トゲアリ物語(07)

前回、トゲアリがムネアカオオアリを抱きかかえて、前脚で双方の体を撫で回したと書いたが、その前脚の構造を拡大写真で見てみよう。

前脚に細かい毛がたくさんついている

写真で見るように、前脚には細かい毛がたくさんついている。この毛にムネアカオオアリの体に付着しているその家族特有の分泌物を付け、トゲアリ自身の体に付着させているのだろう。そのことで、ムネアカオオアリの働きアリは、トゲアリの女王アリに対して仲間の一員であるかのように行動するのであろう。

さて、前回まで二度、トゲアリには2種のオオアリの巣に侵入する機会を与えたのだが、二度とも失敗してしまった。いや、実は失敗したという言い方は正しくないのかも知れない。失敗と思っているのは、私なのであり、自然界では「私」はトゲアリに働き掛けることはできないのであるから、引き続き事態を見守るべきではなかったのか。せっかく手に入れたトゲアリを失いたくないという私の身勝手な配慮が、考えればとても不自然なことだったのではないだろうか。自然の営みはもっと厳しいはずで、その自然体を観察してこそ意味のあることだったのではないだろうか、そんなふうに思えてきたのだ。

そこで、今度は覚悟して、トゲアリがどうなろうと助けないでおこうと決めた。

3度目は、どの巣に侵入させようかと一旦は迷ったが、既に前回のムネアカオオアリの家族の分泌物をトゲアリが体に付けていることを考え、前回と同じムネアカオオアリの巣に二度目のチャレンジをさせることにした。採集から5日目の10月2日のことである。いよいよ後戻りのできない真剣勝負が始まるのだ。

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