日別アーカイブ: 2019年4月15日

「誘拐」されたクロオオアリは巣に戻れるか(1)のその後

「誘拐」されたAW1が巣に戻れたのは10時37分でした。それから12分後の10時49分に、AW1と思われるクロオオアリが巣穴から出てきました。これが往路としては1回目と数えます。

写真左にクロオオアリの姿が見える 10時49分撮影

後を追ってみましょう。

10時50分撮影

迷うことなく西へと進みます。やはりこのアリは、AW1のようです。仲間を引き連れることなく、道しるべ(腹部の先をリズミカルに地面に付けながら歩く)は付けていません。

10時50分撮影

芝生の中を歩いていきます。コンクリートの部分はU字溝ですが、蜜器を設置している測量杭は、このU字溝のすぐ脇の芝生の中にあります。より早く蜜のある場所へ行くには、U字溝の上を歩くのがよいのですが、測量杭に突き当たるにはこのように歩くのが無難です。
ところで、AW1が蜜を吸って巣に戻る際に歩いた道筋と、今の蜜器へと向かう際の道筋を比べてみましょう。

AW1が蜜を吸って巣に戻る際に歩いた道筋 10時34分撮影

すると、上の2つの写真は、横方向で見ればほぼ同じ位置なのですが、縦方向で見ればかなり離れています。つまり、蜜のある場所からの帰りの道と、蜜のある場所へ行く道は、全く異なっていることが分かります。AW1は、蜜のある場所からの帰りの道筋を覚えていて、あるいは何らかの道しるべを付けていて、巣に戻ったわけではないことが分かります。AW1は、巣から蜜のある場所へ行く最短距離、つまり方位が分かっていると考えられます。

再びU字溝の上を歩く 10時51分撮影
U字溝に接している杭に登る 10時51分撮影

U字溝に接している丸杭に登り始めました。すぐに引っ返しましたが、蜜器のある測量杭と間違えたのでしょうか。ではなぜこのような間違いを起こすのでしょうか。これは一つの仮説ですが、巣からの蜜がある場所への方位は分かっていても、距離が分からなかったと考えることもできるでしょう。

再び芝生の中を歩く 測量杭まではもう少し 10時52分撮影
ついに蜜器に到着 10時53分撮影

巣を出てから4分で蜜器に到達しました。では、引き続き観察を続けましょう。

帰路につく これが帰路としては2回目 10時58分撮影
巣に戻る 11時3分撮影
これが往路としては2回目 11時18分撮影
蜜器に着く 11時20分撮影
帰路につく これが帰路としては3回目 11時27分撮影
巣に戻る 11時30分撮影
これが往路としては3回目 11時43分撮影
やはり芝生の中を歩いている 11時45分撮影
蜜器に着く 11時46分撮影
帰路につく これが帰路としては4回目 11時56分撮影
巣に戻る 11時59分撮影

ここで往路と帰路にかかった時間を一覧にしてみましょう。

回数帰路往路
1回目26分4分
2回目5分2分
3回目3分3分
4回目3分

こうして見ると、生活圏を外れていたと思われる1回目の帰路を除くと、大変素早く蜜と巣との間を往復していたことが分かります。その歩く様子を観察すると、道しるべを付けてはいませんでした。それにもかかわらず、1回目の往路を除けば、歩く道筋はほぼ同じでした。ただ、全く同じではないのです。つまり、道しるべに導かれて定まった軌道の上を辿って歩いているのではなく、目的地に向かってほぼ最短距離で任意に歩いていたと言えます。

「誘拐」されたクロオオアリは巣に戻れるか(1)

直前のブログで、A巣の巣口を確認したことを書きましたが、この巣口にいるクロオオアリを捕らえて、別の場所で放すと巣に戻ることができるでしょうか。
下の写真は、この実験をするフィールドです。

実験の場所となるフィールド全景

この写真は斜面の上方(南向き)から撮影しています。左手が東で、左手上下中央にある木が清水白桃です。その左横にA巣の巣口があります。
初めに、フィルムケースを使って巣口から出てくるクロオオアリを捕らえます。巣口から出てくるクロオオアリには、既に分かっている蜜のある場所に行くものや、あてなく探索に行くものや、巣作りをしているものなどがいると考えられますが、蜜のある場所に行くものは避けたいと思いました。幸い最初に出てきたクロオオアリ(AW1)は巣作りをしているようでした。そのクロオオアリを捕らえて、蜜器へと移動させます。蜜を吸い始めると、蜜器に入ったまま測量杭に設置します。上写真の右中央をご覧下さい。蜜器は巣口から4.7m程離れた場所にあります。

実験が始まった 10時6分撮影

蜜を吸い初めて5分ほど経つと、AW1は帰路につきました。(これ以降の写真は先程のフィールドの全景とは逆の方向(北向き)から撮影しています。右が東側で巣口がある方向です)

蜜器のある測量杭から下りてきたところ 10時11分撮影

以後、この蜜器の周辺をあちこちと歩き回ります。

東方向へ 左上方に測量杭が見えている 10時13分撮影
北方向へ 10時16分撮影
北から西へ、そして測量杭の方向へ 10時18分撮影
斜面を下って南方向へ 10時23分撮影
先程より更に西へ 10時29分撮影
蜜器近くに戻る 10時31分撮影
再び東へ 10時31分撮影

そして、このまま東へと進み、ついに帰巣しました。

帰巣した巣口のある場所 10時37分撮影

帰路についたのが10時11分でしたから、26分かけて巣に戻ってきたことになります。そのほとんどの時間が迷っていた時間で、最後の6分間は、ほぼまっすぐに巣へと向かいました。

ここで、クロオオアリの生活圏という言葉を使うとして、次のように整理しておきます。
① 日や期間や季節により生活圏は異なる。
② 個々のクロオオアリは、生活経験の違いがあり生活圏に違いがある。

AW1にとってこの時、放たれた場所は生活圏内ではなかったのでしょう。およそ20分もの間、蜜器を中心にその四方を探し回ります。探していたのは生活圏内の見覚えのある場所だと考えられます。その場所を見つけるとほぼまっすぐに巣へと帰ることができました。
ところで、戻った巣口が別の場所だったことにお気付きのことと思います。この巣口は、AW1を捕らえた巣口の西方向に1.6m程離れたところにあります。この2箇所の巣口は、どちらもA巣の巣口であることが分かります

写真左右にA巣の別々の巣口がある

AW1が戻った巣口は、蜜器から3.1m程離れた場所でした。

A巣の巣穴を確認

8時25分ごろ石垣の花壇に1匹のクロオオアリが歩いていました。そこで、蜜を与えました。

蜜を吸うクロオオアリ 8時25分撮影

このクロオオアリはどこから来たのでしょう。先日、巣を確認したK巣のクロオオアリかも知れません。後を追ってみました。すると、花壇をK巣とは反対方向に歩いていきました。それから、芝地の斜面を下っていきました。帰路を迷っている様子はありません。やがて、清水白桃の木の東横で芝生の中に潜っていきました。蜜を吸った場所から直線距離で6m弱のところです。

写真中央辺りで姿を消した 写真左の木が清水白桃 8時49分撮影

そこで、巣穴を特定するために芝を刈りました。

芝を刈った後 巣穴に入っていくクロオオアリが見える 9時29分撮影

このコロニーはA巣のようです。