B16015が引越

6月19日に、自宅の庭に、ミツバチの巣箱を使って移植したクロオオアリのコロニーB16015が、引越を始めていました。
気づいたのは6月29日のことで、早朝に庭を見回っていた時のことでした。

6時35分撮影

先ず目に付いたのは、繭を運んでいるところでした。芝地の斜面を上へと歩いていきます。少しして、そこより下の方を見ると、同じく繭を運んでいる複数のクロオオアリがいました。

6時37分撮影

これは、6月19日に移植したコロニーが引越をしているところだろうと思い、更に下の方にあるミツバチの巣箱を見ると、ちょうど仲間を咥えて歩いていくクロオオアリがいました。

6時38分撮影

やはり、B16015が引越を始めているようです。もう一度斜面の上の方を見ると、階段として踏み石にしているコンクリートブロックと芝生の間に繭を引きずり込んでいました。

6時40分撮影

後に続くクロオオアリを観察しても、同じ場所で繭を引き込んでいきます。この場所に巣を作ったようです。その場所は、コンクリートブロックの階段の上から2番目でした。

上から2段目のコンクリートブロックに接する場所に巣を作ったようだ 巣の場所はコンクリートブロックの中央より右寄りにある

幼虫を運び出しているところも見ました。

6時50分撮影

初めに引越に気づいてから2時間ほど経っても、まだ繭を運び出しているところを見ました。

8時31分撮影

この引越はいつから始まっていたのか、また何時頃終わりそうなのかが全く分かりませんでした。ミツバチの巣箱の蓋を開けて、人工巣アンテネストを見ると、まだ引越前とほとんど様子が変わりませんでした。引越は始まってまだそれほど時間が経っていないように思えました。

8時53分撮影

引越の際、女王アリがどのようなタイミングで移動するのかを観察したかったのですが、これ以上時間を取って観察しても、しばらくの間は女王アリの引越に出会せないように思え、9時に観察を終了しました。

それから、1日置いて7月1日、ミツバチの巣箱を開けてみると、アンテネストの中のアリの部屋が空になっていました。

15時40分撮影

2匹ほどアンテネストの中で働きアリを見ましたが、女王アリも含め引越は既に完了しているようでした。
引越先の巣の場所は分かってはいましたが、巣口を特定するために、コンクリードブロックに接する芝を刈りました。すると、コンクリートブロックの1つの穴が一部むき出しになり、穴の中から働きアリが飛び出してきました。

16時7分撮影

コンクリートブロックの穴を巣として利用しているのかも知れません。だとすると、上下左右の4面はコンクリートに覆われ、安全が確保されていると思われます。
芝を刈ったために、不用心にも空いてしまった前面の穴を塞がなくてはならなくなりましたが、辺りには穴を塞ぐ材料が無いように思いましたので、真砂土で周囲を覆いました。

出入り口が残るように真砂土を周囲に被せた 16時18分撮影

1時間ほど経つと、巣口は適度に塞がれていました。

穴を塞ぐ材料として、土の他、芝も利用されていた 17時25分撮影

今回の引越先は、意外にも移植した場所からかなり離れた場所でした。

引越の全景 上から2段目のコンクリートブロックの横に引越先の新巣の巣口がある 葉の陰で見えないが遠方中央左に引越元のミツバチの巣箱がある

直線距離にして7.8mです。人間にとっては極近くですが、クロオオアリにとっては、たいそうな距離です。上掲の6月29日の8時31分撮影の繭を咥えたクロオオアリの足跡を追ってみると、ミツバチの巣箱から新巣の巣口に到着するまで、17分強かかっていました。直線距離を使って計算するのは必ずしも妥当ではありませんが、分速にするとおよそ46cm/分になります。この数値は、繭を運んでいたとは言え、クロオオアリの通常の歩く早さからするとかなり遅い数字です。その原因として考えられるのは、主に芝生の上を移動したからでしょう。もっとも、巣口から下方にあるコンクリートブロック9箇所については、全て平面を横断していました。これはクロオオアリなりの知恵のようなものなのでしょう。
どのような過程で、こんなにも移動するには不便な場所を見つけ、移動先として選んだのか興味深いところです。
ところで女王アリは引越の過程のどの時点で移動したのでしょうか。今回は、というか今回もなのですが、ついに出会すことはできませんでした。私がひそかに思っていることは、女王アリが引っ越すのは夜間なのではないかということです。鳥に襲われるのが一番危険だと思うのです。

水辺に涼を求めるトゲアリ

アリが水辺にやって来ることについては、「アリは水場が好き?!」で触れていますが、気温が異常に高くなると、一層多くのアリが水辺にやって来ます。
アリを飼育している部屋は2階にあり、西日を受ける位置にありますので、夏に近づくと室温がとても高くなります。30℃を越える時には、エアコンをつけることにしていますが、6月29日の昼過ぎ、エアコンをつけていない時、室温が32℃を越えていました。

室温が32℃を越えている

この時、アンテグラウンドⅡ型のトゲアリの様子を見ると、水槽に多数のトゲアリが集まっていました。

13時24分撮影

日頃はこんなにも多くのトゲアリが水辺に来ていることはありません。よく見ると、幼虫まで運んできていました。

13時27分撮影

こんなことは普通ないことです。写真には撮っていませんが、巣の本体では、いつものトゲアリの塊がほどけた状態になっていました。

K地の過去の採集日と気候

過去にオオアリの新女王アリを採集した日と気候との関係をK地(長野県)で見てみます。
採集日は次のようになります。

2011年6月8日 クロオオアリ(B)とムネアカオオアリ(R)を合せて124匹採集 この日がメインの結婚飛行日と考えられる

2012年6月14日:B58  13日から14日:R35  6月14日がメインと考えられる

2013年 6月5日・6日にBを10匹採集だが、採集時の状況から6月4日に結婚飛行があったと考えられる

2014年 過去ブログの記載から、5月31日か6月1日がメインの結婚飛行日と考えられる
 5月28日:B3 R4
 5月29日:B0 R1
 5月30日:B1 R5
 6月02日:B118 R31(3日午前中採集分を含む)
 (6月03日:B50 R14 この日の夕刻には結婚飛行はなかった 2日に含める)

2015年5月26日:B112 R45  27日:B42 R55  5月26日・27日がメインの結婚飛行日と考えられる ※26日採集表記は実際には27日の午前中に採集 27日の午前中なので、26日に結婚飛行が行われた可能性が高いため、そのように表記している

2016年 採集数が少ないため、メインの結婚飛行日が特定できず
5月23日:B7 R0
5月24日:B0 R2
6月01日:B4 R0

2017年5月30日:B205  R54  この日がメインの結婚飛行日と考えられる

次にこの採集日と気候との関係を一覧にしてみます。測量地点はK地ではなく、北におよそ11km程離れたところにあります。

表記の例 31.3/10.2/0.0 は 最高気温(℃)/日照時間(時)/降水量(mm) を表す

前々日前日当日翌日
20116月8日28.1/10.8/0.022.4/3.0/0.026.7/4.9/0.027.1/6.7/0.0
20126月14日21.1/0.0/1.025.6/6.3/0.030.1/9.2/0.028.0/9.2/0.0
20136月4日25.5/2.6/0.028.9/11.1/0.030.3/11.7/0.029.0/9.9/0.0
20145月31日・6月1日27.7/9.9/0.029.6/11.2/0.031.0/12.7/0.0
33.6/12.8/0.0
32.4/10.6/0.0
20155月26日・27日25.4/6.9/0.027.4/5.2/0.029.0/12.3/0.0
31.8/13.1/0.0
27.8/8.5/0.0
20175月30日26.7/11.6/0.028.1/13.3/0.031.3/10.2/0.028.2/4.9/0.0

2012年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる6月14日が、その年始まって以来の最高気温になっていて、6月を通しても最高気温でした。
2013年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる日が6月4日ですが、この日の最高気温の30.3℃は、5月9日、5月21日も最高気温が30.3℃でしたので、その年始まって以来の最高気温の3度目だったことになります。
2014年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる2日目の6月1日が、その年始まって以来の最高気温になっていて、6月を通しても最高気温でした。
2015年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる2日目の5月27日が、その年始まって以来の最高気温になっていて、5・6月を通しても最高気温でした。
2017年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる5月30日が、その年始まって以来の最高気温になっていて、5・6月を通しても最高気温でした。
ところで2011年はどうだったかというと、気候が上記の5年分とは違っていました。5月の最高気温は21日の29.9℃で、30℃に達しておらず、6月になって30℃を越えたのは、22日の31.1℃でした。この年は6月8日に採集できたのですが、結婚飛行がかなり分散していたと考えられます。

ここまでの分析で、とても興味深い「結婚飛行日の法則」とでも言えそうなきまりが明らかになってきました。つまり、

「クロオオアリとムネアカオオアリは、5・6月を通して最も高い気温の日に結婚飛行を行う」

というきまりです。これまでよく言われてきたことに、「雨が降った後の、少しじめじめとした、天気の良い、風がない日に結婚飛行が行われる」ということがあります。ですが、「雨が降った後」という点で言えば、2012年に前々日に雨が降っているだけで、その他の年では、前日も前々日も雨は降ってはいません。もちろん、これは、K地のオオアリについてという限定付きです。
今回のデータで分かったこのきまりを仮に「オオアリのメインの結婚飛行日の法則」と呼ぶことにします。但し、5月6月を通して、全ての日で観察したわけではありませんから、別の日に結婚飛行のピークがあったかも知れないということを否定することはできません。また、この法則が成り立つ条件としては、K地のみのデータですから、「K地における」という限定されたものになります。
では、この「オオアリのメインの結婚飛行日の法則」に基づき、事前にその年のその場所でのメインになる結婚飛行日を予測できるでしょうか。……それは、できません。と言うのは、この法則は、5月と6月が過ぎた後で言えることで、結果論だからです。そこで、天気予報から予測できる方法を考えます。仮に、30℃越えという視点でもう一度データを見てみましょう。

2012年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる6月14日が、その年初めて30℃を越えた日になっています。
2013年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる6月4日が、上記記載のように30℃を越えた3度目の日になります。
2014年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる1日目がその年初めて30度を超え、2日目も30℃を越えています。
2015年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる2日目の5月27日に初めて30℃を越えています。
2017年は、メインの結婚飛行があった日と考えられる5月30日が、その年初めて30℃を越えた日になっています。

2013年は少し微妙ですが、その他の年では、その年初めて30℃を越えた日に結婚飛行が行われています。これなら、天気予報を結婚飛行日の指標にすることができます。つまり、

K地のオオアリは、その年初めて30℃を越える日に結婚飛行をすることが多い

と言えます。これを「オオアリのメインの結婚飛行日の指標」と呼ぶことにします。ただし、特定の観測地点(北におよそ11km程離れたところ)のデータであることが条件です。

ここで、オオアリになって考えてみましょう。これは人間も同様ですが、5月と6月を通して、その日の最高気温が最も高くなるということは分かりません。ですから、「法則」に従って結婚飛行を行うわけではありません。結果としてそうなったというだけのことです。次に「指標」については、アリが天気予報を見るわけではありませんが、その年になって、最も高い気温を感じることはできます。しかも、ある基準よりも高い気温になった時と言えます。その気温が、観測地点では30℃を越えるのですが、オオアリが棲んでいる場所では30℃を越えていたかどうかは調べていないので分かりません。ですが、オオアリの羽アリは、その年、それまでに感じたことのない高温で、ある基準を超える気温になった時、結婚飛行に飛び立つのです。ただ、その時、結婚飛行を行うかどうかの判断は、羽アリ自身がしているのかどうかは分かりません。巣口の周りの動きを見ると、その判断は働きアリがしているようにも見えるからです(「結婚飛行と働きアリ」)。

ところで、K地では今年はいつメインの結婚飛行が行われたのでしょうか。私が現地を訪れたのが6月の12日から14日で、13日に観察を行ったのですが、既に結婚飛行が済んでいることが分かりました。この「法則」と「指標」から考えると、その日は6月になってからではなく、5月25日でした。5月25日は、最高気温が31.7℃になり、今年で初めて30℃を越え、5月と6月(28日まで)の中で、最も高い気温を記録しているからです(5月27日も31.7℃)。5月25日にK地でメインとなる結婚飛行が行われたかどうかを確かめる術を持ってはいませんが、同じ長野県の別の場所で、この日メインとなる結婚飛行が行われたという話を伝え聞いています。このことから、「法則」と「指標」通り、5月25日に、K地でもメインとなる結婚飛行が行われた可能性は高いでしょう。

新巣M巣の発見

6月19日に「ミツバチの巣箱で「移植」その3(B16015)」を行いましたが、その際、ミツバチの巣箱のすぐ傍にクロオオアリの巣穴があるのに気づきました。

新たに見つけたクロオオアリの巣穴 6月19日16時15分撮影
写真中央に巣穴がある

この場所に突如、巣穴が空いたと言う感じで、少し驚きでした。一番近いところにあるクロオオアリの巣はA巣で、5.7m離れていて、次に近いところにある巣はB巣で、7m離れています。これだけの距離離れていますので、同じ巣だとは考えにくく、新発見のコロニーの可能性が高いと思いました。ただ、この日は別のコロニーなのかを確かめることはしませんでした。

それから2日後の6月21日、この新発見の巣穴の中に棲むクロオオアリが、これまでとは別のコロニーなのかを確かめることにしました。
A巣には巣口が主に2箇所あるのですが、その内この新発見の巣口に最も近い西寄りの巣口に帰ろうとしているクロオオアリをフィルムケースで捕らえ、新発見の巣口の上に被せました。

フィルムケースの中の中央の穴が巣口 10時21分08秒撮影

巣口には入ろうとしません。もしかすると巣口があることに気づいていないのかも知れません。もし、この巣口がA巣の巣口なら、この働きアリはすぐに自分のコロニーの出入り口であることに気づくはずです。
それからほんのしばらくして、この巣口へと向かってくるクロオオアリがいました。そこで、そのクロオオアリも同じフィルムケースで捕らえました。すると、すぐに栄養交換が始まりました。

左側がA巣の近くで捕らえたクロオオアリ 大腮を開けているので蜜を与えている方がA巣のクロオオアリだと分かる 10時21分58秒撮影

そのまま、巣穴の上に移動しました。

10時22分41秒撮影

しばらくすると、どちらが先かは分かりませんでしたが、2匹共に巣穴に入っていきました。

巣穴に入る直前の2匹 10時23分09秒撮影

巣穴を覗いて見ると、そのうち1匹は完全には巣穴の中に入っていないようです。

腹部が見える 10時25分39秒撮影

腹部の膨らみから、A巣の近くで捕らえたクロオオアリのように見えます。
2匹が巣穴の中に入ってから3分26秒後に、A巣のクロオオアリと思われる働きアリが巣穴から出てきました。そこでこのクロオオアリを捕らえ、A巣の巣口の近くで放ちました。すると、A巣の巣口の中に入っていきましたので、このクロオオアリがA巣の成員であったことが確かめられました。
同じように、A巣の近くで更に2匹クロオオアリを捕らえ、それぞれ同じようにクロオオアリが入ったままフィルムケースを巣穴に被せましたが、この2例ではクロオオアリはいずれも巣口の中には入っていきませんでした。その後、A巣の巣口の近くに放ち、いずれもA巣の巣穴に入っていくのを確認しました。
以上のことから、この新発見の巣のクロオオアリとA巣のクロオオアリとは友好的ですが、別のコロニーのように思えます。

次に、夕刻になって、B巣のクロオオアリと思われる働きアリをB巣の近くでフィルムケースで捕らえ、新発見の巣穴に被せました。このクロオオアリは、人工的に設置している蜜器の蜜を吸って帰っていくところだったようです。腹部が膨れています。

16時53分撮影

4分ほどすると巣穴の中に入っていきました。
2匹目でも観察することにしました。今度は、B巣から出てきたクロオオアリをフィルムケースで捕らえ、新発見の巣穴に被せました。このクロオオアリは、腹部が膨れていません。このクロオオアリも、新発見の巣穴に入っていきました。
1匹目のクロオオアリが巣穴に入ってから、10分ほども経って、1匹目と思われるクロオオアリが巣穴から出てきました。

17時06分45秒撮影

10分ほどの間、巣の中で何をしていたのでしょう。それから1分ほど経って、もう一匹クロオオアリが出てきました。

17時07分49秒撮影

巣から出てきたこれら2匹を再びフィルムケースで捕らえ、B巣の近くで放ちました。2匹共に、B巣の巣穴に入っていきました。
以上のことから、この新発見の巣のクロオオアリとB巣のクロオオアリとは、喧嘩はなかったようですが、別のコロニーのように思えます。

この新発見の巣をM巣と名付けることにします。

ミツバチの巣箱で「移植」その3(B16015)

既に5月11日にミツバチの巣箱を使った「移植」を、6月8日にミツバチの巣箱を使った「移植」その2(B16013)を行っています。今回も同じ方法(「自発的」な「移植」)で移植を試みました。

移植するコロニー:B16015 (2016年6月11日に蒜山高原で採集した新女王アリのコロニー 当初から研究用アンテネストで飼育)

B16015 研究用に特別に作製したアンテネストで飼育してきた

ミツバチの巣箱へは16時過ぎに入れました。

ミツバチの巣箱の中にアンテネストを入れた 水を傍に置いている 右上の黒いものはワイヤレスの温湿度計 16時16分撮影

アンテネストの下方にあるパイプの栓を外すと、すぐにたくさんの働きアリが外へ出てきました。

アンテネストの下方にあるパイプの栓を外し、外と出入りできるようにした 出入り口の足場として石を置いている 16時18分撮影

巣箱は、庭の南斜面下の平地に置きました。この平地は通路として利用していて、芝は今後も生やしません。B16015がミツバチの巣箱から引越する際、この芝生が生えていない平地のどこかに巣を造ると観察しやすいように思います。

巣箱を置いた環境

今年のオオアリの結婚飛行の日

今年も異常気象なのでしょうか、私が住む中国地方では6月26日に梅雨入りしました。これは、記録が残る1951年以降で最も遅い梅雨入りだそうです。
そのためか、今年はクロオオアリやムネアカオオアリの結婚飛行の日を見誤ったようです。採集旅行には4回出かけましたが、結婚飛行のピークの日に出会うことなく、今年の採集を終えることになりました。
6月11日に自宅の庭で、本格的なクロオオアリの結婚飛行を観察してから、翌日の12日から14日まで長野県へオオアリの採集に出かけました。これまでに3回、岡山県の蒜山高原へ採集旅行に出かけたことについては、既にブログに書いた通りですが、4回目に当たる長野県では、1匹も新女王アリを採集することはできませんでした。既に、クロオオアリもムネアカオオアリも結婚飛行は終わっていたようです。どの巣穴を覗いて見ても、巣穴は小さく、羽アリの姿はありませんでした。

クロオオアリの巣 長野県駒ヶ根市内 6月13日撮影

これまでに分かっている今年の結婚飛行のピークの日は次のようになります。(市町村名も分かっていますが、ここでは県名のみ記載します)
5月23日 栃木県(ムネアカオオアリも)
5月25日 長野県(ムネアカオオアリも)
6月03日 香川県(クロオオアリのみ)
そして、自宅の岡山市では、6月11日(クロオオアリのみ)
これのみの情報からは、より北方でしかも高度が高いところの方が、結婚飛行が早かったことになります。このようになったのは、やはり、各地方間の気象の違いによるのでしょう。

B16013が引越していた

6月8日に庭に移植したB16013が、ミツバチの巣箱を出て、引越をしていました。

引越した後の巣の中 6月18日10時16分撮影

移植してから10日間が経っていましたが、この間、こまめに観察していましたので、つい1〜2日前に引っ越したものと思われます。問題は、引越の現場を見なかったため、どこに引越したかが分からないことです。
ところが、夕刻5時半頃、ミツバチの巣箱を置いていた近くの岩の上を歩くクロオオアリを見つけました。すぐにその体格からB16013の働きアリだろうと思いました。そこで、歩いて行く先に蜜を垂らしました。

蜜を飲み始めたクロオオアリ 17時30分撮影

もう一匹クロオオアリが歩いているところを見つけましたので、更にもう一箇所、蜜を垂らしました。そして、蜜を吸って帰り出したクロオオアリを追ってみると、岩の割れ目に入っていきました。

中央の逆三角形の石とその左の岩の間で姿を消した

何匹か蜜を吸って戻っていくクロオオアリを見ていると、上の写真の左の岩の右端辺りの芝生の中に入っていくものもいましたが、同じ場所なのでしょう。
この場所は、移植に使ったミツバチの巣箱から1.5m離れた場所です。

全体の位置図 奥の岩の左寄りにミツバチの巣箱を置いていた 引越先までの距離は1.5m

しばらくすると、蜜にやって来るクロオオアリが増えていました。

蜜にやって来たクロオオアリ 18時04分撮影

ついに本格結婚飛行

昨日10日は、庭のクロオオアリの結婚飛行が、おそらく雨が降り出したためと思われますが、中断してしまいました。今日は夕刻ににわか雨はなさそうなので、本格的な結婚飛行が行われるのではないかという期待がありました。
13時過ぎにA巣を見ると、巣口の中に羽アリが見えました。

僅かに羽アリの翅が見える 13時10分撮影

それから30分ほどすると、僅かですが有翅女王アリが地上に出ていました。

13時44分撮影
13時46分撮影

そして、13時46分には、有翅女王アリが1匹飛び立ちました。
所用のため、観察の空白が出来てしまいましたが、15時半前に観察に行くと、既に多くの有翅女王アリが巣口から出ていました。

A巣の最も西側にある巣口の様子 この写真には有翅女王アリが8匹写っている 15時24分撮影
上の写真と同じ箇所の小枝の先の様子 ここにも有翅女王アリが5匹写っている 15時25分撮影

それからは、盛んに有翅女王アリが飛び立っていきました。15時25分から58分までの33分の間に、数えられただけでも30匹ほどの有翅女王アリが空高く飛び立ちました。(この間は、A巣の巣口の中で最も西側にある巣口のみを観察していましたから、東へ1.8mの場所にあるA巣の巣口から出て飛び立った女王アリの数は入っていません。)

15時37分撮影
15時38分50秒撮影
15時38分53秒撮影 上の写真と同じ個体
15時39分撮影
15時49分撮影

ところが16時になるととても急な感じで、結婚飛行が終結していきました。働きアリが、女王アリに巣に戻るよう促したようです。

働きアリが女王アリに巣に戻るよう促しているようだ 16時00分撮影

そして、10分も経たない16時9分には、有翅女王アリの姿が消えてしまいました。

まるで何事もなかったように閑散となった 16時9分撮影

A巣の東側の巣口の周りからも羽アリの姿が消えました。ただ1匹の有翅女王アリが、巣穴へと戻っていきました。

巣穴へ戻っていく女王アリ 巣口の周りには既に羽アリの姿はない 16時10分撮影

ところで、有翅女王アリが姿を消した直後の働きアリの動きを見ていると、その動きには意味があるように思えました。

16時4分から45秒間の動画

小枝に1匹、切り株に5匹ほど働きアリが見えますが、いずれも素早く動き回って、何かを捜しているように見えます。推察するしかありませんが、まだ巣に戻っていない有翅女王アリがいるかどうかを調べているように私には見えたのですが、どうでしょうか。

さて、これでやっと本格的な結婚飛行が行われたようです。昨年は、同じA巣で、5月16日に本格的な結婚飛行を観察しましたから、今年は1ヶ月近くも遅い結婚飛行となります。ただ、以上の観察からも分かるように、今日の結婚飛行は、飛び立った羽アリの個体数からもピークであるとは思いますが、まだ巣の中には有翅女王アリが残っています。昨年は同じA巣で2度目の大きめの結婚飛行を観察していて、その2度目は、最初の結婚飛行の22日後でした。今年もA巣の2度目の大きめの結婚飛行があるのかも知れません。

梨の木のアブラムシとクロオオアリ

もう何時頃からか、二十世紀ナシにアブラムシが付いていました。そこにクロオオアリがやって来ていました。

梨の木のアブラムシとクロオオアリ 6月3日15時20分撮影

その様子を見ようと下から覗き込むと、クロオオアリたちはとても慌て出し、ドラミングをしてカサカサと葉音をたてます。こんなにまで、興奮するクロオオアリを屋外で見ることはまずありません。その行動が不思議なのは、息を潜め、普通に距離をとって、本当にそっと見るだけなのに、クロオオアリがそれを感知することです。
クロオオアリはいつも人間が近づいても何の反応もしません。人間の姿など、見えていないかのようです。蜜を飲んでいる時も、地上を歩いている時も、結婚飛行の時も、……、人間が近づいたからといって、何も反応がないのです。
それなのに、梨の木のアブラムシのところにいるクロオオアリだけは、意外な反応を示すのです。いったいクロオオアリは、どのような感覚を使って人間の何を察知しているのでしょうか。それが分かりませんでした。

さて、このアブラムシは、ナシミドリオオアブラムシのようです。

ナシミドリオオアブラムシ 葉裏の主脈に沿って整然と並んで寄生していた 6月10日9時25分撮影

ナシミドリオオアブラムシが梨の木に付くことについては、複雑な思いがあります。というのは、一方ではナシの害虫ですから駆除しなくてはならないのですが、他方ではクロオオアリにとっては貴重な蜜源なのです。そこで、ナシミドリオオアブラムシが適当な数に留まるように、間引くことにしました。毛の部分が固めの絵の具筆を使って、葉の裏面についているアブラムシを撫で落とします。但し、アブラムシが付いている何枚かの葉はそのまま残しました。

ところで、ナシミドリオオアブラムシを実体顕微鏡で見ると、とても意外な動きをしていました。

1分間の動画

ナシミドリオオアブラムシの腹部の先端から球形をした透明な甘露が出たり入ったりしていました。ちょうど夜空の星が瞬いているかのようです。このリズミカルに出入りしている甘露をクロオオアリは摂取しているのでしょう。