「ありの行列」を考える その1

光村図書の3年生の国語教科書に、『ありの行列』という教材があります。もうずいぶん古くからある教材で、私が知る限りでは1977年以前からありました。この教材は、光村図書の教科書のために大滝哲也氏が書き下ろした文章で、ハーバード大学教授のウィルソン氏(Edward Osborne Wilson)の研究に基づいて書かれています。

その文章の中で、「ふしぎなことに、その行列は、はじめのありが巣に帰るときに通った道すじから、外れていないのです。」という記述があります。最初に餌を見つけたアリが巣に戻ったあと、巣から出てきたアリたちは、最初に餌を見つけたアリが歩いた道通りに餌へと向かうと言うことです。
また、研究の結果、分かったこととして「はたらきありは、えさを見つけると、道しるべとして、地面にこのえきをつけながら帰るのです。ほかのはたらきありたちは、そのにおいをかいで、においにそって歩いていきます。そして、そのはたらきありたちも、えさをもって帰るときに、同じように、えきを地面につけながら歩くのです。」と書かれています。

この考えは、今日でも正しいとされています。次に引用するのは、1988年に書かれた著書からではありますが、次のような記述があります。

「一匹のアリが砂糖を見つけると、仲間を呼んできてたちまち黒山のアリだかりができることは、皆さんもご存知のとおりである。一昔前までは、餌を見つけたアリが触角で仲間に餌場を知らせるものと思われていた。二匹のアリが触角と触角を触れ合って挨拶する姿はよく見うけられるから、この話はいかにももっともらしく聞こえる。しかし、実際はまったく違った方法を用いていることがわかってきた。餌を見つけた働きアリは、尻の先から匂物質を分泌して、それを一定間隔で地面につけながら巣に戻るのである。匂物質は次第に拡散してアリの通った道を中心に匂いのトンネルができる。このような匂いのトンネルは時間とともにうすれ、数分後には消失してしまう。そのわずかな時間の間に別のアリがこの匂いの道を横切ると、そこを逆にたどって餌を見つけることができるのである。そしてまた、匂いの道しるべをつけながら巣に戻っ ていく。この方法だと、餌のある間は次々に仲間が集まってきて、匂いの道は強化される。しかし、一たん餌がなくなると、だれも匂物質を出さなくなるので、匂いの道は自然に消えてしまう。 実に巧妙な方法である。」

ここでは、これらの説に共通している次の2点に注目したいと思います。

①最初に餌を見つけたアリは、匂いの道しるべを付けながら巣に戻る。
②餌を見つけた2匹目以降のアリも、巣に戻る際には匂いの道しるべを付けながら巣に戻る。

上記2点は、極く普通に見られるアリについて言えることとされているのですが、本当にそうなのでしょうか。
私は主にクロオオアリとムネアカオオアリの生態を観察しているのですが、ここでは、クロオオアリに限ってと言う限定付ですが、上記①②はいずれも、誤りであると考えています。では、どう考えているかと言うことですが、次のような仮説を立てています。

⑴最初に餌を見つけたクロオオアリは、帰路道しるべを付けずに巣に戻る。
⑵⑴のクロオオアリは、仲間を連れて餌場へ向かう。その際、道しるべを付けながら進み、その匂いを追いながら、仲間がついてくる。
⑶その帰りも、いずれのクロオオアリも道しるべは付けずに帰巣し、その後餌場へ向かう際、新たな仲間を引き連れて出かける際には、道しるべを付けながら進み、その匂いを追いながら、新たな仲間がついてくる。

以後、幾回かに渡って、これらの仮説を検証してみたいと思います。

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