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2月の地中の温度

昨年の8月23日と今年の1月26日に引き続き、2月17日にも地中の温度を測りました。この度は、地中50cmを新たに付け加え、25cmと比較しました。
ところで、地中の温度に関するデータは、「地中温度等に関する資料」(農業気象資料第3号 1982)に掲載されています。このデータは、全国を網羅していて、古くは1931年から取られています。岡山では、やはり古いもので1931年から観測されていますが、残念なことに最も新しいものでも1970年止まりです。そのデータを引用しておきます。

岡山 地中の温度

岡山県のどこで観測したものか、また、どのような条件の場所で観測されたものかは分かりませんでした。

この度の観測は、前回2回と同じ場所(南東向きの斜面の芝生が生えている場所)で、これまでと同様に熱電対Kタイプのデジタル温度計を使っています。センサプローブを地面に差し込む際は、プローブよりも少し径の太い金属棒で、プローブの長さよりも5cm短く地中に穴を空け、その穴にプローブを長さ一杯に差し込みます。また、直射日光の影響を受けないようにするため、観測直前まで、段ボール箱で観測機器を覆っています。

8時 地中25cmで9.7℃ 50cm出10.1℃ 地面付近の気温4.1℃

12時 地中25cmで9.3℃ 50cm出10.3℃ 地面付近の気温13.6℃

16時 地中25cmで9.3℃ 50cm出9.9℃ 地面付近の気温10.3℃

地中の温度については、終日ほとんど変化は見られず、多くて0.4℃の差がありますが、誤差の範囲内かも知れません。
観測の結果からは、極僅かですが、この時期は25cmの深さよりも50cmの深さの方が温度が高くなっています。この結果は、「地中温度等に関する資料」と同じ傾向ですが、数値にはかなり隔たりがあります。

ところで、そもそも2つの熱電対のセンサプローグ間には、誤差はないのでしょうか。そこで、ビーカーに水道水を入れ、25cm(T1)と50cm(T2)のプローブをつけて、誤差を確かめました。気温は13.0℃前後です。
最初はT1が9.9℃、T2が10.9℃でしたが、時間が経つにつれT1の数値が徐々に上がり(気温の影響と思われる)、およそ20分後に10.7℃になりました。T2は逆に数値がとても緩やかに下がり、20分後にはT1と同じ10.7℃になりました。そして、およそ30分後には、共に10.9℃になりました。つまり、20分程度経過すると、両プローブの誤差がなくなることが分かりました。
実際、最初の8時に測定した際も、ほぼ30分ほど前にプローグを地中に差し込みましたので、8時の地中の温度とそれ以後の12時と16時の温度も、絶対値には誤差があるかもしれないとしても※、相対的にはほぼ正確に誤差が測定できたことになります。

50cm以上の深いところの温度を測る機器は持ち合わせていませんので、それ以上に深い地中の温度は、「地中温度等に関する資料」からの推察するしかありません。もし、自宅の庭に棲むクロオオアリの巣が1m程深い所まで広がっているとすれば、冬の巣の中の環境は、50cmよりも約2℃ほど高い12℃前後なのかも知れません。

絶対値には誤差があるかもしれないとしても
温度測定精度:クラス1(−40℃以上375℃未満で ±1.5℃)

トゲアリの直短的社会寄生 9月26日その後

トゲアリの直短的社会寄生の様子のその後(9月26日以降)ですが、9月30日に、例2(S/N:T17002)のトゲアリの女王アリ(昨年9月11日採集の新女王アリ)が、トゲアリの働きアリ28匹を残して死んでしまいました。この例2では、22日に、女王アリが働きアリから攻撃を受ける場面がありました。

10月10日には、新たに2例の直短寄生を試みました。そのトゲアリの女王アリは、シリアル番号T130913-01とT150828-06です。この2匹は、一つのコロニーで共存していました。その経緯については、2015年10月17日のブログ「2匹のトゲアリが寄生」で触れています。その後、2017年8月1日には働きアリが3匹死んで4匹になり、同年8月8日には2匹死んで2匹になり、9月7日には1匹死んで1匹になり、ついに10月1日には残っていた1匹の働きアリも死んでしまい、女王アリが2匹だけになっていました。この2匹の寄生を例7・例8としました(2匹はシリアル番号は分かっていますが、区別ができないため、例7・8の個体の特定はできない)。
例7(左後脚不自由)では、初めに一緒にした1匹目の働きアリの方が逃げていましたが、2匹目と喧嘩になり、3匹目を加えると攻撃されて女王アリが死にかけました。そこで、女王アリをいったん取り出しました。2日後の12日には、争いは見られなくなっていました。
例8では、働きアリが女王アリを攻撃し、女王アリが逃げていました。例7・8共に、例6の場合(新女王アリではなく、コロニーを既に作ったことがある女王アリ。「直短寄生のその後と旧女王アリの寄生」参照)と同様に、化粧行為は見られませんでした。
この2例の女王アリは、いずれも5匹の働きアリを残して、5日後の15日に死んでしまいました。

11月11日になって、例1の女王アリ(知り合いの方からいただいた女王アリ)が死にました。
年を越し、2月12日、例5のコロニーから女王アリの姿が消えました。死体も食べられた跡もなく、なぜいなくなったのかを特定できませんでした。

例5を含めると、2月12日現在、例3・4・5・6を飼育中です。それぞれのコロニーの働きアリの数は、順に18・19・21・10匹です。また、これまでに死んでいった働きアリの数と、加えた働きアリの数は次のようになります。

例1(S/N: T17001):死んだ匹数40 加えた匹数54
例2(S/N: T17002):死んだ匹数  0 加えた匹数31
例3(S/N: T17003):死んだ匹数31 加えた匹数57
例4(S/N: T17004):死んだ匹数49 加えた匹数64
例5(S/N: T17005):死んだ匹数33 加えた匹数54
例6(S/N: T17006):死んだ匹数46 加えた匹数52
例7(S/N: T17007):死んだ匹数  0 加えた匹数  5
例8(S/N: T17008):死んだ匹数  0 加えた匹数  5

長期間コロニーが続いていた例では、死んでいった働きアリがたくさんいたことが分かります。これは、直短寄生が要因と言うよりも、トゲアリの飼育の難しさだろうと考えています。

2月12日撮影 左から例3・4・5・6のコロニー

初めての冬を迎えたクロナガアリの家族

昨年の4月16日に小型の女王アリを自宅の庭で採集しました。その様子については、同日のブログ「小型種の女王アリを採集」で述べています。このブログでは、トビイロシワアリではないかと書きましたが、このブログを見た方からクロナガアリだと教えていただきました。確かに、この女王アリを採集したのが4月ですから、クロナガアリの結婚飛行が「4月下旬から5月の午前中」に行われるという記述(『日本産アリ類図鑑(朝倉書店)』)に一致しています。

S/N:KN170416-01 2月4日撮影

2月4日現在働きアリが5匹います(他に1匹が死んでいました)。
女王アリ採集以降の家族構成は次のようです。

2017年7月4日 働きアリ3匹 蛹2匹 幼虫7匹 卵1個
2017年8月2日 働きアリ5匹 蛹4匹 幼虫・卵有り(数えられなかったため)

現在は蛹も幼虫も卵もありませんから、それらの多くは死んでしまったことになります。
ところで、このコロニーはクロナガアリらしいと分かっていたのですが、餌としては、蜜と昆虫を与えていて、穀物は与えていませんでした。それでも、成虫や蛹や幼虫になったのは、女王アリの体にあった養分で成長したとも考えられます。
もうひとつ、働きアリの数が、死んだ個体も含めて5・6匹だったのですが、この数は、先程引用した『日本産アリ類図鑑』の記述の「飼育下では1年で働きアリが4〜7個体となり」に妙に一致しています。
やがて温かくなったら、穀物類を与えてみようと思います。

種々のアリの幼虫の冬越し

クロオオアリとムネアカオオアリは、幼虫と共に冬越しをします。このことは人工巣での観察で以前からわかっていたことですが、他の種も含めて冬越しの様子を記録しておきます。

2011年採集のクロオオアリ S/N:B110608-04

同上

上の2つの写真に写っているのは、2011年の6月に長野県で採集した新女王アリのコロニーです。かなりの大家族になっていて、人工巣アンテシェルフ2個を連結して飼育しています。幼生虫は幼虫のみで、しかもかなり小さいことが分かります。

2015年11月4日に、自宅の庭の小型の電柱についていた配電盤の中から採集した仮称「ミシマアリ」(S/N:F151104)は、その後コロニーが大きくなっています。

左上方に女王アリが写っている 胸部に翅の付け根の跡があるので女王アリだと分かる

幼虫が見られる

この「ミシマアリ」の場合も、幼生虫の内、幼虫のみが越冬していることが分かります。

下の写真は、2015年5月2日に、ブドウの枯れた幹の中にいたところを採集したシリアゲアリのコロニー(S/N:S150502)です。

写真には幼虫が3匹写っている

大家族になった時期もありましたが、飼育器に小さなすき間ができた時に、出ていって戻らなかったアリもいて、今年の冬はさほど大きなコロニーではありません。越冬している幼生虫は少なく、幼虫のみです。

既に分かっているムネアカオオアリも含めれば、これら4種のアリでは、越冬する幼生虫は幼虫のみのようです。