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働きアリの寿命(その2)

2012年8月31日2013年3月25日のブログで触れたクロオオアリの家族3匹(女王アリと働きアリの2匹)ですが、その内の大きな働きアリが死んでいました。

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この死んだ働きアリは2011年7月生まれで、最初にそのクロオオアリの家族の一員になったアリでした。23ヵ月間生きていたことになります。
上の写真がその働きアリです。ばらばらになっているのは姉妹の働きアリや母親(女王アリ)が食べたからです。よく見ると内部がなくなって殻だけになっています。

やはり、クロオオアリの働きアリはかなりの長生きのようです。
同じく2011年に女王アリが死んだにもかかわらず、最初に生まれた働きアリが生き続けている家族が2例あります。これらも2013年の3月25日に紹介している働きアリたちで、クロオオアリは8匹が、ムネアカオオアリは5匹が生きています。こちらの働きアリたちは、3年目を越えるのはもう目前です。果たして、クロオオアリやムネアカオオアリの働きアリの寿命は、長いものでどのくらいなのでしょうか。是非とも探究したいテーマです。

クロオオアリの巣を襲うクロヤマアリ

下の写真を見てみましょう。

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あちこちに黒いものが見えますが、これはクロオオアリの死体です。中央には大きな腹部の残骸が見えますが、クロオオアリの女王アリなのかも知れません。右上に巣口があり、出入りしているのはクロヤマアリのようです。

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これは、巣の規模は小さいのですが、やはり巣口にクロオオアリの死体がたくさんあります。

このような巣がこの辺りにはとてもたくさんありました。確認のため、それらの死体と出入りしているアリを持ち帰りました。

これは確かにクロオオアリの死体です

これは確かにクロオオアリの死体です

これは確かにクロオオアリの死体です。大きな腹部はやはり女王アリのようです。

やはりクロヤマアリのようです

やはりクロヤマアリのようです

巣口から出入りしていたのはやはりクロヤマアリのようです。

大腮の様子

大腮の様子

側面から

側面から

大腮の形からもサムライアリではないことがわかります。

この辺りには、クロオオアリの巣がいたる所にありました。それらの巣から、毎年羽蟻が飛び立ち、さほど遠くない場所に新たな巣ができると考えられます。それを毎年繰り返しているとすると、クロオオアリの密度は高まるばかりです。

ところで、クロヤマアリは、クロオオアリと比べて、ひとつの巣の中の働きアリの数が多く、また動きが機敏です。ですから、クロヤマアリがクロオオアリを襲えば勝てるでしょう。襲う目的は、クロオオアリの卵や幼虫や蛹を食べるためでしょうし、殺した働きアリも食べているのでしょう。働きアリ以外は、食べても残骸は残らないので、巣口の周りには働きアリの残骸だけがあったと考えられます。

また、クロオオアリを全滅させた後の巣穴は、そのままクロヤマアリが使っているようです。クロヤマアリはひとつの巣に複数の女王アリがいると言われていますから、その中の女王アリが1匹でも引越をすれば、女王アリがいる巣になります。しかも、穴掘りをしなくても即巣穴が手に入るわけです。

ちなみに、以上は、クロヤマアリがクロオオアリの巣をまるごと襲うと考えての話ですが、そうではなく、クロヤマアリがクロオオアリ(死んでいたものや襲ったもの)を自分の巣に運んで食べた跡ではないかと考えることもできないではありません。けれども、そう考えなかったのには、理由があります。巣口の周りにある死骸のほとんどがクロオオアリであることや、その死骸の数が多いこと、そして、そのような巣がそう広くない場所にあちこちあることなどから、それだけの数のクロオオアリが、通常クロヤマアリの餌食になるとは考えられないからです。

クロヤマアリがクロオオアリの巣を襲うということは、あまり知られていませんが、私が観察したこの場所では、ごく普通に行なわれているようです。