栓をしてもかまいません。そもそもシリコン栓を上方にしなくても、蜜器としては支障がないのですが(この蜜の分量の場合は、大気圧を利用していないので)、特に創巣期のオオアリの働きアリは小さいので、切れ込みからパイプの中に入ることができ、シリコン栓をしていないと逃げ出してしまうことがあるのです。そのために、栓をします。

切れ込みに頭部を突っ込んで蜜を吸っているところ

次に、水器として利用する時には、初めに切れ込みとは反対側にシリコン栓をします。それをシリコン栓の方を下にして水器用の架台に並べます。その一つ一つのパイプの中に水を入れていきます。

水を入れたパイプ

その水の分量ですが、0.8mLが適量です。(内径が6mmのバイプの場合、長さが46mmの時、ほぼ1.3mLの容積があります。ところが両端に栓をしますので、その箇所のパイプ内が全てシリコン栓で埋まるとすると、パイプの長さは35.36mm相当になります)
水を入れた後は、今度はしっかりとシリコン栓をします。

しっかりシリコン栓をしておく

少し空気が残る程度になる

パイプの上方に気泡ができます。飼育器に設置する時には、切れ込みの方を下にします。この時、ただ上下を反対にしただけでは、気泡は切れ込みのところに留まったままになりますので、パイプに少し振動などを与えて、気泡を反対端の上方に移動させておきます。切れ込みを下方にしても水が切れ込みから出てこないのは、大気圧によります。試しに上方のシリコン栓を外すと、下方の切れ込みから水が流れ出てしまいます。

アクリル管を使った水器・蜜器の長所と短所は次のようです。
長所
○ 飼育器を開け閉めすることなく、穴から差し入れ・交換することができる。アリが飛び出す可能性が極めて低い。
○ 水が汚れない。
○ 溺死しない。
短所
○ パイプ内の空気が気温によって膨張することにより、水や蜜が切れ込みから漏れることがある。特に蜜に食べ残しがあると飼育器内が汚れる可能性がある。(蜜は少なめに与えるとよい)
○ 切れ込みからパイプの中に入って蜜を吸った場合、腹部が膨れるのでパイプの中から出られなくなった個体があった。

※補説:冒頭の写真の飼育器には土を入れていますが、飼育に土が必要なわけではありません。通常は、土なしで飼育することをお奨めします。