日別アーカイブ: 2013年6月7日

少し標高の高いところでは

前回のブログで取り上げている女王アリの採集場所は、少し離れた2箇所ですが、いずれも標高が850m前後のところです。
それらの地点では、既に大部分の羽蟻が直前に結婚飛行を終えていたわけですが、と言うことは、少し標高が高いところでは、結婚飛行はこれからかも知れません。
そこで、同じ地域の山へと車を走らせました。途中に駐車場とトイレがある公園があり、そこで観察することにしました。標高は990m前後です。
道はアスファルトで舗装されていて、道の脇のコンクリート製の溝との間の割れ目をうまく利用して、クロオオアリがいくつか巣を作っていました。案の定、そこにはまだたくさんの羽蟻がいました。

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羽蟻がたくさん巣から出ていた

すぐ近くの別の巣

すぐ近くの別の巣 葉の上にたくさんの雄アリがいる

これの別の巣

これも別の巣

これらは6月5日の様子です。結局、この日、これらの巣からは羽蟻は飛び立ちませんでしたが、ほんの少し道を下ったところにあるクロオオアリの巣からは、何匹かの女王アリが飛び立つのを見ることができました。

飛び立とうとしている女王アリ

飛び立とうとしている女王アリ

ただ、私が見た限りでは、巣の出入り口には雄アリもいたのですが、女王アリだけが、時々飛び立つといった具合でした。

ところで、ムネアカオオアリの女王アリの方はと言うと、山側の茂みの中から何匹かが出てきました。

山側の茂みから出てきたムネアカオオアリの女王アリ

山側の茂みから出てきたムネアカオオアリの女王アリ

結局、この日この公園では、ムネアカオオアリの女王アリを2匹採集するにとどまりました。クロオオアリの女王アリは採集できませんでした。

次の日にもこの公園を訪れましたが、前日と違い、夕刻になっても巣から出て来る羽蟻はいませんでした。2日目はこの公園では、1匹も女王アリを採集することができませんでした。

ところで、天気が昨日より違っていました。夕刻前には、曇になっていました。そして、午後8時を過ぎた頃、雨が激しく降ってきました。
それで、この日、羽蟻が飛び立たなかったわけがわかったように思えました。もし、結婚飛行をしていたら、新女王アリは雨の中で穴を掘ることになります。小降りならまだしも、激しい雨の中では、せっかく掘りかけた穴は、あっという間に埋まってしまったことでしょう。

まだ、結婚飛行をする前の巣では、巣の出入り口から羽蟻が外の様子を窺っています。いつ巣から飛び立つか、外の様子を見ていると考えられますが、様々な気象的な要素を捉える能力があるのではないでしょうか。アリには、ある意味、天気を予知できる能力があると言えるでしょう。(例えば、モンシロチョウには天気を予知する能力があるのかと言うことです。裏返して言えば、天気を予知する必要があるのかということでもあります。モンシロチョウは、雨が降ってきて始めて、葉の裏などに身を寄せるのでしょうか。)

女王アリの採集へ

いよいよクロオオアリとムネアカオオアリの女王アリの採集の時期です。これまで3年間、同じ場所で大量に採集できましたので、今年も同じ場所へ出かけました。
過去3年間では、6月8日(2010年)、6月8日(2011年)、6月14日(2012年)の日に結婚飛行があり、クロオオアリとムネアカオオアリの合わせて100匹を越える女王アリを採集してきました。
今年は6月4日に自宅を出、翌日に当地に着きました。

当地に次の日まで留まったわけですが、結論を先に言えば、2日間で17匹を持ち帰りました。帰宅してみるとその内の1匹が死んでいましたので、実数は16匹です。

なぜこんなにも少なかったのか、それはごく明白な理由で、当地の新女王アリは、既に大部分が結婚飛行済だったからです。当地の施設の方の話では、「1週間ほど前」に女王アリをたくさん見たそうです。それが2〜3日続いたとのこと、確かに同一場所でも、結婚飛行は特定の一日だけに集中して行なわれるのではなく、何日かに分けて行なわれることが、これまでの観察で分かっています。それは、1つの巣においても、言えることで、1つの巣でも何日かに分けて羽蟻が飛び立ちます。

以下の写真は、既に結婚飛行が大量に行なわれた後であることを示すものです。

女王アリの腹部と思われます

女王アリの腹部と思われる

クロヤマアリの巣へと運ばれた女王アリの死体

クロヤマアリの巣へと運ばれた女王アリの死体

大きな巣だが羽蟻の姿がない

クロオオアリの大きな巣だが羽蟻の姿がない

羽蟻の姿がないムネアカオオアリの巣

羽蟻の姿がないムネアカオオアリの巣

巣に羽蟻がいると、天気が良ければ午後には巣の出入り口に必ず姿を見せるのですが、上の下方の2つの写真のように、その羽蟻の姿がありません。これらの巣では、もう結婚飛行が完了していることを示しています。ちなみに一番下のムネアカオオアリの巣は継続観察をしている巣の1つです。

しかし、同じ場所ですが、幸いにもまだ羽蟻が残っている巣もありました。

羽蟻の姿が見える

羽蟻の姿が見える

この巣も継続観察をしている巣で、昨年はこの巣から羽蟻がたくさん飛び立つ様子を観察しました。その時と比べると、明らかに羽蟻の数が少なく、既に大多数の羽蟻が飛び立った後であることが伺えます。

今年の当地の天候を振り返ってみますと、一時梅雨に入り(5月27日〜30日までが曇)、その後で晴天(5月31日から)が続きましたが、そのことが羽蟻の飛行を早めたようです。今年も6月の8日前後だろうと決め込んでいたのが間違いだったのです。