日別アーカイブ: 2018年11月28日

クリの木に他のコロニーから来訪

クリの木へアブラムシ目当てにB巣からクロオオアリがやって来ていたことは分かっていましたが、C巣からもクロオオアリがやって来ていました。C巣からクリの木までは、かなりの距離があります。

お目当てのクリの木 西方向で撮影

上の写真を撮影した地点から東方向を撮影 フェンス下には散水ホースが伸びている

更に東方向を撮影 散水ホースを丸めている箇所より更に奥(東)の方へとアリの道は続く

写真中央辺りのフェンスの下からほぼ直角に手前へとアリの道が続く 手前中央踏み石のすぐ向こうにC巣の巣穴がある

この間のアリの道のりは、計測すると23mありました。直線距離では16.8mです。かつて観察したアリの道「クロオオアリの行動範囲とアリの『高速道路』」程ではありませんが、歩くしかない小さな昆虫にとっては、やはりかなりの距離です。直線距離の方がもちろん近いのですが、その間は芝が生えています。ですから、ここでも「高速道路」を利用していました。「クロオオアリの行動範囲とアリの『高速道路』」では、クロオオアリたちはコンクリートブロックを高速道路として利用していましたが、今回はコンクリートブロックの上に載せている散水ホースを高速道路として利用していました。

ところで、同じクリの木で、2つのコロニーがアブラムシの甘露を集めている場合、同じ箇所のアブラムシの群塊を利用しているのでしょうか。ふと、そんなことが気になり、クリの木を観察していると、これまでとは違う箇所でもアブラムシの群塊を見つけました。

そこで、C巣から出てきた往路のクロオオアリの後を追ったり、アブラムシの群塊から帰路につくクロオオアリを追ったりしていましたが、途中で追跡できなくなったりしている内に、小雨が降ってきました。結局、この疑問には答えられないまま観察を打ち切りました。

1時間の巣の出入り クロオオアリ

11月28日、クロオオアリの活動の様子を巣の出入りで調べました。対象としたクロオオアリの巣は、庭の中では最もコロニーの規模が大きいB巣です。この日は、曇で気温は観察中の時間帯で14℃前後でした。観察を開始したのは午前9時34分でその時刻から1時間の記録です。

赤丸は巣穴 空色の丸は帰路のアリ 桃色の丸は往路のアリ

巣から出て行った数 36匹
巣に戻ってきた数  27匹
ただし、上記の匹数の中には、巣から出て間もなく巣に戻った4匹が含まれています。巣に戻ってきたクロオオアリの腹部は、多くの場合(巣から出て間もなく巣に戻った4匹以外に、明らかに3匹を除いて)膨れていました。蜜を吸って帰ってきたと考えられ、別の観察から、その蜜源は、11月21日のブログ「まだ活動している庭のクロオオアリ」で触れているクリの木のアブラムシが出す甘露であることがわかっています。
ところで、昆虫などのタンパク源は運び込まれませんでした。この時期になると、もうほとんど昆虫の姿は見なくなっていますので、それは当然のことのように思えます。今回の観察は、僅かに1時間でしたのでそれだけで断言はできませんが、この時期、クロオオアリのコロニーが必要としている養分は主に糖分のようです。

※アブラムシの甘露成分について
引用 日本生態学会誌 57:324 – 333(2007)アリ-アブラムシ共生系における今後の展望:内部共生細菌や天敵群集を含めた複合共生系とアブラムシの適応との相互作用 片山 昇(京都大学生態学研究センター)
甘露成分(326ページ)
アブラムシがアリへ提供する甘露の主要な成分は糖と アミノ酸で、その量や成分はアブラムシや寄生する植物 の種類によって異なる。アブラムシが餌として利用する 植物の師管液の主要な成分はショ糖などの糖類で、ア ミノ酸ではアスパラギンとグルタミンが多い(Ziegler 1975;Sasaki et al. 1990;Douglas 2006)。アブラムシは、 師管液中の必要なものを吸収したあと、残りを甘露とし て排泄する。たとえば、師管液中の全アミノ酸濃度は、 約 60 – 200 mM であるが、甘露中のアミノ酸濃度は、師管 液の 30%程度にまで低下する(Douglas 1992;Sasaki and Ishikawa 1995;Liadouze et al. 1996;Febvay et al. 1999; Lohaus and Moeller 2000;Sandström and Moran 2001; Bernays and Klein 2002;Fischer et al. 2002;Wilkinson and Douglas 2003;Hunt et al. 2006)。