トゲアリ物語(11)

それから1時間ほど経った午後2時48分、人工巣インテリアリの中にトゲアリがいないのに気付いた。ムネアカオオアリの女王アリは、元気な様子で、インテリアリの中にいる。傷は負っていない。

何もなかったかのように、いつも通りにしている

では、トゲアリはどこに行ったのだろう。餌器のモートフィーダーにもいないので、裏側のホースの中を見るとそこにトゲアリはいた。

ムネアカオオアリの働きアリがホースの中を行き来しているが、戦いは起こらない。時々、トゲアリの方からと思えるが、口移しを要求している。口移しは、働きアリから拒否されることの方が多かったが、口移しをしている場面も観察できた。

1分15秒の動画 後半では口移しをしている

2時54分には、トゲアリはホースの中から餌器モートフィーダーの方へと移動する。そこでも、口移しを行なっていた。

口移しができていた

翌日10月4日、朝の7時前に見ると、トゲアリは働きアリや幼虫などと一緒に馴染んだ感じでいた。

トゲアリはムネアカオオアリの中に溶け込んでいるように見える(6時51分撮影)

けれども、下の写真は8時25分に撮影した写真だが、トゲアリは明らかにムネアカオオアリから攻撃されている。

ムネアカオオアリから攻撃を受ける(8時25分)

そしてまた、9時過ぎには、ムネアカオオアリの中に馴染んでいるのである。

ムネアカオオアリと一緒にいる

トゲアリは、ムネアカオオアリの中で不安定な位置にあることが分かる。こうした状況は、その後も何日も続いた。

下の写真は、5日後の10月9日に撮影したものだが、トゲアリは攻撃を受けながらも、ムネアカオオアリと共に暮らしていた。

時々攻撃を受けながらも一緒に暮らしている(午前9時14分撮影)

下の動画は、同日の午前9時52分から撮影したものだが、かなり激しく攻撃を受けている。

かなり激しく攻撃を受けている(1分間の動画)

この様子を見て、私には気になることがあった。トゲアリの左の後脚を咬んでいる働きアリは、咬んだまま死んでいるように見える。また、トゲアリの右の触角を咬んでいる働きアリの腹部を、咬んでいる仲間の働きアリがいて、咬まれている腹部が気持ち変形しているように見える。これらはどういうことだろう。

その35分前に撮影した動画を見てみよう。

35分前の動画(30秒)

この動画を見ると、先程のトゲアリの左の後脚を咬んでいた働きアリはまだ元気だが、その働きアリは後脚を他の働きアリに引っ張られている。それだけではなく、腹部を更に他の働きアリに幾度も咬まれているのだ。

その35分後には死んだようになっていたわけだが、トゲアリが攻撃されている態勢から考えて、トゲアリがこの肢を咬んでいる働きアリを咬み殺すことはできないと思われる。だとすると、仲間の働きアリに殺されたのか、疑問が湧いてくる。

写真には収めていないが、トゲアリとの同居が始まってから、ある働きアリが複数の仲間の働きアリに体中を嘗められているところをみたことがある。嘗められている働きアリはそんな時じっとしていた。こんな光景は、人間の部屋に迷い出ていた働きアリを元の巣が分からないままに、誤って他の人工巣に入れた時と似ている。入れられた働きアリは、その巣の働きアリと出会うと、激しい攻撃を受けはしなかったが、複数の働きアリに体を嘗められた。その働きアリは、逃げるとも反撃するともなく、嘗められるまま体を少し丸めながら、されるままになっていた。そしてその翌日あたりに死んでいるのだ。

その日の午後3時過ぎにモートフィーダーの中を見てみると、朝のうちはあれほど攻撃を受けていたにも関わらず、何もなかったかのように、モートフィーダーの中は平穏であった。

またまた平静を取り戻していた(15時3分撮影)

攻撃を受けたり、受け入れられたりの繰り返しであることが分かる。トゲアリはあれからはケガをしていない。また、以前同様に元気にしているのだ。

そして、上の写真から少し離れたところに、働きアリの死体があった。あのトゲアリの後ろ肢に咬みついていた働きアリなのだろう。

死んでいる働きアリ(15時4分撮影)

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