月別アーカイブ: 2013年4月

トゲアリの飼育のその後

昨年の10月31日から簡易小型飼育器「アンテキューブ」で飼育していたトゲアリの様子を報告しておきましょう。

3箇所の桜の木にいたトゲアリの働きアリをA巣・B巣・C巣(C巣のみ幼虫も)のアリとして飼育していました。それぞれは別のアンテキューブに入れていました。もう一つは、B巣のアリ14匹とC巣のアリ5匹を一つのアンテキューブに入れて飼育していました。

3月21日時点では、A巣5匹、B巣4匹、C巣5匹、B巣とC巣の混合巣9匹が生き残っていました。いずれもほぼ半分の個体が生き残ったといえます。室内で飼育していましたので、冬の間も糖分と水を与えていました。

女王アリを失ったクロオオアリやムネアカオオアリの働きアリの場合は、とても高い生存率ですので、トゲアリの今回の生存率は、高いとは言えません。しかし、今回の飼育条件では、死亡した要因が定かではありませんから、飼育の仕方次第ではどのように変わるか予想はできません。

4月17日からは、生き残ったトゲアリを一つのアンテキューブに入れています。この際、体を舐められる個体もありましたが、喧嘩は起こらず、今日に至っています。

子育てをするトゲアリ

子育てをするトゲアリ

幼虫に給餌している

幼虫に給餌する働きアリ

単独生活の女王アリは昆虫を食べるか?

女王アリは、自分で昆虫を食べることができるのでしょうか。
自然界ではそのような必要はなく、働きアリから養分をもらっているのですから、昆虫を直接食べるということはありません。もう、何千万年もの間、そのように過ごしてきたのですから、ハチの時代に持っていた昆虫を狩りして食べるという本能は、既に消えうせているに違いありません。
ですが、本当にそうなのでしょうか。〈女王アリがトンボに食い付いた話は以前書きましたが(昨年の9月1日のブログ「アリのえさ トンボ」)。〉

3月31日のブログ「年を越して再度の子育てに成功するか?」で取り上げた昨年採集した女王アリ(働きアリがいない子育て失敗組)でそのことを確かめてみましょう。

サンプル1:S/N007 ムネアカオオアリ 春になって多数産卵はしたが孵化しない
サンプル2:S/N016 全身が黒いムネアカオオアリ 良く育った幼虫が1匹と卵がある 昨年も幼虫まで育てている
サンプル3:S/N073 クロオオアリ 昨年繭まで育てた 春になって産卵はするが食べてしまう

与える昆虫は、アカイエカ程度の大きさのユスリカの仲間の成虫です。
4月17日にシリアルナンバー007のムネアカオオアリの女王アリに、動かなくなったユスリカを与えました。

ユスリカを団子状にしている

ユスリカを団子状にしている

すると、このユスリカに食い付いて、大腮でかみ砕き、団子状にしました。アシナガバチが昆虫の獲物を団子状にするのと良くにています。アシナガバチは、その団子を区分けして幼虫に与えたように記憶しています。ですが、ムネアカオオアリの女王アリは、その団子を食べたようです。というのは、その後私は外出したので、継続して観察はできなかったのですが、食べ残しが見当たらなかったからです。

昨日も、同様のことを行い、このことを確かめてみました。下の写真は同じ007のムネアカオオアリです。

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今度も、ユスリカを団子状にし始めました。やがて食べ残すことなくほぼ全部食べてしまいました。

サンプル2のシリアルナンバー016のムネアカオオアリの女王アリの場合は、ユスリカを与えてもなかなか関心を示しませんでした。少ししてからユスリカを噛み始め、半分ぐらいは食べたようですが、食べ残しました。翌日も食べ残しはそのままでした。

サンプル3のシリアルナンバー073のクロオオアリの女王アリの場合は、食い付いて団子状にしていましたが、半分ぐらいは食べ残していました。翌日も食べ残しはそのままでした。

以上の観察から、個体差はあるものの、クロオオアリとムネアカオオアリの女王アリは昆虫を直接食べるということが分かります。何千万年もに渡って必要ではなかった本能が、予想に反して、未だに残っていることになります。

蜜作り

3月31日付の「年を越して再度の子育てに成功するか?」の中で、蜜の作り方に触れましたが、この蜜を更にバージョンアップすることを考えました。この蜜は、白砂糖と蜂蜜とメープルシロップを混ぜたものでした。それを白砂糖の代わりに黒砂糖(黒糖)にし、新たにローヤルゼリーを加えます。

黒砂糖は、白砂糖に比べビタミン類や無機質を多く含んでいます。アリが自然界で摂取する糖類により近いでしょう。また、ローヤルゼリーには、たんぱく質のもとになるアミノ酸が10数パーセント含まれています。その他にもローヤルゼリーには、ビタミン類や無機質や糖質・脂質も含まれています。

ローヤルゼリーを加えることで、蜜が糖分だけでなくたんぱく質も含むことになります。昆虫などのタンパク源を与えることは、糖分を与えることよりも手間ひまがかかりますから、もし、ローヤルゼリーに含まれるアミノ酸が蟻にも有効なら、とても助かります。

実は以前、2011年の8月10日のブログに、クロオオアリにローヤルゼリーを与えたことを書いています(「ローヤルゼリーの効用は」)。この時はローヤルゼリーを食べたのですが、すぐ後からは全く食べないようになりました。人間がローヤルゼリーを舐めてみればわかることですが、酸味があります。糖質も含まれていますが甘くは感じません。

今回作る蜜はとても甘いので、ローヤルゼリーをかなり加えても大丈夫と考えました。実際に作ってクロオオアリとムネアカオオアリに与えたのですが、もう何日もの間、好んで蜜を食べています。

ただ、ローヤルゼリーはあくまでもミツバチの生活に使われているものです。アリにとって有用なものかは対照実験をしてみないとわかりません。少し前から始めている実験では、ローヤルゼリー抜きの蜜を与えているグループと、ローヤルゼリー入りの蜜を与えているグループに分けています。これに、やがて昆虫などが与えられるようになると、ローヤルゼリー抜きの蜜を与えているグループのみに昆虫などの生き物を与えます。つまり、糖分は共通にして、主にローヤルゼリーと昆虫の違いを比べるのです。

上が水と白砂糖・蜂蜜・メープルシロップの蜜 下が水と黒砂糖・蜂蜜・メープルシロップ・ローヤルゼリーの蜜

上が水と黒砂糖・蜂蜜・メープルシロップの蜜
下が水と黒砂糖・蜂蜜・メープルシロップ・ローヤルゼリーの蜜

異種のアリ同士は仲良くできるか

ちょっとした実験をしてみましょう。

フィルムケースの中に、クロオオアリとムネアカオオアリとトゲアリの働きアリを各1匹、クロヤマアリの働きアリを2匹入れておきました。(クロヤマアリは2匹いたので、たまたま2匹です。)
どうなるでしょうか。

あちこちで噛み合いが起こるでしょうか。あるいは、あるアリが一方的に強くて、他を殺してしまうでしょうか。あるいは、お互いに避けあって喧嘩が起こらないでしょうか。あなたはどう思いますか。

異種のアリを閉じこめたら

異種のアリを閉じこめたら

既にクロオオアリとトゲアリの組み合わせでは、少し実験済です。その際は、咬みつくような喧嘩は起こりませんでした。

観察してみると、やはり咬みつくような喧嘩は起こりませんでした。お互いに避けあっているといっていいでしょう。一番体が大きかったムネアカオオアリは、他を威嚇していましたが、それでも咬みつこうとはしていません。相手を追っ払っているといった感じです。

たまたま寄せ集められた彼女らにとっては、喧嘩をするほどの利害関係はないわけですし、喧嘩のリスクを考えると、喧嘩をしないにこしたことはないのです。……と言うのは、人間の考えですが、本能的に無駄な殺生はしないようにできているのでしょう。

ムネアカオオアリも活動中

当然ことながら、ムネアカオオアリももう地上に出てきているはずです。本当にそうなのか探してみましょう。

樹上から戻ってくるムネアカオオアリ

樹上から戻ってくるムネアカオオアリ

確かに姿がありました。このムネアカオオアリは、腹部は膨らんでいません。よく見ると何かくわえています。帰宅してから実体顕微鏡で見ると、何かの幼虫のようです。

畳まれて運ばれていました

畳まれて運ばれていた

これは栄養価の高いタンパク源です。木の幼虫を狩りしたのでしょう。この木にとってムネアカオオアリは益虫ということになります。

地上を歩いているムネアカオオアリをたどって巣を見つけました。

道端の裂け目に巣があった

道端の裂け目に巣があった

かなり人工的な環境を巣にしています。

道端のアスファルトとコンクリート壁との隙間に巣がある

道端のアスファルトとコンクリート壁との隙間に巣がある

アリの誕生以来、ざっと1億年の歴史を打ち破るとても革新的な栖です。

 

クロオオアリの雄アリ

野田山のトゲアリがいる木で見つけたクロオオアリは、どこからやってきていたのでしょうか。アスファルトの道を歩いているクロオオアリを追っているうちに、巣を見つけました。

アスファルトの裂け目から出入りするクロオオアリ

アスファルトの裂け目にあったクロオオアリの巣

昨年の秋には気付かなかったのですが、車が置けるように少し道が広くなっている場所に巣がありました。クロオオアリが巣を拡張した際に出てきた土がありますが、その土をよく見ると、知らずに踏みつけた際の、私の車のタイヤの跡があります。

さて、その巣穴を覗いてみると、働きアリの大きめの頭の間に、細めの頭が見えます。

細めの頭が見える

細めの頭が見える

上の写真は、デジタル現像の際に巣の中を明るくしてあるので、少し羽の部分が見えますが、現地では暗くてそこまでは見えませんでした。ですが、この頭の形から雄アリだとわかります。
しばらく待ちかまえて撮影したのが下の写真です。

羽がよく見える

翅がよく見える

上の写真をクリックして見て下さい。翅がよく見えます。クロオオアリの羽蟻は前年の秋には成虫になっています。一冬越して5・6月に飛翔するのです。女王アリの羽蟻の姿はありませんでしたが、きっとこの巣には女王アリの羽蟻もいると思われます。運が良ければ、この巣から飛び立つ新女王アリを採集できるかも知れません。

ところで、あまりにも何回も雄アリが頭を巣穴からのぞかせるので、その雄アリを巣穴から引っ張り出してみたくなりました。
ピンセットを手にして、外を窺っている雄アリの足などを摘んでみましょう。こつは瞬時に行なうことですが、案外できるものです。

巣から取り出した雄アリ

巣から取り出した雄アリ

明らかに雄アリです。このあと、フィルムケースから巣穴近くへ出しましたが、巣には帰らず、飛んでどこかへ行ってしまいました。このあと、更に雄アリを2匹つまみ出しましたが、フィルムケースに入れずにすぐに巣の近くに戻しました。この2匹は、巣へ戻りました。

トゲアリとの再会

春らしい春になって以来、近くの山に出かけたいと思いながらも、別用を優先して出かけないでいましたが、今日はとても良い天気、当面の課題も一先ず了えたので、野田山に出かけることにしました。

林道沿いにもサクラの木などに花が咲き、山はとてもきれいです。もう既に一つの春が過ぎたような、今になってやっと訪れたことが残念にも思えました。

最初にめざすは、昨年訪れたトゲアリの巣がある場所です。車で野田山の峠を越えて着いてみると、あたりは心地よい春の空気です。まず、B巣があった木(3箇所の木の中ほどにある)を見ました。もう、そこにはトゲアリの姿がありました。

幹と幹の間

幹と幹の間に集まったトゲアリ

ところで、秋には気付いていなかったのですが、その木はサクラの木でした。

サクラの木

サクラの木 A巣・C巣のある木もサクラの木だ

A巣があった木も見てみました。クロオオアリが幹を歩いています。

クロオオアリ

クロオオアリ

トゲアリはというと、しばらくしてやっと見つけました。

トゲアリ

トゲアリ

トゲアリは極少ないようです。巣らしい場所は見当たりませんでした。

ふと「いたずら」をしてみたくなりました。
「この木を歩いているクロオオアリとムネアカオオアリを一緒にしておくとどうなるだろう。」
ということで、フィルムケースの中に閉じこめました。

サンプルは2つ

サンプルは2つ

異種の2匹は、咬みあうことはありませんでした。と言って、仲良くしているわけでもありませんが……。
しばらくして見ると、片方のケースのクロオオアリとトゲアリが死んでいました。蟻酸で死んだのでしょう。案の定、蓋を開けて匂いをかいでみると、きつくはありませんでしたが、蟻酸の匂いがしました。

道の下手のC巣を見てみると、ここにはたくさんのトゲアリがいました。

トゲアリの群れ

トゲアリの群れ サクラの花も見える

樹洞が真っ黒になっています。下方の小さな樹洞の中にも群がっています。トゲアリには、姿を隠さない習性があるのでしょうか。

ところで、トゲアリは地上では活動しないのでしょうか。根本近くを歩くトゲアリは見かけましたが、

根元のすぐ近くで

根本のすぐ近くで

もっと遠くへ歩いて出かけることはあるのでしょうか。と言うのも、昨年の秋には、遠くまで地上を歩いているトゲアリは見かけなかったのです。そこで、このことを確かめるべく、道のアスファルトの上を探していると、

道の上を歩くトゲアリ

アスファルトの道の上を歩くトゲアリ

トゲアリを見つけました。このトゲアリを見つけたのは、A巣の近くです。これまでは、「A巣のある木」にA巣があるとしてきましたが、本当はその木には巣はなく、他の場所から地上を歩いてトゲアリが来ていたのかも知れません。

B巣の近くをもう一度見てみると、アスファルトの道のところにもトゲアリがいました。

左手前にトゲアリがいます

左 手前にトゲアリがいる 後方にB巣のあるサクラの木がある

トゲアリも地上を歩くようです。でも、どんな活動をしているのでしょうか。この日の観察では何もわかりませんでした。

ルリアリが戻ってきた

台所にルリアリが戻ってきました。もちろん今年初めて台所で姿を見たという意味です。
ルリアリはとても「かわいい」アリです。

まな板の上を這うルリアリ

まな板の上を這うルリアリ

隙間に通路から出てきたルリアリ

隙間の通路から台所に出てきたところ

 

シリアゲアリとアリグモ

団地内の公園のサクラの木にシリアゲアリがいました。

シリアゲアリ

シリアゲアリ

季節はもう確かに春です。あちこちで昆虫たちも活動を始めています。

ふと気付くと、このシリアゲアリによく似た生き物がいます。

下方 シリアゲアリとほぼ同じ大きさだ

下方 シリアゲアリとほぼ同じ大きさだ

頭部を見るとこれはクモの仲間だと分かります。アリグモの仲間なのでしょう。シリアゲアリのこんな近くで何をしているのでしょう。