K地の過去の採集日と気候

過去にオオアリの新女王アリを採集した日と気候との関係をK地(長野県)で見てみます。
採集日は次のようになります。

2011年6月8日 クロオオアリ(B)とムネアカオオアリ(R)を合せて124匹採集 この日がメインの結婚飛行日と考えられる

2012年6月14日:B58  13日から14日:R35  6月14日がメインと考えられる

2013年 6月5日・6日にBを10匹採集だが、採集時の状況から6月4日に結婚飛行があったと考えられる

2014年 過去ブログの記載から、5月31日か6月1日がメインの結婚飛行日と考えられる
 5月28日:B3 R4
 5月29日:B0 R1
 5月30日:B1 R5
 6月02日:B118 R31(3日午前中採集分を含む)
 (6月03日:B50 R14 この日の夕刻には結婚飛行はなかった 2日に含める)

2015年5月26日:B112 R45  27日:B42 R55  5月26日・27日がメインの結婚飛行日と考えられる ※26日採集表記は実際には27日の午前中に採集 27日の午前中なので、26日に結婚飛行が行われた可能性が高いため、そのように表記している

2016年 採集数が少ないため、メインの結婚飛行日が特定できず
5月23日:B7 R0
5月24日:B0 R2
6月01日:B4 R0

2017年5月30日:B205  R54  この日がメインの結婚飛行日と考えられる

次にこの採集日と気候との関係を一覧にしてみます。測量地点はK地ではなく、北におよそ11km程離れたところにあります。

表記の例 31.3/10.2/0.0 は 最高気温(℃)/日照時間(時)/降水量(mm) を表す

前々日前日当日翌日
20116月8日28.1/10.8/0.022.4/3.0/0.026.7/4.9/0.027.1/6.7/0.0
20126月14日21.1/0.0/1.025.6/6.3/0.030.1/9.2/0.028.0/9.2/0.0
20136月4日25.5/2.6/0.028.9/11.1/0.030.3/11.7/0.029.0/9.9/0.0
20145月31日・6月1日27.7/9.9/0.029.6/11.2/0.031.0/12.7/0.0
33.6/12.8/0.0
32.4/10.6/0.0
20155月26日・27日25.4/6.9/0.027.4/5.2/0.029.0/12.3/0.0
31.8/13.1/0.0
27.8/8.5/0.0
20175月30日26.7/11.6/0.028.1/13.3/0.031.3/10.2/0.028.2/4.9/0.0

2012年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる6月14日が、その年始まって以来の最高気温になっていて、6月を通しても最高気温でした。
2013年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる日が6月4日ですが、この日の最高気温の30.3℃は、5月9日、5月21日も最高気温が30.3℃でしたので、その年始まって以来の最高気温の3度目だったことになります。
2014年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる2日目の6月1日が、その年始まって以来の最高気温になっていて、6月を通しても最高気温でした。
2015年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる2日目の5月27日が、その年始まって以来の最高気温になっていて、5・6月を通しても最高気温でした。
2017年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる5月30日が、その年始まって以来の最高気温になっていて、5・6月を通しても最高気温でした。
ところで2011年はどうだったかというと、気候が上記の5年分とは違っていました。5月の最高気温は21日の29.9℃で、30℃に達しておらず、6月になって30℃を越えたのは、22日の31.1℃でした。この年は6月8日に採集できたのですが、結婚飛行がかなり分散していたと考えられます。

ここまでの分析で、とても興味深い「結婚飛行日の法則」とでも言えそうなきまりが明らかになってきました。つまり、

「クロオオアリとムネアカオオアリは、5・6月を通して最も高い気温の日に結婚飛行を行う」

というきまりです。これまでよく言われてきたことに、「雨が降った後の、少しじめじめとした、天気の良い、風がない日に結婚飛行が行われる」ということがあります。ですが、「雨が降った後」という点で言えば、2012年に前々日に雨が降っているだけで、その他の年では、前日も前々日も雨は降ってはいません。もちろん、これは、K地のオオアリについてという限定付きです。
今回のデータで分かったこのきまりを仮に「オオアリのメインの結婚飛行日の法則」と呼ぶことにします。但し、5月6月を通して、全ての日で観察したわけではありませんから、別の日に結婚飛行のピークがあったかも知れないということを否定することはできません。また、この法則が成り立つ条件としては、K地のみのデータですから、「K地における」という限定されたものになります。
では、この「オオアリのメインの結婚飛行日の法則」に基づき、事前にその年のその場所でのメインになる結婚飛行日を予測できるでしょうか。……それは、できません。と言うのは、この法則は、5月と6月が過ぎた後で言えることで、結果論だからです。そこで、天気予報から予測できる方法を考えます。仮に、30℃越えという視点でもう一度データを見てみましょう。

2012年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる6月14日が、その年初めて30℃を越えた日になっています。
2013年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる6月4日が、上記記載のように30℃を越えた3度目の日になります。
2014年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる1日目がその年初めて30度を超え、2日目も30℃を越えています。
2015年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる2日目の5月27日に初めて30℃を越えています。
2017年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる5月30日が、その年初めて30℃を越えた日になっています。

2013年は少し微妙ですが、その他の年では、その年初めて30℃を越えた日に結婚飛行が行われています。これなら、天気予報を結婚飛行日の指標にすることができます。つまり、

K地のオオアリは、その年初めて30℃を越える日に結婚飛行をすることが多い

と言えます。これを「オオアリのメインの結婚飛行日の指標」と呼ぶことにします。ただし、特定の観測地点(北におよそ11km程離れたところ)のデータであることが条件です。

ここで、オオアリになって考えてみましょう。これは人間も同様ですが、5月と6月を通して、その日の最高気温が最も高くなるということは分かりません。ですから、「法則」に従って結婚飛行を行うわけではありません。結果としてそうなったというだけのことです。次に「指標」については、アリが天気予報を見るわけではありませんが、その年になって、最も高い気温を感じることはできます。しかも、ある基準よりも高い気温になった時と言えます。その気温が、観測地点では30℃を越えるのですが、オオアリが棲んでいる場所では30℃を越えていたかどうかは調べていないので分かりません。ですが、オオアリの羽アリは、その年、それまでに感じたことのない高温で、ある基準を超える気温になった時、結婚飛行に飛び立つのです。ただ、その時、結婚飛行を行うかどうかの判断は、羽アリ自身がしているのかどうかは分かりません。巣口の周りの動きを見ると、その判断は働きアリがしているようにも見えるからです(「結婚飛行と働きアリ」)。

ところで、K地では今年はいつメインの結婚飛行が行われたのでしょうか。私が現地を訪れたのが6月の12日から14日で、13日に観察を行ったのですが、既に結婚飛行が済んでいることが分かりました。この「法則」と「指標」から考えると、その日は6月になってからではなく、5月25日でした。5月25日は、最高気温が31.7℃になり、今年で初めて30℃を越え、5月と6月(28日まで)の中で、最も高い気温を記録しているからです(5月27日も31.7℃)。5月25日にK地でメインとなる結婚飛行が行われたかどうかを確かめる術を持ってはいませんが、同じ長野県の別の場所で、この日メインとなる結婚飛行が行われたという話を伝え聞いています。このことから、「法則」と「指標」通り、5月25日に、K地でもメインとなる結婚飛行が行われた可能性は高いでしょう。

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