月別アーカイブ: 2018年8月

特別仕様の人工巣2つ

今年の6月5日のブログ「アンテグラウンドⅠ型」で、2つのコロニーをアンテグラウンドに繋げたことを書きましたが、その後、S/N:B110608-07のクロオオアリのコロニー(2011年6月8日に新女王アリを採集)の方は、アンテグラウンドから外しました。2つのコロニーが混在すると、腹部を噛みちぎられる等の事象が度々見られたからでした。今は、コンクリート人工巣のクロオオアリのコロニーのS/N:B15006(2015年5月27日に新女王アリを採集)のみをアンテグラウンドⅠ型に繋げています。
そのB15006はかなり個体数が多くなり、コンクリート人工巣の中で、密集するようになりましたので、人工巣を拡張する必要を感じていました。そこで、様々に巣の拡張方法を考えたのですが、最終的にはアンテシェルフ型の人工巣にすることにしました。ただ、特別仕様としました。
底面を含めると17段からなり、1段の広さは 29.1cm×4.5cm=130.95㎠あります。高さは42.8cmあり、台座を含まない本体の横幅は30.7cm、奥行きは5.1cmあります。最下段に2箇所、最上段に1箇所出入り口用に穴があり、パイプが差し込まれています。この特別仕様のアンテシェルフには活動室は必要ではないため、最上段も他の段と同様の作りになっています。7月24日に完成しました。

17段2226カスタムメイドアンテシェルフ 8月21日撮影

この特別仕様のアンテシェルフを「17段2226カスタムメイドアンテシェルフ」と名付けることにします(2226とは17段の床面積の総和 単位㎠)。この17段2226カスタムメイドアンテシェルフは、アンテグラウンドⅠ型とコンクリート製人工巣の中間に繋いでいます。
カスタムメイドアンテシェルフを設置して1ヶ月程経ちますが、アリたちは下方の3段を利用しています。幼生虫は運び込んでなく、まだ、居住スペースとしては十分には利用されていないようです。

別のクロオオアリのコロニーになりますが、もう一つ人工巣を拡張しました。そのコロニーは、S/N:B120614-86(2012年6月14日に新女王アリを採集)で、真砂土を使った人工巣であるアンテネストで飼育し、後からアンテネストと繋げていました。このコロニーも、個体数が多くなり密集するようになっていましたので、人工巣を拡張する必要がありました。
カスタムメイドアンテシェルフとは、発想を変えて、そのアンテシェルフを作った3日後に百円shopで購入したケースを使って人工巣を作りました。Seriaで購入したもので、商品名は「Clear Case」です。ポリスチレン製でアクリルと比べれば、耐久性や硬度に問題がありそうですが、短時間で製作できそうです。「Clear Case」は重ね置きができるように設計されていて、大きさにバリエーションがあります。その中で最も底面積が広いケースを使うことにしました。そのケースも深さが2種類あり、内法の高さが14mmのものと37mmのものがあります。この2種を組み合わせて人工巣を作ります。

中央:百円shop購入のケースで作った人工巣 左:アンテシェルフ 8月21日撮影

最下段と上から2段目に深い方のケースを置き、その間に浅い方のケースを重ねます。最上段には浅いケースを重ね、蓋とします。ケース同士は、ただ重ねるだけで、貼り付けてはいません。こういった重ね方をすることで、後から中段に浅いケースを容易に追加することができます。中間の浅いケースと上方の深いケースの底には、長辺側の両端の中央に径9.2mmの穴を空けて、行き来できるようにします。最上段の浅いケースには、長辺側の両端の中央に空けた径9.2mmの穴の他に、中央に4cm間隔で4つの径9.2mmの穴を空けておきます。この4つの穴には、大気圧式給餌器を差し込みます。こうすることで、この上方の深いケースは給餌場になります(最上段の浅いケースの両端の2つの穴からは、シリコン栓を外して昆虫などを入れることができます)。最下層のケースには、他の人工巣と繋ぐための穴があり、アクリル製のパイプが差し込まれています。(そのパイプを穴に固定するために、アクリサンデー社のアクリル接着剤を使いましたが、ポリスチレンも溶解したらしく、アクリルと接着できました)
この百金のケースの人工巣にたくさんの働きアリがやって来ていますが、これまでに幼生虫は運び込まれていません。また、最下層のケースはごみ置き場になっていて、繭の殻などが置かれています。この百金ケース製の人工巣は、17段2226カスタムメイドアンテシェルフと同様、まだ、居住スペースとしては十分には利用されていないようです。

2018年 クロオオアリの新女王アリの死亡率と子育て成功率

2018年5月に採集したクロオオアリの女王アリの死亡率と子育て成功率をまとめてみました。これまでも報告してきたムネアカオオアリの女王アリの死亡率と子育て成功率については、今年は採集できた女王アリの個体数が少なかったため、データ化していません。
ここで言う子育て成功率とは、ある決まった定義はないのですが、「ある期間までに働きアリが1匹でも誕生したコロニーの割合」とします。

サンプル:
5月15日 蒜山高原採集 クロオオアリ32匹

飼育環境:
◎ 小型のふた付き透明カップの中にカット綿を敷き、常に湿った状態(結露などで透明カップの側面等が湿る程度)を保ちます。
◎ 糖分等の餌は与えず、水だけを摂取する状態にしておきます。
◎室温での飼育となります。

調査日:7月31日
死亡した個体数 3匹
子育てができなかった個体数 5匹
死亡率:9%〈3匹÷32匹×100〉 昨年12%
子育て成功率(死亡した個体数を含む):75%〈(32匹−(3匹+5匹))÷32匹×100〉 昨年72%
子育て成功率(死亡した個体数は含まない):83%〈((32匹−3匹)-5匹)÷(32匹-3匹)×100〉 昨年82%

これまでの子育て成功率の定義を変えないために、今年も「ある期間までに働きアリが1匹でも誕生したコロニーの割合」としましたが、今年の場合は、働きアリが少ないコロニーはありませんでした。子育てに成功した24のコロニーは、いずれも下の写真のようです。

子育てが成功したコロニーの例 8月20日撮影