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蒜山高原へ

今回の採集の舞台となるヒルゼン高原センター付近

5月19日(金)の天気予報では、20日と21日は気温が上がり、蒜山(岡山県北)でも30℃近くになるとのことでした。ここまで気温が上がると、オオアリの羽アリが結婚飛行を行う可能性がとても高くなると思われます。そこで、急遽、蒜山高原へ採集旅行に出かけることにしました。
20日の午前中に自宅を出、11時過ぎに現地に着きました。昨年、ムネアカオオアリが1匹採集できたヒルゼン高原センター近くの場所で、オオアリの女王アリを探していると、運良く1匹見つけました。クロオオアリの女王アリです。同じ種のクロオオアリの働きアリから攻撃を受けていました。

クロオオアリの働きアリに右触角を咬まれている 11時41分撮影

既にこの場所ではクロオオアリの結婚飛行が始まっていたことが分かります。午前中の発見ですから、この女王アリは昨日結婚飛行をしたのでしょう。
辺りを詳しく探しましたが、女王アリはこのクロオオアリの女王アリ1匹だけでした。
その後、夕刻まで、昨年オオアリの女王アリが採集できた蒜山高原内の他の箇所を回ってみましたが、1匹も採集できませんでした。
夕刻になって、再びヒルゼン高原センター付近に行ってみると、羽アリが巣口から出ていました。巣が密集しているところでは、およそ10mの範囲に複数の巣口がありました。

複数の巣口の一つ 16時39分撮影

複数の巣口の一つ 16時48分撮影

複数の巣口の一つ 樹の根元から出ていた 16時54分撮影

5時半頃になると、よりたくさんの羽アリが出てくるようになりました。

直前の写真と同じ場所 羽アリの数が増えてきている 17時23分撮影

幹を上っていく女王アリ 17時23分撮影

ところで、その間に奇妙なことに出会いました。その一帯を歩いて女王アリを探していたのですが、翅の付いたムネアカオオアリの女王アリが地面を歩いていました。

腹部が無くなっている 17時4分撮影

よく見ると、腹部が全くないのです。それでも元気に歩いていました。どうしてこのようなことになったのでしょう。この1匹だけかと思っていましたが、次々と同じことに出会うのです。

3匹採集した時点で撮影 17時15分撮影

結局この日、同様に腹部を失って地面を歩いていたムネアカオオアリを22匹も見つけました。見つけた場所は、このブログ冒頭の写真に写っている歩道兼自転車道と、下写真の道路を隔てた広々とした駐車場です。

駐車場 写真右奥には使われなくなった更に広い駐車場がある

広範囲に亙って見つかったこと、また駐車場も含めムネアカオオアリの巣がない場所で見つかったこと、翅を落とした腹部のない女王アリは見つからなかったことから、巣口で何者かに狙われたのではなく、飛行中に襲われたと考えられるでしょう。それにしても、他に体に怪我もなく、見事なほどに腹部のみがないのです。

翌日21日は、早朝から採集を始めました。気温は12°前後でした。

5時38分の気候

ヒルゼン高原センター周辺を大きく一回りしました。そうすることで分かったことは、前日にオオアリを採集した付近が最もクロオオアリの巣の密度が高いということと、近くに雑草や樹のない芝生のみの箇所では、クロオオアリの働きアリはほとんど見られないということです。逆に、下の写真のような環境(雑草や樹がある)にはクロオオアリが棲息していました

こうした環境(雑草や樹がある)のところにはクロオオアリがいた

さて、2日間を通してクロオオアリとムネアカオオアリの女王アリを合せて55匹採集しました。採集した箇所のほとんどは冒頭の写真の箇所で、写真に写っていない反対側の歩道と自転車道を含みます。歩道と自転車道の横には雑草が生えていますが、そこでは採集していません。そこにも、翅を落とした女王アリがいるとは思いますが、雑草に隠れて姿が見えないのでしょう。
不思議に思うのは、道路を隔てた広々とした駐車場には、1匹も翅を落とした女王アリがいなかったことです。歩いていれば、とても簡単に見つけられますから、本当にそこにはいなかったと言えます。結婚飛行で、空中高く飛び上がれば、交尾後どこにでも地面に落ちてくるように思うのですが、そうなってはいなかったのです。これは、今回の偶然なのでしょうか。
また、比較的数多く女王アリが採集できた箇所は、既述のおよそ10m程の範囲ですが、空中高く飛び上がったとすれば、この場所に降り立つことはないでしょう。考えられることとしては、他巣が近くにあるため、空中高く飛び上がることなく交尾をしたのではないかということです。
長野県でクロオオアリの巣が密集している場所で採集した際も、クロオオアリの巣の極く近くで翅を落とした女王アリを多数採集しました。どうしてこのようになるのか、とても興味深いことです。

ついに結婚飛行

昨日は午後遅くから雨が降りだし、今日はよく晴れた日になりました。今日からはしばらくの間、良い天気が続き、気温も上がるとのことでした。いよいよ、クロオオアリの結婚飛行が行われそうです。少なくとも明日以降の金・土・日の間には、結婚飛行が行われると思っていました。
午後になってからは、飼育しているアリの世話をしていて、午後3時半頃になって、庭に出てB巣の様子を見に行きました。
すると、既に結婚飛行が始まっていました。たくさんの羽アリが出てきていた巣口は2ヶ所でしたが、「いよいよ結婚飛行の季節」で書いている巣口とは違っていました。以前のその巣口が6日前に何者かに襲われたので、別の巣口を利用するようになったのでしょう。(「何者かに襲われたクロオオアリの巣」参照)

15時37分撮影

上写真の巣口とは違う同じB巣の巣口 15時53分撮影 クリックして動画を見る(30秒間のタイムラプス動画)

庭の別のクロオオアリの巣では、羽アリが出てきていたのは、C巣のみでした。

わずかに雄アリの姿があった 15時58分撮影

1ヶ所から、わずかに雄アリが出てきていただけで、飛び立つ様子ではありませんでした。

塚山公園にも出かけました。大変期待をして出かけたのですが、「結婚飛行が始まった」で触れている巣は、結婚飛行を行っていませんでした。他の場所にあるクロオオアリの巣口もひっそりとしていました。注意深く公園内を歩いて、翅を落として地面を歩く新女王アリを探しましたが、見つかりませんでした。

巣口に羽アリが見えるが出てくる様子はなかった 16時21分撮影

5時前に自宅に戻り、B巣の様子を見ると、既に結婚飛行を終えているようでした。

結婚飛行を終えているようだ 16時54分撮影

結婚飛行を終えているようだ 16時55分撮影

今日飛び立った新女王アリが翅を落として地面を歩いているでしょうか。自宅の庭の地面を注意深く探しましたが、全く見つかりません。遠くへ飛んでいったのでしょう。
まだ見つけたことがないのですが、もし自宅周辺にクロオオアリの巣があるとすれば、今日結婚飛行を行った可能性があります。そこで、自宅周辺の山道を歩きましたが、やはり新女王アリの姿はありませんでした。

冷凍庫の中で生きていた雄アリ

今年捕虫器を新たに購入して使っています。この捕虫器は、以前から使っている捕虫器よりもずっと多くの虫を捕らえることができます。

SURE 屋内用捕虫器 MC-8200

SURE 屋内用捕虫器 MC-8200

さて、7月14日の深夜近く、この捕虫器の網の中をのぞいてみると、とてもたくさんの雄アリが入っていました。更に女王アリらしき羽アリもちらっと見えたような気がしました。改めて懐中電灯で捕虫器のあたりを探すと、羽アリがいっぱい壁などについていました。また、働きアリも集まっていましたので、まず雄アリと働きアリを採集し、女王アリを探しました。女王アリはなかなか見つかりませんでしたが、やっと1匹を採集しました。更に、翅を落として歩いている女王アリがいないかも探しましたが、1匹も見つかりませんでした。
捕虫器本体から捕虫網を外し、網ごと冷凍庫に入れておきました。

翌日、冷凍庫から取り出して実体顕微鏡で見たのが次の写真です。

中央に女王アリが見える

中央に女王アリが見える

上と同じ種のように見える女王アリ

上と同じ種のように見える女王アリ

上2つとは別の種のように見える女王アリ トビイロケアリかもしれない

上2つとは別の種のように見える女王アリ こちらはトビイロケアリかもしれない

とてもたくさんの雄アリの中にわずかに3匹女王アリを見つけました。これらは2つの種のようです。
捕虫網の中ではなく、壁にいた女王アリは冷凍しませんでしたので、翌日も生きていました。

体が茶色でトビイロケアリのようにです

体が茶色でトビイロケアリのようだ

こちらは、網の中にいた1種と同じトビイロケアリの女王アリのように思います。働きアリも採集したと書きましたが、アミメアリでしたので、これら羽アリを捕まえる為に集まってきていたのでしょう。

さて、実体顕微鏡を通して上の写真を撮っている時、死んでいるはずの死骸の塊が動くような感じがありました。急激な気温の変化や風のようなもののためと思っていましたが、やがてそうではなく、死んでいるはずの雄アリの脚がかすかに動いているのに気がつきました。そこで、くまなく探してみると、足が動いている雄アリが13匹まで見つかりました。

13匹の雄アリがまだ生きていた

13匹の雄アリがまだ生きていた

これは、驚きです。冷凍庫の中に18時間程度入れておいたのですから、体内の全ての水分が凍り、死ぬはずなのですが。この日は数こそ多くはなかったとはいえ、他の昆虫も捕獲されていたのですが、これら雄アリ以外は動き出す昆虫はいませんでした。

結婚飛行後の分かれ道

女王アリは結婚飛行を終えた後、どうするのでしょうか。

交尾を終えると地上に舞い降り、すぐに翅を落とします。そして、歩き回ります。その目的は、巣を作る場所探しで、場所を定めると穴を掘り始めます。

穴を掘り始めたクロオオアリの女王アリ 6月2日

穴を掘り始めたクロオオアリの女王アリ 6月2日

おそらく本能に忠実な「正常な」女王アリは、結婚飛行を終えたその日の暗くなるまでには、穴を掘り始めます。そして、翌日の午前中には、穴の中に入っています。

翌日6月3日の午前10時半頃

翌日6月3日の午前10時半頃

それでは、穴が見つかったので、いたずらをしてみましょう。何か細い物を穴の中に突っ込みます。でも、女王アリは慌てて出てくるということはありません。穴の中の方が安全なのでしょう。そこで、芝の穂(花)を穴に突っ込んで少ししつこく動かしてみます。

芝の穂(花)

芝の穂(花)

すると、咬み付いた感触があり、そこでさっと引き上げます。女王アリが釣れています。他の穴でもやってみると、やはり女王アリが釣れました。

さて、結婚飛行後の女王アリたちの運命はまちまちです。本能に従い、「正常に」穴を掘り収まったものは、ひとまず安全を手に入れたことになります。しかし、穴の出入り口は、掘り始めた次の日もふさがっていないことがあったわけですから、その穴にいろいろなものが入ってくることは考えられます。ですから、穴を掘っている途中で、あるいはひとまず穴が完成してからも、穴から逃げ出さなくてはならないこともあるでしょう。また、掘り始めたものの、運悪く少し掘った時、石などの固いものがあれば、また別の場所を掘り直さなくてはなりません。

このようなこともあってか、夜中中地面を歩き回って、次の日も歩き回っている女王アリがいるのでしょう。地面を歩き回ることは、さまざまなリスクが伴い、とても危険です。怪我をしている女王アリの割合が、3日の日には多かったように思うのですが、実際に危険が多いと言えるでしょう。

クロヤマアリに襲われています

クロヤマアリに襲われています

上の写真は、クロヤマアリに襲われているところです。ただ、女王アリが何らかの理由で死んでいて、その死体に群がったのかも知れません。

とにかく暑い日です。太陽はかんかんと照っていました。歩き回った後は、休憩も必要です。できるだけ安全な葉の上などで休むこともあるようです。

葉の上で休む女王アリ

葉の上で休む女王アリ

また、のどが渇ききっているのでしょう、採集した女王アリが、すぐに湿った脱脂綿に口を着けることもよくありました。

クロオオアリの女王アリを採集

「私が住むこの辺りでは、クロオオアリやムネアカオオアリの結婚飛行の時期が訪れている」(5月16日ブログ)ので、今年こそは、この近辺で女王アリの採集を試みることにしていました。
これまで、しばしば観察に出かけていた「野田山」は、上水道タンクの新設工事のため、山への入り口で通行止めになっていて、入れません。また、クロオオアリの巣がある市内中心部の公園の主要な部分は、造成工事中で、立ち入ることができません。そこで、市街地にある小山(通称「水道山」)に出かけることにしました。

この山には園地もあり、私の子どもが小さい時に時々利用していたこともありましたが、もうずっと長い間、訪れていませんでした。まずはクロオオアリやムネアカオオアリが棲んでいるのかを確かめることから始めました。これは、この山に登り始めるとすぐにわかりました。クロオオアリがいました。しかし、しばらく歩いても、巣を見つけることはできません。それほど、クロオオアリが多く棲んでいるようではありませんでした。

ところが午後2時半ごろになって、クロオオアリの巣を1ヶ所見つけることができました。小高くなった所にある休憩舎の横の壊れたベンチの近くでした(標高102m)。

巣穴から顔(頭部)を出して外を伺っている女王アリ

巣穴から顔(頭部)を出して外を伺っている羽アリの女王アリ

巣穴をのぞき込んでみると、雄アリや翅のある女王アリがいることがわかりました。まだ、結構飛行を終えていないようです。新女王アリを採集できることがわかり、期待が膨らみました。

辺りを探してみると、先ほど通り過ぎた所にも巣があることがわかりましたし、また別の所にも巣がありました。

それから、10分ほどして、女王アリが巣から出てくるところを見ました。ただし、たった1匹だけで、後に続くものはなく、飛び立ちました。

やがてこの1匹だけで飛び立った

やがてこの1匹だけで飛び立ちました

それから10分ほど経つと、どこの巣でも羽アリが巣穴から出てくるようになり、3時半から4時ごろにかけて、最も盛んに羽アリが飛び立ちました。

たくさんの羽アリが地上に出ている

たくさんの羽アリが地上に出てきました

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草によじ登って、飛び立とうとしている

草によじ登って、飛び立とうとしています

意外なことに、この時間になって、それまで気付かなかったところからも羽アリが出てきました。確かに、そこにも見落としていた巣穴がありました。結構な数の巣がこの狭い一角にあったのです。

いよいよ、新女王アリの採集です。辺りをくまなく探してみましょう。最初に見つけたのは、4時20分ごろで、新女王アリとなって翅を落として地面を歩いていました。

新女王アリの誕生です

新女王アリの誕生です

ところで、この一角にある複数の巣から飛び立った女王アリの数を推測することはできませんが、はたしてそのうち何匹を採集することができるでしょうか。
その際、気になるのは、羽アリがどの程度まで飛んでいくのかという点ですが、わたしにはよくわからないのです。ですが、それほど遠くへは行かない思っていて、飛び立った巣の極く近くに降りて来る個体もあると考えています。
ただ、たとえ近くに降りてきた女王アリがいたとしても、採集するにはあまりにも困難があります。地面が道や開けた草の少ない場所でないと、歩いている新女王アリを見つけることはできません。そうした見つけやすい地面の割合は普通は極く少なく、ほんのわずかな数の新女王アリしか見つけられないのです。

この日は、結局1匹と10匹を採集しました。

右の1匹は一回り体が小さい

右の1匹は一回り体が小さい

この内10匹がクロオオアリなのですが、1匹はクロオオアリではありません。ムネアカオオアリの女王アリだと思われますが、一回り体が小さいのです。このサイズのムネアカオオアリの女王アリは、これまでに見たことがありません。女王アリの場合には、さほど大きさに個体差はないように思うのですが……。

なお、これら11匹は、研究用に飼育することにしています。