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B16018の置き去りにされた幼生虫をBO20210609に託す

B16018が幼生虫を残して引越してしまいました。そこで、その幼生虫を生かしたいと思います。
BO20210609は、昨年の6月9日に庭で採集したクロオオアリの女王アリです。子育てはできたのですが、働きアリが1匹になっていました。また、卵を産んではいますが、卵が散乱したり、死んでいる状態です。

BO20210609 7月22日17時10分撮影
卵が散乱している 17時11分撮影
卵が死んでいる 17時11分撮影

このBO20210609を、幼生虫がいるB16018のアンテネストの中に入れました。

BO20210609をB16018のアンテネストの中に入れた直後 17時17分撮影

そして、しばらくして既存の巣穴から土の中へと誘導しておきました。
翌日7月23日、女王アリと働きアリが、アンテネストの底の空間に移動していました。幼生虫の世話を始めているようです。

アンテネストの底の空間 幼生虫の世話をしているようだ 7月23日10時45分撮影

※追記
7月28日に観察したところ、女王アリと働きアリが死滅していました。また、幼生虫も確認できませんでした。死因は不明です。

単独女王アリと女王アリがいないコロニーの合併

これまでに、ムネアカオオアリの同種間共存については、5例観察してきています。その内の1例では、女王アリがいない働きアリ8匹のコロニーの中に単独女王アリを入れる実験をしています。その結果は、まとめて次のように記しています。

「既に女王アリを失っているムネアカオオアリのコロニーの働きアリと、異年代(2年若い)のムネアカオオアリの単独女王アリは、単独女王アリから見て創巣の翌年の3月時点では共存できることがある。」

今回は、その類似の追試になります。違いは、単独女王アリの方が2年古い世代になることを含みます。

◎単独女王アリ RH18004
  2018年5月15日に、岡山県蒜山高原で新女王アリを採集 卵が多数
◎女王アリがいないコロニー R200603-020
  2020年6月3日か4日に、長野県駒ヶ根市で新女王アリを採集 働きアリのみ30数匹
  女王アリの遺体がある

上の飼育器(RH18004)を逆さにして下の飼育器(R200603-020)に重ねた 上下の飼育器は3箇所の穴で通じている 5月4日8時58分撮影
働きアリが上の飼育器へ上がってきた その働きアリは女王アリを攻撃しようとしている 8時59分撮影
女王アリが下の飼育器へ入った 9時00分撮影

この後、女王アリは一旦上の飼育器に戻り、再び下の飼育器へ入っていきました。下の飼育器の中で、女王アリは働きアリから攻撃されますが、女王アリの方から攻撃する場面は見ませんでした。

女王アリは、働きアリからの攻撃をかわしながら逃げていた 9時2分撮影
働きアリの方は攻撃的だ 9時2分撮影

午後6時頃になって様子を見ると、上下の飼育器の女王アリと働きアリがほとんど入れ替わっていました。

上の飼育器に大多数の働きアリがいた 女王アリの遺体(頭部なし)まで運び上げている 17時59分撮影
下の飼育器には僅かな働きアリと女王アリがいた 栄養交換をしている 18時00分撮影
働きアリの死体が2匹あった この度死んだようだ 18時03分撮影

それから3日後の5月7日に、小型の水槽の中に上下の飼育器を蓋を開けて入れ、1×4材とアクリル板で作った巣も入れました。翌日見ると、その巣の中にRH18004の女王アリとR200603-020の働きアリが入っていました。R200603-020の女王アリの遺体は、飼育ケースの中に残されていました。

1×4材とアクリル板で作った巣には側面に出入り口の穴がある 5月8日10時51分撮影
巣の中の様子 10時53分撮影

この実験結果を見る限りでは、次のように言えそうです。

「既に女王アリを失っている創巣から2年目のムネアカオオアリのコロニーの働きアリと、創巣から4年目のムネアカオオアリの単独女王アリは、共存できることがある。」

3例のクロオオアリの同種間共存のその後

ほぼ1年前の7月10日のブログ「4例のクロオオアリの同種間共存のその後」の内、その時点で生存していた3例について、その後の様子を記録しておきます。

⑴ 2018年の3月28日のブログ「クロオオアリの同種間共存(2」で取り上げている「ケース2」について

2018年3月19日に合併
BH170521-023:
  2017年5月21日に岡山県蒜山高原で採集した女王アリのコロニー
  2018年3月19日女王アリ死亡 働きアリ15匹 幼生虫なし
BK170530-133:
  同年5月30日に長野県で採集した女王アリのコロニー
  2018年3月11日から女王アリのみ 働きアリ・幼生虫なし

コンクリート製人工巣(4室仕様)の上部のW拡張蓋の中の様子 2020年7月14日撮
出入り口付近の部屋の様子 2020年7月14日撮影
 底の部屋の様子 2020年7月14日撮影
女王アリがいる部屋の様子 2020年7月14日撮影

大変繁栄していることが分かります。

⑵ 2019年の4月19日のブログ「Q+WとWのみのクロオオアリのコロニーを合併」で取り上げている1つ目の例について

2019年4月16日に合併
BH170521-025:
  2017年5月21日に岡山県蒜山高原で採集した女王アリのコロニー
  働きアリ2匹女王アリ 幼生虫なし
BH170520-001:
  同年5月20日同地(採集箇所も同じ)で採集した女王アリのコロニー
  2018年女王アリ死亡 働きアリ多数 幼虫あり

コンクリート製人工巣(2室仕様)の出入り口付近の部屋の様子 2020年7月14日撮影
女王アリがいる部屋の様子 2020年7月14日撮影

こちらも繁栄していることが分かります。

⑶ 2019年の4月19日のブログ「Q+WとWのみのクロオオアリのコロニーを合併」で取り上げている2つ目の例について

2019年4月19日に合併
BH170520-015:
  2017年5月20日に岡山県蒜山高原で採集した女王アリのコロニー
  働きアリ2匹女王アリ 幼生虫なし
BH170520-009:
  同年同日同地(採集箇所も同じ)で採集した女王アリのコロニー
  2019年3月女王アリ死亡 働きアリ4匹 幼生虫なし

2019年8月17日に女王アリが死亡しました。その時、働きアリが2匹と幼虫が3匹いました。同年9月27日、最後の1匹の働きアリが死に、全滅しました。

女王アリがいるコロニーといないコロニーの合併 ムネアカオオアリ

これまでも、ムネアカオオアリの同種間共存について、いくつかの実験をしてきました。今回は、これまでにはない条件で合併をしました。
合併したのは、次の2つのコロニーです。

RT19003: 昨年の5月23日に新女王アリを採集したコロニーです。今年の2月13日には、働きアリが13匹でしたが、5月26日には12匹になっていました。卵があり、女王アリがいます。

RT19007: 上記と同じ日に、同じ場所で新女王アリを採集したコロニーです。昨年の9月6日に働きアリが10匹いて、5月26日も10匹のままでした。女王アリは今年の5月2日には死にかけていて、5月10日には死んでいました。幼生虫はいません。

簡易な飼育器に入っている RT19003
RT19007 女王アリは死んでいる
RT19003には卵がある

蓋付きの小型水槽を用意し、この水槽の中に、距離を離して2つのコロニーを入れました。

左がRT19003 右がRT19007 飼育器の蓋は取ってある 5月26日14時6分撮影

やがて、RT19003に侵入してきたRT19007の働きアリが捕らえられていました。

触角の片方に咬みつかれている この後放された 14時11分撮影

しばらくして、両コロニーの飼育容器をくっつけました。

14時25分撮影

翌日の朝、1匹の働きアリが解体されていました。

腹部が切り離されている 5月27日7時15分撮影

更に、9時半頃、もう一匹が取り押さえられていました。

9時36分撮影

それからしばらくして、2つのコロニーを飼育器から出して直に小型水槽に移し入れ、死んでいるRT19007の女王アリを取り出しました。

小型水槽から飼育器を取り出して、ムネアカオオアリを水槽の中に直に入れている 右は取り出した死んでいるRT19007の女王アリ 9時45分撮影

この日の両コロニーの夕刻の様子を見ると、それぞれが別の場所に寄り添っていました。

働きアリは12匹のままだ 16時49分撮影
右端近くにも1匹いて、全部で8匹 16時52分撮影

この日の夕刻までに、RT19007の方が2匹殺されたことが分かります。RT19007の方が劣勢で、水槽の蓋直下に追いやられていました。
次は28日の様子です。

RT19003は12匹とも生きている 5月28日17時13分撮影
殺されたムネアカオオアリ 3匹のようだ 5月28日17時13分撮影
RT19007は7匹になっていた やはり水槽の蓋直下に追いやられていた 5月28日17時14分撮影

次は5月29日の様子です。

更に1匹が攻撃されていた 5月29日11時34分撮影
RT19007は6匹になっている 5月29日11時25分撮影

それから10日程経ち、6月9日、RT19007は全て殺されていました。

死骸は一箇所に集められていた
RT19003 働きアリは12匹のまま 6月9日9時42分撮影

ただ、RT19003も無傷ではありませんでした。

触角に咬みつかれたままになっている 6月1日撮影
中央上下2匹の触角が途中から無くなっている 6月9日撮影

2つのコロニーは共存することはできませんでした。それどころか、女王アリを失っていたコロニーの方は、1匹残らず殺されてしまいました。
今回は、互いに距離を置ける広めの空間での合併でした。RT19007は全滅しましたが、何日もに渡って、1匹ずつ殺されていきました。そこで、もし、狭い空間に2つのコロニーを入れたとしたら、どうなったでしょうか。別の環境になり、別の結果になったかも知れません。

単独女王アリが1年ぶりに子育てに成功 他コロニーの働きアリとは共存できず

シリアル番号BH18019は、2018年5月15日に、岡山県の蒜山高原で採集したクロオオアリの新女王アリです。通常は働きアリが多数誕生している同年の7月22日時点でも、働きアリは生まれていませんでした。その後、ほぼ1ヶ月後の8月20日には、繭が1個、幼虫が4匹いましたが、この時点でも働きアリは生まれていませんでした。やっと10月6日の時点で働きアリが1匹になっていましたが、幼生虫はいなくなっていました。その後、その1匹の働きアリも死んでしまいました。
BH18019は、このように子育てに失敗してはいるのですが、それでも産卵ができ、下手ですが子育てができないわけではないのです。そこで、クロオオアリ同士で共存させて、新たなコロニーが作れるかどうか試してみることにしました。

左からBH18019、BM19022、BM19029の各コロニー

今年新女王アリを採集したクロオオアリのコロニーの中で、女王アリが死んでしまったコロニーが2つあります。BM19022は、8月27日には女王アリが死んでいて、働きアリが12匹、繭が7個で幼虫と卵がありました。BM19029は、7月23日に女王アリが死に、その時は働きアリが4匹と幼生虫がいました。

8月27日撮影 BH18019 繭1個と幼虫が2匹(その内1匹は大きい)
8月27日撮影 BM19022 働きアリが12匹と繭など幼生虫が多数
8月27日撮影 BM19029 働きアリが12匹と幼生虫

8月27日、グッピー水槽の中に、飼育ケースのままBH18019とBM19022を同時に入れ、2つともケースの蓋を取りました。しばらくすると、BM19022の飼育ケースから出てきた1匹の働きアリが、BH18019のケースの中に入り、あっという間に大きな方の幼虫を咥えてケースから出て行きました。女王アリは、あまりに突然のことで、防ぎようがなかったようです。

BH18019の幼虫を咥えて、自分の巣がある飼育ケースを探して歩き回るBM19022の働きアリ 8月27日14時01分撮影
幼虫が奪われた後のグッピー水槽の中の様子 右がBH18019 大きな幼虫がなくなっている 14時7分撮影

その後、更にBM19022の働きアリが1匹、BH18019のケースの中に入ってきました。働きアリも女王アリも戦いを避けようとはせず、戦いが始まりました。戦いは終始女王アリの方が優勢のようでした。やがて、働きアリは殺されてしまいました。

14時09分撮影

それから15日後の9月11日、BH18019に働きアリが1匹生まれていました。

働きアリが1匹生まれていた 繭のように見えるのは繭の殻 9月11日午前6時34分撮影

BM19022は、働きアリが3匹になっていました。2週間強の間に12匹から激減しています。繭もあったのですから、繭から羽化した働きアリもいたはずなのに、とても少ない数です。

左がBM19022 働きアリが3匹になっていた 幼生虫も少ないようだ

BH18019のケースの中を見ると、クロオオアリの働きアリと思えるたくさんのバラバラの死骸がありました。

たくさんのクロオオアリの死骸

どうやら、BH18019の女王アリがBM19022の働きアリを殺したようです。ちなみに、BM19029の働きアリは、15日前と変わらず、12匹いました(繭から羽化する成虫がいたはずですが)。
9月11日時点の3コロニーの幼生虫の様子は以下のようです。

BH18019 卵3個と死んでいる卵2個 繭は抜け殻
BM19022 繭が1個と幼虫が2匹
BM19029 小さな幼虫が6匹と大きな幼虫が1匹

さて、2018年採集の単独女王アリが1年ぶりに子育てに成功したので、BM19022との合併の試みは終了することにしました。そして、上記のBM19022とBM19029の幼生虫のみをBH18019の中に入れました。女王アリは、その幼生虫を初めから我が子であるかのように、迷う様子もなくすんなりと受け入れました。

BH18019のケースに幼生虫を入れた時には幼生虫は散乱していたが、働きアリの手助けなく、女王アリが幼生虫を一箇所に集めた