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「日本アリ類同好会」への誘い

「日本アリ類同好会」は、LINEを使ったアリの飼育・観察・研究の交流グループです。2019年12月14日から運用しています。
「日本蟻類研究会」は既に存在していて、私も会員になっていますが、「日本アリ類同好会」という名称の団体はネット上で検索する限りはないようです。「日本蟻類研究会」は、大学関係者の方も多く、研究内容はとても深いのですが、「日本アリ類同好会」では、アリが好きな者同士が「友だち」になって、主に飼育方法や生態観察や採集情報などで、気軽に交流ができればと思います。ご賛同いただけるようでしたら、グループにご参加下さればと思います。
まだ、LINEをお使いになっていない方も、スマホやダブレットだけでなくPC版もございますので、導入をご検討下さい。LINEの導入の仕方については、ネット上でお調べ下さい(例えば https://line.macdrivelove.com/entry3.html 等)。
ご連絡いただければ、QRコードをお伝え致します。連絡先は info@kajitsuken.net です。
では、皆様のご参加を心よりお待ちしています。

一時的社会寄生の試みを継続 寄生時期と成功率の関係は?

一時的社会寄生の試みを13日に始めて15日にトゲアリの死亡という結果になったことは、前回のブログで報告しています。
その15日と16日に、同様の方法で、トゲアリの女王アリが同様のクロオオアリのコロニー(2024年5月18日に新女王アリを採集)に寄生するよう試みました。
寄主は、BH240518-11・12・13・14(以上15日寄生開始)、15・16・17・18・20・21(以上16日寄生開始)の9コロニーです。

化粧行為が見られた 寄主はBH240518-13 9月15日14時21分撮影
背面からクロオオアリの首を咬もうとしている 寄主はBH240518-15  9月16日10時44分撮影
腹面からクロオオアリの女王アリの頸に咬みついていた 寄主はBH240518-16 9月16日11時25分撮影
背面からクロオオアリの首を咬もうとしている 寄主はBH240518-18 9月16日17時3分撮影

上に挙げた4枚の写真の様子は、寄生成功への一歩となる行為ですが、実は9例を通して極く希な事例です。ほとんどの場合、化粧行為はなく、またクロオオアリの女王アリを襲おうとはしていませんでした。
トゲアリの女王アリ9匹は、9月17日までに全て殺されてしまいました。

今年は、9月13日から10例で寄生を試みたのですが、何れも寄生に失敗したことになります。寄生成功率が0%と言う結果ですが、なぜそのようになったのか、明言はできないのですが、寄生を開始させる時期によるのではないかと考えています。
自然界では、結婚飛行の直後から寄生行動が始まっていると思われるのですが、今回の一連の寄生の試みを始めたのは、5日後から8日後でした。
そこで、寄生を開始させる時期が、寄生の成功率と関係があるのかどうかを過去の事例を参照して考察してみます。

2018年の場合は、トゲアリの女王アリを9月19日に採集し、3日後の22日に寄生を試みています。サンプルは1例で、寄生に成功しています。
2021年の場合は、トゲアリの女王アリを9月12日に採集し、4日後の16日に寄生を試みています。サンプルは2例で、1例が寄生に成功しています。
2022年の場合は、トゲアリの女王アリを9月10日に採集し、2日後3日後の12日・13日に寄生を試みています。サンプルは5例で、5例共に寄生に成功しています。

ちなみに以上挙げたこれらは、何れもトゲアリの女王アリを直接クロオオアリのコロニーに入れるという方法をとっており、今年の場合と寄生の方法は同じです。
これらのデータを見る限りでは、上記の寄生方法ではと言う条件付きですが、結婚飛行後より早い時点で寄生を試みる方が、寄生の成功率は高いと言えそうです。

一時的社会寄生の試みを開始 T240908-01

先日の9月8日に採集したトゲアリの新女王アリをクロオオアリのコロニーに寄生させることにしました。寄主のコロニーは、今年の5月18日に採集した新女王アリのコロニーBH240518-11です。

寄主になるBH240518-11

寄生させるトゲアリの女王アリをT240908-01と名付けます。

T240908-01はクリアカップに入れている

寄生の方法としては、クリアカップの蓋を外して逆さにし、BH240518-11のクリアケースの蓋の穴のシリコン栓を外して被せます。

寄生開始 9月13日9時43分撮影

間もなく、クロオオアリの働きアリが蓋の穴からクリアカップの中に入って行きましたが、両者の接触はなく、したがって化粧行為はありませんでした。そして化粧行為がないままに、トゲアリの女王アリはクリアケースの中に入って行きました。

クリアカップの中に入って行く2匹目のクロオオアリの働きアリ 9時45分4秒撮影
トゲアリの女王アリがクリアケースの中に入る穴を見つけたところ 9時45分38秒撮影

トゲアリの女王アリは何度もクロオオアリの女王アリと接触しました。多くの場合、クロオオアリの女王アリから攻撃されていて、逃げ回っているように見えました。クロオオアリの働きアリからも攻撃されていましたが、拘束される場面は極く僅かでした。その間も、トゲアリの女王アリは化粧行為をしようとはしませんでした。

9時47分16秒撮影
9時47分24秒撮影
9時47分33秒撮影
9時52分16秒撮影

ところが、唐突に思えたのですが、トゲアリの女王アリがクロオオアリの女王アリの頸に腹面から食い付きました。この体勢は、寄生成功への第一歩です。

9時54分撮影

しばらくすると、働きアリが女王アリの周りに集まり、クロオオアリの女王アリの躯体を舐めていました。

10時6分撮影

ところが20時頃見に行くと、トゲアリの女王アリは、クロオオアリの女王アリから離れていて、働きアリに取り囲まれて攻撃されていました。

20時0分撮影

それから2日後の9月15日、トゲアリの女王アリは死んでいました。

トゲアリの女王アリを採集(2024年)

トゲアリの新女王アリを例年同じ場所で採集しています。今年は9月7日に現地へ行き、8日の朝に採集地点に行きました。
車から降りるとすぐ、車の横でトゲアリの脱翅女王アリを見つけました。

2024年9月8日7時30分撮影

D巣があるところまで車道を上がって行くと、まだ羽アリが巣口の周りに出ていました。

羽アリが4匹写っている 7時41分撮影

2021年来観察していることですが、今年も巣口の周りで、複数の脱翅女王アリが働きアリに拘束(攻撃)されていました。

7時41分撮影
7時42分撮影
7時44分撮影
7時44分撮影
中には翅がついたままの新女王アリも攻撃されていた 7時53分撮影

これらの拘束されている女王アリは、これまでの観察から、この樹の上方から下って来たと考えられます。今年は1匹のみの観察とはなりましたが、脱翅女王アリが、樹上から早足で下って来るところを見ました。
ところで今年は、新たにトゲアリの巣を一箇所見つけました。それはD巣がある場所から更に車道を上がって行ったところにありました。

トゲアリの巣があった樹(中央)
樹の下方中央辺り
線状にへこんだ箇所に巣があるようだ 9時23分撮影

この巣をE巣と名付けることにします。
今年は、7時半頃から10時半頃までの3時間で、トゲアリの新女王アリを53匹採集しました(内1匹は採集直後に死亡)。

この写真撮影の後で2匹を採集した 10時33分撮影

ところで採集箇所ですが、それぞれの採集箇所で何匹採集したかの記録は付けてはいないものの、今年は下の写真の箇所で最も多く採集できたように思います。

この場所の近くでトゲアリの巣は見つかっていない

採集箇所については、2013年からこの同じ採集場所で採集しているのですが、採集できた箇所・多く採集できた箇所は、10年を越える期間を経て変わってきています。

この場所で大量に採集できたことがある 今年は採集できず
この場所でも女王アリを多数採集したことがあった
この場所で採集できたことがあったが、昨今では採集できていない
今までほぼ採集できていなかったが、今年は数匹採集できた

ちなみに、今年の気象は次のようでした。
  日 (最低気温 / 最高気温) 昼(06:00-18:00) 夜(18:00-翌日06:00)の天気概況
 9月7日  (23.1 / 32.7)       晴         晴
 9月8日  (24.4 / 33.8)       晴         晴

ところで、脱翅の瞬間を見ることができました。

脱翅直前 9時42分31秒
脱翅直後 9時42分33秒

クロオオアリのコロニーにトゲアリの新女王アリが入る

クロオオアリのコロニーBK170530-081は、アンテグラウンドⅢ型の活動室を使っていますが、この活動室は開放蓋にしています。
8月24日、この活動室の中で、トゲアリの脱翅女王アリを見かけました。8月21日から飛翔を観察しているT140906-40から飛んできた女王アリと思われます。

8月24日14時26分撮影

そのままにしておきました。
8月31日に見ると、トゲアリの女王アリの死体が、このコロニーのゴミ置き場で2体見つかりました。

8月31日10時57分撮影
10時58分撮影

念のために、このクロオオアリのコロニーの女王アリの様子を確かめました。普段と変わらない様子でした。

BK170530-081の女王アリ 11時1分撮影

脱翅女王アリが別のコロニーの中へ そして本巣の中へ

8月24日、トゲアリのT210912-02の活動室(アンテグラウンドⅢ型)で、トゲアリの脱翅女王アリを3匹見つけました。このコロニーは創設3年目で、羽アリはまだ誕生していません。ですから、この3匹は、8月21日から飛翔を観察しているT140906-40の女王アリです。

1匹目 クロオオアリを捕らえて化粧行為をしているように見えた 8月24日11時28分撮影
2匹目 働きアリから拘束されていなかった 11時33分撮影
3匹目 働きアリが女王アリを捕らえようとしていた 11時34分撮影

これらのトゲアリの脱翅女王アリは、T210912-02の活動室は開放蓋になっているので、活動室の中にたまたま飛び込んだのだと思います。だとすると、活動室に入った時には、有翅のままだったことになります。そこで、活動室の中で脱翅したことになりますが、活動室の中はかなり生活ごみが散乱しているためなのかも知れませんが、落とした翅は見つかりませんでした。しかも、3匹が3匹共に翅を落としていたのですから、交尾を了えていたのかも含めて、本当はどのような経緯だったのか疑問が残ります。

8月28日、トゲアリの働きアリが、活動室内でトゲアリの脱翅女王アリを咥えて運んでいました。

8月28日19時37分撮影

活動室の中には24日の時点で、脱翅女王アリが3匹いたわけですが、このトゲアリの働きアリに運ばれていた女王アリを含めて、2匹しか見当たりませんでした。脱翅女王アリの死体も見当たりませんでした。

もう1匹のトゲアリの脱翅女王アリ 19時39分撮影

その運ばれていた女王アリは、やがて放たれて活動室の中を歩いていましたが、しばらくして本巣へと通じるアクリルパイプの中に入って行きました。そして、その先のシリコンホースの中を本巣へと進んで行きましたが、様子を見ているとトゲアリの働きアリが進路を防ごうとしているかに見える場面もありました。ですが、間もなく脱翅女王アリは本巣の中に入って行きました。本巣の中は、トゲアリの働きアリで充満していましたので、その後の動きは観察できませんでした。

アクリルパイプへと入って行く 19時46分撮影
シリコンホースの中を本巣へと進む脱翅女王アリ 19時47分撮影

トゲアリのごみ投下術の謎

8月20日、トゲアリのコロニーT140906-40の活動室に簡易的な飛翔台を設置して以来、開放蓋の上などにトゲアリの生活ごみが載るようになりました。

飛翔台の高さは83cm 8月20日撮影
ごみは撮影後除去した 8月21日6時43分撮影
ごみは撮影後除去した 8月24日8時24分撮影
8月27日15時4分撮影
8月27日15時5分撮影
生活ごみを咥えて飛翔台に上るトゲアリ 8月27日15時17分撮影

これはとても不思議なことです。生活ごみを飛翔台に上って落とすだけなら、真下に落ちるでしょうから、開放蓋には載らないはずです。
トゲアリが、どんなふうに生活ごみを落としたのかを知りたいのですが、まだ観察ができてはいません。

結婚飛行に際しての羽アリの様子を時系列で見る

8月22日2時47分撮影
8月21日3時59分撮影
8月25日4時27分撮影
8月21日5時10分撮影
8月21日6時46分撮影
8月24日8時25分撮影
8月22日2時47分撮影
8月22日4時3分撮影
8月21日21時6分撮影
8月22日2時47分撮影
8月22日4時3分撮影
8月21日21時6分撮影

岡山市の日の出時刻は、8月21日が5時29分、8月25日が5時33分です。
夜の21時頃は、結婚飛行の兆しは見られませんでしたので、トゲアリは夕刻日が暮れて結婚飛行をするのではないことが分かります。
深夜は観察していませんが、3時頃には羽アリたちは既に結婚飛行に向けて動き始めているようです。日の出の1時間半前頃(4時頃)になると、結婚飛行に向けての動きが活発になっています。そして、日の出時刻の1時間半後(7時頃)には、結婚飛行に向けての動きがほぼ見られなくなっています。

今から10年前の2014年に、「トゲアリの結婚飛行に出会いたくて」という題のブログを7回に渡って書いています。その中の第(3)稿では、23時台に羽アリが巣から出てきているところを観察しています。

2014年9月10日23時22分撮影

また、第(4)稿では、1箇所のコロニーで20時台で羽アリを観察しています。

2014年9月12日20時11分撮影

第(5)稿では、4時からの観察で、4時台に多数の羽アリを観察していて、7後頃まで羽アリが巣からで出ています。そして、7時を過ぎると羽アリが少なくなり、8時を過ぎると羽アリが見られなくなっています。

2014年9月13日4時0分撮影

10年の時を経て、トゲアリの結婚飛行に際して、飼育下での羽アリの様子と自然界での羽アリの様子を見比べることができたことは、とても有意義なことのように思います。

飼育下の1コロニーから飛び立った脱翅女王アリの帰還

飼育下の1コロニーから飛び立った脱翅女王アリ(交尾の有無は確認できていない)を元の巣に戻すとどうなるのでしょうか。8月22日に採集した3匹の脱翅女王アリで試してみました。

1匹目 働きアリに囲まれることがあったが、噛み合いは起こらなかった 8月22日14時18分撮影
2匹目 噛み合いは起こらなかった 14時19分撮影
3匹目 溶け込んでいる様子だった 14時22分撮影

この3例を見る限り、飛び立った元の巣の働きアリたちに受け入れられたようです。

下の2つの写真は、2022年にトゲアリの採集地で撮影しました。トゲアリの巣がある樹の上方から幹伝いに下りてきたトゲアリの脱翅女王アリをトゲアリの働きアリが攻撃しているところです。
ちなみに、上掲の3例との違いは、下写真の脱翅女王アリは結婚飛行(受精)を済ませていますが、3例では受精を済ませているのかどうかが不明です。また、3例での脱翅女王アリは、元の巣に戻ったのですが、下写真の脱翅女王アリは、働きアリと同じコロニーなのかどうかが不明です。

2022年9月10日8時31分撮影
2022年9月10日撮影14時48分撮影

飼育下の1コロニーから飛び立った脱翅女王アリの寄生行動

飼育下の1コロニーから飛び立った脱翅女王アリは、寄生行動をするのでしょうか。8月21日の早朝に採集した4匹の脱翅女王アリの内、3匹で試してみました。
寄主は何れも今年新女王アリを採集したクロオオアリのコロニーです。

① 寄主:BH240518-07の場合

BH240518-07

脱翅女王アリをフィルムケースに入れ、フィルムケースを逆さにして、クロオオアリの飼育ケースのアクセス孔の上に置きました。孔からクロオオアリがフィルムケースの中に入ってきましたが、化粧行為は見られませんでした。

化粧行為をせずにコロニーの中に入って行った 8月21日10時25分撮影
10時25分撮影
クロオオアリの女王アリから終始一方的に攻撃されていた 10時30分撮影
10時36分撮影
トゲアリの女王アリが死亡していた 8月21日14時51分撮影

② 寄主:BH240518-08の場合

このような場面もあったが、化粧行為はしていなかった 8月21日14時4分撮影
14時7分撮影
クロオオアリの女王アリから終始一方的に攻撃されていた 14時10分撮影
14時11分撮影
トゲアリの女王アリが死亡していた 8月21日19時28分撮影

③ 寄主:BH240518-09の場合

BH240518-09
化粧行為が見られた 8月21日15時18分撮影
クロオオアリの女王アリを襲う 15時25分撮影
15時29分撮影
15時32分撮影
15時32分撮影
15時32分撮影
15時42分撮影
右触角を失っていた 15時45分撮影
トゲアリの女王アリが死亡していた 8月21日19時28分撮影

越冬幼虫は何時頃から?

クロオオアリの場合、越冬幼虫は何時頃から見られるのでしょうか。飼育下という条件ではありますが、比較的大きなコロニーのいくつかで観察してみましょう。以下何れも8月21日の様子です。

B15006
BK170530-081
このコロニーでは、小さな幼虫も多数いるが、卵(写真右)も多数見られた B200603-067
B200603-075

こうしてみると、どのコロニーでも共通してほぼ同じ大きさの幼虫が多数見られます。既に越冬幼虫になっているようです。

トゲアリの羽アリが飛翔

少し前からでしたが、トゲアリのコロニーT140906-40の羽アリが活動室アンテグラウンドⅡ型のガラスの側面などに上がって来るようになっていました。

8月19日8時29分撮影

そこで、8月20日、簡易的な飛翔台を作って、アンテグラウンドの中に設置しました。

飛翔台の高さは83cm 活動室は開放蓋なので設置可能だ 8月20日10時06分撮影

観察はその翌日の21日の早朝から始めました。
案の定、羽アリが飛翔台に上ってきていました。4時前の室温は29.5℃でした。

8月21日3時59分撮影

それから1時間ほど経った5時過ぎ、複数の有翅女王アリを部屋の中で見かけるようになりました。

床を歩く有翅女王アリ 5時9分撮影
5時11分撮影
5時11分撮影
シーリングライトに飛んできた有翅女王アリ 5時16分撮影

活動室の中では、複数個所で見られた羽アリの群れが、ほぼ解けていました。

5時21分撮影

人工巣の中は、まだ、少数ですが羽アリがいました。

5時33分撮影
5時33分撮影

それから間もなくして、部屋の中で脱翅女王アリを見かけるようになりました。

5時39分撮影
5時39分撮影
5時41分撮影

やがて夜が明けると、南向きのガラス戸に羽アリが集っていました。

6時13分撮影

8時ごろまでに、部屋の中で、脱翅女王アリは4匹、有翅女王アリは7匹、雄アリは5匹を採集しました。ちなみに、脱翅女王アリですが、交尾を済ませたのかは不明です。

飼育トゲアリの羽アリたち 7月3日以降の様子

直近の飼育トゲアリの羽アリの様子は、こちらをご覧下さい。

羽アリがかなり多くなっている 7月17日撮影
活動室に出手来る羽アリが多くなった 7月27日撮影
活動室内で群れを作るようになった 8月7日撮影
活動室内の群れ 大気圧給水器の傍らで群れていた 8月9日撮影
活動室の中に脱翅女王アリがいた 8月12日撮影
活動室で蜜を与えると羽アリも飲んでいた 8月17日撮影

クロオオアリの働きアリの寿命

T210912-02は、2021年9月16日にクロオオアリのコロニーのBK170530-040に寄生したトゲアリのコロニーです。直近では6月5日のブログで取り上げています。

T210912-02 2024年6月5日撮影

今では、トゲアリの働きアリがかなりの数になっています。

人工巣の中の様子:トゲアリの働きアリばかりに見える この他にも活動室にかなりの数のトゲアリの働きアリがいる 2024年8月9日撮影

そんな中で、寄主であったクロオオアリの働きアリは、活動室アンテグラウンドⅢ型の中にいました。

活動室の中で 8月9日撮影
活動室の中で 8月9日撮影
活動室の側面横にクロオオアリの働きアリの群れがあった 8月9日撮影

しかし、クロオオアリの個体数は明らかに少なくなっています。
ところで、これらの働きアリの中で最も若い働きアリは、幼虫で越年し、寄生の翌年(2022年)の7月ごろまでに羽化したと考えられます。そこで、このコロニーのクロオオアリの働きアリの寿命は、短く見積もっても、8月時点で2年強になります。

関連ブログ
①「働きアリの寿命」(2012年8月31日)
 「1年以上(生存中)」
②「1匹だけ育った働きアリ」(2021年8月31日)
 「成虫になって1年(生存中)」
③「働きアリの寿命」(2013年3月25日)
 「今年で2回目の春を迎えようとしている(生存中)」
 「約20ヵ月生きている(生存中)」
④「働きアリの寿命(その2)」(2013年6月10日)
 「23ヵ月間(確定)」「3年目を越えるのはもう目前(生存中)」
⑤「働きアリの寿命(その3)」(2014年6月19日)
 「最長で2年と11ヶ月近く生きていた(確定)」
⑥「外勤が少ないトゲアリ」(2020年5月29日)
 「最短でも11ヶ月ほど(生存中)」
⑦「トゲアリの様子 2020年10月」(2020年10月15日)
 「1年と4ヶ月以上に渡って生きている(生存中)」
⑧「ほぼ2年間生きているクロオオアリの働きアリ」(2021年5月31日)
 「ほぼ2年間生きている(生存中、例外的)」

ムネアカオオアリの単独女王アリと無女王のクロオオアリの合併

オオアリ同士の異種間共存」では、これまでに11回ブログに書き起こしてきました。
今回は、次のような2つのコロニーの共存を試みます。

S/N:R200603-021
2020年6月3日に駒ケ根市内で採集したムネアカオオアリの新女王アリ
7月12日現在 働きアリ無 卵僅か 幼虫・蛹無
2020年8月22日には働きアリが17匹いた

S/N:BH240518-23
2024年5月18日に蒜山高原で採集したクロオオアリの新女王アリのコロニー
7月7日に女王アリが死亡 この時働きアリは2匹・幼生虫あり
7月12日現在 働きアリ5匹 幼生虫あり

R200603-021はクリアケースミニで飼育 BH240518-23は円形のクリアカップで飼育 7月12日撮影

両者が急速に接触しないように、円形のクリアカップに工夫を施すことにしました。BH240518-23が入っているクリアカップとは別の同じカップを用意し、側面に穴を空けました。

クリアカップの側面に穴を空けた

この穴を空けたカップをもう1つの同じカップの中に入れて、BH240518-23をカット綿ごと内側のカップに引越させ、蓋をしました。

穴を空けたカップは、もう1つのカップの内側に重ね入れている
BH240518-23をカット綿ごと内側のカップに引越させて蓋をしたところ アリはカップの外へは出られない

BH240518-23がカップの中で落ち着いた頃、カップの蓋を外して内側のカップだけをクリアケースミニの中に入れました。

クリアカップの上面にクリアケースミニの蓋が被さるため、カップの上面からは出られない

翌日の7月13日、前日と変化がないように見えました。そこで、クロオオアリのコロニーをクリアカップからカット綿ごと取り出し、クリアケースミニの中に入れ直しました。すると、すぐさま、ムネアカオオアリの女王アリが、クロオオアリのカット綿の方にやって来て、咬みあう寸前にまでになりましたが、女王アリが元の場所に戻って行き、戦いは回避されました。

右がムネアカオオアリの女王アリ 7月13日16時2分撮影
戦いは回避された クロオオアリの働きアリが6匹になっている 7月13日16時3分撮影

それから3時間ほど経ってから見ると、カット綿には女王アリがいて、卵しか残っていませんでした。

カット綿には卵が僅かに残されていた 7月13日19時4分撮影
女王アリが卵を咥えていた 7月13日19時4分撮影
幼生虫は、元々女王アリがいたカット綿の上に運ばれていた 7月13日19時4分撮影 ※1

クロオオアリのカット綿の上にあった幼生虫が、別の場所へと運び出されていたことについては、女王アリが移動させたのではなく、クロオオアリが運んだと思われます(BH240518-23が含まれていた別の多数のサンプルでの観察から)。
クロオオアリの働きアリは4匹死んでいました。

左下の黒い点も死体 右側では女王アリとクロオオアリが栄養交換をしていた 7月13日19時12分撮影

※1の写真に写っている黒い繭が羽化したのでしょう、女王アリが羽化した直後のクロオオアリを介助していました。

働きアリは羽化した直後だと思われる 7月13日19時22分撮影

その後の様子ですが、14日には幼生虫が2箇所に分けて置かれ、15日には大多数の幼生虫がクロオオアリのカット綿に運ばれていました。

クリアカップのカット綿に幼虫が運ばれていた 7月14日11時14分撮影
元女王アリがいたカット綿には大多数の幼生虫がいた 7月14日11時15分撮影
その翌日、元女王アリがいたカット綿には卵を2個残して幼生虫がなくなっていた 7月15日11時50分撮影

7月17日になると、異種間の合併コロニーとして、安定してきたように見えました。女王アリの周りに、3匹のクロオオアリの働きアリが集まり、幼生虫も女王アリたちの下に集められていました。

幼生虫もその全てが集められていた 7月17日15時21分撮影
栄養交換が行われていた 7月17日19時58分撮影

ところがその翌日の7月18日、女王アリが死んでいました。死因は不明です。

女王アリが死んでいた 7月18日13時53分撮影

なぜか、死んだ女王アリと栄養交換のような行動が見られました。

7月18日19時27分撮影
7月18日19時28分撮影

このオオアリ同士の異種間共存の試みは、女王アリが死亡したため続けることができなくはなりましたが、ここまでの観察の限りでまとめると、次のようになるでしょう。

0.合併するムネアカオオアリとクロオオアリのコロニーのそれぞれの構成は既述の通り
1.合併当初からいるクロオオアリの働きアリは、ムネアカオオアリの単独女王アリに殺される可能性が高い。
2.ムネアカオオアリの単独女王アリは、クロオオアリの幼生虫を受け入れる。
3.新たに羽化したクロオオアリの働きアリは、ムネアカオオアリの単独女王アリに受け入れられる。

今年のクロオオアリの女王アリの羽化期間は?

関連ブログ
B15006に雄アリが誕生」(2021年7月4日)
飼育下でクロオオアリの女王アリ誕生」(2022年6月30日)
クロオオアリの女王アリの羽化を撮る」(2022年7月6日)
女王アリの羽化がほぼ完了 B15006」(2022年7月23日)
今年も異様に大きな繭」(2023年6月7日)
B15006で今年も新女王アリが誕生」(2023年7月12日)
クロオオアリの新女王アリの誕生時期は?」(2023年8月1日)
クロオオアリの女王アリの羽化が始まっていた」(2024年7月8日)

クロオオアリのコロニーB15006では、今年は、7月8日には既に新女王アリの羽化が始まっていました。

羽化間もなくの新女王アリ 2024年7月14日撮影

その後、7月17日になると、ほぼ女王アリの繭が無くなっていました。

断言はできないが、ほぼ女王アリの繭が無くなっていた 7月17日

産卵数と羽化数の変化から羽化までの日数を再考察

7月5日のブログ「卵から成虫になるまでの日数(クロオオアリの創巣期)」では、

特定の採集地(岡山県蒜山高原)のクロオオアリで、特定の気温(上記参照)の下で飼育した場合、「創巣期における卵から羽化までの期間は45日である」と言えます。

とまとめています。これは産卵数と羽化数の平均が共に1を超えた期間でした。
ところが、45日以降の羽化数の変化を見ると、この「45日」を追加的に修正する必要があるようです。
次のデータは、産卵数と羽化数の日毎の変化をまとめたものです。

羽化数の増え方は、産卵数の増え方よりも遅いことが分かります。更にグラフにしてみましょう。

このことから、卵から成虫になるまでの日数は、

特定の採集地(岡山県蒜山高原)のクロオオアリで、特定の気温(参照)の下で飼育した場合、「創巣期における卵から羽化までの期間は最短で45日である」

と言えることになります。

今年採集コロニーを引越 クリアケースミニへ

今年採集したクロオオアリの新女王アリのコロニーの大多数を、7月9日、クリアカップからクリアケースミニ(Seriaの商品)に引越させました。

クリアケースミニへ引越させた(写真はその一部)

引越に際しては、成員をカット綿に乗せたままクリアケースミニの中に入れることにより、比較的簡易に引越を済ませることができました。
引越後は、水と蜜を与えました。

水はアクリルパイプで給水する パイプ下方に切れ目がある
中央の水滴は蜜2.0μL
ピペットを使って蜜を分注して与える
使用した200μLカートリッジ

クロオオアリの女王アリの羽化が始まっていた

クロオオアリのコロニーB15006では、2022年から女王アリが誕生するようになっています。
7月8日、今年も既に女王アリの羽化が始まっていました。

新女王アリがまとまった数見られた 7月8日22時40分撮影
この大きな繭が女王アリの繭だろう
羽化した後の殻を働きアリが運んでいた

卵から成虫になるまでの日数(クロオオアリの創巣期)

今年採集したクロオオアリの新女王アリの中の50サンプルの内、生き残っている48サンプルで、7月2日に初めて羽化がありましたが、7月5日、48サンプルの羽化数の平均値が1を超えました。

48サンプルの羽化数の平均値の日毎の推移
  7月2日 0.02匹
  7月3日 0.15匹
  7月4日 0.77匹
  7月5日 1.38匹

産卵数の50サンプル時の平均値が1を超えたのは5月22日(平均値1.32個)でしたので、卵が産み落とされ、成虫になるまでの期間は45日間となります。
ところで、2021年にも今年と採集地が同じ岡山県の蒜山高原で採集した新女王アリの子育てについても調べていて、次のようなデータがあります。

産卵数の平均が1を超えた日 5月26日(平均値1.23個 サンプル数43)
羽化数の平均が1を超えた日 7月9日(平均値1.03匹 サンプル数33)

2021年の場合は、卵が産み落とされ、成虫になるまでの期間は45日間となります。と言うことは、今年と一致していることになります。
ちなみに、飼育室の気温ですが、2021年時と今年とは少し違っています。
2021年の場合は、飼育室の気温を自動化して管理するということは行っていませんでしたが、室温が30℃を越えていることに気づいた時点でエアコンを点けていました。
今年は、飼育室の室温管理を自動化していて、30℃になると設定温度24℃でエアコンが点き、室温が26℃にまで下がるとエアコンが切れるようにしていました。

今年のサンプル 7月5日20時21分撮影
7月5日20時22分撮影

以上の観察をまとめると、特定の採集地(岡山県蒜山高原)のクロオオアリで、特定の気温(上記参照)の下で飼育した場合、「創巣期における卵から羽化までの期間は45日である」と言えます。

飼育トゲアリの羽アリたち

6月18日に、トゲアリのコロニーT140906-40(2014年9月6日に新女王アリを採集)で、女王アリが誕生したことについて触れていますが、6月26日には雄アリが活動室アンテグラウンドⅡ型にいるのを見つけました。

活動室に垂らした蜜を働きアリと一緒に吸っている雄アリ 6月26日20時58分撮影

7月3日には、女王アリがかなりの数になっていました。中には、活動室に出てきている女王アリもいました。

本巣の中の女王アリ
本巣の中の女王アリ
本巣の中 働きアリからケアを受けているように見える
羽化直後、ちょうど翅が伸びきったところなのだろうか
羽化後、まだ翅が白っぽい
羽化後、体色が黒っぽくなってきている
活動室の壁面を歩き回る女王アリ
活動室の床の死骸置き場になっているところにいる女王アリ2匹
上の写真の1匹は、なぜか死んだ働きアリの肢を咥えていた