月別アーカイブ: 2018年3月

ムネアカオオアリの同種間共存

クロオオアリの同種間共存の追試と同時に、ムネアカオオアリの同種間共存の追試も行いました。

R15100はムネアカオオアリのコロニーで、2015年5月27日に長野県で採集した女王アリのコロニーです。この女王アリは、右側の後翅が付いたままになっていましたが、子育ては順調で、2016年6月22日時点では、働きアリが38匹になっていました。
さて、この女王アリは、今年の3月19日に働きアリ8匹を残して死んでいました。そこで、このコロニーの中に、RH170520-05のムネアカオオアリの単独女王アリを入れました。この女王アリは、昨年の5月20日にヒルゼン高原センター周辺で採集した女王アリで、卵や幼虫や繭を持つことはありましたが、一度も成虫まで育てることができなかった女王アリです。

女王アリは巣の中心の部屋(下階)に入っていた 3月20日撮影

別の部屋(上階)にも働きアリがいた 3月20日撮影

上の2つの写真は、翌日の20日の様子です。働きアリは2つの部屋に分かれていますが、女王アリとの間に争いは見られませんでした。22日には、下階の部屋に働きアリが3匹と女王アリ、上階の部屋に働きアリが4匹いて、働きアリが下階の部屋で1匹死んでいました。28日現在、更に働きアリが1匹死んでいて、生きている働きアリは全部で6匹になりましたが、女王アリと働きアリの間に争いは見られません。断定はできませんが、死んだ2匹の働きアリは、女王アリに殺されたのではないと考えています。

以上から、現時点で言えることは次のようになります。

既に女王アリを失っているムネアカオオアリのコロニーの働きアリと、異年代(2年若い)のムネアカオオアリの単独女王アリは、単独女王アリから見て創巣の翌年の3月時点では共存できることがある。

クロオオアリの同種間共存(2)

ケース2:
BH170521-023は、昨年の5月21日にヒルゼン高原センター周辺で採集した女王アリのコロニーです。昨年の7月31日には働きアリが13匹になり、順調にコロニーが大きくなっていましたが、今年の3月19日には、働きアリ15匹を残して女王アリが死んでいました。幼生虫はいませんでした。
3月19日、このコロニーの中へ、BK170530-133の単独女王アリを入れました。BK170530-133は、昨年の5月30日に長野県で採集した女王アリのコロニーで、今年の3月8日には、働きアリ11匹が死んでいて、女王アリのみになっていました。

BH170521-023のコンクリート製人工巣の巣穴の中ではない上方の様子 この度入れた女王アリの周りに働きアリが集まっている 3月20日撮影

BH170521-023の巣の中の様子 元々この部屋に働きアリが集まっていた 死んだ女王アリが見える 3月20日撮影

BH170521-023のコンクリート製人工巣の中に入れられた単独女王アリは、働きアリがいる巣穴の中には入らず、地上部に当たる場所にとどまっていました。ですから、単独女王アリを入れた当日、ケース1で見られたような女王アリが体を働きアリから舐められるという行動は観察できませんでした。
上の2つの写真は、その翌日の20日の撮影です。地上部に留まっている女王アリの周りには、働きアリが8匹いました。写真撮影した時点では、女王アリは体を舐められてはいません。また、元々全ての働きアリがいた巣穴の中は、働きアリが7匹になっていました。
そして、3月28日現在、働きアリ・女王アリ共に生き続けています。

以上から、現時点で言えることは次のようになります。

既に女王アリを失っているクロオオアリのコロニーの働きアリと、同年代のクロオオアリの単独女王アリは、創巣の翌年の3月時点では共存できることがある。

クロオオアリの同種間共存(1)

これまでも幾度か検証してきているクロオオアリの同種間の共存について、追試を行いました。

ケース1:
昨年5月21日の早朝に、ヒルゼン高原センター周辺で採集したクロオオアリの女王アリ(BH170521-024)が、今年の3月11日に死んでいました。幼生虫はなしで、働きアリは11匹いました。同日の11日、この飼育器の中へ、BK170530-074の働きアリ3匹とBK170530-172の働きアリ5匹(いずれも今年3月11日女王アリ死)を入れました。更に、3月19日には、女王アリが当日死んでいたBK170530-113の働きアリ3匹と幼虫2匹を入れました。そこへ、BK170530-122の単独女王アリを加えました。
以上は全て昨年2017年に女王アリを採集したコロニーです。また、BK170530-122は、昨年7月14日には女王アリが働きアリを1匹食べた跡があり、7月31日には働きアリが1匹死に、8月15日には幼虫が1匹と卵が5個のみになっています。そして、8月24日には、働きアリも幼生虫もなく、女王アリのみになっていました。
下の動画は、BK170530-122の単独女王アリを入れた3月19日の様子です。

動画 5分間 3月19日撮影

動画では、女王アリの周りにたくさんの働きアリが集まり、盛んに女王アリの体を舐めています。この行為は、あるコロニーに別のコロニーの働きアリを入れた場合によく見られます。入り込んだ方の働きアリはほとんど動かず、その巣の複数の働きアリが、取り囲んで入り込んだ働きアリの体を舐めます。多くの場合、入り込んだ働きアリはやがて死んでいます。また、動画では、女王アリと働きアリの間でしばしば栄養交換を行っています。断言はできませんが、2匹の働きアリが同時に女王アリと栄養交換をしているので、おそらく女王アリの方が液状のものを働きアリに与えているようです。
次の写真は3日後の様子です。

3月22日撮影

そして、3月28日現在、働きアリ・女王アリ共に生き続けています。

以上から、現時点で言えることは次の2点になります。
① 既に女王アリを失っている、同年代の複数のクロオオアリのコロニーの働きアリ同士は、創巣の翌年の3月時点では共存できることがある。
② 上記①の共存コロニーと、同年代のクロオオアリの単独女王アリは、創巣の翌年の3月時点では共存できることがある。

クロオオアリが出てきた 2018年春

自宅の庭のクロオオアリが地上に出てきました。B巣の近くです。

初めに見つけたのはこの1匹の働きアリだった 11時30分撮影

昨年は、3月26日に初めて地上でクロオオアリを見かけましたので、1日違いです。昨日から急に温かくなり、今日は岡山市で最高気温が19.5℃まで上がりました。また、今日、岡山気象台は桜の開花宣言をしました。
午後、再びB巣の近くに行って見ると、はやりクロオオアリの姿がありました。そこで、巣口がどこにあるかを知るために、蜜を与えることにしました。散水ホースを伝って歩いているアリがいたので、進行方向のすぐ前に蜜をたらしました。すると躊躇なく蜜を吸い始めました。

蜜を吸い始めたクロオオアリ 14時33分撮影

腹部が膨れてきた 14時35分撮影

やがて、巣へと帰り始めました。その進む方向は、昨年巣口があった方向ですが、迷いながら歩いていて、なかなか巣にたどり着けないでいました。一面が芝地であるため、巣穴が露出していないのも一因になっているのかも知れません。結局、芝の中に姿が消えましたが、巣穴の位置は、はっきりとはしませんでした。
別の働きアリもいて、同じく散水ホースを伝って歩いていたので、そこにも蜜をたらしました。

14時45分撮影

同時刻に、散水ホースの上に更に2匹のクロオオアリがいました。

後方に見える黒いのが測量杭 14時45分撮影

その場所は、先程、蜜器に蜜を入れて載せておいた測量杭のすぐ横でした。測量杭に上って行くか見ていると、やがて上りかけました。

測量杭を上るクロオオアリ 14時46分撮影

ですが、途中で引っ返しましたので、蜜を見つけはしませんでした。
しかし、やがてもう一匹の方のアリが測量杭を上り、蜜を吸い始めました。

14時52分撮影

それからしばらくすると、この蜜器に集まるアリが多くなりました。

15時4分撮影

その後も蜜を見つけたアリが仲間を呼んできたのですが、その様子を見ていると、以前にも何度も触れているように、蜜を見つけて巣に戻る時は、迷いがちに戻っていき、再び巣から出て蜜のある場所に行く時は、ほとんど迷いなく歩いて行きます。ここで特筆すべきは、蜜のある場所に行く時にだけ、数歩歩いては、一瞬立ち止まって腹部の先を地面等に付けながら歩くことです。それを繰り返しながら進むので、先頭のアリだけですが、リズミカルに歩いているように見えます。ちなみに、後を着いて行くアリは、腹部の先を地面等に付けるようなことはしません。

先頭のアリが腹部を曲げているところ 15時15分撮影

同じく先頭のアリが腹部を曲げているところ 15時15分撮影

ところで、巣口の位置ですが、クロオオアリの出入りが多くなったので、分かってきました。昨年の終わりの頃の巣口は、B巣には2箇所あり、82cm離れたところにありました。

昨年末は、白のビニールテープを貼っている竹串のところに巣口があった

今年の巣口は、少しずれた所にありました。

左の枯葉の下端に巣穴がある

竹串のすぐ横に巣穴がある 巣穴に入ろうとするクロオオアリの腹部が見えている

更にクロオオアリが増えていた 15時35分撮影

夜の9時頃に蜜器を見てみると、蜜は完全に無くなっていました。クロオオアリの姿は、蜜器にも地面にもありませんでした。

栄養交換と落とし物

クロオオアリの栄養交換の様子を撮影しました。

写真 クロオオアリの栄養交換の様子  2018年3月8日、Nikon D4で撮影

動画 クロオオアリの栄養交換の様子 3分間 2018年3月8日、Nikon D4で撮影

ところで、飼育器の床に敷いているコルクの板に、蜜らしきものが複数落ちていました。

床にこのような蜜滴が複数落ちていた

栄養交換に伴って、どこかのタイミングで床に落ちたようです。この蜜滴を吸おうとする働きアリは見かけませんでした。

異種間で共生するクロオオアリとムネアカオオアリ

B130605+R(旧S/N:B131015)の場合
現在のこのコロニーの元々のコロニーは、2013年の6月5日に採集したクロオオアリの女王アリのコロニーでした。この女王アリは、繭からの羽化を介助する能力がなく、記録によると少なくとも翌年の6月29日までは働きアリはいませんでした。その後、記録が途切れますが、2016年5月14日にはクロオオアリの働きアリが3匹、ムネアカオオアリの働きアリが4匹になります。働きアリがいるのは、これも記録はないので成虫や幼生虫がどの程度外部から導入されたのか分かりませんが、外部から導入されたことは確かです。同年の8月26日には、クロオオアリが19匹、ムネアカオオアリが2匹になっています。その後、同年の12月1日には、クロオオアリ15匹、ムネアカオオアリ1匹の中へ、ムネアカオオアリ(S/N:R15066)の幼虫4匹を加えています。翌年の2017年3月14日には、女王アリが死んでいて、働きアリは前年と同数でした。それからほぼ1年が経ち、2018年の3月8日、クロオオアリの働きアリ11匹とムネアカオオアリの働きアリ1匹が共存しています。

右の赤みを帯びているのがムネアカオオアリ

ムネアカオオアリとクロオオアリが栄養交換を行っている

R11055+070の場合
このコロニーは、2011年7月27日に採集した2匹のムネアカオオアリの女王アリのコロニーを、2015年11月29日に合併したものです。
S/N:SIMSMA01055(働きアリ4匹 幼生虫無 黒みの強い女王アリ)
S/N:SIMSMA01070(働きアリ8匹 幼生虫無 女王アリ無し)
2016年6月22日には、ムネアカオオアリの合併巣の生まれたばかりのムネアカオオアリの働きアリを1匹と、ムネアカオオアリのコロニー(S/N:R120614)の繭を1個加えました。その1週間後の29日、ムネアカオオアリのコロニー(S/N:R120614-05)の繭3個幼虫17匹卵9個を入れ、翌日には同じコロニーの幼生虫を多数入れています。同年7月5日には、クロオオアリの働きアリが1匹(記録にはありませんが、クロオオアリの幼生虫を加えていたと考えられます)とムネアカオオアリの働きアリが2匹になりました。同年8月25日には、ムネアカオオアリが4匹いて、S/N:R15071のコロニーよりムネアカオオアリの働きアリ12匹と幼虫29匹を加えています。また、同日、S/N:B15044+Rのムネアカオオアリの働きアリ1匹(攻撃され1時間後馴染む)とクロオオアリの働きアリ3匹(翌朝までに死亡)、繭4個、幼虫6個を加えました。翌朝、ムネアカオオアリの働きアリが2匹、瀕死の状態でした。同年の11月1日にはムネアカオオアリの女王アリが死んでいて、ムネアカオオアリが8匹、クロオオアリが2匹、幼虫が10匹前後になります。そして、同月30日には、ムネアカオオアリが4匹、クロオオアリが2匹になり、その翌年の2017年3月14日には、ムネアカオオアリが7匹、クロオオアリが2匹になります。それからほぼ1年後の2018年3月8日現在、ムネアカオオアリの働きアリ3匹とクロオオアリの働きアリ1匹が共存しています。

今ではたった4匹だが、種が異なっても仲良く暮らしている

共生に関するブログ一覧

クロオオアリとムネアカオオアリの同種間の共生
コロニー同士の合併 共存 その1  2015年11月13日
コロニー同士の合併 共存 その2  2015年11月13日
クロオオアリの合同コロニーに同種の女王アリを入れて 結果  2016年05月10日
クロオオアリの複数の女王アリは同居できるか 結果  2016年05月10日
ムネアカオオアリの女王アリの同居  2016年05月10日
ムネアカオオアリの合併コロニーの半年後  2016年05月10日

クロオオアリとムネアカオオアリの異種間の共生
異種のアリ同士は仲良くできるか  2013年04月16日
単独女王アリと異種間の養子縁組?  2014年06月29日
2種のオオアリが混在するコロニー  2014年07月03日
2種のオオアリの家族  2014年09月01日
ここにも異種合同の家族が  2015年07月13日
現有のクロ・ムネアカ共存コロニー  2016年05月14日
ムネアカオオアリはクロオオアリの卵を受け入れるか?  2016年06月16日

トゲアリの共生
トゲアリの家族は他家の子どもを受け入れるか  2014年09月02日
トゲアリのコロニーの遺族同士の合併・共存は可能か  2016年05月11日
トゲアリの女王アリの共存 その後  2016年05月11日
トゲアリの2つのコロニーを合併  2016年06月22日

クロナガアリ 穀物を食べた

2月4日のブログ「初めての冬を迎えたクロナガアリの家族」で、「やがて温かくなったら、穀物類を与えてみようと思います」と書きましたが、2月22日にアワ・キビ・玄カナリーシード・ヒエの4種の種をそれぞれ1個ずつ与えました。
3月8日、その内の一つの種が食べられているのに気づきました。

明らかに食べられたことがわかる

この種は、玄カナリーシードではないことは分かりますが、私の今の知識では、アワなのかキビなのかヒエなのかはわかりません。けれどもこれで、このアリは確かにクロナガアリであることがはっきりしました。
なお、この日、1匹の働きアリが死んでいましたので、働きアリは4匹になりました。

ミニアンテシェルフ(飼育器)を開発

アンテシェルフシリーズの小型人工巣を作りました。クロオオアリやムネアカオオアリ、トゲアリなどの大型のアリ用です。
巣内の床の総面積は、アンテシェルフが801平方センチメートル(約28.3cm平方の広さ)、リトルアンテシェルフが400.05平方センチメートル(約20cm平方の広さ)に対して、ミニアンテシェルフは174.15平方センチメートル(約13.2cm平方の広さ)です。
棚は3段あり、最上階は活動室と居室を兼ねます。

ミニアンテシェルフ

このミニアンテシェルフの特色の一つは、給餌器として大気圧式を採用していることです。蜜器と水器として使います。両者は同一仕様のものです。
当研究会製作の他の人工巣と繋げる端子はありませんので、拡張性はないのですが、創巣期から2〜3年は飼育できそうです。
詳しくは、こちらをご覧下さい。