一時的社会寄生」カテゴリーアーカイブ

トゲアリの寄生の試み その後(1月9日)

以下は1月9日の様子です。何れも、寄生が順調なようです。

トゲアリの寄生の試み 1 (BH210523-18にT20220910-53が寄生 )

T20220910-53 1月9日17時1分撮影

トゲアリの寄生の試み 2 (BH210523-19にT20220910-54が寄生 )

T20220910-54 1月9日17時3分撮影

トゲアリの寄生の試み 3 (BH210523-21にT20220910-65が寄生 )

T20220910-65 1月9日17時4分撮影

トゲアリの寄生の試み 4 (BH210523-23にT20220910-44が寄生 )

T20220910-44 1月9日17時5分撮影

トゲアリの寄生の試み 5 (BH210523-29にT20220910-67が寄生 )

T20220910-44 1月9日17時7分撮影

トゲアリの寄生の試み その後(10月30日)

以下は10月30日の様子です。何れも、寄生が順調なようです。

トゲアリの寄生の試み 1 (BH210523-18にT20220910-53が寄生 )

女王アリの様子
他の部屋の様子(一部)

トゲアリの寄生の試み 2 (BH210523-19にT20220910-54が寄生 )

女王アリの様子
他の部屋の様子(一部)

トゲアリの寄生の試み 3 (BH210523-21にT20220910-65が寄生 )

女王アリの様子
他の部屋の様子(一部)

トゲアリの寄生の試み 4 (BH210523-23にT20220910-44が寄生 )

女王アリの様子
他の部屋の様子(一部)

トゲアリの寄生の試み 5 (BH210523-29にT20220910-67が寄生 )

女王アリの様子
他の部屋の様子(一部)

活動室に出て来ない今年生まれのトゲアリ

昨年の9月16日に寄主のBK170530-040(2017年5月30日に採集したクロオオアリの新女王アリ)のコロニーに寄生を始めたトゲアリの新女王アリ(S/N:T210912-02)の初期コロニーのその後ですが、順調にトゲアリの働きアリが増えています。トゲアリの働きアリは、一箇所に塊を作っています。

トゲアリの働きアリの塊が見える 10月25日15時5分撮影

活動室(アンテグラウンドⅢ)には、クロオオアリの働きアリがいます。トゲアリの働きアリが羽化後(最初の羽化を今年8月9日に確認)活動室に出て来ているところは、一度も見ていません。

活動室に出て来ているクロオオアリの働きアリ トゲアリの働きアリはいない 10月25日15時10分撮影

2020年5月29日のブログ「外勤が少ないトゲアリ」でも触れていますが、クロオオアリの働きアリがまだ多数いる環境では、トゲアリの働きアリはほぼ外勤はしないようです。
かつて私は1966年に、トゲアリとクロオオアリの共存巣を発見し、そのことを『昆虫と自然』(1966年10月号)に投稿しています。その中で、「このトゲアリの生態に関する想像や観察したことを述べておく」として、「4.野外でのえさ捜しには、トゲアリの働きアリは参加せず、巣の中でじっとうずくまっているだけである」と述べています。
この56年前に野外で観察したトゲアリの働きアリの生態と、飼育下で観察した上述の2つの例が示す生態(クロオオアリの働きアリがまだ多数いる環境では、トゲアリの働きアリはほぼ外勤はしない)が一致していることが分かります。

多雌寄生を試みる

ある方から次のようなコメントをいただきました。

「昔、野外でトゲアリの巣をまるごと採集しましたが、そのコロニーには女王が3匹いました。以前、結婚飛行後の新女王がクロオオアリの巣口周辺に複数集まってきている光景を見たことがあります。推測ですがトゲアリの多雌は多くの雌が同じ寄生先に侵入した結果、成立したものと考えてます。
現在、トゲアリ新女王がクロオオアリ女王の頭を落としたとのことですが、このタイミングで更に女王を複数投入すれば多雌になると思います。これは自分もチャレンジしたことがないので断定できませんが…」

そこで、トゲアリの多雌コロニーを作る試みをすることにしました。今回は、「トゲアリ新女王がクロオオアリ女王の頭を落としたとのことですが、このタイミングで更に女王を複数投入」するのではなく、最初から複数匹のトゲアリの女王アリを入れることにしました。つまり、「結婚飛行後の新女王がクロオオアリの巣口周辺に複数集まってきて」、その後間もなく複数匹のトゲアリの女王アリがクロオオアリの巣の中に入ったと想定してのことです。頭が落ちてからではありません(頭が切り落とされるまでには何日か掛かることが分かっています)。
実は2013年の9月27日にも同様の試み「トゲアリの女王アリを2匹入れると」をしています。今回は、4匹のトゲアリの女王アリを寄生させます。
9月23日、寄主をクロオオアリのコロニーS/N:BH210523-60(新女王アリを昨年の5月23日に採集)とし、トゲアリの新女王アリT20220910-1とT20220910-2とT20220910-3とT20220910-4(何れも9月10日採集)を寄生させました。

寄主のBH210523-60 リトルアンテシェルフの中に入れている 9月23日9時16分撮影
コロニーの様子 9月23日9時16分撮影

T20220910-1を飼育しているクリアカップの中にクロオオアリの働きアリを1匹入れたのですが、互いに接触を避けていました。T20220910-2でもクロオオアリの働きアリとの接触を避けているようでしたので、化粧行為がないまま、順次2匹をBH210523-60のアンテシェルフの中に入れました。

トゲアリの女王アリがクロオオアリの女王アリのいる塊に向かう 9月23日9時37分撮影
クロオオアリの女王アリに咬みつくことができず働きアリに取り押さえられている 9時39分撮影

T20220910-1とT20220910-2は化粧行為をしないまま寄主に入れましたので、それを改善するため、接触の機会がより多くなるように、T20220910-3とT20220910-4とT20220910-5では、クリアカップよりも狭いフィルムケースの中にトゲアリの女王アリとクロオオアリの働きアリを1匹ずつ入れました。しかし、このようにしても化粧行為は起こりませんでした。

フィルムケースの中のトゲアリの女王アリとクロオオアリの働きアリ 化粧行為は起こらなかった 10時2分撮影

今回も、化粧行為がないままBH210523-60のコロニーの中に入れました。

右のトゲアリはクロオオアリの働きアリに取り押さえられている 10時13分撮影
トゲアリの1匹がクロオオアリの女王アリに取り付こうとしている 10時13分撮影
クロオオアリの働きアリに取り押さえられたトゲアリ 10時17分撮影

4匹のトゲアリの女王アリ共に、しばらく経ってもクロオオアリの女王アリに咬みつくことができず、働きアリから拘束されることが多くなりましたので、殺されるリスクを考え、4匹とも救出しました。そして、クロオオアリの女王アリをコロニーから取り出してクリアカップに入れ、クロオオアリの働きアリがいない状態でトゲアリの女王アリを順次中に入れました。その後クリアケースの中に移し入れました。

クリアケースの中 クロオオアリの働きアリは入れていない トゲアリ同士が栄養交換をしている 11時0分撮影 
トゲアリ3匹が化粧行為をしていた 2013年にも同様なことが見られた 11時27分撮影
トゲアリがクロオオアリの女王アリに取り付いている 20時3分撮影

翌日の9月24日、クリアケースの中にクロオオアリの働きアリを10匹入れました。トゲアリの動きが活発にはなりましたが、一方的に攻撃を受けていましたので、働きアリの数を3匹に減らしました。ただ、トゲアリとクロオオアリの働きアリが栄養交換をする場面もありました。

9月24日9時23分撮影
11時48分撮影
14時10分撮影
15時12分撮影
栄養交換をしているようだ 9時19分撮影
9時10分撮影
14時10分撮影
14時20分撮影
16時23分撮影

この日(9月24日)、トゲアリの女王アリが2匹死にました。

1匹目の死 16時22分撮影
2匹死んでいた 22時30分撮影

次の日の9月25日には、夕刻、トゲアリの女王アリが更に1匹死に、残るは1匹のみとなりました。

9月25日8時0分撮影
14時17分撮影
3匹死んでいる 17時23分撮影

その後、10月2日、生き残っていた最後の1匹も死んでしまいました。

9月26日7時28分撮影
9月27日9時55分撮影
9月28日7時56分撮影
9月29日10時1分撮影
9月30日7時21分撮影
10月1日10時26分撮影
最後まで生き残っていた4匹目のトゲアリも死亡した 10月2日21時53分撮影

トゲアリの多雌の試みは実現できませんでした。その要因として考えられるのは、寄生を開始した時期にあるのかも知れません。
このトゲアリの女王アリは9月10日に採集しています。恐らくこの日の朝に結婚飛行に出かけたと考えられます。多雌を試み始めたのは9月23日の午前中からですから、その間13日経過しています。トゲアリの女王アリは4匹もいたのですから、そして、相当な時間クロオオアリの働きアリが3匹だったのですから、クロオオアリの女王アリの頸に咬みつき、そのまま放さないでいる機会は十分にあったはずです。しかし、それが見られませんでした。「本能が薄れた」とでも言えばいいのでしょうか。その根底を成す体力の余力不足が起因しているのかも知れません。(参照:「「トゲアリの女王アリは単独でいつまで生きられるか?」の結果」)
今年試みた一時的社会寄生で、最後に寄生が成功したのは、9月19日に寄生を開始した例です。この場合は、結婚飛行から9日後となります。
明言は出来ないものの、寄生をより確実に成功させるためには、採集後できるだけ早く寄生を開始するのが良いように思います。

参照:トゲアリの多雌コロニーに関する関連ブログ
2匹のトゲアリが寄生」(2015年10月17日)
トゲアリの女王アリの共存 その後」(2016年5月11日)

BH210523-23へ再度寄生の試み T20220910-44 のその後

9月20日、T20220910-44がクロオオアリの女王アリの頸を腹面から咬みついていました。それから9月27日までは、そのまま頸を腹面から咬みついたままでした。

9月21日20時0分撮影
9月22日8時43分撮影
トゲアリの女王アリの右触角にクロオオアリの働きアリの頭部が付いたままになっている 9月24日8時59分撮影
9月26日7時34分撮影
9月27日9時35分撮影

9月28日になると、トゲアリの女王アリはクロオオアリの女王アリから離れて歩くことがありました。既にクロオオアリの女王アリは頭部が落とされ、死んでいるようです。

9月28日20時18分撮影

それぞれBH210523-19とBH210523-29に寄生したT20220910-54とT20220910-67の場合は、頭部が落とされるまでに4日かかりました。また、BH210523-18に寄生したT20220910-53の場合は、頭部が落とされるまでに6日、BH210523-21に寄生したT20220910-65の場合は、頭部が落とされるまでに9日かかりました。BH210523-23の場合は、8日間かかったことになります。
実際に頭部が落とされているのが確認できたのは、その翌日の29日になってからでした。

頭部が無くなっている 9月29日9時54分撮影

9月30日には、クロオオアリの女王アリの腹部と胸部と頭部が切り離されているのが確認できました。

巣部屋の中に腹部のみがあった 後方にトゲアリの女王アリが写っている 9月30日7時17分撮影
胸部と頭部は巣穴の外に運び出されていた 9月30日7時19分撮影

トゲアリの寄生の試み 1・2・5 のその後(9月29日)

以下は9月29日までの様子です。

トゲアリの寄生の試み 1 (BH210523-18にT20220910-53が寄生 )

9月26日7時30分撮影
9月27日9時30分撮影

トゲアリの寄生の試み 2 (BH210523-19にT20220910-54が寄生 )

9月26日7時31分撮影
9月29日9時59分撮影

トゲアリの寄生の試み 5 (BH210523-29にT20220910-67が寄生 )

9月27日9時36分撮影
9月29日10時0分撮影

何れも寄生が順調なようです。

頭部が落とされる BH210523-21

9月19日の時点では、トゲアリの女王アリT20220910-65は、クロオオアリの女王アリBH210523-21の頸に咬みついてはいますが、クロオオアリの女王アリはまだ生きていました。

トゲアリの女王アリの頭部がクロオオアリの女王アリの頸の近くにあるが、咬んでいないように見える 9月20日6時31分撮影
クロオオアリの女王アリの頭部が180度回転しているようだ 9月21日19時56分撮影
頭部が無くなっている 9月22日8時43分撮影
頭部は別の巣部屋にあった 9月22日8時43分撮影
トゲアリの女王アリの腹部が膨らんでいる 9月25日8時4分撮影
クロオオアリの女王アリの頭部が巣穴の外に運び出されていた 9月26日7時33分撮影
クロオオアリの頭部が取れた死体の周りに働きアリがいた 9月27日9時33分撮影

T20220910-65も、T20220910-54、T20220910-67、T20220910-53に引き続き、初期段階の寄生に成功したようです。

BH210523-23へ再度寄生の試み T20220910-44

9月13日、クロオオアリのコロニーBH210523-23の中へ、トゲアリの女王アリT20220910-66を寄生させるために入れたのですが、T20220910-66は、9月16日に死亡しました。
そこで、9月19日、同じクロオオアリのコロニーBH210523-23の中へ、トゲアリの女王アリT20220910-44(9月10日採集)を入れることにしました。
トゲアリの女王アリを飼育しているクリアカップの中にクロオオアリの働きアリを1匹入れると、化粧行為を始めました。その後、T20220910-44はBH210523-23の中へ入って行きました。クロオオアリの働きアリから攻撃を受けながらも、T20220910-44はクロオオアリの女王アリに接近し、互いに攻撃し合いながらも、T20220910-44が腹面からクロオオアリの女王アリに取り付くようになりました。ただ、クロオオアリの女王アリの頸を咬んではいませんでした。

T20220910-44はクリアカップの中で化粧行為を始めた 9月19日20時21分撮影
クロオオアリの働きアリから攻撃を受ける 20時53分撮影
2匹の女王アリ同士が攻撃し合う 21時13分撮影
クロオオアリの腹面に咬みついたトゲアリの女王アリ 21時13分撮影

翌日9月20日、T20220910-44がクロオオアリの女王アリの頸を腹面から咬みついていました。

T20220910-44がクロオオアリの女王アリの頸を腹面から咬みついている 9月20日6時24分撮影

一時的社会寄生のその後 9月19日

BH210523-19の様子9月17日にクロオオアリの頭部が落とされていた)

クロオオアリの女王アリの遺体のそばにいる 9月18日8時48分撮影
クロオオアリの女王アリの遺体のそばにいる 9月19日10時36分撮影

BH210523-29の様子9月17日にクロオオアリの頭部が落とされていた)

クロオオアリの女王アリの遺体のそばにいる 9月18日8時54分撮影
クロオオアリの女王アリの遺体から離れて歩いている 9月19日10時44分撮影 

BH210523-21の様子
BH210523-21では、トゲアリの女王アリT20220910-65は、クロオオアリの女王アリの頸に咬みついてはいますが、クロオオアリの女王アリはまだ生きています。

9月17日8時27分撮影
9月18日8時52分撮影
9月19日10時38分撮影

BH210523-23の様子
9月16日から変化はありません。トゲアリの女王アリの遺体はそのままにされていて、クロオオアリの女王アリを含む本体は、人工巣の上部に移動したままです。

トゲアリの女王アリの遺体 9月19日10時43分撮影
クロオオアリの女王アリを含む本体は、人工巣の上部に移動したまま 9月19日10時43分撮影

頭部が落とされる BH210523-18

9月12日にT20220910-53が寄生を開始したBH210523-18では、9月17日、トゲアリの女王アリは、クロオオアリの女王アリの頸を咬むのを止めていました。確かめることはできませんでしたが、クロオオアリの女王アリは既に死んでいるのかも知れません。

トゲアリの女王アリはクロオオアリの女王アリの頸を咬んではいなかった 9月17日8時21分撮影

次の日の9月18日、クロオオアリの女王アリの頭部が落とされていました。頭部は、別の部屋で見つかりました。

クロオオアリの女王アリの頭部が無くなっている 9月18日8時46分撮影
クロオオアリの女王アリがいた部屋とは別の部屋で見つかったクロオオアリの女王アリの頭部 8時47分撮影

9月19日、トゲアリの女王アリは、クロオオアリの女王アリから離れて歩いていました。栄養交換をする場面もありました。腹部が膨れているようです。

トゲアリの女王アリがクロオオアリの女王アリから離れて歩いている 9月19日10時33分撮影
栄養交換をしている 10時50分撮影

頭部が落とされる BH210523-19と-29

9月13日から寄生が始まっていた寄主のBH210523-19とBH210523-29の女王アリの頭部が落とされていました。

BH210523-19 クロオオアリの女王アリの頭部が欠けている 9月17日8時24分撮影
BH210523-19 中央が落とされたクロオオアリの女王アリの頭部 9月17日8時25分撮影
BH210523-29 クロオオアリの女王アリの頭部が欠けている 9月17日8時29分撮影
BH210523-29 中央が落とされたクロオオアリの女王アリの頭部 9月17日8時29分撮影

これでトゲアリの女王アリのT20220910-54とT20220910-67が、クロオオアリのコロニーから排除されることが無くなりました。一時的社会寄生が更に一歩進展したことになります。

2022年トゲアリの寄生の試み 5 T20220910-67

一時的社会寄生の5例目を試みました。寄主をクロオオアリのコロニーS/N:BH210523-29(新女王アリを昨年の5月23日に採集)とし、トゲアリの新女王アリT20220910-67(9月10日採集)を寄生させます。
9月13日、BH210523-29の働きアリを1匹、T20220910-67が入っているクリアカップの中に入れました。トゲアリの女王アリはその1匹を捕らえようとはしていましたが、女王アリの動きが鈍く、クロオオアリに逃げられていました。そこで、2匹目を入れ、間もなく化粧行為が始まりました。

9月13日14時6分撮影

人工巣の中に入ってからは、しばしばクロオオアリの働きアリから攻撃を受けていましたが、それでも15時半頃には、クロオオアリの女王アリの頸に腹面から食い付いていました。

14時32分撮影
14時34分撮影
右後脚に食い付いているクロオオアリは殺されたようだ 14時45分撮影
クロオオアリの女王アリの頸に腹面から食い付いている 15時30分撮影

ところが、17時過ぎに見ると、トゲアリの女王アリが人工巣の中を歩き回っていました。そして、その後再びクロオオアリの女王アリに食い付きました。

17時20分撮影
クロオオアリの女王アリの頸に背面から食い付いている 17時24分撮影

以下はその後の経過です。

クロオオアリの女王アリの頸に腹面から食い付いている 9月14日8時31分撮影
9月15日8時26分撮影
9月16日8時41分撮影

9月13日から3日間、トゲアリの女王アリは、クロオオアリの女王アリの頸を咬み続けています。寄生は順調なようです。

2022年トゲアリの寄生の試み 4 T20220910-66

一時的社会寄生の4例目を試みました。寄主をクロオオアリのコロニーS/N:BH210523-23(新女王アリを昨年の5月23日に採集)とし、トゲアリの新女王アリT20220910-66(9月10日採集)を寄生させます。
9月13日、BH210523-23の働きアリを1匹、T20220910-66が入っているクリアカップの中に入れると、化粧行為が始まりました。その後、T20220910-66が、BH210523-23のコンクリート人工巣の中へ自然に入れるようにしました。

化粧行為をするトゲアリの女王アリ 9月13日10時41分撮影
コンクリート人工巣の上部 クリアカップを逆さにしている 10時49分撮影

人工巣の中に入ると、トゲアリの女王アリは丸まってクロオオアリの働きアリに運ばれる格好になりました。そのまま、クロオオアリに運ばれて巣の部屋の中に入り、やがて元のように化粧行為の格好に戻りました。

クロオオアリの働きアリがトゲアリの女王アリを運んでいる 10時50分撮影
クロオオアリの働きアリに巣の中まで運ばれて来た 10時50分撮影
化粧行為の格好に戻った 10時51分撮影

この後、トゲアリの女王アリが化粧行為に使ったクロオオアリを放すと、クロオオアリの働きアリから攻撃を受けるようになりました。特にトゲアリの女王アリの左後脚に咬みついたクロオオアリは咬みついたまま離れなくなりました。このため、幾度かトゲアリの女王アリがクロオオアリの女王アリに向かって行きましたが、動く自由が利きませんでした。

トゲアリの女王アリの左後脚に咬みついて離さないクロオオアリの働きアリ 11時11分撮影

その後、トゲアリの女王アリは、クロオオアリの女王アリの肢に咬みつき、そのまま膠着状態になりました。

トゲアリの女王アリは、クロオオアリの女王アリの肢に咬みついている 13時48分撮影

翌日の9月14日の朝、トゲアリの女王アリは、巣の外に出ていました。ほとんど攻撃されていないように見えました。夜見た時には、巣の中で1匹のクロオオアリに肢を咬みつかれていました。

9月14日8時25分撮影
9月14日22時40分撮影

9月15日になると、トゲアリの女王アリは生きていましたが、巣の中で動けなくなっていました。

まだ生きていたが動けなくなっていた 9月15日17時3分撮影

そして、9月16日、遂に死んでしまいました。クロオオアリの女王アリを含む本体は、人工巣の上部に移動していました。

死んだトゲアリの女王アリ 9月16日8時38分撮影
人工巣の上部に女王アリを含む本体が移動してきていた 9月16日8時38分撮影

2022年トゲアリの寄生の試み 3 T20220910-65

一時的社会寄生の3例目を試みました。寄主をクロオオアリのコロニーS/N:BH210523-21(新女王アリを昨年の5月23日に採集)とし、トゲアリの新女王アリT20220910-65(9月10日採集)を寄生させます。
9月13日、BH210523-21の働きアリを1匹、T20220910-65が入っているクリアカップの中に入れると、化粧行為が始まりました。

9月13日10時3分撮影

その後、T20220910-65が、BH210523-21のコンクリート人工巣の中へ自然に入るようにしました。10時14分には人工巣の中に入り、クロオオアリの働きアリに拘束・攻撃されることがありましたが、人工巣進入から10分程でクロオオアリの女王アリの頸に腹面から食い付きました。

クロオオアリの働きアリから拘束・攻撃される 10時21分撮影
クロオオアリの女王アリの頸に腹面から咬みついている 10時26分撮影

この咬みつきの体勢は、寄生の最初の段階を成し遂げたことを意味しています。順調に寄生が始まったと言うことです。
以下はその後の経過です。

9月14日8時24分撮影
9月15日8時24分撮影
9月16日8時41分撮影

9月13日から3日間、トゲアリの女王アリは、クロオオアリの女王アリの頸を咬み続けています。寄生は順調なようです。

2022年トゲアリの寄生の試み 2 T20220910-54

一時的社会寄生の2例目を試みました。寄主をクロオオアリのコロニーS/N:BH210523-19(新女王アリを昨年の5月23日に採集)とし、トゲアリの新女王アリT20220910-54(9月10日採集)を寄生させます。
T20220910-54は、前日(9月12日)にBH210523-18に寄生させようとして、クロオオアリと一緒にしても化粧行為をしなかった新女王アリです。ですが、本当に化粧行為をしないのかを確かめるため、再度機会を持つことにしました。

9月13日9時48分撮影

9月13日、T20220910-54がいるクリアカップの中へ、クロオオアリの働きアリを1匹から3匹まで順次増やしてみたのですが、やはり化粧行為をしませんでした。
そこで、この新女王アリの場合、事前の化粧行為なしでも寄生行動をするのか、とにかく試してみることにしました。クリアカップの蓋を外してから逆さにし、コンクリート人工巣の蓋の上に置き、人工巣の蓋のアクセス穴からBH210523-19の中へ自然に入って行けるようにしました。

BH210523-19のコンクリート人工巣の中に入って行った 9時52分撮影

ところが意外にも、クロオオアリの働きアリから攻撃を受ける間もなく、僅かの間にクロオオアリの女王アリの頸に腹面から食い付きました。

僅かの間にクロオオアリの女王アリの頸に腹面から食い付いた 9時56分撮影

この咬みつきの体勢は、寄生の最初の段階を成し遂げたことを意味しています。順調に寄生が始まったと言うことです。
以下はその後の経過です。

9月14日8時23分撮影
9月15日8時22分撮影
9月16日8時40分撮影
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9月13日から3日間、トゲアリの女王アリは、クロオオアリの女王アリの頸を咬み続けています。寄生は順調なようです。

T210912-02が産卵していた

昨年の9月16日に寄生を始めたT210912-02がいる人工巣リトルアンテシェルフをアンテグラウンドⅢに繋げたことについては、先のブログに書きましたが、その後について記録しておきます。

腹部が異常なまでに膨らんでいる 5月9日撮影
飼育器の様子 下から4段目にトゲアリの女王アリがいた 5月9日撮影
女王アリがいた同じ階に卵がある 5月9日撮影
5月9日撮影

2つのコロニーをアンテグラウンドⅢに繋ぐ

BK170530-081は、2017年5月30日に駒ケ根市で新女王アリを採集したクロオオアリのコロニーです。今年で創巣から5年目を迎えることになります。かなり大きなコロニーになってきていました。

そこで、アンテグラウンドⅢと繋げることにしました。

左がアンテグラウンドⅢ

アンテグラウンドの中に15cm四方のキューブ水槽を入れ、濾過器を設置しました。また、アンテグラウンド内を換気するため、USB仕様の送風ファンも取り付けました。

昨年、クロオオアリのコロニーBK170530-040に寄生したトゲアリT210912-02の初期コロニーも、別に用意したアンテグラウンドⅢに繋げました。

トゲアリの女王アリが寄生しているT210912-01の初期コロニー

こちらも、水槽・濾過器・USBファンを設置しました。

9月16日の寄生 その後

9月16日に始めたトゲアリの女王アリの寄生の試みのその後について、まとめておきます。

1例目のトゲアリの女王アリS/N:T210912-01は、19日の夜、死んでいるのに気づきました。2例目のS/N:T210912-02が、この間ずっと宿主の女王アリと組み合っていましたので、T210912-01は、クロオオアリの女王アリと戦うことなく、働きアリに殺されたことになります。

9月19日21時44分撮影

2例目のT210912-02は、22日まではずっとクロオオアリの女王アリの頸部に咬みついていました。

9月18日5時57分撮影
9月21日9時40分撮影
9月22日9時33分撮影

9月23日になると、クロオオアリの女王アリから離れて、歩くようになりました。クロオオアリの働きアリから攻撃されてはいませんでした。

クロオオアリの女王アリから離れて歩くトゲアリの女王アリ 働きアリから攻撃されていない 9月23日8時2分撮影

ただ、死んだように思えたクロオオアリの女王アリが、体を一瞬丸めたことがあり、まだ生きていました。

クロオオアリの女王アリが体を丸めた一瞬 9月23日8時18分撮影
ほとんどの場合、トゲアリの女王アリはクロオオアリの女王アリの傍にいる 9月23日20時6分撮影

9月24日になると、クロオオアリの女王アリが動くところを見なくなりました。死んだのかも知れませんが、確認はできていません。トゲアリの女王アリが、クロオオアリの女王アリの頸部に咬みつくところも見ましたが、クロオオアリの女王アリから離れて歩くところも見ました。多くの時間は、クロオオアリの女王アリの極く近くにいます。

側面からクロオオアリの女王アリの頸部に咬みついていた 9月24日10時10分撮影
クロオオアリの女王アリから離れて歩いていた 9月24日15時27分撮影
多くの時間、クロオオアリの女王アリの極く近くにいる 9月24日16時53分撮影

まだ確言はできないのですが、T210912-02は、寄生の極く初期の段階は達成したようです。
それにしても、トゲアリの女王アリが、ほぼ1週間もの間、咬み続けることができる能力には驚かされます。

寄生を試みる 宿主BK170530-040

最後にトゲアリの寄生を試みたのは、3年前の2018年9月22日でした。この時は、たった1例だけの寄生の試みでしたが、幸運にも寄生に成功しています。このトゲアリのコロニーは、今も生存しています。
9月16日、先日(9月12日)採集したトゲアリの新女王アリを使って、久しぶりに寄生を試みることにしました。宿主としてクロオオアリのコロニーのBK170530-040を使うことにしました。

宿主となるBK170530-040
女王アリ 最下段にいた 9月16日14時56分撮影

寄生体としてS/N:T210912-01を使うことにしました。新女王アリをクリアカップ容器で仮保管していますので、その中にBK170530-040の働きアリを1匹入れてみました。

クリアカップの中 14時58分撮影

直ぐに女王アリの方からクロオオアリを捕捉し、化粧行動を始めました。やがて女王アリがクロオオアリを放ちました。クロオオアリは無傷のようです。BK170530-040の働きアリを更に1匹ずつ加え、3匹にしましたが、女王アリは化粧行為をしませんでした。女王アリは早足にクリーンカップの円周を歩いています。もう寄生する準備ができたのでしょうか。

もうクロオオアリには関心がないようだ 15時8分撮影

いよいよ寄生を始めることにしました。フィルムケースに女王アリを移し入れ、BK170530-040の飼育器のアクセス穴の栓を外して、フィルムケースを被せました。間もなく飼育器の中に入って行きました。

アクセス穴の栓を外してフィルムケースを被せた 15時12分撮影
クロオオアリの飼育器の中に入って行った 15時12分撮影

この時の様子をビデオ撮りしています。15時11分からの3画面を4分30秒にまとめています。

ビデオの3画面目は、寄生開始からおよそ1時間後ですが、トゲアリの女王アリがかなり弱っているように見えます。翌日には死んでいるのではないかと思っていましたが、9月17日、朝見るとそうでもないようです。クロオオアリたちに拘束されていない時があり、その時は、普通に歩いて移動していました。また、前日は上の段から2段目で拘束されていましたが、今日は上から4段目(下からは3段目)に移動していました。

拘束が解かれてはいないようだ 化粧行為も見られた 9月17日8時55分撮影

ところで、もう1例、9月16日に寄生を試みていました。寄生体はS/N:T210912-02、宿主は同じくBK170530-040です。
クリアカップの中に既に入れていた3匹のクロオオアリの働きアリの中に、T210912-02を入れました。ところが意外にも、このT210912-02はクロオオアリには関心がないようです。しばらく見守りましたが、化粧行為をしようとしません。盛んにクリアカップの円周を早足で歩いています。
そこで、化粧行為をしていないまま、BK170530-040へ侵入させることにしました。今度の侵入口は、クロオオアリの女王アリがいる最下段横の拡張穴にしました。

最下段にある拡張口 最下段にはクロオオアリの女王アリがいる

この時の侵入の様子もビデオ撮りしています。16時22分に侵入しましたが、その直後の様子です。

ビデオのように、T210912-02は迷う様子もなく、一直線にクロオオアリの女王アリに向かって行きました。そして、喰い付いたようでした。
19時過ぎに様子を見ると、クロオオアリの女王アリは頭部を上方に上げたままになっています。

頭部を上げたままの姿勢になっている 19時6分撮影

この姿勢は、クロオオアリの女王アリが腹面から頸部を咬まれていることを意味しています。以前からの観察で、この姿勢が寄生の成功率が最も高い姿勢です。トゲアリの女王アリが既に王手をかけたことになります。このままの姿勢を組み続けることができれば、寄生は成功です。
ちなみに、クロオオアリの女王アリの背面に2本の肢の跗節がくっきりと写っていますが、この肢はトゲアリの女王アリの肢です。トゲアリの女王アリが、クロオオアリの女王アリをその腹面からしっかりと抱きついていることが分かります。
22時過ぎになって、予期通りの写真(トゲアリの女王アリが、クロオオアリの女王アリの腹面から頸部に咬みついているところ)を撮ることができました。

トゲアリの女王アリがクロオオアリの女王アリの頸部を腹面から咥えている 22時21分撮影

また、今日(9月17日)もトゲアリの女王アリがクロオオアリの女王アリの頸部を腹面から咥えているところを見ることができました。

8時38分撮影
8時59分撮影

さて、2例目のトゲアリの女王アリの他、1例目のトゲアリの女王アリも、現時点では生きているのですが、このようなことは、自然界でも起きているはずです。ですから、一時的になるかもしれませんが、複数のトゲアリの女王アリ(関連ブログ)が、BK170530-040に寄生しつつあることを良しとしたいと思います。2匹をこのままにして観察を続けます。