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飼育中のトゲアリの様子 2019年9月末日

現在、トゲアリは4コロニーを飼育していますが、以下はそれらのコロニーの9月30日の様子です。(今年5月5日の4コロニーの様子はこちら 昨年10月11日の3コロニーの様子はこちら) 

① S/N:T140906-40
最も良く繁栄しているコロニーです。トゲアリの女王アリを2014年9月6日に採集し、同年9月11日にクロオオアリの巣S/N: NESTCON01024(2012年6月14日に新女王アリを採集)に侵入させました。したがって、寄生してから5年経過したことになります。
今年の1月29日から特製の飼育ケースに入れ、後日アンテグラウンドⅡ型に繋げています。小さな幼虫が多数見られます。

T140906-40の全体の様子 9月30日撮影 以下全て9月30日撮影
たくさんの小さな幼虫が見える
たくさんの小さな幼虫が見える

② S/N:T130921-09
順調に繁栄することが期待できるコロニーです。飼育器の水槽の中に置いたアクリルと木で作った巣箱の中にコロニーが入っています。この巣箱には、閉ざされた空間があり、側面の1つの穴からのみ出入りできるようになっています。トゲアリの女王アリを2013年9月21に採集し、同年10月3日にクロオオアリの巣S/N:NESTCON01030(2011年6月8日に新女王アリを採集)に侵入させました。したがって、寄生してから6年経過したことになります。小さな幼虫が多数見られる他、僅かに繭があります。

T130921-09の全体の様子
たくさんの小さな幼虫と僅かに繭が見える
たくさんの小さな幼虫と僅かに繭が見える

③S/N:T140906-03
4コロニーの中では、働きアリが一番少ないコロニーです。トゲアリの女王アリを2014年9月6に採集し、同年9月10日にムネアカオオアリの巣S/N:NESTCON01027(2012年6月14日に新女王アリを採集)に侵入させました。したがって、寄生してから5年経過したことになります。これは、①のT140906-40と同じ年数です。前回このコロニーについて触れた5月5日のブログ以降、コロニーの規模が拡大しました。小さな幼虫が多数見られる他、僅かに繭があります。

T140906-03の全体の様子
たくさんの小さな幼虫と僅かに繭が見える
たくさんの小さな幼虫と僅かに繭が見える

④S/N:T180919
昨年新たに寄生に成功したトゲアリの女王アリ(S/N:T180919)とクロオオアリのコロニー(S/N:B15002)です。(「たった1例のトゲアリの寄生を試みる」等を参照)
B15002の巣がある人工巣リトルアンテシェルフを小型水槽の中に入れています。
クロオオアリの働きアリに混じって、とてもたくさんのトゲアリの働きアリがいます。トゲアリの小さな幼虫が多数見られます。
(今年6月3日の様子はこちら 7月28日の様子はこちら

T180919の全体の様子
たくさんトゲアリの働きアリが見える
たくさんの小さな幼虫が見える

ところで、2013年以来、オオアリへのトゲアリの女王アリの寄生を数多く試みてきましたが、いずれも寄主のコロニーは小規模のものです。ところが、T180919が寄生したクロオオアリのコロニーのB15002は、比較的大きなコロニーでした。
このT180919の一例だけでは、断言はできないのですが、トゲアリが寄生するオオアリのコロニーが大きいと、より早くトゲアリの大きなコロニーができると言えそうです。

幼生虫は既に越冬様態に入る

クロオオアリは、成虫と小さな幼虫で越冬します。9月はまだまだ残暑が厳しい日があるのですが、9月の内に幼生虫は越冬の状態になっています。
今飼育しているクロオオアリの大きめのコロニーの様子を観察しました。既に繭は見当たらず、大きな幼虫もいません。

飼育している中で最も大きなコロニー B120614-86 9月28日撮影
2番目に大きなコロニー B15006 9月28日撮影
大きめのコロニー B110608-07 9月28日撮影
大きめのコロニー B14034+133 9月28日撮影
同上のコロニー

以上はクロオオアリの4つのコロニーの様子です。いずれも共通しているのは、幼虫は小さいということです。例外的に、写真の2枚目には、右側に少し大きくなった幼虫が1匹写っています。また、最後の写真には、中央左に少し大きめの幼虫が1匹、右側に卵が写っています。
これから幼虫が成長を始める春までには、随分と期間があることになります。それなのになぜ、成虫のみで冬越しをしないのでしょうか。春に育つ幼虫なら、女王アリはなぜ春になってから産卵をしないのでしょうか。

卵が産み落とされてから孵化するまでには、6月前後の時期で20日弱から1ヶ月弱かかります。ところが、春先に孵化するには、冬の地中の温度は9℃〜10℃前後ですから、1ヶ月では無理でしょうし、そもそも孵化できないとも考えられます。
室内の飼育環境での観察ですが、3月には幼虫は成長を始めています(参照1 参照2 参照3)。そして、地上にクロオオアリが現れるのは3月下旬で、それ以降は地上で餌を捕ることができるようになります。(室内の飼育環境下で、前年の秋以降タンパク源を与えてなくても、春先から幼虫が成長するようです。参照
つまり、前年中に孵化しておけば、春先の早い時期から育ち始めることができるようになります。それが、前年中に孵化して、幼虫で冬を越す利点なのかも知れません。

移植したB16013が生きていた

今年の6月8日に庭に移植し、6月18日に引越先が分かったクロオオアリのコロニーのB16013ですが、この3ヶ月ほど巣口を出入りする働きアリの姿を見ていませんでした。既に滅亡してしまったのではないかと心配でした。
ところが、9月25日、巣口の周辺にクロオオアリの働きアリが複数いるのを見かけました。その内の1匹は、巣口の近くに設置している蜜器の中にいました。そこで、その蜜器に蜜を入れました。蜜を吸ったこのアリは、帰路につきましたが、後を追うとB16013の引越先の場所へ戻って行きました。別のアリには、岩に蜜を垂らし、この蜜を吸ったクロオオアリも、B16013の引越先の場所へ戻って行きました。B16013は、滅亡してはなかったのです。
やがて、巣口近くから2匹のクロオオアリが出てきました。

15時57分撮影

先頭のアリが、リズミカルに、時々、腹部を地面に着けながら歩いていました。その後を働きアリが1匹付いて行きました。先頭のアリが、先程の蜜器へと案内しているようです。ところが、道案内を間違えてしまいました。蜜器を載せている測量杭のすぐ横に岩があり、その岩を登り始めたのです。

測量杭のすぐ横にある岩に登って行くアリたち 15時59分撮影

しばらくの間、先頭のアリは、岩を歩いて付いてくる仲間を案内していましたが、間違いに気づいたのか、案内するのをやめたようで、付いてきていた仲間をそのままにして、元の方向へ戻って行きました。そして、案内をしていたアリだけが、蜜器にたどり着きました。これまでに、道しるべを付けながら、餌場に仲間を案内するクロオオアリを数多く見てきましたが、案内を間違えるのを見るのは、これが初めてでした。
巣口と蜜器との距離はとても短いのですが、それでも途中の大部分は芝地で、歩きづらくなっていました。そこで、「高速道路」を作りました。

木片を使った高速道路 16時52分撮影

やがて、この高速道路を端から端まで使うクロオオアリが現れました。

高速道路を使って巣に戻るクロオオアリ 17時17分撮影

その頃には、蜜器にやってくるクロオオアリは多くなっていました。

6匹のクロオオアリが写っている 17時17分撮影

新たなトゲアリのコロニーを発見

滋賀県でのトゲアリの新女王アリの採集に失敗してしまいましたので、岡山の自宅近くで採集できればと思い、9月25日、3年前に見つけていたトゲアリの棲息場所へ出かけました。毎年この場所で、新女王アリの採集を試みていますが、これまでに一度も女王アリを見かけることはありませんでした。今日の観察の限りでは、働きアリの活動範囲が以前よりも狭く、クヌギと思われる樹にのみトゲアリがいました。辺りに新女王アリはいませんでした。

クヌギと思われる樹の幹を行き来するトゲアリ 9時13分撮影
中央がトゲアリがいる樹 地面近くが洞になっている 9時21分撮影

これまでも、この公園の隅々を探しても他の箇所でトゲアリを見つけることはできませんでしたが、念のために、新女王アリを探しにいつもの歩道を歩いていると、開けた幅広の道の脇でトゲアリの働きアリを見つけました。

道路脇のコンクリートの上を歩くトゲアリの働きアリ 9時25分撮影

近くの樹を見ると、幹を行き来するトゲアリがいました。

幹を行き来するトゲアリの働きアリ 9時26分撮影
外灯の支柱の左にある樹にトゲアリがいる

トゲアリの巣はどこにあるのでしょうか。蜜があれば、蜜を与えて帰路を追えば良いのですが……、そんなことを考えていると、何かを咥えて足早に歩いているトゲアリの働きアリがいました。

何かを咥えている 9時35分撮影

後を追ってみると、樹を登り始めました。

樹を登って行くトゲアリ 9時36分撮影

どうやら巣は、樹の上にあるようです。そこで、その樹の上方を見るのですが、そもそも根元の幹が細い樹ですから、樹の上方はますます細くなっていて、トゲアリが棲めそうな洞のようなところも見当たりません。後を目で追っていたトゲアリも樹の上の方で見失ってしまいました。結局、巣のありかは分かりませんでした。

樹の上方(中央の樹) 幹が細い

ところで、地上を歩いているトゲアリを見ていると、このトゲアリたちが何をしに地上を歩いていたのかが分かりました。近くで、何かの昆虫の死体にたくさんのトゲアリが集まっていました。

何かの昆虫の死体らしい 9時46分撮影

落ち葉を取り除くと、死体の他の部分も見えるようになりました。カマキリの死体でした。

カマキリの鎌が見える 9時49分撮影

先程、何かを咥えて樹に登って行ったトゲアリは、このカマキリを解体した身体の一部を咥えていたようです。確かに、咥えていた物は色が緑がかっていました。
何匹かが、同じように何かを咥えて樹へと向かっていましたので、その内の一匹から、その咥えていたものを取り上げました。自宅に帰ってから、実体顕微鏡で見ると、何かの昆虫の形ではなく、かみ砕かれた身体の一部でした。

働きアリが咥えていた物 実体顕微鏡で撮影

今回トゲアリを発見した箇所は、広い歩道に面していて、平地になっているため、比較的観察しやすい場所でした。ただ、コロニーの規模は、小さいように感じました。

この公園で、2つ目のトゲアリのコロニーを発見しましたので、それぞれにシリアル番号を付けることにしました。3年前に見つけたコロニーをTT20160513、今回新たに見つけたコロニーをTT20190925とします。「TT」の初めのTはトゲアリを、2番目のTは発見地を、数字は発見日を表します。

トゲアリの新女王アリ 採集できず

2015年の10月に滋賀県彦根市から岡山市に引越する以前は、自宅の極近くでトゲアリの新女王アリを採集していたのですが、今ではその機会が限られています。今年は、9月17日から20日まで彦根市に滞在し、トゲアリの新女王アリの採集を試みましたが、不運にも1匹も採集することができませんでした。天候次第では、更に滞在を延ばすこともできましたが、21日から3日間は、台風の影響もあって雨天か曇になる予報でしたので、採集を諦めざるを得ませんでした。
トゲアリの結婚飛行は、早朝の早い時刻に行われるので、午前中から採集が可能です。そこで、9月18日の午前9時半頃に、いつもの採集場所に出かけました。かつてから巣があると思われる3箇所の樹を見ると、A巣の樹ではトゲアリは見当たりませんでした。B巣の樹には、比較的多くのトゲアリがいました。C巣の樹にもトゲアリがいましたが、僅かでした。

B巣の樹の様子 9月18日9時48分撮影
C巣の樹の様子 画面左下の窪みに何匹かのトゲアリが見える 9月18日9時49分撮影

それらの樹の麓の舗装された道を見ると、そこにはほとんどトゲアリの姿はありませんでした。18日からの3日間を通して、この状況は変わらず、全体として目にするトゲアリの数が少なく感じました。

毎年たくさんの女王アリが採集できていた箇所の一つ だが女王アリの姿はなかった 9月20日9時29分撮影

今年の9月の天候は、これまでにない暑さでしたので、やっと涼しくなってきたこの時期に、採集できるのではないかと期待していたのですが、見事に裏切られてしまいました。
ところで、9月16日からは、連日最高気温が30℃を下回っていました。トゲアリの新女王アリは、結婚飛行後、数日間は地面を歩くことがありますので、18日に1匹も姿がなかったことから、16日や17日に結婚飛行があったとは考えにくいでしょう。
では、結婚飛行は16日以前に行われていたのでしょうか、それともこれからなのでしょうか。とても暑い日が続いた9月でしたが、それでも少し涼しいと感じた日もありました。そんな日に結婚飛行を済ましたのでしょうか。或いは、やっと涼しくなってきたので、これから結婚飛行に向けての準備のようなことが始まるのでしょうか。
それとも、この場所での新女王アリの採集は2013年から行っているので、今年で7年目になりますから、コロニーが複数あるとしても、それらのコロニーが晩期を向かえて消滅しつつあるのでしょうか。
そんな風にいろんなことを考えてしまいました。

ここで、当地で採集を始めた2013年から2018年までの採集日と採集匹数をまとめておきます。

2013年 9月 12日   7匹
       13日   5匹
       14日   6匹
       17日   5匹
       19日  66匹
       21日  22匹
       24日  27匹
       25日   6匹
         計 144匹

2014年 9月  2日   1匹
        3日   3匹
        6日  44匹
        7日   2匹
        8日  27匹
       10日   1匹
       12日   1匹
       13日   1匹
       14日   3匹
       16日  24匹
       17日   4匹
         計 111匹

2015年 8月 28日  17匹
       29日  4匹
       31日  2匹
    9月  2日   3匹
        5日   1匹
       12日  21匹
       20日  28日
       28日  10匹
          計 86匹

2016年 9月 3日   1匹
       4日   1匹
       7日  46匹
         計 48匹

2017年 9月11日  23匹

2018年 9月18日   1匹
      19日  41匹
        計 42匹

単独女王アリが1年ぶりに子育てに成功 他コロニーの働きアリとは共存できず

シリアル番号BH18019は、2018年5月15日に、岡山県の蒜山高原で採集したクロオオアリの新女王アリです。通常は働きアリが多数誕生している同年の7月22日時点でも、働きアリは生まれていませんでした。その後、ほぼ1ヶ月後の8月20日には、繭が1個、幼虫が4匹いましたが、この時点でも働きアリは生まれていませんでした。やっと10月6日の時点で働きアリが1匹になっていましたが、幼生虫はいなくなっていました。その後、その1匹の働きアリも死んでしまいました。
BH18019は、このように子育てに失敗してはいるのですが、それでも産卵ができ、下手ですが子育てができないわけではないのです。そこで、クロオオアリ同士で共存させて、新たなコロニーが作れるかどうか試してみることにしました。

左からBH18019、BM19022、BM19029の各コロニー

今年新女王アリを採集したクロオオアリのコロニーの中で、女王アリが死んでしまったコロニーが2つあります。BM19022は、8月27日には女王アリが死んでいて、働きアリが12匹、繭が7個で幼虫と卵がありました。BM19029は、7月23日に女王アリが死に、その時は働きアリが4匹と幼生虫がいました。

8月27日撮影 BH18019 繭1個と幼虫が2匹(その内1匹は大きい)
8月27日撮影 BM19022 働きアリが12匹と繭など幼生虫が多数
8月27日撮影 BM19029 働きアリが12匹と幼生虫

8月27日、グッピー水槽の中に、飼育ケースのままBH18019とBM19022を同時に入れ、2つともケースの蓋を取りました。しばらくすると、BM19022の飼育ケースから出てきた1匹の働きアリが、BH18019のケースの中に入り、あっという間に大きな方の幼虫を咥えてケースから出て行きました。女王アリは、あまりに突然のことで、防ぎようがなかったようです。

BH18019の幼虫を咥えて、自分の巣がある飼育ケースを探して歩き回るBM19022の働きアリ 8月27日14時01分撮影
幼虫が奪われた後のグッピー水槽の中の様子 右がBH18019 大きな幼虫がなくなっている 14時7分撮影

その後、更にBM19022の働きアリが1匹、BH18019のケースの中に入ってきました。働きアリも女王アリも戦いを避けようとはせず、戦いが始まりました。戦いは終始女王アリの方が優勢のようでした。やがて、働きアリは殺されてしまいました。

14時09分撮影

それから15日後の9月11日、BH18019に働きアリが1匹生まれていました。

働きアリが1匹生まれていた 繭のように見えるのは繭の殻 9月11日午前6時34分撮影

BM19022は、働きアリが3匹になっていました。2週間強の間に12匹から激減しています。繭もあったのですから、繭から羽化した働きアリもいたはずなのに、とても少ない数です。

左がBM19022 働きアリが3匹になっていた 幼生虫も少ないようだ

BH18019のケースの中を見ると、クロオオアリの働きアリと思えるたくさんのバラバラの死骸がありました。

たくさんのクロオオアリの死骸

どうやら、BH18019の女王アリがBM19022の働きアリを殺したようです。ちなみに、BM19029の働きアリは、15日前と変わらず、12匹いました(繭から羽化する成虫がいたはずですが)。
9月11日時点の3コロニーの幼生虫の様子は以下のようです。

BH18019 卵3個と死んでいる卵2個 繭は抜け殻
BM19022 繭が1個と幼虫が2匹
BM19029 小さな幼虫が6匹と大きな幼虫が1匹

さて、2018年採集の単独女王アリが1年ぶりに子育てに成功したので、BM19022との合併の試みは終了することにしました。そして、上記のBM19022とBM19029の幼生虫のみをBH18019の中に入れました。女王アリは、その幼生虫を初めから我が子であるかのように、迷う様子もなくすんなりと受け入れました。

BH18019のケースに幼生虫を入れた時には幼生虫は散乱していたが、働きアリの手助けなく、女王アリが幼生虫を一箇所に集めた

季節外れの有翅女王アリ

9月5日の16時過ぎに、庭でクロオオアリの有翅女王アリを1匹見つけました。辺りを見回しましたが、羽アリはこの1匹だけのようでした。

有翅女王アリ 9月5日16時19分撮影

庭の芝刈りをしている時でしたので、写真を撮るだけになり、その後どうなったかは観察していません。