月別アーカイブ: 2019年4月

4コロニーの生存を確認

5月26日に、22日と23日に移植したクロオオアリの遮光のための板と外枠にしていた透明ケースを外しました。
22日に「移植」した2つのクロオオアリのコロニーの内、BK17162は、飼育ケースの中で女王アリの死体が見つかりました。働きアリの姿はありませんでした。

女王アリが死亡していた 理由は分からない 10時29分撮影

BK17075を見ると、巣穴から土を運び出している働きアリがいました。

巣を掘っている働きアリ BK17075の巣 10時35分撮影

しばらくして、花壇の岩の上を歩いているクロオオアリを見つけました。体格からして移植したコロニーの働きアリのようです。そこで、岩の上に蜜を垂らし、蜜を飲ませました。やがて帰路についたその働きアリの後を追ってみるとBK17075の穴の中に入っていきました。

蜜を吸って帰ってきたBK17075の働きアリ 10時46分撮影

23日に「移植」した5つのクロオオアリのコロニーの内、BH18006は、飼育ケースも取り除くと、飼育ケースの下に巣穴がありました。

飼育ケースの下に巣穴があった BH18006 10時26分撮影

それから1時間ほど経って見ると、その巣穴を1匹の働きアリが塞いでいるところでした。やがて塞ぎ切ると、自身も巣穴の中へ入ろうとするのですが、すき間がなかなか見つからないようで、かなり苦労している様子でした。それでも何とか体を押し込むようにして巣の中に入っていきました。

比較的大きめの石で巣穴を塞いでいる 巣の中に入っていく直前 11時39分撮影

この日生存が確認できたのは、上記のBK17075・BH18006と、BH18010とBH18018の4コロニーでした。

BH18010 11時04分撮影
BH18018 11時12分撮影

アリはアブラムシを食べるか?

ここでは、カラスノエンドウに付くアブラムシを使います。複数本の茎の先端付近に付いているアブラムシを採集し、冷凍庫で凍死させます。マメアブラムシとソラマメヒゲナガアブラムシが混在しています。

小さめで色が濃いのがマメアブラムシ、大きめで緑色をしているのがソラマメヒゲナガアブラムシ

クロオオアリとトゲアリで調べてみましょう。クロオオアリの場合は、これまでの経験から、アブラムシは食べないだろうと予想できます。
4月24日、アンテグラウンドⅡ型をフィールドにしているトゲアリ(S/N:T140906-40)にアブラムシを与えました。

9時27分撮影

巣へと運んで行きます。

アンテグラウンドⅡと巣とを結ぶシリコンホースの中をアブラムシを咥えて進むトゲアリ

アンテグラウンドⅠ型をフィールドにしているクロオオアリ(S/N:B15006)にアブラムシを与えました。

9時31分撮影

アブラムシを咥えて運び始めましたが、巣口へと結ぶシリコンホースとは反対の方へ進み、アブラムシを置きました。その場所は、このクロオオアリのコロニーがごみ捨て場にしている場所です。

もう何匹もアブラムシがゴミとして捨てられている 9時35分撮影

それから2時間以上が経つと、アブラムシを入れて与えた容器の中のアブラムシは全て運び出されていました。

トゲアリの場合 11時44分撮影
クロオオアリの場合 11時44分撮影

トゲアリでは、アンテグラウンドⅡ型の中にアブラムシは残っていませんでしたが、クロオオアリでは、アンテグラウンドⅠ型の中にたくさんのアブラムシが捨てられていました。

アンテグラウンドⅠ型の中に捨てられたアブラムシ 11時45分撮影

以上の観察から、クロオオアリはカラスノエンドウに付く2種のアブラムシは食べませんが、トゲアリはこの2種のアブラムシを食べると考えられます。ただ、トゲアリの一つのコロニーだけの観察では、一般化するには不十分ですから、トゲアリの他のコロニー(S/N:T130921-09)で追試をしてみました。

15時01分撮影

すると、巣へと運んでいきました。

アブラムシを咥えて巣へと運んでいくトゲアリ 上方の丸い穴が巣口 15時3分撮影

以上の観察から、トゲアリはカラスノエンドウに付く2種のアブラムシを食べると考えられます。

2019 移植の試み 5例

昨日の引き続き、「移植」を試みました。今回は5つのコロニーで、いずれも昨年採集した新女王アリのコロニーです。いずれも働きアリが20匹前後で、1年後のコロニーの規模としては中程度です。

BH18003
BH18006
BH18010
BH18014
BH18018

この内、2つのコロニーは、昨日移植した花壇の別の空き領域に移植しました。

左がBH18003 右がBH18006

残りの3つのコロニーは、庭の西斜面下に移植しました。

2019 移植の試み 2例

今年もクロオオアリの「移植」を試みることにしました。移植するコロニーは、BK170530-075とBK170530-162で、いずれも2017年5月30日に採集した新女王アリのコロニーです。これらのコロニーは、子育てが順調ではなかったコロニーで、創巣から1年弱後の昨年の4月23日(今からちょうど1年前)、どちらも働きアリが5匹しかいませんでした。現在は少しは増えています。

BK170530-075
同じくBK170530-075 幼虫が見える
BK170530-162

これらを赤花イチゴを植えている花壇の空いている場所に移植します。移植の方法ですが、今まで飼育してきた簡易な飼育ケースのまま、その蓋を外し、その上に大きめの透明ケース被せ、地面と透明ケースの間にすき間がなくなるように透明ケースの周辺に土を寄せます。

BK170530-075
BK170530-162  この箇所はBK170530-075の東となり

最後に日光を遮るため、1×4材で作った板を被せます。

板を被せたところ

これとほぼ同じ方法(日射を防ぐ材が違う)で、去年も移植を試みています。この昨年の試みは、1年後の現時点までの経過の中で、全て失敗したと考えています。今年こそは、移植に成功すればいいのですが。

これまでの「移植」 2019年4月

「移植」という言葉を「飼育していたアリのコロニーを庭に放ち、棲息させること。または、採集してきた交尾後の新女王アリを庭に放つこと」と言う意味で使っています。
以前に住んでいた家でも「移植」を試みましたが、いずれの試みも失敗しています。今住んでいるの家では、2016年から庭への「移植」を試みていて、3年ほど経ちますので、この機会にその成否をまとめておきます。

B:クロオオアリ  R:ムネアカオオアリ  数字:コロニー数
( ):括弧内の数字は採集直後の新女王アリ単独の匹数 またはその他の説明

2016年(計クロオオアリ9コロニー ムネアカオオアリ13コロニー
4月12日 B2(NESTCON02005 2013年06月17日採集を含む) R2
4月16日 R1
4月22日 B1 R3
4月26日 B1
4月30日 B5 R7

2017年(計クロオオアリの新女王アリ単独10匹)
5月22日 B(10)

2018年(計クロオオアリ48コロニー クロオオアリの新女王アリ単独37匹)
3月28日 B4
3月29日 B6
3月31日 B6
4月1日 B4
4月2日 B8
4月3日 B18
4月23日〜 B10
5月1日 B2(B15017 2015年5月27日採集を含む)
5月16日 B(37)

以上のように3年間で、クロオオアリを104(57コロニー・47匹)ケース、ムネアカオオアリを13コロニー「移植」しました。その結果、現時点で「移植」に成功したと確認できているのは、2016年4月12日に「移植」したクロオオアリのコロニーNESTCON02005と、2018年5月1日に「移植」したクロオオアリのコロニーB15017の2つのコロニーのみです。つまり、クロオオアリでは、「移植」成功率は、104分の2で1.92%、ムネアカオオアリでは0%になります。とても厳しい結果であることが分かります。単なる推測ですが、自然界では新しいコロニーができるのは、この結果以上に厳しいのかも知れません。
NESTCON02005については、他のコロニーと比べて特に有利な条件は見いだせませんが、他方、B15017については、「移植」に用いた他の全てのコロニーと比べて働きアリの数が目だって多かった点が挙げられます。更なる検証が必要ですが、常識的に考えても、「移植」が成功するには、大きなコロニーほど有利だとは言えそうです。

NESTCON02005 2013年06月17日採集 「移植」直前の様子  2016年4月12日撮影
B15017 2015年5月27日採集 「移植」中の様子 2018年5月1日撮影

Q+WとWのみのクロオオアリのコロニーを合併

これまでもクロオオアリの同種間共存について、幾度か実験と観察をしてきましたが、4月16日と19日、2度にわたって新たな条件で実験をしました。
2019年4月16日に合併したコロニーは次の2つです。
BH170521-025:
  2017年5月21日に岡山県蒜山高原で採集した女王アリのコロニー
  働きアリ2匹と女王アリ 幼生虫なし
BH170520-001:
  同年5月20日同地(採集箇所も同じ)で採集した女王アリのコロニー
  昨年の2018年 女王アリ死 働きアリ多数 幼虫あり
これまでの合併条件との違いは、女王アリがいるコロニーの方に少数ながら働きアリがいることです。

実験を開始した直後の様子 4月16日17時56分撮影

上の写真の右側が女王アリと働きアリがいるBH170521-025です。女王アリがいる部屋に働きアリが2匹いますが、この2匹がこのコロニーの働きアリです。その上の部屋には働きアリが1匹いますが、この働きアリはBH170520-001の働きアリで、両巣を合併した直後ですが、早速BH170521-025の巣の中に入り込んできました。
とても短い時間に、何匹かのBH170520-001の働きアリが、BH170521-025の巣の中に入り込みましたが、喧嘩は起こりませんでした。更に、女王アリと栄養交換をする働きアリも見られましたが、直前に蜜を与えたわけでもないので、その働きアリはBH170520-001の働きアリのようです。

栄養交換をする女王アリと働きアリ 女王アリの部屋に働きアリが4匹写っている 17時59分撮影

翌日見ると、女王アリと働きアリがいたBH170521-025の人工巣には1匹もアリの姿はありませんでした。

BH170521-025の人工巣には1匹もアリの姿はない

BH170520-001の人工巣の方を見ると、女王アリがいました。

BH170520-001の人工巣の中に女王アリがいた 4月17日8時19分撮影

働きアリの死骸も見当たらなかったので、BH170521-025の2匹の働きアリも健在のようです。

2019年4月19日に合併したコロニーは次の2つです。
BH170520-015:
  2017年5月20日に岡山県蒜山高原で採集した女王アリのコロニー
  働きアリ2匹と女王アリ 幼生虫なし
BH170520-009:
  同年同日同地(採集箇所も同じ)で採集した女王アリのコロニー
  今年3月に女王アリが死亡 働きアリ4匹のみ 幼生虫なし
16日に合併したコロニーとの違いは、女王アリがいない方のコロニーの働きアリの数と幼虫の有無です。
16時少し前に2つのコロニーを合併しました。女王アリがいないBH170520-009の方の働きアリが4匹と少なかったので、人工巣から4匹を取り出して、BH170520-015の人工巣の中に入れました。
合併直後、ほんの僅かな間、働きアリ同士で喧嘩が始まりましたが、すぐに喧嘩が収まりました。また、BH170520-009の働きアリが女王アリに近づいた時、双方襲うことはありませんでした。しばらくすると、おそらく別コロニー同士と思われる働きアリ間で栄養交換が見られ、女王アリと働きアリ間でも栄養交換が見られました。それから3時間半程経った頃、様子を見ると、女王アリと6匹の働きアリが同じ部屋にいました。すっかり、お互いを受け入れているように見受けられました。

一つの部屋に女王アリと働きアリ6匹がそろった 19時25分撮影

カラスノエンドウがほぼ全滅

クロオオアリの春一番の蜜源として保護していたカラスノエンドウがほぼ全滅していました。
もう何日か前から、何か変わった様子を感じていましたが、まさか考えもしていなかったことでしたので、今となってようやくそれに気づきました。
敷地外の南に広がっていたカラスノエンドウですが、ほぼ1本も見当たりません。

4月18日撮影

このブログの記録では、4月5日にはカラスノエンドウが密生していたのですが、それから僅かな期間に一斉に姿を消しました。考えられることは、アブラムシの大量発生で、カラスノエンドウが枯れたのでしょう。写真を撮った4月18日の時点では、枯れたはずのカラスノエンドウの本体の痕さえも分かりませんでした。

イチゴをアンテグラウンドに戻す

イチゴの苗とアブラムシについては「アブラムシを飼う」で触れていますが、その後は、イチゴの苗を屋外で育てていました。イチゴには、アブラムシが付いていて、定着したかに見えます。

イチゴの苗を屋外においていた時には、庭のクロオオアリがこのイチゴの苗を訪れ、アブラムシの甘露を吸っていました
この度、この水耕栽培のイチゴをクロオオアリを飼育しているアンテグラウンドに戻しました。

アンテグラウンドの中のイチゴ クロオオアリが訪れた 4月16日14時59分撮影

アブラムシとクロオオアリがどのように共存するのか、観察が楽しみです。

「誘拐」されたクロオオアリは巣に戻れるか(2)

「「誘拐」されたクロオオアリは巣に戻れるか(1)」では、クロオオアリの生活圏から離れた場所へとクロオオアリを移動させましたが、今度は、生活圏内と思われる近くで放ちます。今回も、前回と同じコロニーのクロオオアリを巣口で捕らえ、蜜器へと誘い、クロオオアリがいるその蜜器を巣口から1.2m離れた場所に設置します。このクロオオアリをAW2と名付けます。

巣口は左上方の芝を刈った後のくぼんで見える場所 実験を開始した 10時1分撮影
7分後に巣へと帰り始めた 10時8分撮影

AW2は最初から迷う風でもなく、巣口がある上方へと歩いていきました。そして、3分後には巣穴へと入っていきました。
この場合、AW2は「誘拐」されたのですから、巣口から蜜器までの道には、道しるべはありませんでした。にも関わらず、ほぼ迷うこともなく、巣へと帰って行けたのです。

巣へと帰ってきた 10時11分撮影

ところが僅かにその2分後の10時13分、1匹のクロオオアリが巣から出てきて、少し西下方向へ歩いた後、蜜器のある下方へと下っていきました。

蜜器に近づいてきた 10時15分撮影

そして、測量杭を登り、蜜を吸い始めました。

蜜器に到達した 10時16分撮影

このアリがAW2だとすると、巣に戻ってから僅かに2分間で、腹部に溜めていた蜜を仲間に渡したことになります。それは、とても考えられないことです。
このアリは10時20分になると帰り始め、僅か1分後には巣の中に入っていきました。
それから3分後の10時24分に、巣口から何匹かが出てきました。

先頭のアリは短い間隔で腹部を地面に着けながら進んでいく その後を何匹かのアリが付いて行く 10時24分撮影 

これは、仲間を餌場へと連れて行く行動です。先頭のアリは、腹部をリズミカルに時々曲げて、地面等に道しるべを付けています。

10時26分撮影

そして、巣口を出発して3分後に、測量杭の麓まで到達しました。

10時27分撮影

先程、蜜器にやってきた1匹のクロオオアリについて、「それは、とても考えられないことです」と書きましたが、この仲間連れで出てきたアリを見て、何だか謎が解けたように思えました。というのは、先程の1匹のアリは、最初に「誘拐」したアリとは別のアリで、そのアリが往復するところを観察していたと考えるのです。すると、別のアリが自力で蜜を見つけたことになり、そのことから蜜器を置いていた場所が、A巣の生活圏内であったと言えることになります。
そこで、今回の実験は、 当初の想定通り、クロオオアリを生活圏内に移動した場合の行動記録と言えそうです。

そうだとすると、仲間を連れて蜜器へと案内したのは、AW2であった可能性が出てきます。AW2が巣に戻ったのは10時11分でした。そして、複数のアリが同時に出てきたのは10時24分でした。その間は13分間です。ところで、昨日の観察では、蜜を持ち帰って次に巣から出てくるまでの時間は、12分、15分、13分でした。見事にほぼ一致しています。やはり、仲間を蜜器へと案内したのはAW2なのでしょう。

その後も、A巣のクロオオアリはこの蜜器と巣とを往復していましたが、帰路を迷ってしまうアリを2匹見かけました。比較的近い距離ですが、それでも帰路を大きく逸れていました。クロオオアリにも個体により、能力に個性があるのでしょう。

巣口はU字溝の下方にあるが、2匹のクロオオアリは、踏み石になっているコンクリートブロックの右側深くに迷い込んでいた

「誘拐」されたクロオオアリは巣に戻れるか(1)のその後

「誘拐」されたAW1が巣に戻れたのは10時37分でした。それから12分後の10時49分に、AW1と思われるクロオオアリが巣穴から出てきました。これが往路としては1回目と数えます。

写真左にクロオオアリの姿が見える 10時49分撮影

後を追ってみましょう。

10時50分撮影

迷うことなく西へと進みます。やはりこのアリは、AW1のようです。仲間を引き連れることなく、道しるべ(腹部の先をリズミカルに地面に付けながら歩く)は付けていません。

10時50分撮影

芝生の中を歩いていきます。コンクリートの部分はU字溝ですが、蜜器を設置している測量杭は、このU字溝のすぐ脇の芝生の中にあります。より早く蜜のある場所へ行くには、U字溝の上を歩くのがよいのですが、測量杭に突き当たるにはこのように歩くのが無難です。
ところで、AW1が蜜を吸って巣に戻る際に歩いた道筋と、今の蜜器へと向かう際の道筋を比べてみましょう。

AW1が蜜を吸って巣に戻る際に歩いた道筋 10時34分撮影

すると、上の2つの写真は、横方向で見ればほぼ同じ位置なのですが、縦方向で見ればかなり離れています。つまり、蜜のある場所からの帰りの道と、蜜のある場所へ行く道は、全く異なっていることが分かります。AW1は、蜜のある場所からの帰りの道筋を覚えていて、あるいは何らかの道しるべを付けていて、巣に戻ったわけではないことが分かります。AW1は、巣から蜜のある場所へ行く最短距離、つまり方位が分かっていると考えられます。

再びU字溝の上を歩く 10時51分撮影
U字溝に接している杭に登る 10時51分撮影

U字溝に接している丸杭に登り始めました。すぐに引っ返しましたが、蜜器のある測量杭と間違えたのでしょうか。ではなぜこのような間違いを起こすのでしょうか。これは一つの仮説ですが、巣からの蜜がある場所への方位は分かっていても、距離が分からなかったと考えることもできるでしょう。

再び芝生の中を歩く 測量杭まではもう少し 10時52分撮影
ついに蜜器に到着 10時53分撮影

巣を出てから4分で蜜器に到達しました。では、引き続き観察を続けましょう。

帰路につく これが帰路としては2回目 10時58分撮影
巣に戻る 11時3分撮影
これが往路としては2回目 11時18分撮影
蜜器に着く 11時20分撮影
帰路につく これが帰路としては3回目 11時27分撮影
巣に戻る 11時30分撮影
これが往路としては3回目 11時43分撮影
やはり芝生の中を歩いている 11時45分撮影
蜜器に着く 11時46分撮影
帰路につく これが帰路としては4回目 11時56分撮影
巣に戻る 11時59分撮影

ここで往路と帰路にかかった時間を一覧にしてみましょう。

回数帰路往路
1回目26分4分
2回目5分2分
3回目3分3分
4回目3分

こうして見ると、生活圏を外れていたと思われる1回目の帰路を除くと、大変素早く蜜と巣との間を往復していたことが分かります。その歩く様子を観察すると、道しるべを付けてはいませんでした。それにもかかわらず、1回目の往路を除けば、歩く道筋はほぼ同じでした。ただ、全く同じではないのです。つまり、道しるべに導かれて定まった軌道の上を辿って歩いているのではなく、目的地に向かってほぼ最短距離で任意に歩いていたと言えます。

「誘拐」されたクロオオアリは巣に戻れるか(1)

直前のブログで、A巣の巣口を確認したことを書きましたが、この巣口にいるクロオオアリを捕らえて、別の場所で放すと巣に戻ることができるでしょうか。
下の写真は、この実験をするフィールドです。

実験の場所となるフィールド全景

この写真は斜面の上方(南向き)から撮影しています。左手が東で、左手上下中央にある木が清水白桃です。その左横にA巣の巣口があります。
初めに、フィルムケースを使って巣口から出てくるクロオオアリを捕らえます。巣口から出てくるクロオオアリには、既に分かっている蜜のある場所に行くものや、あてなく探索に行くものや、巣作りをしているものなどがいると考えられますが、蜜のある場所に行くものは避けたいと思いました。幸い最初に出てきたクロオオアリ(AW1)は巣作りをしているようでした。そのクロオオアリを捕らえて、蜜器へと移動させます。蜜を吸い始めると、蜜器に入ったまま測量杭に設置します。上写真の右中央をご覧下さい。蜜器は巣口から4.7m程離れた場所にあります。

実験が始まった 10時6分撮影

蜜を吸い初めて5分ほど経つと、AW1は帰路につきました。(これ以降の写真は先程のフィールドの全景とは逆の方向(北向き)から撮影しています。右が東側で巣口がある方向です)

蜜器のある測量杭から下りてきたところ 10時11分撮影

以後、この蜜器の周辺をあちこちと歩き回ります。

東方向へ 左上方に測量杭が見えている 10時13分撮影
北方向へ 10時16分撮影
北から西へ、そして測量杭の方向へ 10時18分撮影
斜面を下って南方向へ 10時23分撮影
先程より更に西へ 10時29分撮影
蜜器近くに戻る 10時31分撮影
再び東へ 10時31分撮影

そして、このまま東へと進み、ついに帰巣しました。

帰巣した巣口のある場所 10時37分撮影

帰路についたのが10時11分でしたから、26分かけて巣に戻ってきたことになります。そのほとんどの時間が迷っていた時間で、最後の6分間は、ほぼまっすぐに巣へと向かいました。

ここで、クロオオアリの生活圏という言葉を使うとして、次のように整理しておきます。
① 日や期間や季節により生活圏は異なる。
② 個々のクロオオアリは、生活経験の違いがあり生活圏に違いがある。

AW1にとってこの時、放たれた場所は生活圏内ではなかったのでしょう。およそ20分もの間、蜜器を中心にその四方を探し回ります。探していたのは生活圏内の見覚えのある場所だと考えられます。その場所を見つけるとほぼまっすぐに巣へと帰ることができました。
ところで、戻った巣口が別の場所だったことにお気付きのことと思います。この巣口は、AW1を捕らえた巣口の西方向に1.6m程離れたところにあります。この2箇所の巣口は、どちらもA巣の巣口であることが分かります

写真左右にA巣の別々の巣口がある

AW1が戻った巣口は、蜜器から3.1m程離れた場所でした。

A巣の巣穴を確認

8時25分ごろ石垣の花壇に1匹のクロオオアリが歩いていました。そこで、蜜を与えました。

蜜を吸うクロオオアリ 8時25分撮影

このクロオオアリはどこから来たのでしょう。先日、巣を確認したK巣のクロオオアリかも知れません。後を追ってみました。すると、花壇をK巣とは反対方向に歩いていきました。それから、芝地の斜面を下っていきました。帰路を迷っている様子はありません。やがて、清水白桃の木の東横で芝生の中に潜っていきました。蜜を吸った場所から直線距離で6m弱のところです。

写真中央辺りで姿を消した 写真左の木が清水白桃 8時49分撮影

そこで、巣穴を特定するために芝を刈りました。

芝を刈った後 巣穴に入っていくクロオオアリが見える 9時29分撮影

このコロニーはA巣のようです。

「移植」に成功していたS/N:B15017のコロニー(2)

その後7日から9日までは自宅を離れ、10日は終日雨でしたので、この巣口の観察はしませんでした。11日になり、再び水耕栽培をしているイチゴの苗にクロオオアリが来ていました。早速蜜を与えてみました。

4月11日12時31分撮影

やがて帰路につき、後を追ってみると6日に観察した同じ場所で芝生の奥へ入っていきました。6日に芝生を部分的に刈ってはいましたが、そのすぐ東側の芝生を刈っていない辺りでした。
しばらくして、巣穴があると思われる辺りからクロオオアリが現れました。後を追ってみると、イチゴの苗へ行き、先程与えた蜜を吸い始めました。おそらく、このアリは先程蜜を吸って巣へと帰っていった同じアリだと思われます。その後、今回も、巣穴があると思われる辺りで芝生の奥へ入っていきましたので、巣穴を確認できませんでした。
そこで、6日に刈った芝生の東隣を更に刈り広めました。

芝生を東側へと更に刈り広めた

3度目にイチゴの苗にやってきたのを観察したのは、13時40分頃でした。しばらくして巣に戻ってきましたが、芝を刈り広めていたにも関わらず、今度も巣穴が特定できませんでした。

芝生の奥へと入っていったが、巣穴は確認できなかった 14時00分撮影

そこで、更に芝を刈り広めました。

更に芝を刈ると穴が現れた

すると、大きめの穴が見えてきました。ひょっとするとこの穴がこのクロオオアリのコロニーの巣口なのかも知れません。
4度目にイチゴの苗に現れたクロオオアリの帰路を追ってみると、案の定、この大きめの穴の中に入っていきました。

クロオオアリが大きめの穴に入っていくところ 14時31分撮影

ところで、ここまでは1匹のクロオオアリが往復していると思っていましたが、そうではなかったのかも知れません。穴の中に入っていくのを見届けた直後に、イチゴの苗を見ると、そこにもクロオオアリがいたのです。

14時33分撮影

つまり少なくとも2匹は、イチゴの苗のところにやってきているのです。今度は、このクロオオアリの帰路を追ってみました。すると、4度目に観察したクロオオアリと同様に、やはり同じ大きめの穴に入っていきました。

14時55分撮影

これで、ここにもクロオオアリの巣があること、そして巣口の特定もできたことになります。
このS/N:B15017の巣のことを、これからはK巣と呼ぶことにします。
ところでこのK巣ですが、コロニーの規模は小さいと考えられます。コロニーの規模が大きい場合は、仲間を案内して蜜場へと向かうのですが、このコロニーのクロオオアリは、いつも単独行動だったからです。昨年、「移植」した時は、そこそこ大きめのコロニーでしたが、成員が減少してしまったようです。

翌日のK巣の巣口の様子 大きめのクロオオアリが巣口でじっとしていた 巣口のすぐ外には、少しだが土粒が運び出されていた 4月12日撮影
今回のブログの舞台全景 手前の岩の上に水耕栽培のイチゴの苗がある 左手には花壇があり、その更に左後方に桜の木の大きな切り株がある その切り株のすぐ手前にK巣があった イチゴの苗とK巣との距離は直線距離で6m弱

「移植」に成功していたS/N:B15017のコロニー(1)

昨年、庭に「移植」した数多くのクロオオアリ(のコロニー)は、全滅したと思っていました。ところが4月6日になって、そうではなかったことが分かったのです。
その日、庭で水耕栽培をしているイチゴの苗に1匹のクロオオアリが来ていました。イチゴにはアブラムシが付いていて、その苗を岩の上に置いていました。

庭で水耕栽培をしているイチゴの苗にクロオオアリが来ていた イチゴの苗にはアブラムシが付いている 4月6日14時55分撮影

B巣のクロオオアリは既に活動を始めていますが、イチゴの苗を置いている場所からは距離があり、これまでもこの岩のある辺りでクロオオアリを見かけることは、ほんのたまにしかありませんでした。そこで、B巣のクロオオアリではない可能性があるので、このクロオオアリがどこからやって来たのかを調べることにしました。やがて、まだ腹部は膨れていませんでしたが、このクロオオアリは、イチゴを植えている水耕栽培の容器から離れていきました。

15時12分撮影

クロオオアリはイチゴを置いている岩を下り、芝生の上を歩き、隣の岩の上を歩いていきました。

15時14分撮影

それから、岩で囲った花壇へと登り、ガザリアの葉の上や岩の上を西方向へと進みました。

ガザリアの葉づたいに歩く 15時18分撮影
15時21分撮影

そして、花壇を下り、一面芝生が生えている斜面を下って、桜の木の切り株の近くで芝生の中へ潜り込んだまま出てこなくなりました。

桜の木の切り株の少し右辺りで姿が消えた 15時27分撮影

この辺りに巣口がありそうです。だとすると、このクロオオアリのコロニーは、昨年の5月1日に庭に「移植」したS/N:B15017だと思われます。
(移植当初は花壇の岩のすき間などに数箇所にわたって巣を作っていましたが、最終的にはこの桜の木の右上に巣口が開いたのを観察しています。なお、同時に移植したもう一つのコロニー(S/N:B15125)は、匹数が少なめだったので、見かけた働きアリの数から推察して、この場所に巣を造ったコロニーではないと思われます)
巣穴を特定するため、芝生を刈りました。そして、巣口があると思われる近辺や、イチゴの苗辺りをしばらく見ていましたが、クロオオアリは現れませんでした。最後に蜜を入れた蜜器を巣口に近いと思われる箇所に置いておきました。

芝生を刈って蜜入りの蜜器を置いた

クロオオアリが活動を始める(B巣)

庭には散水用のホースを長く延ばして設置しているところがあります。そのホースは、アリたちにとって大変便利な通り道になっていて、早足で移動できるようになっています。こういった箇所を私は「高速道路」と呼んでいます。
今日は、B巣の近くにあるその「高速道路」を整備しました。これまでは、散水ホースをコンクリートブロック沿いの地面の上に這わせていましたが、それをコンクリートブロックの上に上げました。そうすることで、アリたちが歩ける面積が広く(道幅が広く)なり、同時に私にとっては観察しやすくなりました。

「高速道路」(散水ホース)を整備したところ

場所を移動したばかりのこの「高速道路」を、早速クロオオアリが利用していました。更に、アブラムシも利用していました。両者は時々出会うのですが、クロオオアリがアブラムシを捕まえると言うことはなく、お互い無関心ですれ違います。

クロオオアリとアブラムシがすれ違う瞬間

ところで、B巣の巣口があると思われる辺りを見ていると、腹部が膨れたクロオオアリがこちらに向かってきます。

腹部が膨れている 10時17分撮影

どこかで蜜源を見つけたのでしょう。このクロオオアリの後を追えば、3月21日には特定できなかった巣口を見つけることができるかも知れません。
けれども、今度も芝生に隠れて巣口がはっきりしませんでした。そこで、思い切って21日の時以上に深く芝生を刈りました。すると巣口らしい大きめの穴が見えてきました。

芝生を深く刈ると大きめの穴が見えてきた 写真は3匹のクロオオアリが1群になって出てきたところ 11時8分撮影

その巣穴から3匹が1群になって出てきました。先頭のクロオオアリが地面にマーキングをしています。これは、蜜の在り処へ仲間を連れて行く行動です。後を追ってみましょう。

「高速道路」に入った アブラムシも歩いている 11時14分撮影
フェンスの土台になっているコンクリートの礎石(2m以上の高さ)を下る 他の2匹は迷ったようで付いてきていないが、それでもマーキングをしている 11時18分撮影
地面に下り立った 小道を横切れば、そこにはカラスノエンドウの密生地がある 11時19分撮影
小道を横切る 腹部を曲げてマーキングをしている 11時19分撮影
カラスノエンドウの密生地に到着 11時24分撮影

F巣の事になりますが、この巣では3月20日に今年になって初めて巣穴が開きました(「クロオオアリの啓蟄」)。B巣の場合も、ほぼ同日と考えれば、16日ぶりに初めて餌を得たことになります。ちなみに一昨年は、初めてカラスノエンドウに来ているクロオオアリを見たのは、4月1日でした。

先程通路になっていたコンクリートの礎石から幾程か離れた場所にある、コンクリートブロックの礎石にもクロオオアリがいました。

コンクリートブロックの礎石で2匹ほど見かけた 11時27分撮影

ここを通路にしているクロオオアリは、もう既にカラスノエンドウの密生地に達していました。

クロオオアリが活動を始める(F巣)

今日は気温がかなり上がるとのことでしたので、朝の7時台に、蜜器に蜜を入れて、庭の2箇所に蜜器を設置しました。9時過ぎに気づいたときには、F巣に近い蜜器にクロオオアリがやってきていました。

9時11分撮影

このクロオオアリたちは、F巣のクロオオアリだとは思いましたが、蜜を吸って帰路についた1匹の後を追ってみると、やはりそうでした。
タンパク源も与えてみようと思い、ガを蜜器と巣との途中に置くと、食いつきました。

9時15分撮影

やがて1匹のみがガを運び始めました。そして、巣のすぐ近くまで運んでくると、いったんガから離れて、巣口を確かめるかのように巣口まで行き、またガのところへ戻りました。

ガからいったん離れたところ 9時24分撮影

それから、ガは巣穴へと引き込まれていきました。

ガが巣穴に引き込まれていくところ 9時24分撮影
僅かにガの翅が見える 9時25分撮影

まだ餌を得ていないと思われるクロオオアリ

3月20日のブログで、庭のF巣(クロオオアリ)の巣口が開いたことを書きましたが、今日初めて巣から土を運び出すF巣の働きアリの姿を見ました。寒の戻りで比較的寒い日でしたので、少し意外でした。

土を運び出している 13時46分撮影

ところでこのクロオオアリのコロニーですが、巣口は開いたものの、まだ餌を得ていないようなのです。近くに置いた蜜器にもやってきませんでした。
B巣のクロオオアリも巣口から出ていて、クリの木のクリオオアブラムシのいるところまでやって来ていましたが、まだアブラムシが甘露をほとんど出していないらしく(クリの木はまだ新芽が出ていない状態)、腹部を膨らませているクロオオアリは見かけませんでした。おそらく、このB巣のクロオオアリもまだ餌を得ていないようです。
一昨年の記録では、4月1日になって、庭の一部に作っていたカラスノエンドウの保護区に初めてクロオオアリが蜜を集めにやって来ました。
今年は昨年に引き続き、庭にはカラスノエンドウの保護区を作っていませんが、昨年からそれに代わる場所として敷地外でカラスノエンドウを保護しています。ただ、まだその敷地外のカラスノエンドウにもクロオオアリの姿はありませんでした。

2019年 クロオオアリとムネアカオオアリの新女王アリの予約販売受付開始

2019年の5月から6月にかけて採集する予定のクロオオアリとムネアカオオアリの新女王アリの予約受付を開始致しました。

今年もクロオオアリとムネアカオオアリの新女王アリの採集を行います。多数採集できますと、研究に必要な数以上になった女王アリを提供致します。有償とはなりますが、ご希望の方はお申し込み下さい。
5月20日までにご予約をいただきますと、新女王アリに30日間の保証(届いた時点、あるいは届いた日を入れて30日以内に女王アリが死んだ場合は、送料無料で女王アリを再送)をお付け致します。それ以後は15日間の保証となります。また、新女王アリを研究用等でまとまった数お求めの場合は、別途割引料金を適用致します。詳しくは、こちらhttp://www.kajitsuken.net/新女王アリ.html)をご覧下さい。