群馬県の沼田市を旅行中に養蜂園を見つけました。ローヤルゼリーの原液をアリに与えたいと予てから考えていましたので、購入しました。果たして、アリはローヤルゼリーを食べるでしょうか。
写真のように、ミツバチの分泌物であるローヤルゼリーを違和感なく食べ始めました。ローヤルゼリーにはタンパク源も含まれているので、日常的な餌として利用できれば、飼育の手間が簡略化されます。つまり虫を与えなくてもよくなるかも知れません。
そこで、餌として糖分と昆虫を与える場合と、糖分とローヤルゼリーを与える場合で家族の増え方を比べてみます(糖分だけの場合は省略しています)。それぞれ5個の人工巣で対照実験を行います。それぞれの5個の内訳は、働きアリの数が10匹が4個と11匹が1個です。何ヶ月後かの働きアリの数を比較します。ここで予想を立てておきましょう。
ア.昆虫を与えた方が働きアリの数が多くなる。
イ.ローヤルゼリーを与えたほうが働きアリの数が多くなる。
ウ.どちらもほぼ同じ。
さて、話が変わって、10日現在の人工巣の数は60個ですが、その全ての巣の働きアリの数を調べました。〔( )の中の数字はムネアカオオアリの数で内数〕
13匹 1
12匹 1
11匹 4
10匹 11 (2)
9匹 4
8匹 7
7匹 9(2)
6匹 5 (1)
5匹 1
4匹 7(1)
3匹 0
2匹 1
1匹 6(1)
0匹 3
働きアリがいない3匹の女王アリの家族のうち、1匹は子育て失敗組(7月22日記事参照)ですから、59家族で平均を出してみると、働きアリの数は、1家族当たりおよそ7匹(405匹÷59家族=6.86…匹/家族)となります。
記述のローヤルゼリーを使った対照実験は、上記のこの60個の人工巣から抽出したものです。
下の写真は、10日時点での順調に育っている家族の様子です。上がクロオオアリ、下がムネアカオオアリです。働きアリが10匹前後います。
下の写真は何をしているのでしょう。
中央のアリは、足をたたむように曲げ、既に死んでいるように見えます。周りの3匹のアリに食べられるのでしょうか。よく見ると右上のアリの口元に黄色いものが見えますが、これは何なのでしょうか。
ちょっと見ると中央のアリは攻撃されているように見えますが、実はこれは羽化の様子です。黄色いものは繭のかけらです。クロオオアリは、自分一匹では羽化できません。繭を破るのも、蛹の時に体中を覆っている薄い 膜を取り去るのも、全部仲間のアリがします。女王アリが子育てをして、初めて成虫になるときは、女王アリがこの役をします。何れにせよ、クロオオアリの世界では、自分だけの力では生まれることができず、必ず介助が必要なのです。こんな昆虫は外にはいません(全てのアリの仲間がそうであるかの検証はしていません)。やはり、アリの仲間は高度に発達した社会生活を営んでいると言えます。
最後にこの写真を見てください。
女王アリが死にました、働きアリ1匹と繭1個を残して。こうなったらもうこの家族は続きません。全滅するのを待つのみです。では、次のようなことをしたらどうなるのでしょうか。働きアリと繭を他の女王アリと一緒にします。その女王アリにはまだ働きアリがいません。
ア.女王アリは仲良く働きアリと繭を受け入れる。
イ.女王アリは働きアリを殺し、繭だけ受け入れる。
ウ.女王アリは働きアリを殺し、繭もかみ砕く。
一緒にすると必ず働きアリは殺されます。しかし、繭は受け入れられます。
働きアリは女王アリに近づきます。そこには敵意は感じられません。が、女王アリはすり寄ってきた働きアリをすぐに殺してしまうのです。