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羽化が始まった「たった1例のトゲアリの寄生」

今年の6月3日のブログで、
「昨年の9月22日のブログ「たった1例のトゲアリの寄生を試みる」で紹介しているトゲアリの女王アリ(S/N:T180919)が寄生したクロオオアリのコロニー(S/N:B15002)の5月5日以後の様子ですが、卵と孵化してまもない幼虫がいました」
と書きましたが、今日になって、トゲアリの働きアリの羽化が始まっているのに気づきました。この間、ほぼ毎日観察していましたので、数日前から見落としていたのか、それとも極直近に羽化したのかどちらかでしょう。働きアリを見ると、色がまだ薄いのもいます。

羽化したばかりなのでしょう、体色がまだ薄い 14時59分撮影

トゲアリの女王アリはじっとはしてなくて、よく歩き回っていました。

トゲアリの女王アリはじっとはしていないようだ 上段にもトゲアリの働きアリがいる 15時0分撮影

働いているトゲアリの働きアリもいました。

幼虫を運んでいる 左のまだ小さな幼虫の塊はトゲアリの幼虫のはず 15時2分撮影

トゲアリの働きアリの数を数えて見ると、6匹確認できました。

アリは水場が好き?!

もうずっと以前から、特にムネアカオオアリは、人工的な飼育下では、水があるところに集まってくることは分かっていました。

ムネアカオオアリ 5月6日撮影

上の写真では、ペットボトルの蓋の水の中には入っていませんが、水が浅い場合は肢下が水に浸かるようにペットボトルの蓋の中に入っていることがよくあります。
アンテグラウンドⅠ型Ⅱ型では、ケースの中に水槽を入れていますが、この水槽の水辺にもクロオオアリとトゲアリが集まってきます。

トゲアリ アンテグラウンドⅡ型の中の水槽 5月6日撮影
クロオオアリ アンテグラウンドⅠ型の中の水槽 6月4日撮影

ちなみに、アンテグラウンドで飼育しているクロオオアリとトゲアリは、他に水を与えていないので、この水槽の水を飲んでいることになります。

「たった1例のトゲアリの寄生」に卵と幼虫

昨年の9月22日のブログ「たった1例のトゲアリの寄生を試みる」で紹介しているトゲアリの女王アリ(S/N:T180919)が寄生したクロオオアリのコロニー(S/N:B15002)の5月5日以後の様子ですが、卵と孵化してまもない幼虫がいました。既に昨年の寄生時にクロオオアリの女王アリは殺されていますので、これらの卵と幼虫はトゲアリの幼生虫です。

左の大きな幼虫は昨年孵化したクロオオアリの幼虫と思われる 中央右の卵と孵化したばかりの幼虫はトゲアリの幼生虫 6月3日11時31分撮影
中央の卵塊がトゲアリの卵 6月3日11時33分撮影

飼育中のトゲアリの様子 2019年5月

昨年の10月11日のブログで、その時点で飼育していたトゲアリの3つのコロニーについて触れていますが、昨年寄生に成功したトゲアリも含めて、その後の様子について触れておきます。

① S/N:T140906-40
最も良く繁栄しているコロニーです。トゲアリの女王アリを2014年9月6日に採集し、同年9月11日にクロオオアリの巣S/N: NESTCON01024(2012年6月14日に新女王アリを採集)に侵入させました。したがって、寄生してから4年8ヶ月程経過したことになります。
今年の1月29日から特製の飼育ケースに入れ、後日アンテグラウンドⅡ型に繋げています。幼生虫が多数見られます。

S/N:T140906-40

② S/N:T130921-09
順調に繁栄することが期待できるコロニーです。飼育器の水槽の中に置いたアクリルと木で作った巣箱の中にコロニーが入っています。この巣箱には、閉ざされた空間があり、側面の1つの穴からのみ出入りできるようになっています。トゲアリの女王アリを2013年9月21に採集し、同年10月3日にクロオオアリの巣S/N:NESTCON01030(2011年6月8日に新女王アリを採集)に侵入させました。したがって、寄生してから5年7ヶ月程経過したことになります。幼生虫が多数見られます。

S/N:T130921-09

③S/N:T140906-03
働きアリが少ないコロニーです。これまでは、上述のアクリルと木で作った巣箱の中には入らず、巣箱の下の土とのすき間で暮らしていましたが、今年になって巣箱に入りました。トゲアリの女王アリを2014年9月6に採集し、同年9月10日にムネアカオオアリの巣S/N:NESTCON01027(2012年6月14日に新女王アリを採集)に侵入させました。したがって、寄生してから4年8ヶ月程経過したことになります。幼生虫がいるかどうかは確かめられませんでした。

T140906-03

④S/N:T180919
昨年新たに寄生に成功したトゲアリの女王アリ(S/N:T180919)とクロオオアリのコロニー(S/N:B15002)です。(「たった1例のトゲアリの寄生を試みる」等を参照)
B15002の巣がある人工巣リトルアンテシェルフを小型水槽の中に入れています。

人工巣を小型水槽の中に入れている

人工巣の中では、多数のクロオオアリの幼虫が見られます。

クロオオアリの幼虫が育っている

トゲアリの女王アリも健全のようです。腹部がよく膨れています。既に産卵が始まっているのかも知れません。

トゲアリの女王アリの腹部がよく膨らんでいる

トゲアリが作る不思議な模様

もう少し前から、トゲアリの飼育ケースの中に不思議な模様が見られるようになっていました。今年の2月12日のブログ「アンテグラウンドⅡ型」で紹介したそれは、底部が白いアクリル板になっています。これまでもその不思議な模様があったのかも知れませんが、床が白いことで、はっきりと見えるようになったのでしょう。

不思議な模様 5月2日撮影

いったいこれは何なのでしょうか。当初は、ガなどの幼虫を餌として与えた時のガの体液なのではないかと思ったこともありましたが、ガなどの幼虫を与えていない時にも付いていましたし、模様が至る所にできていることから、そうではないことが分かってきました。これは、トゲアリの排泄物なのでしょう。いつかその模様ができるその場を見られるとよいのですが。
ちなみに、クロオオアリでは、排泄物が模様になって見えることはなく、そもそも排泄物そのものがないかのように見えます。

アリはアブラムシを食べるか?

ここでは、カラスノエンドウに付くアブラムシを使います。複数本の茎の先端付近に付いているアブラムシを採集し、冷凍庫で凍死させます。マメアブラムシとソラマメヒゲナガアブラムシが混在しています。

小さめで色が濃いのがマメアブラムシ、大きめで緑色をしているのがソラマメヒゲナガアブラムシ

クロオオアリとトゲアリで調べてみましょう。クロオオアリの場合は、これまでの経験から、アブラムシは食べないだろうと予想できます。
4月24日、アンテグラウンドⅡ型をフィールドにしているトゲアリ(S/N:T140906-40)にアブラムシを与えました。

9時27分撮影

巣へと運んで行きます。

アンテグラウンドⅡと巣とを結ぶシリコンホースの中をアブラムシを咥えて進むトゲアリ

アンテグラウンドⅠ型をフィールドにしているクロオオアリ(S/N:B15006)にアブラムシを与えました。

9時31分撮影

アブラムシを咥えて運び始めましたが、巣口へと結ぶシリコンホースとは反対の方へ進み、アブラムシを置きました。その場所は、このクロオオアリのコロニーがごみ捨て場にしている場所です。

もう何匹もアブラムシがゴミとして捨てられている 9時35分撮影

それから2時間以上が経つと、アブラムシを入れて与えた容器の中のアブラムシは全て運び出されていました。

トゲアリの場合 11時44分撮影
クロオオアリの場合 11時44分撮影

トゲアリでは、アンテグラウンドⅡ型の中にアブラムシは残っていませんでしたが、クロオオアリでは、アンテグラウンドⅠ型の中にたくさんのアブラムシが捨てられていました。

アンテグラウンドⅠ型の中に捨てられたアブラムシ 11時45分撮影

以上の観察から、クロオオアリはカラスノエンドウに付く2種のアブラムシは食べませんが、トゲアリはこの2種のアブラムシを食べると考えられます。ただ、トゲアリの一つのコロニーだけの観察では、一般化するには不十分ですから、トゲアリの他のコロニー(S/N:T130921-09)で追試をしてみました。

15時01分撮影

すると、巣へと運んでいきました。

アブラムシを咥えて巣へと運んでいくトゲアリ 上方の丸い穴が巣口 15時3分撮影

以上の観察から、トゲアリはカラスノエンドウに付く2種のアブラムシを食べると考えられます。

アンテグラウンドⅡ型

トゲアリS/N:T140906-40用にアンテグラウンドⅡ型を作りました。アンテグラウンドⅡ型はアンテグラウンドⅠ型を次の点で簡略化しています。
 ○クリーナーボックス(本体の下に設けた水掃除用の水受け)をなくしました
 ○リフト機能(クリーナーボックスをとり出す際の機能)をなくしました
他は、アンテグラウンドⅠ型と同様の仕様になっていて、水槽(トゲアリの水飲み場になる)、プラントランプ(植物栽培用)、送風ファン(ケース内の湿気を排出し、アクリル板が湾曲しないようにする)、アントピット(給餌したり、逃げ出したアリを落とし入れる)、給餌・給水ロート(メダカに餌を与えたり、水を補給する)を備えています。

アンテグラウンドⅡ型には、1月29日のブログで紹介したトゲアリの飼育ケースを繋げています。

中央に見えるのがトゲアリの飼育ケース アンテグラウンドⅡ型とシリコンホースで繋がっている
正面図
側面図


トゲアリの飼育ケースを作る

昨年の10月11日のブログ「飼育中のトゲアリの様子 2018年10月」で紹介しているS/N:T140906-40用に特製の飼育ケースを作りました。S/N:T140906-40は、現在飼育しているトゲアリのコロニーの中では、一番大きなコロニーで、更に大きなコロニーになるよう、飼育環境を改善したいと考えていました。そこで、アンテグラウンドⅠ型を改良したアンテグラウンドⅡ型を作り、今回作製した飼育ケースをアンテグラウンドⅡ型と繋げる予定にしています。

たった1例のトゲアリの寄生のその後 3

これまで、トゲアリの女王アリに殺されたはずのクロオオアリの女王アリの姿を見かけませんでしたが、10月18日にそれらしき遺体を見つけました。飼育器であるリトルアンテシェルフの最下層のごみ捨て場で、2匹のクロオオアリの働きアリが、黒いものに触れていました。それを取り出して実体顕微鏡で見ると、確かにクロオオアリの女王アリの遺体でした。胸部のみになっていて、女王アリの証の翅を落とした跡が確認できました。

クロオオアリの女王アリの遺体 胸部のみが見つかった 翅を落とした痕跡が見られるので、確かに女王アリの胸部だ

「直短的社会寄生」の試みは課題を残して終了

昨年の9月から始めたトゲアリの女王アリの「直短的社会寄生」の試みは、端的に言えば失敗に終わりました。以下にトゲアリの女王アリが死亡した日を記します。

S/N T17002:2017年09月30日(死亡時トゲアリの働きアリ28匹)
S/N T17008:2017年10月15日(死亡時トゲアリの働きアリ5匹)
S/N T17007:2017年10月17日(死亡時トゲアリの働きアリ5匹)
S/N T17001:2017年11月11日(死亡時トゲアリの働きアリ11匹)
S/N T17005:2018年02月12日(死亡時トゲアリの働きアリ21匹)
S/N T17006:2018年06月10日(死亡時トゲアリの働きアリ4匹)
S/N T17003:2018年07月05日(死亡時トゲアリの働きアリ0匹)

ただ唯一、S/N T17004はトゲアリの働きアリが1匹ですが、生き残っています。

T17004は働きアリが1匹ですが生き残っている

T17004では、今年の6月23日に卵らしいものを女王アリが咥えていたのを観察しています。しかし、6月30日には卵は見つかっていません。

女王アリの死亡時に1例を除いて働きアリが生き残っていましたので、今回の試みでは、働きアリがいなくなると女王アリがコロニーを作れなくなると言うことではないのですが、働きアリの寿命を考慮する必要はあったようです。直短寄生をした次の年の春に最初の産卵をしたとして、その卵から成虫になるのが早くて7月になってからだとすると、働きアリの寿命は少なくともその時点で10ヶ月になります。実際には、採集してきた働きアリは、前年の9月以前に生まれているのですから、更に長い寿命でなくてはならないことになります。ですから、「直短的社会寄生」の試みでは、働きアリの寿命も考慮してコロニー作りを行うことも、今後の課題になることでしょう。