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単独女王アリと女王アリがいないコロニーの合併(1年目の同世代のクロオオアリ)

これまでも、オオアリの同種間共存については、いくつかの事例を見てきました。その中で、ムネアカオオアリの事例で、単独女王アリと女王アリがいないコロニーの合併があります。この事例では、共存が成立していて、次のように結論づけています。

「既に女王アリを失っている創巣から2年目のムネアカオオアリのコロニーの働きアリと、創巣から4年目のムネアカオオアリの単独女王アリは、共存できることがある。」

今回は「単独女王アリと女王アリがいないコロニーの合併」という点では同じですが、クロオオアリ同士で、「既に女王アリを失っている創巣から1年目のコロニーの働きアリと、同世代の単独女王アリ」という点が異なる共存を試みることにしました。

BH240518-31:7月28日に女王アリの死亡を確認
 今年5月18日に蒜山高原で新女王アリを採集したクロオオアリのコロニー
BH240518-53:単独女王アリ
 今年5月18日に蒜山高原で採集したクロオオアリ新女王アリ、成虫はいないが子育てはできるようだ

左がBH240518-31のコロニー、右が単独女王アリBH240518-53
BH240518-31のコロニーの様子 9月1日16時52分撮影
BH240518-53の様子 幼生虫がいる 9月1日16時53分撮影

9月1日の17時前に合併を開始しました。合併の方法としては、単独女王アリの方をカット綿ごと(女王アリと幼生虫を乗せて)BH240518-31のコロニーの中に入れます。

合併の直後の様子 16時55分59秒撮影
16時58分01秒撮影

戦いが起こりましたが、間もなくすると、女王アリと働きアリ間で栄養交換が見られました。

16時58分45秒撮影
17時01分27秒撮影
攻撃姿勢を取りながら栄養交換をする働きアリ 女王アリに咬みつこうとしている働きアリもいる 17時03分07秒撮影
攻撃を受けながらも栄養交換をする女王アリ 17時07分13秒撮影
攻撃される女王アリ 17時07分52秒撮影
17時08分16秒撮影
17時09分04秒撮影

これまで、攻撃をしかけるのは主に働きアリの方でしたが、女王アリが働きアリを殺す場面がありました。

この直前に女王アリが働きアリ(右下方 頭部が落とされている)を殺した 17時13分37秒撮影
女王アリが幼虫を咥える場面もあった 女王アリが育てていた幼生虫は既に働きアリに受け入れられていた 17時20分16秒撮影
17時20分26秒撮影
まだ羽化して間もない働きアリとも栄養交換をしていた 17時24分20秒撮影

合併が始まってからほぼ30分程度で、両者は落ち着いてきたようです。
それから3日後の9月4日、合併が成功して共存が始まっているようでした。新たに働きアリが殺されることも無かったようです。

9月4日19時12分撮影
ゴミ置き場の様子 9月4日19時15分撮影

この実験結果を見る限りでは、次のように言えそうです。

「既に女王アリを失っている創巣から1年目のクロオオアリのコロニーの働きアリと、同世代のクロオオアリの単独女王アリは、創巣から3ヶ月超の時点で、共存できることがある。」

 

クロオオアリの働きアリの寿命

T210912-02は、2021年9月16日にクロオオアリのコロニーのBK170530-040に寄生したトゲアリのコロニーです。直近では6月5日のブログで取り上げています。

T210912-02 2024年6月5日撮影

今では、トゲアリの働きアリがかなりの数になっています。

人工巣の中の様子:トゲアリの働きアリばかりに見える この他にも活動室にかなりの数のトゲアリの働きアリがいる 2024年8月9日撮影

そんな中で、寄主であったクロオオアリの働きアリは、活動室アンテグラウンドⅢ型の中にいました。

活動室の中で 8月9日撮影
活動室の中で 8月9日撮影
活動室の側面横にクロオオアリの働きアリの群れがあった 8月9日撮影

しかし、クロオオアリの個体数は明らかに少なくなっています。
ところで、これらの働きアリの中で最も若い働きアリは、幼虫で越年し、寄生の翌年(2022年)の7月ごろまでに羽化したと考えられます。そこで、このコロニーのクロオオアリの働きアリの寿命は、短く見積もっても、8月時点で2年強になります。

関連ブログ
①「働きアリの寿命」(2012年8月31日)
 「1年以上(生存中)」
②「1匹だけ育った働きアリ」(2021年8月31日)
 「成虫になって1年(生存中)」
③「働きアリの寿命」(2013年3月25日)
 「今年で2回目の春を迎えようとしている(生存中)」
 「約20ヵ月生きている(生存中)」
④「働きアリの寿命(その2)」(2013年6月10日)
 「23ヵ月間(確定)」「3年目を越えるのはもう目前(生存中)」
⑤「働きアリの寿命(その3)」(2014年6月19日)
 「最長で2年と11ヶ月近く生きていた(確定)」
⑥「外勤が少ないトゲアリ」(2020年5月29日)
 「最短でも11ヶ月ほど(生存中)」
⑦「トゲアリの様子 2020年10月」(2020年10月15日)
 「1年と4ヶ月以上に渡って生きている(生存中)」
⑧「ほぼ2年間生きているクロオオアリの働きアリ」(2021年5月31日)
 「ほぼ2年間生きている(生存中、例外的)」

今年のクロオオアリの女王アリの羽化期間は?

関連ブログ
B15006に雄アリが誕生」(2021年7月4日)
飼育下でクロオオアリの女王アリ誕生」(2022年6月30日)
クロオオアリの女王アリの羽化を撮る」(2022年7月6日)
女王アリの羽化がほぼ完了 B15006」(2022年7月23日)
今年も異様に大きな繭」(2023年6月7日)
B15006で今年も新女王アリが誕生」(2023年7月12日)
クロオオアリの新女王アリの誕生時期は?」(2023年8月1日)
クロオオアリの女王アリの羽化が始まっていた」(2024年7月8日)

クロオオアリのコロニーB15006では、今年は、7月8日には既に新女王アリの羽化が始まっていました。

羽化間もなくの新女王アリ 2024年7月14日撮影

その後、7月17日になると、ほぼ女王アリの繭が無くなっていました。

断言はできないが、ほぼ女王アリの繭が無くなっていた 7月17日

産卵数と羽化数の変化から羽化までの日数を再考察

7月5日のブログ「卵から成虫になるまでの日数(クロオオアリの創巣期)」では、

特定の採集地(岡山県蒜山高原)のクロオオアリで、特定の気温(上記参照)の下で飼育した場合、「創巣期における卵から羽化までの期間は45日である」と言えます。

とまとめています。これは産卵数と羽化数の平均が共に1を超えた期間でした。
ところが、45日以降の羽化数の変化を見ると、この「45日」を追加的に修正する必要があるようです。
次のデータは、産卵数と羽化数の日毎の変化をまとめたものです。

羽化数の増え方は、産卵数の増え方よりも遅いことが分かります。更にグラフにしてみましょう。

このことから、卵から成虫になるまでの日数は、

特定の採集地(岡山県蒜山高原)のクロオオアリで、特定の気温(参照)の下で飼育した場合、「創巣期における卵から羽化までの期間は最短で45日である」

と言えることになります。

今年採集コロニーを引越 クリアケースミニへ

今年採集したクロオオアリの新女王アリのコロニーの大多数を、7月9日、クリアカップからクリアケースミニ(Seriaの商品)に引越させました。

クリアケースミニへ引越させた(写真はその一部)

引越に際しては、成員をカット綿に乗せたままクリアケースミニの中に入れることにより、比較的簡易に引越を済ませることができました。
引越後は、水と蜜を与えました。

水はアクリルパイプで給水する パイプ下方に切れ目がある
中央の水滴は蜜2.0μL
ピペットを使って蜜を分注して与える
使用した200μLカートリッジ

クロオオアリの女王アリの羽化が始まっていた

クロオオアリのコロニーB15006では、2022年から女王アリが誕生するようになっています。
7月8日、今年も既に女王アリの羽化が始まっていました。

新女王アリがまとまった数見られた 7月8日22時40分撮影
この大きな繭が女王アリの繭だろう
羽化した後の殻を働きアリが運んでいた

卵から成虫になるまでの日数(クロオオアリの創巣期)

今年採集したクロオオアリの新女王アリの中の50サンプルの内、生き残っている48サンプルで、7月2日に初めて羽化がありましたが、7月5日、48サンプルの羽化数の平均値が1を超えました。

48サンプルの羽化数の平均値の日毎の推移
  7月2日 0.02匹
  7月3日 0.15匹
  7月4日 0.77匹
  7月5日 1.38匹

産卵数の50サンプル時の平均値が1を超えたのは5月22日(平均値1.32個)でしたので、卵が産み落とされ、成虫になるまでの期間は45日間となります。
ところで、2021年にも今年と採集地が同じ岡山県の蒜山高原で採集した新女王アリの子育てについても調べていて、次のようなデータがあります。

産卵数の平均が1を超えた日 5月26日(平均値1.23個 サンプル数43)
羽化数の平均が1を超えた日 7月9日(平均値1.03匹 サンプル数33)

2021年の場合は、卵が産み落とされ、成虫になるまでの期間は45日間となります。と言うことは、今年と一致していることになります。
ちなみに、飼育室の気温ですが、2021年時と今年とは少し違っています。
2021年の場合は、飼育室の気温を自動化して管理するということは行っていませんでしたが、室温が30℃を越えていることに気づいた時点でエアコンを点けていました。
今年は、飼育室の室温管理を自動化していて、30℃になると設定温度24℃でエアコンが点き、室温が26℃にまで下がるとエアコンが切れるようにしていました。

今年のサンプル 7月5日20時21分撮影
7月5日20時22分撮影

以上の観察をまとめると、特定の採集地(岡山県蒜山高原)のクロオオアリで、特定の気温(上記参照)の下で飼育した場合、「創巣期における卵から羽化までの期間は45日である」と言えます。

48サンプルの中の初めての羽化

今年は、クロオオアリの新女王アリの採集直後からの産卵数を50サンプルで調べましたが、7月2日、生き残っている48サンプルの24番で、初めて羽化がありました。

サンプル番号24 7月2日17時20分撮影

サンプル番号24は、5月22日に初めて産卵を確認していますので、41日後に羽化したことになります。この例では、幼生虫の期間は41日(間)になりました。

創巣13年目の無女王コロニーと単独女王は共存可か(2)

6月16日から始めた同種間共存の試みでは、その後も女王アリはクリアカップの中に留まっていました。右後脚に咬みつかれたまま取れていなかった働きアリの頭部は、いつのまにか外れていました。

女王アリの右後脚についたままになっていた働きアリの頭部が外れていた 6月22日14時15分撮影

6月22日、女王アリと働きアリが馴染んでいる様子でしたので、女王アリをクリアカップから出すことにしました。

女王アリをクリアカップからカット綿ごと出した直後 6月22日14時18分撮影

やはり、両者の間で戦いは起こりませんでした。

栄養交換をする場面もあった 6月22日14時31分撮影

6月28日になっても、女王アリはまだ活動室に留まっていました。ところが人工巣セットを移動した際の振動のせいか、女王アリが活動室と人工巣を繋ぐパイプの中へ入ろうとしました。ですが、その入り口は1段高いところにあったので、女王アリは這い上がれませんでした。

パイプの中へ這い上がろうとする女王アリ 6月28日9時55分撮影

そこで、板で踏み台を作りました。

板で踏み台を作った 6月28日9時59分撮影

7月2日、それでも女王アリは、まだ活動室の中にいました。そこで、僅かに振動を与えました。するとパイプの中に入って行きました。そして、人工巣の中に入って行ったのですが、そこでも争いは起こりませんでした。

人工巣の中の女王アリ 身繕いをしている 16時48分撮影

クロオオアリの同種間共存は成り立ったようです。

これまでに、クロオオアリの同種間共存について分かっていることの中で、「女王アリがいないコロニーと単独女王アリの共存」については、次のことが分かっています。

1)既に女王アリを失っているクロオオアリの合同コロニーと、そのコロニーと同年代のクロオオアリの単独女王アリは、創巣の翌年の3月時点では共存できることがある。
2)既に女王アリを失っている単一のクロオオアリのコロニーと、そのコロニーと同年代のクロオオアリの単独女王アリは、創巣の翌年の3月時点では共存できることがある。

今回の同種間共存については、単独女王アリの方が創巣の翌年である点は同じですが、女王アリを失っているコロニー(死亡後14ヶ月強経過)の方が創巣から13年目だと言う点が異なっています。
まとめると次のようになります。

3)1年以上前に女王アリを失っている創巣から13年目のクロオオアリのコロニーと、創巣から2年目のクロオオアリの単独女王アリは、共存できることがある。

庭でクロオオアリの単独女王アリを採集

2021年の9月22日に、庭で単独で歩いているクロオオアリの脱翅女王アリを見つけたことがあります。結婚飛行の時期ではないため、『「移植」組のコロニーの巣が何者かに襲われ、「命辛々」逃げてきたのかも知れません』と考えました。また、その時の観察では、「腹部を見ると、結婚飛行後の女王アリのようには膨らんではなく、かなり萎んだ腹部でした」と記載しています。
今日6月30日、15時前に、3年ぶりに庭で単独で歩いているクロオオアリの脱翅女王アリを見つけました。見つけた場所は、3年前とほぼ同じ場所の庭から外に通じる階段でした。

6月30日14時56分撮影

腹部を見ると、3年前と同様に膨れていないようです。

2021年9月22日9時1分撮影

結婚飛行直後のクロオオアリの脱翅女王アリの腹部の大きさは次の写真ようです。

結婚飛行後の女王アリ 2016年6月11日撮影
結婚飛行後の女王アリ 2020年6月4日撮影

このことから、今回採集した脱翅女王アリは、直前に結婚飛行を終えた新女王アリではないと考えられます。そうだとすると、この女王アリも、巣を何者かに襲われ、「命辛々」逃げてきたのかも知れません。
この女王アリをS/N:BO240630として飼育することにしました。

比較的大きなクロオオアリの6コロニーの様子(6月28日)

現在飼育しているクロオオアリのコロニーの内、比較的大きな6コロニーの様子を記録しておきます。

1)B15006(2015年5月27日に駒ケ根市で採集)

クロオオアリの飼育コロニーの中で最も大きなコロニー 創巣から9年目を迎えている
今年も羽アリの繭がある

2)BK170530-081(2017年5月30日に駒ケ根市で採集)

活動室はアンテグラウンドⅢ型

3)BH18024(2018年5月15日に蒜山高原で採集)

4)B200603-067(2020年6月3日に駒ケ根市で採集)

5)B200603-075(2020年6月3日に駒ケ根市で採集)

幼生虫がとても多い

6)BH210523-37(2021年5月23日に蒜山高原で採集)

意図した通り人工巣のコンクリート上面を居室スペースとして利用している

昨年採集の3コロニーの引越

昨年新女王アリを採集した4コロニーの内3コロニーを、6月23日、カップ型コンクリート製人工巣に引越させました。
1)ムネアカオオアリのコロニー RH230604-01

百均購入のプラケースを利用した飼育ケース 蓋の3箇所にアクセス穴を空けている 6月23日撮影
引越専用の衣裳ケース(壁面上部にベビーパウダーを付けている)の中に人工巣を入れる 11時15分撮影
コロニーの成員を人工巣の中に振るい落とし、開放蓋付きのW拡張蓋を人工巣の上に被せる 11時23分撮影
人工巣の中に入らなかった働きアリを平筆ですくって捕獲し、W拡張蓋の中に落とす 11時26分撮影
平筆ですくえない働きアリはフィルムケースを被せて捕らえ、壁面に登ってきたらW拡張蓋の中に落とす 11時28分撮影
W拡張蓋の中に働きアリがいなくなった 11時30分撮影
プラケースにまだ卵等が残っていた 11時31分撮影
卵等は、プラケースを振っても落ち難いので、細筆の穂先を湿らせ、水の表面張力で吸着させる 11時35分撮影
先程細筆から落とし入れた卵等も巣室へ運び込まれたようだ 11時37分撮影
コンクリート製人工巣の上面の残滓は、掃除機の吸い込み口に細いホースをはめて吸い取る
引越完了 11時54分撮影
巣室に入ったごみを巣から運び出していた 12時1分撮影

2)ムネアカオオアリのコロニー RH230604-02

RH230604-02 6月23日撮影
衣裳ケースの中で成員を人工巣に落とし入れたが、女王アリが巣穴に入らなかった 13時20分撮影
人工巣を傾け幼生虫を巣口から巣室へと落とし入れたが、女王アリと少数の成員はそのまま留まった 13時31分撮影
女王アリを強制的に巣室へ入れて引越完了 13時45分撮影

3)クロオオアリのコロニー BS2305M-03

BS2305M-03 6月23日撮影
衣裳ケースの中で成員を人工巣の中に落とし入れた。巣室へと幼生虫を運び入れ始めた。 14時9分撮影
働きアリが女王アリの大腮を咥えて、巣穴へと誘導しようとしている 14時12分27秒
14時12分28秒
女王アリは、働きアリに直接誘導されることなく、巣穴へ入って行った 14時14分撮影
開放蓋付きのW拡張蓋の中には、まだ幼生虫が残っていた 14時14分撮影
W拡張蓋から巣室へと幼虫を運んで行く働きアリ
W拡張蓋から巣室へと仲間を運んで行く働きアリ 14時24分撮影
引越完了 15時21分撮影

卵から蛹化までの日数 28日間

今年の5月18日に採集したクロオオアリの新女王アリのその後の子育てですが、採集日から31日目の6月18日、蛹化が既に始まっていました。
観察対象としている49匹の女王アリのコロニーでの繭の平均数は1.63個でした。昨日17日は観察していませんでしたので、確言はできないのですが、17日には繭が散見できたと思われます。

BH240518-08 6月18日15時30分撮影
BH240518-16 6月18日15時30分撮影
BH240518-35 6月18日15時27分撮影
BH240518-40 6月18日15時28分撮影
BH240518-46 6月18日15時28分撮影

観察対象の50コロニーで、産卵数の平均値が1を超えたのは採集日から4日目の5月22日の1.32個です(21日0.06個、23日2.52個)。昨日の17日は観察していないものの、繭の数の平均値が18日は1.63個ですから、18日に1を越えたと想定すれば、卵が産み落とされてから27日後に蛹化したことになります。

結婚飛行から産卵を始めるまでの日数:(5日間 当日を含む)または(4日後)
卵が産み落とされてから繭になるまでの日数:(28日間 当日を含む)または(27日後)

と整理することができます。ただこの数値は、飼育環境の内、特に気温により大きく変動すると思われますので、一般化することはできないでしょう。

飼育ケース間で引越 BH210523-34

5月30日に、クロオオアリのコロニーBH210523-30を引越させましたが、今回は、BH210523-34を飼育ケース間で引越させます。BH210523-34はBH210523-30と同様に、2021年5月23日に蒜山高原で新女王アリを採集したコロニーです。こちらのコロニーも、カップ型コンクリート製人工巣で飼育していましたが、コロニーが大きくなってきていました。

飼育器の全体の様子 開放蓋に変更した「W拡張蓋」をカップの上に載せている 6月18日撮影
人工巣には4部屋ある 女王アリがいる部屋
別の部屋
別の部屋
別の部屋

このBH210523-34をリトルアンテシェルフに引越させます。このリトルアンテシェルフには、最下段の両端にアクリルパイプがあって出入りができますが、更に出入りしやすいように最下段のアクセス窓をシリコン栓を挟んで持ち上げました。

最下段のアクセス窓をシリコン栓で持ち上げている

リトルアンテシェルフにアルミホイールを被せて、引越専用にしている衣裳ケース(ベビーパウダーを無水アルコールで練って壁面上部に塗っている)に入れ、人工巣を分解(カップからコンクリート部分を分離)して、成員を強制的に衣裳ケースに落とし入れました。

引越を始める前の衣裳ケースの中 6月18日9時57分撮影

衣裳ケースの中に入れられると、働きアリたちは早くもリトルアンテシェルフの中に幼生虫を運び入れ始めました。

リトルアンテシェルフの中に幼生虫を運び入れている 10時12分撮影
女王アリもリトルアンテシェルフの中に入って行った 10時12分撮影
10時18分撮影
引き続き幼生虫をリトルアンテシェルフの中に運び入れている 10時20分撮影
幼生虫はほぼ運び入れられたようだ 僅かに卵や小さな幼虫が元巣に残っていた 10時21分撮影

引越先の準備を始めました。小型水槽の底に敷板を置き、周りを川砂で敷き詰めました。この砂は粘土質を含まないため、さらさらしています。アリの飼育に土は必要ではありませんが、砂を敷くことで飼育器内の底面積を、砂の表面積で3次元的に格段に広くする、ことができ、汚れを分散させることができます。

板の大きさはリトルアンテシェルフの底面と同じ寸法だ
全ての幼生虫がリトルアンテシェルフに運び込まれたようだ 10時53分撮影
元の人工巣の様子 卵や小さな幼虫も全て運び去られていた 10時55分撮影
引越完了

ところで、リトルアンテシェルフを衣裳ケースの中から小型水槽に移した後の衣裳ケースの中には、まだ比較的多くの働きアリが残っています。そこで、この働きアリを小型水槽に移し入れなければなりません。
その時に使っているのは平筆です。平筆でアリをすくうようにすると、アリを筆に乗せることができます(毛に咬みついてなかなか毛を放さないアリもいます)。筆に付いたアリは、開放蓋をした小型水槽の上から払い落とせばよいわけです。

1度に複数匹捕らえることもできる

結婚飛行から12年、寿命は13年弱

女王アリの寿命を調べる目的で飼育しているB120614-03の様子については、直近では6月2日に触れています。そのB120614-03は、6月14日で結婚飛行から12年目を迎えました。羽化してからの寿命は13年弱となります。

飼育環境 6月18日撮影
女王アリと多数の雄アリ 6月18日撮影
6月2日同様、卵は女王アリとは別の巣室に置かれていて孵化していない 6月18日撮影

創巣13年目の無女王コロニーと単独女王は共存可か(1)

BS2305M-02は、昨年の5月に採集した新女王アリです。昨年は産卵しなかったのですが、今年になってからは、産卵をするようになっていました。

一方、B110608-07は、2011年6月8日に新女王アリを採集したコロニーで、このコロニーの女王アリは、2023年4月6日に死亡を確認していました。

B110608-07の飼育器 6月16日撮影
人工巣の中の様子
卵があるが、働きアリが産んだ卵だ

6月16日、女王アリがいないB110608-07の中に、単独女王アリのBS2305M-02を入れることにしました。

蓋をとってクリアカップを活動室の中に入れた クリアカップに食い付く働きアリ 13時56分撮影
すぐに戦いが始まった 13時56分撮影
女王アリの方が強いようだ 13時57分撮影

卵を咥えてクリアカップ内を歩き回る働きアリがいましたが、この時は卵をカップから外へは持ち出しませんでした。

一瞬だったが栄養交換の体形になっていた 14時2分撮影
働きアリが卵を咥えてカップから出ようとしているが、この時も結局出なかったようだ 14時14分撮影
また戦いがあったようだ 働きアリが女王アリの右後脚に咬みついたまま殺されていた 14時16分撮影
働きアリが卵を咥えている 14時30分撮影
卵が無くなっていた 15時56分撮影
女王アリに殺された働きアリの頭部と前胸部と前脚が、女王アリの右後脚に付いている 15時57分撮影
仲間が死体を齧っているようだ 16時5分撮影
また、一瞬栄養交換をしているところを見た 16時7分撮影
殺された働きアリは頭部のみになっていた このまま頭部は外れないのだろうか 17時22分撮影

翌日の6月17日の様子

まだ働きアリの頭部が右後脚に付いていた これまでに少なくとも3匹の働きアリが殺されたようだ 6月17日17時29分撮影
ここでも仲間が死体を齧っているようだ 17時55分撮影

働く脱翅女王アリ

結婚飛行に飛び立てなかった飼育下のクロオオアリの脱翅女王アリが、働くことについては、昨年今年の5月のブログで取り上げています。
今日6月16日にも、以前と同じクロオオアリB15006のコロニーの活動室で、脱翅女王アリが働いているところを見ました。

昆虫に齧り付く脱翅女王アリ 6月16日17時5分撮影
上と同じ女王アリ 17時5分撮影

庭の結婚飛行(2024年)

今年は5月18日に蒜山高原でクロオオアリの新女王アリを62匹、ムネアカオオアリの新女王アリを1匹採集しています。
その日は、自宅の庭のクロオオアリの様子は観察できなかったので、自宅でも結婚飛行が行われたのかどうかはわかりません。
その後の庭でのクロオオアリの結婚飛行の状況ですが、観察をしていない日もあるのですが、次のことが分かっています。

5月20日(最高気温27.4℃/最低気温14.5℃/日照時間11.7時間/晴のち時々曇(6時〜18時) 
小規模に結婚飛行が行われた可能性があるが、女王アリが飛び立つところは観察できていない。
5月21日(29.6/16.9/9.2/晴)
 女王アリが飛び立つところを観察している。
5月22日(24.2/14.8/4.6/曇)・25日(27.6/15.3/13.3/晴)・26日(27.9/13.8/12.3/晴)・29日(25.7/12.5/12.6/晴)
 観察の限りでは巣口に羽アリが出ていない。
5月30日(25.2/13.2/6.8/曇一時晴)・6月1日(28.6/15.3/9.2/晴時々曇)
 巣口で羽アリが見られた。
6月3日(25.1/14.1/9.6/晴後曇一時雨)・6月4日(25.8/14.0/10.9/晴時々曇)
 巣口で僅かに羽アリが見られた。
6月7日(29.0/17.7/12.0/晴)
 巣口で羽アリが見られた。
6月10日(28.3/18.0/6.6/曇のち晴一時雨)
 小規模に結婚飛行が行われた可能性があるが、女王アリが飛び立つところは観察できていない。
6月11日(29.6/18.1/10.3/晴時々曇)
 巣口で羽アリが見られた。
6月13日(32.7/19.8/11.6/曇一時雨後晴)
 巣口で僅かに羽アリが見られた。

5月20日の様子

5月20日16時3分撮影
5月20日16時12分撮影

5月21日 飛び立つ女王アリ 3例

飛び立つ女王アリ 5月21日15時34分撮影
別の飛び立つ女王アリ 5月21日15時37分撮影
別の飛び立つ女王アリ 5月21日15時45分撮影

6月10日の様子

6月10日16時36分撮影
6月10日17時20分撮影
6月10日17時22分撮影
6月10日17時59分撮影
6月10日18時03分撮影
巣口へと戻って行く女王アリ 6月10日18時10分撮影
巣口へと戻って行く別の女王アリ 6月10日18時14分撮影

脱翅新女王アリが2匹に

今年の5月19日に、クロオオアリB15006の活動室(アンテグラウンドⅠ型)に、脱翅新女王アリが1匹いたことに触れていますが、6月4日には脱翅女王アリが2匹になっていました。

6月4日17時36分撮影
別の脱翅新女王アリ 17時37分撮影
6月12日にも脱翅女王アリが2匹確認できた 10時55分撮影

13回目の結婚記念日 最年長の女王アリ

B110608-06が13回目の結婚記念日を迎えました。このクロオオアリの女王アリは、2011年の6月8日に長野県の駒ヶ根市内で採集しました。

B110608-06の今の飼育環境
2024年6月8日撮影

昨年の6月8日時の様子と比べてみると、卵の数が少ないようです。

2023年6月8日撮影
2024年6月8日撮影

このコロニーでは、昨年も雄アリはいませんでしたので、昨年産卵された卵は、羽化しなかったか有精卵であったことになります(観察記録がなかったため断言できない)。今年産卵された卵は有精卵なのでしょうか。観察が待たれます。
それにしても、クロオオアリの女王アリが14年弱生き続けていることは驚きです(女王アリの羽化時期参照)。