同種間共存」カテゴリーアーカイブ

単独女王アリと女王アリがいないコロニーの合併(1年目の同世代のクロオオアリ)

これまでも、オオアリの同種間共存については、いくつかの事例を見てきました。その中で、ムネアカオオアリの事例で、単独女王アリと女王アリがいないコロニーの合併があります。この事例では、共存が成立していて、次のように結論づけています。

「既に女王アリを失っている創巣から2年目のムネアカオオアリのコロニーの働きアリと、創巣から4年目のムネアカオオアリの単独女王アリは、共存できることがある。」

今回は「単独女王アリと女王アリがいないコロニーの合併」という点では同じですが、クロオオアリ同士で、「既に女王アリを失っている創巣から1年目のコロニーの働きアリと、同世代の単独女王アリ」という点が異なる共存を試みることにしました。

BH240518-31:7月28日に女王アリの死亡を確認
 今年5月18日に蒜山高原で新女王アリを採集したクロオオアリのコロニー
BH240518-53:単独女王アリ
 今年5月18日に蒜山高原で採集したクロオオアリ新女王アリ、成虫はいないが子育てはできるようだ

左がBH240518-31のコロニー、右が単独女王アリBH240518-53
BH240518-31のコロニーの様子 9月1日16時52分撮影
BH240518-53の様子 幼生虫がいる 9月1日16時53分撮影

9月1日の17時前に合併を開始しました。合併の方法としては、単独女王アリの方をカット綿ごと(女王アリと幼生虫を乗せて)BH240518-31のコロニーの中に入れます。

合併の直後の様子 16時55分59秒撮影
16時58分01秒撮影

戦いが起こりましたが、間もなくすると、女王アリと働きアリ間で栄養交換が見られました。

16時58分45秒撮影
17時01分27秒撮影
攻撃姿勢を取りながら栄養交換をする働きアリ 女王アリに咬みつこうとしている働きアリもいる 17時03分07秒撮影
攻撃を受けながらも栄養交換をする女王アリ 17時07分13秒撮影
攻撃される女王アリ 17時07分52秒撮影
17時08分16秒撮影
17時09分04秒撮影

これまで、攻撃をしかけるのは主に働きアリの方でしたが、女王アリが働きアリを殺す場面がありました。

この直前に女王アリが働きアリ(右下方 頭部が落とされている)を殺した 17時13分37秒撮影
女王アリが幼虫を咥える場面もあった 女王アリが育てていた幼生虫は既に働きアリに受け入れられていた 17時20分16秒撮影
17時20分26秒撮影
まだ羽化して間もない働きアリとも栄養交換をしていた 17時24分20秒撮影

合併が始まってからほぼ30分程度で、両者は落ち着いてきたようです。
それから3日後の9月4日、合併が成功して共存が始まっているようでした。新たに働きアリが殺されることも無かったようです。

9月4日19時12分撮影
ゴミ置き場の様子 9月4日19時15分撮影

この実験結果を見る限りでは、次のように言えそうです。

「既に女王アリを失っている創巣から1年目のクロオオアリのコロニーの働きアリと、同世代のクロオオアリの単独女王アリは、創巣から3ヶ月超の時点で、共存できることがある。」

 

創巣13年目の無女王コロニーと単独女王は共存可か(2)

6月16日から始めた同種間共存の試みでは、その後も女王アリはクリアカップの中に留まっていました。右後脚に咬みつかれたまま取れていなかった働きアリの頭部は、いつのまにか外れていました。

女王アリの右後脚についたままになっていた働きアリの頭部が外れていた 6月22日14時15分撮影

6月22日、女王アリと働きアリが馴染んでいる様子でしたので、女王アリをクリアカップから出すことにしました。

女王アリをクリアカップからカット綿ごと出した直後 6月22日14時18分撮影

やはり、両者の間で戦いは起こりませんでした。

栄養交換をする場面もあった 6月22日14時31分撮影

6月28日になっても、女王アリはまだ活動室に留まっていました。ところが人工巣セットを移動した際の振動のせいか、女王アリが活動室と人工巣を繋ぐパイプの中へ入ろうとしました。ですが、その入り口は1段高いところにあったので、女王アリは這い上がれませんでした。

パイプの中へ這い上がろうとする女王アリ 6月28日9時55分撮影

そこで、板で踏み台を作りました。

板で踏み台を作った 6月28日9時59分撮影

7月2日、それでも女王アリは、まだ活動室の中にいました。そこで、僅かに振動を与えました。するとパイプの中に入って行きました。そして、人工巣の中に入って行ったのですが、そこでも争いは起こりませんでした。

人工巣の中の女王アリ 身繕いをしている 16時48分撮影

クロオオアリの同種間共存は成り立ったようです。

これまでに、クロオオアリの同種間共存について分かっていることの中で、「女王アリがいないコロニーと単独女王アリの共存」については、次のことが分かっています。

1)既に女王アリを失っているクロオオアリの合同コロニーと、そのコロニーと同年代のクロオオアリの単独女王アリは、創巣の翌年の3月時点では共存できることがある。
2)既に女王アリを失っている単一のクロオオアリのコロニーと、そのコロニーと同年代のクロオオアリの単独女王アリは、創巣の翌年の3月時点では共存できることがある。

今回の同種間共存については、単独女王アリの方が創巣の翌年である点は同じですが、女王アリを失っているコロニー(死亡後14ヶ月強経過)の方が創巣から13年目だと言う点が異なっています。
まとめると次のようになります。

3)1年以上前に女王アリを失っている創巣から13年目のクロオオアリのコロニーと、創巣から2年目のクロオオアリの単独女王アリは、共存できることがある。

創巣13年目の無女王コロニーと単独女王は共存可か(1)

BS2305M-02は、昨年の5月に採集した新女王アリです。昨年は産卵しなかったのですが、今年になってからは、産卵をするようになっていました。

一方、B110608-07は、2011年6月8日に新女王アリを採集したコロニーで、このコロニーの女王アリは、2023年4月6日に死亡を確認していました。

B110608-07の飼育器 6月16日撮影
人工巣の中の様子
卵があるが、働きアリが産んだ卵だ

6月16日、女王アリがいないB110608-07の中に、単独女王アリのBS2305M-02を入れることにしました。

蓋をとってクリアカップを活動室の中に入れた クリアカップに食い付く働きアリ 13時56分撮影
すぐに戦いが始まった 13時56分撮影
女王アリの方が強いようだ 13時57分撮影

卵を咥えてクリアカップ内を歩き回る働きアリがいましたが、この時は卵をカップから外へは持ち出しませんでした。

一瞬だったが栄養交換の体形になっていた 14時2分撮影
働きアリが卵を咥えてカップから出ようとしているが、この時も結局出なかったようだ 14時14分撮影
また戦いがあったようだ 働きアリが女王アリの右後脚に咬みついたまま殺されていた 14時16分撮影
働きアリが卵を咥えている 14時30分撮影
卵が無くなっていた 15時56分撮影
女王アリに殺された働きアリの頭部と前胸部と前脚が、女王アリの右後脚に付いている 15時57分撮影
仲間が死体を齧っているようだ 16時5分撮影
また、一瞬栄養交換をしているところを見た 16時7分撮影
殺された働きアリは頭部のみになっていた このまま頭部は外れないのだろうか 17時22分撮影

翌日の6月17日の様子

まだ働きアリの頭部が右後脚に付いていた これまでに少なくとも3匹の働きアリが殺されたようだ 6月17日17時29分撮影
ここでも仲間が死体を齧っているようだ 17時55分撮影

「10年目の再生コロニー」(B120614-03)のその後

B120614-03は、2012年の6月14日に長野県の駒ヶ根市で採集したクロオオアリの女王アリのコロニーです。このコロニーの成員は、2022年になって短期間に大量に死亡して、2022年7月9日の時点で、女王アリの他は働きアリが1匹のみとなり、幼生虫は極く僅かになっていました。
そこで、コロニーの消滅を防いで、この女王アリの寿命を調べようと、7月9日、他のコロニーから繭を30個与えました(11歳女王アリのコロニーを再生)。

参照:直近の記録:2023年6月14日ブログ

以下は、9月18日の様子です。働きアリが25匹、雄アリが16匹いました。

昨年の7月9日に与えた繭は、全て羽化しているはずですし、越冬幼虫の1匹も羽化しているはずですから、現有の幼生虫は全てB120614-03が産んだことになります。ところで、働きアリが25匹いましたので、働きアリの寿命を考慮すれば、この25匹は30個の繭から羽化した働きアリの可能性が高いと考えられます。また、雄アリ16匹は、30個の繭から羽化したのではないのですから、B120614-03が産んだことになります。
現有の幼生虫が羽化してみなければ、断定はできないのですが、もし働きアリが増えずに、雄アリが増えるようでしたら、B120614-03は産卵能力は残っているものの、有精卵を産む能力はなくなっていることになるでしょう。

採集から11年目のコロニー2つ

現在2012年に新女王アリを採集したクロオオアリのコロニーが2つあります。何れも同年の6月14日に長野県の駒ヶ根市で採集しました。
1つはB120614-86で、既に女王アリを無くしています。

B120614-86の飼育器 2023年6月14日撮影
越冬幼虫と思われるが成長していない ただ越冬幼虫は「極く僅か」であったはず

ところが、卵も見つかりました。

上の写真の一つ上の段 卵もある

越冬幼虫の数が「極く僅か」なはずですが、幼虫が一定数いて、しかも卵があります。ですから、働きアリ産卵とも考えられますが、いないはずの女王アリがいるようにも思えます。最下段の部屋を見ると、常にびっしりと詰まった塊があります。このことも、女王アリがいるかのように見えます。

最下段はいつ見ても、働きアリがぎっしりと塊を作っている

現時点では人工巣のアンテシェルフ内の巣を開けて見ることはしませんので、この疑問は保留とします。

もう1つの2012年採集のコロニーは、B120614-03です。このコロニーの成員は、昨年短期間に大量に死亡して、同年の7月9日の時点で、女王アリの他は働きアリが1匹のみとなり、幼生虫は極く僅かになっていました。そこで、この女王アリの寿命を調べる目的で、クロオオアリの他のコロニーの繭をこのコロニーに与えました。

カップ型のコンクリート人工巣で飼育している 2023年6月14日撮影
コロニーの全体の様子
卵が見られる 産卵能力はまだあるようだ
越冬幼虫だったのだろうか育った幼虫が1匹いた

B120614-03は11回目の結婚記念日を迎えたことになります。寿命としてはほぼ12年になります。

飼育ムネアカオオアリの様子

ムネアカオオアリは、現在、6コロニーと1単独女王アリを飼育しています。1コロニー以外は、何れも2020年の6月3日に駒ケ根市内で採集した新女王アリのコロニーです。
既に3年を経過していますが、大きなコロニーにはなっていません。その中で比較的順調に子育てが進んでいるのは、2つのコロニーです。

R200603-003

R200603-003の飼育器 6月12日撮影
コロニーの全体の様子 越冬幼虫が繭になっている
女王アリ 右

RH18004+R200603-020

単独女王RH18004+無女王R200603-020の飼育器
コロニーの全体の様子
卵と越冬幼虫
越冬幼虫が繭になっている

このRH18004+R200603-020は、働きアリを失った女王アリ(卵多数)と女王アリを失った働きアリ(幼生虫無)を合同したコロニーです。

越冬幼虫が無く、今年になって産卵しているコロニーは4コロニーです。

R200603-005

コロニーの全体の様子
卵がある
女王アリの腹部が膨らんでいる

R200603-021

Seriaのケースの簡易飼育器(開放蓋付き)で飼育
卵がある 女王アリの腹部が膨らんでいる

R200603-023

コロニーの全体の様子 女王アリの腹部が異状に大きい
孵化したばかりの幼虫がいるようだ
卵がある

R200603-033

コロニーの全体の様子
卵がある 女王アリの腹部が異状に大きい

最後は単独女王アリR200603-72です。採集年の8月22日には働きアリが15匹になっていました。

幼生虫はない

直短寄生2例のその後 子育て開始? 成員増は不可

5月30日に、T20220910-18では卵を2個咥えて歩き回るトゲアリの働きアリを観察していますが、今日見ると、飼育器(小型水槽)の中の人工巣の中に卵が運び込まれていて、女王アリと数匹の働きアリも人工巣の中にいました。

人工巣の中 卵が増えている 6月12日8時11分撮影

これはとても大きな変化です。昨年の10月に、直短寄生のコロニーをカップ型コンクリート人工巣から砂を入れた小型水槽に移し入れて以来、働きアリも女王アリも小型水槽の中の人工巣の中に入ることはまずなかったからです。8ヶ月近くも経って初めて、人工巣(1×4材とアクリル板を使って作った簡易な人工巣)を居住の場にしたことになります。

T20220910-16では、働きアリが1匹しか生き残っていません。

1匹だけ生き残っているトゲアリの働きアリ 6月12日8時15分撮影
トゲアリの女王アリT20220910-16 8時16分撮影

そこで、直短寄生の当初からの寄主であるトゲアリのコロニーS/N:T140906-40(新女王アリを2014年の9月6日に採集)から1匹取り出し、T20220910-16の中に入れました。
しかし、たちまち戦いが始まりました。

女王アリと侵入者が戦い、主のトゲアリの働きアリが侵入者に食い付いている 8時20分撮影
主のトゲアリの働きアリは去って行き、女王アリは肢を侵入者に食い付かれたままになった 8時20分撮影

女王アリの方が劣勢になっていましたので、放置するのは止め、進入側のトゲアリを取り出しました。
この方法での合同は成功しませんでした。

B16018の置き去りにされた幼生虫をBO20210609に託す

B16018が幼生虫を残して引越してしまいました。そこで、その幼生虫を生かしたいと思います。
BO20210609は、昨年の6月9日に庭で採集したクロオオアリの女王アリです。子育てはできたのですが、働きアリが1匹になっていました。また、卵を産んではいますが、卵が散乱したり、死んでいる状態です。

BO20210609 7月22日17時10分撮影
卵が散乱している 17時11分撮影
卵が死んでいる 17時11分撮影

このBO20210609を、幼生虫がいるB16018のアンテネストの中に入れました。

BO20210609をB16018のアンテネストの中に入れた直後 17時17分撮影

そして、しばらくして既存の巣穴から土の中へと誘導しておきました。
翌日7月23日、女王アリと働きアリが、アンテネストの底の空間に移動していました。幼生虫の世話を始めているようです。

アンテネストの底の空間 幼生虫の世話をしているようだ 7月23日10時45分撮影

※追記
7月28日に観察したところ、女王アリと働きアリが死滅していました。また、幼生虫も確認できませんでした。死因は不明です。

単独女王アリと女王アリがいないコロニーの合併

これまでに、ムネアカオオアリの同種間共存については、5例観察してきています。その内の1例では、女王アリがいない働きアリ8匹のコロニーの中に単独女王アリを入れる実験をしています。その結果は、まとめて次のように記しています。

「既に女王アリを失っているムネアカオオアリのコロニーの働きアリと、異年代(2年若い)のムネアカオオアリの単独女王アリは、単独女王アリから見て創巣の翌年の3月時点では共存できることがある。」

今回は、その類似の追試になります。違いは、単独女王アリの方が2年古い世代になることを含みます。

◎単独女王アリ RH18004
  2018年5月15日に、岡山県蒜山高原で新女王アリを採集 卵が多数
◎女王アリがいないコロニー R200603-020
  2020年6月3日か4日に、長野県駒ヶ根市で新女王アリを採集 働きアリのみ30数匹
  女王アリの遺体がある

上の飼育器(RH18004)を逆さにして下の飼育器(R200603-020)に重ねた 上下の飼育器は3箇所の穴で通じている 5月4日8時58分撮影
働きアリが上の飼育器へ上がってきた その働きアリは女王アリを攻撃しようとしている 8時59分撮影
女王アリが下の飼育器へ入った 9時00分撮影

この後、女王アリは一旦上の飼育器に戻り、再び下の飼育器へ入っていきました。下の飼育器の中で、女王アリは働きアリから攻撃されますが、女王アリの方から攻撃する場面は見ませんでした。

女王アリは、働きアリからの攻撃をかわしながら逃げていた 9時2分撮影
働きアリの方は攻撃的だ 9時2分撮影

午後6時頃になって様子を見ると、上下の飼育器の女王アリと働きアリがほとんど入れ替わっていました。

上の飼育器に大多数の働きアリがいた 女王アリの遺体(頭部なし)まで運び上げている 17時59分撮影
下の飼育器には僅かな働きアリと女王アリがいた 栄養交換をしている 18時00分撮影
働きアリの死体が2匹あった この度死んだようだ 18時03分撮影

それから3日後の5月7日に、小型の水槽の中に上下の飼育器を蓋を開けて入れ、1×4材とアクリル板で作った巣も入れました。翌日見ると、その巣の中にRH18004の女王アリとR200603-020の働きアリが入っていました。R200603-020の女王アリの遺体は、飼育ケースの中に残されていました。

1×4材とアクリル板で作った巣には側面に出入り口の穴がある 5月8日10時51分撮影
巣の中の様子 10時53分撮影

この実験結果を見る限りでは、次のように言えそうです。

「既に女王アリを失っている創巣から2年目のムネアカオオアリのコロニーの働きアリと、創巣から4年目のムネアカオオアリの単独女王アリは、共存できることがある。」

3例のクロオオアリの同種間共存のその後

ほぼ1年前の7月10日のブログ「4例のクロオオアリの同種間共存のその後」の内、その時点で生存していた3例について、その後の様子を記録しておきます。

⑴ 2018年の3月28日のブログ「クロオオアリの同種間共存(2」で取り上げている「ケース2」について

2018年3月19日に合併
BH170521-023:
  2017年5月21日に岡山県蒜山高原で採集した女王アリのコロニー
  2018年3月19日女王アリ死亡 働きアリ15匹 幼生虫なし
BK170530-133:
  同年5月30日に長野県で採集した女王アリのコロニー
  2018年3月11日から女王アリのみ 働きアリ・幼生虫なし

コンクリート製人工巣(4室仕様)の上部のW拡張蓋の中の様子 2020年7月14日撮
出入り口付近の部屋の様子 2020年7月14日撮影
 底の部屋の様子 2020年7月14日撮影
女王アリがいる部屋の様子 2020年7月14日撮影

大変繁栄していることが分かります。

⑵ 2019年の4月19日のブログ「Q+WとWのみのクロオオアリのコロニーを合併」で取り上げている1つ目の例について

2019年4月16日に合併
BH170521-025:
  2017年5月21日に岡山県蒜山高原で採集した女王アリのコロニー
  働きアリ2匹女王アリ 幼生虫なし
BH170520-001:
  同年5月20日同地(採集箇所も同じ)で採集した女王アリのコロニー
  2018年女王アリ死亡 働きアリ多数 幼虫あり

コンクリート製人工巣(2室仕様)の出入り口付近の部屋の様子 2020年7月14日撮影
女王アリがいる部屋の様子 2020年7月14日撮影

こちらも繁栄していることが分かります。

⑶ 2019年の4月19日のブログ「Q+WとWのみのクロオオアリのコロニーを合併」で取り上げている2つ目の例について

2019年4月19日に合併
BH170520-015:
  2017年5月20日に岡山県蒜山高原で採集した女王アリのコロニー
  働きアリ2匹女王アリ 幼生虫なし
BH170520-009:
  同年同日同地(採集箇所も同じ)で採集した女王アリのコロニー
  2019年3月女王アリ死亡 働きアリ4匹 幼生虫なし

2019年8月17日に女王アリが死亡しました。その時、働きアリが2匹と幼虫が3匹いました。同年9月27日、最後の1匹の働きアリが死に、全滅しました。

女王アリがいるコロニーといないコロニーの合併 ムネアカオオアリ

これまでも、ムネアカオオアリの同種間共存について、いくつかの実験をしてきました。今回は、これまでにはない条件で合併をしました。
合併したのは、次の2つのコロニーです。

RT19003: 昨年の5月23日に新女王アリを採集したコロニーです。今年の2月13日には、働きアリが13匹でしたが、5月26日には12匹になっていました。卵があり、女王アリがいます。

RT19007: 上記と同じ日に、同じ場所で新女王アリを採集したコロニーです。昨年の9月6日に働きアリが10匹いて、5月26日も10匹のままでした。女王アリは今年の5月2日には死にかけていて、5月10日には死んでいました。幼生虫はいません。

簡易な飼育器に入っている RT19003
RT19007 女王アリは死んでいる
RT19003には卵がある

蓋付きの小型水槽を用意し、この水槽の中に、距離を離して2つのコロニーを入れました。

左がRT19003 右がRT19007 飼育器の蓋は取ってある 5月26日14時6分撮影

やがて、RT19003に侵入してきたRT19007の働きアリが捕らえられていました。

触角の片方に咬みつかれている この後放された 14時11分撮影

しばらくして、両コロニーの飼育容器をくっつけました。

14時25分撮影

翌日の朝、1匹の働きアリが解体されていました。

腹部が切り離されている 5月27日7時15分撮影

更に、9時半頃、もう一匹が取り押さえられていました。

9時36分撮影

それからしばらくして、2つのコロニーを飼育器から出して直に小型水槽に移し入れ、死んでいるRT19007の女王アリを取り出しました。

小型水槽から飼育器を取り出して、ムネアカオオアリを水槽の中に直に入れている 右は取り出した死んでいるRT19007の女王アリ 9時45分撮影

この日の両コロニーの夕刻の様子を見ると、それぞれが別の場所に寄り添っていました。

働きアリは12匹のままだ 16時49分撮影
右端近くにも1匹いて、全部で8匹 16時52分撮影

この日の夕刻までに、RT19007の方が2匹殺されたことが分かります。RT19007の方が劣勢で、水槽の蓋直下に追いやられていました。
次は28日の様子です。

RT19003は12匹とも生きている 5月28日17時13分撮影
殺されたムネアカオオアリ 3匹のようだ 5月28日17時13分撮影
RT19007は7匹になっていた やはり水槽の蓋直下に追いやられていた 5月28日17時14分撮影

次は5月29日の様子です。

更に1匹が攻撃されていた 5月29日11時34分撮影
RT19007は6匹になっている 5月29日11時25分撮影

それから10日程経ち、6月9日、RT19007は全て殺されていました。

死骸は一箇所に集められていた
RT19003 働きアリは12匹のまま 6月9日9時42分撮影

ただ、RT19003も無傷ではありませんでした。

触角に咬みつかれたままになっている 6月1日撮影
中央上下2匹の触角が途中から無くなっている 6月9日撮影

2つのコロニーは共存することはできませんでした。それどころか、女王アリを失っていたコロニーの方は、1匹残らず殺されてしまいました。
今回は、互いに距離を置ける広めの空間での合併でした。RT19007は全滅しましたが、何日もに渡って、1匹ずつ殺されていきました。そこで、もし、狭い空間に2つのコロニーを入れたとしたら、どうなったでしょうか。別の環境になり、別の結果になったかも知れません。

単独女王アリが1年ぶりに子育てに成功 他コロニーの働きアリとは共存できず

シリアル番号BH18019は、2018年5月15日に、岡山県の蒜山高原で採集したクロオオアリの新女王アリです。通常は働きアリが多数誕生している同年の7月22日時点でも、働きアリは生まれていませんでした。その後、ほぼ1ヶ月後の8月20日には、繭が1個、幼虫が4匹いましたが、この時点でも働きアリは生まれていませんでした。やっと10月6日の時点で働きアリが1匹になっていましたが、幼生虫はいなくなっていました。その後、その1匹の働きアリも死んでしまいました。
BH18019は、このように子育てに失敗してはいるのですが、それでも産卵ができ、下手ですが子育てができないわけではないのです。そこで、クロオオアリ同士で共存させて、新たなコロニーが作れるかどうか試してみることにしました。

左からBH18019、BM19022、BM19029の各コロニー

今年新女王アリを採集したクロオオアリのコロニーの中で、女王アリが死んでしまったコロニーが2つあります。BM19022は、8月27日には女王アリが死んでいて、働きアリが12匹、繭が7個で幼虫と卵がありました。BM19029は、7月23日に女王アリが死に、その時は働きアリが4匹と幼生虫がいました。

8月27日撮影 BH18019 繭1個と幼虫が2匹(その内1匹は大きい)
8月27日撮影 BM19022 働きアリが12匹と繭など幼生虫が多数
8月27日撮影 BM19029 働きアリが12匹と幼生虫

8月27日、グッピー水槽の中に、飼育ケースのままBH18019とBM19022を同時に入れ、2つともケースの蓋を取りました。しばらくすると、BM19022の飼育ケースから出てきた1匹の働きアリが、BH18019のケースの中に入り、あっという間に大きな方の幼虫を咥えてケースから出て行きました。女王アリは、あまりに突然のことで、防ぎようがなかったようです。

BH18019の幼虫を咥えて、自分の巣がある飼育ケースを探して歩き回るBM19022の働きアリ 8月27日14時01分撮影
幼虫が奪われた後のグッピー水槽の中の様子 右がBH18019 大きな幼虫がなくなっている 14時7分撮影

その後、更にBM19022の働きアリが1匹、BH18019のケースの中に入ってきました。働きアリも女王アリも戦いを避けようとはせず、戦いが始まりました。戦いは終始女王アリの方が優勢のようでした。やがて、働きアリは殺されてしまいました。

14時09分撮影

それから15日後の9月11日、BH18019に働きアリが1匹生まれていました。

働きアリが1匹生まれていた 繭のように見えるのは繭の殻 9月11日午前6時34分撮影

BM19022は、働きアリが3匹になっていました。2週間強の間に12匹から激減しています。繭もあったのですから、繭から羽化した働きアリもいたはずなのに、とても少ない数です。

左がBM19022 働きアリが3匹になっていた 幼生虫も少ないようだ

BH18019のケースの中を見ると、クロオオアリの働きアリと思えるたくさんのバラバラの死骸がありました。

たくさんのクロオオアリの死骸

どうやら、BH18019の女王アリがBM19022の働きアリを殺したようです。ちなみに、BM19029の働きアリは、15日前と変わらず、12匹いました(繭から羽化する成虫がいたはずですが)。
9月11日時点の3コロニーの幼生虫の様子は以下のようです。

BH18019 卵3個と死んでいる卵2個 繭は抜け殻
BM19022 繭が1個と幼虫が2匹
BM19029 小さな幼虫が6匹と大きな幼虫が1匹

さて、2018年採集の単独女王アリが1年ぶりに子育てに成功したので、BM19022との合併の試みは終了することにしました。そして、上記のBM19022とBM19029の幼生虫のみをBH18019の中に入れました。女王アリは、その幼生虫を初めから我が子であるかのように、迷う様子もなくすんなりと受け入れました。

BH18019のケースに幼生虫を入れた時には幼生虫は散乱していたが、働きアリの手助けなく、女王アリが幼生虫を一箇所に集めた