「誘拐」されたクロオオアリは巣に戻れるか(1)のその後

「誘拐」されたAW1が巣に戻れたのは10時37分でした。それから12分後の10時49分に、AW1と思われるクロオオアリが巣穴から出てきました。これが往路としては1回目と数えます。

写真左にクロオオアリの姿が見える 10時49分撮影

後を追ってみましょう。

10時50分撮影

迷うことなく西へと進みます。やはりこのアリは、AW1のようです。仲間を引き連れることなく、道しるべ(腹部の先をリズミカルに地面に付けながら歩く)は付けていません。

10時50分撮影

芝生の中を歩いていきます。コンクリートの部分はU字溝ですが、蜜器を設置している測量杭は、このU字溝のすぐ脇の芝生の中にあります。より早く蜜のある場所へ行くには、U字溝の上を歩くのがよいのですが、測量杭に突き当たるにはこのように歩くのが無難です。
ところで、AW1が蜜を吸って巣に戻る際に歩いた道筋と、今の蜜器へと向かう際の道筋を比べてみましょう。

AW1が蜜を吸って巣に戻る際に歩いた道筋 10時34分撮影

すると、上の2つの写真は、横方向で見ればほぼ同じ位置なのですが、縦方向で見ればかなり離れています。つまり、蜜のある場所からの帰りの道と、蜜のある場所へ行く道は、全く異なっていることが分かります。AW1は、蜜のある場所からの帰りの道筋を覚えていて、あるいは何らかの道しるべを付けていて、巣に戻ったわけではないことが分かります。AW1は、巣から蜜のある場所へ行く最短距離、つまり方位が分かっていると考えられます。

再びU字溝の上を歩く 10時51分撮影
U字溝に接している杭に登る 10時51分撮影

U字溝に接している丸杭に登り始めました。すぐに引っ返しましたが、蜜器のある測量杭と間違えたのでしょうか。ではなぜこのような間違いを起こすのでしょうか。これは一つの仮説ですが、巣からの蜜がある場所への方位は分かっていても、距離が分からなかったと考えることもできるでしょう。

再び芝生の中を歩く 測量杭まではもう少し 10時52分撮影
ついに蜜器に到着 10時53分撮影

巣を出てから4分で蜜器に到達しました。では、引き続き観察を続けましょう。

帰路につく これが帰路としては2回目 10時58分撮影
巣に戻る 11時3分撮影
これが往路としては2回目 11時18分撮影
蜜器に着く 11時20分撮影
帰路につく これが帰路としては3回目 11時27分撮影
巣に戻る 11時30分撮影
これが往路としては3回目 11時43分撮影
やはり芝生の中を歩いている 11時45分撮影
蜜器に着く 11時46分撮影
帰路につく これが帰路としては4回目 11時56分撮影
巣に戻る 11時59分撮影

ここで往路と帰路にかかった時間を一覧にしてみましょう。

回数帰路往路
1回目26分4分
2回目5分2分
3回目3分3分
4回目3分

こうして見ると、生活圏を外れていたと思われる1回目の帰路を除くと、大変素早く蜜と巣との間を往復していたことが分かります。その歩く様子を観察すると、道しるべを付けてはいませんでした。それにもかかわらず、1回目の往路を除けば、歩く道筋はほぼ同じでした。ただ、全く同じではないのです。つまり、道しるべに導かれて定まった軌道の上を辿って歩いているのではなく、目的地に向かってほぼ最短距離で任意に歩いていたと言えます。

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