月別アーカイブ: 2013年9月

トゲアリの強さについて の続き

9月17日に、「トゲアリの強さについて」述べましたが、そのサンプル数は10例でした。また、その後、オオアリの女王アリのいない巣へトゲアリの女王アリを入れましたが、そのサンプル数は5例でした。
今回は、更に追加実験をした全部を合わせての現時点での結果を報告します。

追加実験は次のようです。
(年は採集年度 記載のないものは2012年採集)
(「有」は女王アリあり 「無」は女王アリなし 「死体」は女王アリの死体あり)
9月18日
⑨ 以前の⑤クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01089)2度目(死体)

9月26日
⑩ 以前の③クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01016)2度目(有)
⑪ 以前の⑤⑨クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01089)3度目(死体)
⑫ 以前の⑥クロオオアリ(S/N:NESTCON 01001拡張蓋)2度目(無)2011年
⑬ 以前の⑦クロオオアリ(S/N:NESTCON 01004拡張蓋)2度目(無)2011年
⑭ 以前の⑧クロオオアリ(S/N:NESTCON 01005拡張蓋)2度目(無)2011年
⑮ クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01043)(死体)2013年
⑯ クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01056)(死体)2013年
⑰ クロオオアリ(S/N:ANTECB 02005)(有)2013年
⑱ クロオオアリ(S/N:ANTECB 02007)(有)2013年
⑲ クロオオアリ(S/N:ANTECB 02008)(有)2013年
⑳ クロオオアリ(S/N:ANTECB 03003)(有)2013年
㉑ クロオオアリ(S/N:ANTECB 03004)(有)2013年

⑻ 以前の⑶ムネアカオオアリ(S/N:SIMSMA 01007)2度目(有)
⑼ 以前の⑸ムネアカオオアリ(S/N:SIMSMA 01033)2度目(有)

9月27日
㉒ クロオオアリ(S/N:NESTCON 01001本巣)(有)2011年
㉓ クロオオアリ(S/N:NESTCON 02001)(有)2013年
㉔ クロオオアリ(S/N:NESTCON 02002)(有)2013年
㉕ クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01047)(有)
㉖ クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01067)(有)
㉗ クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01075)(有)
㉘ クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01080)(有)
㉙ クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01086)(有)
㉚ クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01042)に2匹同時侵入(有)

⑽ ムネアカオオアリ(S/N:SIMSMA 01010)(有)
⑾ ムネアカオオアリ(S/N:SIMSMA 01029)(有)
⑿ ムネアカオオアリ(S/N:SIMSMA 01063)(有)
⒀ ムネアカオオアリ(S/N:SIMSMA 01068)(有)
⒁ ムネアカオオアリ(S/N:SIMSMA 01070)(有)

27日の実験(コンクリート人工巣での実験を除く)

27日の実験(コンクリート人工巣での実験を除く)

クロオオアリの巣への侵入は、㉚が同時に2匹ですので、総計31匹になります。ムネアカオオアリの巣への侵入は、14匹となります。

結果について
クロオオアリの場合は、トゲアリが寄生に成功したと思われるのは、4例です。(他は全て死亡しました)
④(S/N:SIMSMA 01024)(有)
⑪(S/N:SIMSMA 01089)3度目(死体)
⑮(S/N:SIMSMA 01043)(死体)2013年
㉖(S/N:SIMSMA 01067)(有)
※現在闘争中なのは、
⑬(S/N:NESTCON 01004拡張蓋)2度目(無)2011年 寄生できる可能性がある
⑭(S/N:NESTCON 01005拡張蓋)2度目(無)2011年 強く攻撃を受けている

ムネアカオオアリの場合は、トゲアリが寄生に成功したと思われるのは、4例です。(他は全て死亡しました)
⑴(S/N:NESTCON 01025本巣)(有)
⑷(S/N:SIMSMA 01028)(死体)
⑹(S/N:NESTCON 01025拡張蓋)(無)
⑺(S/N:NESTCON 01029拡張蓋)(無)

考察
自然界では、オオアリの女王アリがいる巣の方が、多いと考えられますので、それぞれの寄生の成功率は、
クロオオアリ:2÷31×100=6.5%
ムネアカオオアリ:1÷14×100=7.1%
これは、両者には有意差がないと言うことですので、オオアリ全体としては、3÷45=6.7%となります。
女王アリがいない場合、女王アリとの闘争がないわけですが、その場合の寄生の成功率は、
クロオオアリ:2÷31×100=6.5%
ムネアカオオアリ:3÷14×100=21.4%
この場合は、両者に有意差がありますので、どう考えたらよいか迷いますが、オオアリ全体としては、5÷45×100=11.1%となり、6.7%と比べると2倍弱ですが、寄生できる成功率が高くなります。なお、最終的には、クロオオアリの闘争中の2サンプルの結果を反映させたいと思います。

いずれにしても、9月15日に立てた寄生時の成功率についての仮説「トゲアリの女王アリは、その大多数がオオアリの女王アリとの戦いに破れる」を裏付けています。

トゲアリの女王アリ採集終了

9月30日の午前10時頃から半時間程度、いつもの場所にトゲアリの観察に行きましたが、トゲアリの女王アリは1匹も見つけることができませんでした。観察を終日行なえば、女王アリを見つけることができるかも知れませんが、ほぼ、この日までに女王アリは地上に出てこなくなったと考えられます。
まだ、生き残っているはずの女王アリはどこに行ったのでしょうか。

トゲアリの女王アリは単独でいつまで生きられるか?

9月18日のブログ「トゲアリの女王アリをストック!?」の中で、「トゲアリの女王アリは単独で長期間水だけで生きていけるであろう」と考えましたが、あれから大量にトゲアリの女王アリが採集できましたので、そのことを検証してみようと思いました。
19日採集のトゲアリを2つのグループに分けます。1つのグループには水だけを与え続け、もう一方のグループには、蜜も与えます。それぞれ20サンプルとします。

水だけのグループ

水だけのグループ

蜜も与えるグループ

蜜も与えるグループ

蜜は、水、トレハロース、メープルシロップ、蜂蜜、黒蜜、ローヤルゼリーをブレンドしたものを与えます。
この実験は、9月27日より始めました。蜜はペットボトルの蓋の中にほんの少し入れて与えます。27日に初めて与えてみると、20匹中9匹が蜜を飲むのが観察できました。ただ、僅かしか量がないのにも関わらず、蜜はほとんど減ったようには見えませんでした。この蜜は、オオアリの女王アリにも与えていますので、それと較べてしまうのですが、飲む量が少なく感じました。その後、ずっと見ていなかったのと、例え飲んだとしても残してしまうわけですから、後の11匹が蜜を飲んだかどうかは確かめようがありませんでした。

トゲアリの女王アリを2匹入れると

オオアリの巣の中にトゲアリの女王アリを一度に2匹入れるとどうなるのでしょうか。9月27日に、クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01042)の巣の中に2匹を入れてみました。

2匹は、全く別行動を取っていて、連繋などしていませんでした。2匹の女王アリが同時にクロオオアリの女王アリに食い付くこともありませんでした。同時に食い付かなかったことについては、今回の場合、たまたまであったかもしれませんが、実は他に意外な行動が見られたのです。

動画1分間

1分間の動画

上の動画がその意外な行動です。組み合っているのは、どちらもトゲアリです。上方のトゲアリは、相手の胸部の頭部側の棘に食い付いています。下方のトゲアリは、相手の右の中脚に食い付いています。下方のトゲアリは、捕らえているクロオオアリの働きアリの体表を前脚で撫で回しては自分の体に化粧をしています。上方のトゲアリは、下方のトゲアリの体表を前脚で撫で回して、自分の体に化粧をしています。動画の後半では、下方だったトゲアリも、クロオオアリの働きアリを放していて、2匹共に相手の体表を撫で回しては自分の体に化粧をしています。

トゲアリの女王アリが、同じトゲアリの女王アリを捕らえて、化粧をする意味はありません。もし、意味のある行動を取るとしたら、互いに殺し合うか、協力し合うか、無関心でいることでしょう。この無意味な行動を取らせているのは、彼らの本能なのでしょうが、この行動から考えられることは、トゲアリの本能の中に、宿主のオオアリの巣の中でトゲアリの女王アリ同士が出会うということは想定されていない(組み込まれていない)ということなのでしょう。

トゲアリの女王アリの採集匹数

これまでのトゲアリの女王アリの採集匹数をまとめておきましょう。いずれも同じ場所で採集しています。(最高気温/最低気温)

9月12日 7匹(内負傷2匹) 14:30〜16:00 (30.5/24.0℃)
9月13日 5匹 14:00〜15:00 (31.1/22.7℃)
9月14日 6匹 14:00〜14:30 (32.2/24.8℃)
(9月15日・16日 台風接近)
9月17日 5匹(内負傷2匹) 14:10〜14:25 (26.7/17.3℃)
9月19日 62匹(+クロヤマアリに襲われていた4匹、内1匹死亡) 11:00〜12:50 14:00〜15:40 (28.3/17.4℃)
9月21日 20匹(+羽蟻2匹) 10:00〜11:00 (29.2/18.2℃)
9月24日 26匹(+クロヤマアリに襲われて死亡した1匹) 9:00〜10:20 (29.6/19.6℃)
9月25日 6匹 6:30〜7:50 (30.1/20.5℃)

以上になります。記載のない日は採集に出かけていません。羽蟻や死亡した女王アリも合わせると198匹を採集したことになります。

翅を落とし損なったトゲアリの女王アリ

9月25日は、朝早くからいつものトゲアリの観察場所に行きました。実は、朝早く出かけるのはこれで2回目です。今回は6時30分ごろから7時50分ごろまで観察と採集を行ないました。
この日は、トゲアリの女王アリを6匹採集しました。

帰宅してしばらくしてから気付いたのですが、その内の1匹が、翅の一部を落としきれていませんでした。

左側の翅の一部が残っている

左側の翅の一部が残っている

なるほど、こんなこともあるのだなあ、と思いました。

ところで、この日の早朝もトゲアリの結婚飛行には出会えませんでした。早朝と言っても、もう6時半ごろですから、この地方のこの日の日の出時刻の5時42分からすると、もっと早い時刻に観察に行くべきだったのかも知れません。
ですから、断定はできませんが、2回早朝に出かけて思ったことは、この時期の早朝は少し涼しく、女王アリが飛ぶのは難しいのではないかと言うことです。クロオオアリやムネアカオオアリの女王アリの場合、地面から飛び立つことになるので、草に登ったりもしていますが、離陸に何回も失敗しながら、やっと飛び立つといった感じです。トゲアリの場合は、樹の洞などからの飛行になるでしょうから、オオアリとは離陸する場所の高さは違いますが、翅を盛んに動かすには、気温が高い方がよいでしょう。わざわざ、早朝を選んで結婚飛行に飛び立つ利点はないように思われます。

酒井春彦氏の文献によれば、結婚飛行は「午前6〜9時の間」ではないかと言うことです。また、結婚飛行は「樹冠の上で行なわれ、その後、幹を伝っておりてくる」のではないかとのことです。いつか、結婚飛行に出会して、真相を自分の目で見たいものです。

異常な個体差

クロオオアリやムネアカオオアリをまとまった数飼育していると、個体差について考えさせられることがあります。同じ条件で飼育していても、コロニーの大きさにかなりの程度差が出てきます。
ここではその中で、生命にかかわる異常な事例を挙げます。
ND4_0022

何か黒いものが見えますが、これは繭の中で死んでしまった蛹です。今年採集のクロオオアリの女王アリの飼育ケース内です。このクロオオアリの女王アリは、採集時に左の触角の鞭部の先端がありませんでした。しかし、子育ては順調にしていました。アリの場合、蛹が羽化する時には、働きアリが介助して誕生させます。必ずこの介助がなければ、羽化はできないのです。巣の創設時に、最初の働きアリが生まれる際には、働きアリはいないので女王アリが羽化の介助をしなければなりません。どうやら、この女王アリは、その介助ができないらしいのです。羽化の時期を迎えて、おそらく羽化できないままに死んでしまった繭を、1ヶ所に捨ててしまいます。それが上の写真なのです。9月2日には繭がいくつか残っていましたが、死んでいるはずです。

ND4_0019

 

触角が負傷していると先程書きましたが、触角を負傷している他の複数の女王アリではこのようなことはありませんでした。ですから、触角を負傷していることが原因だと考えるには無理があります。この女王アリは、本能から羽化の際の介助というプログラムが欠如していたのでしょう。

次は別の事例です。下の写真は9月24日に撮ったものです。

0924CON2003

 

黒っぽく大きく見えるのはクロオオアリの女王アリの死体です。その他には働きアリの死体が見られますが、全滅してからかなり経ちますので、全体にカビが生えています。この家族も今年採集した女王アリの家族でした。子育ても順調に行き、コンクリート製の人工巣に移して飼っていました。ところが、8月20日に気付いた時には、女王アリまでが死に、働きアリは5匹残されました。死因は明らかでした。糖分を全く受け付けなかったのです。特製の蜜を与えたのですが、この家族だけが全くその蜜を食べようとしなかったのです。

アリも食べ物については学習をしていきます。例えば、固形の砂糖粒を与えた場合、最初はそれを食べ物とはわからずに無関心なのです。砂糖も水分を含んで初めて甘いのです。というのは、固体には味はなく、液体になって初めて味があるわけです。ですから、舐めてみなければ味が分からないのですが、やがて、その固体を舐める者が出てきて、その砂糖粒が食べ物であることを知ります。そうして学習すると、次からは砂糖粒を見つけると、その場ですぐに舐めたり、舐めもしないのにくわえて仲間のところに運んだりするようになります。
特製の蜜は、液体ですから固体よりも早く食べられると気付くようです。最初は少し警戒しているようにも見えますが、やがてすぐに飛びつくようになります。この蜜には、アリにも分かる匂いがあるようで、蜜が近くで与えられたことを触角を立てて察知します。

話を元に戻しますが、この家族は、家族ぐるみで拒食状態でした。途中、砂糖粒を与えたこともありましたが、これも食べていなかったようです。単に食べ物の好き嫌いではないように思えます。
女王アリは6月16日に採集しており、それから2ヵ月強水分の他は何も口にしなかったことになります。働きアリは、8月上旬に生まれていますから、それから徐々に衰えていったことになります。とても残念に思います。

トゲアリの羽蟻との出逢い

21日は、10時ごろいつものトゲアリがいる野田山に着きました。
トゲアリの巣がある所から少し上に歩いた道端に、クロヤマアリの巣があります。クロヤマアリは盛んに巣を出入りしていて、昆虫の死体などを運び込んでいます。

クロヤマアリの巣口

クロヤマアリの巣口

ふと気付くと、その巣口から2m程離れたところで、蜂のような昆虫を運んでいるクロヤマアリがいました。もう死んでいるその蜂のような昆虫の触角をくわえて、1匹で重そうに引きずっていました。もしかしたら、その昆虫はトゲアリの女王アリなのではないだろうか、と思いました。運んでいるクロヤマアリごと手に取ってよく見ると、やはりトゲアリの女王アリでした。クロヤマアリは、とても素晴らしい宝物を運んできてプレゼントしてくれたのです。それは、10時38分ごろのことでした。

ND4_0564

死んだトゲアリの女王アリを運ぶクロヤマアリ

羽蟻は既に死んでいたとしても、何日も前に死んでいたとは思えませんでした。おそらく今日結婚飛行を終えたのではないだろうか、とっさにそう思いました。あたりを見てみましたが、他には見当たりません。
ところが、10時46分ごろ、そこよりほんの少し上へ歩いたところの林道のほぼ真ん中あたりに、まだ翅のある女王アリらしい昆虫がいました。

ND4_0655

翅は色が濃くて長く見える

トゲアリの女王アリです。やはり、今朝、結婚飛行に飛び立ったのでしょうか。

結婚飛行した日について、その可能性はあるのですが、それでも断定はできないように思えます。クロオオアリやムネアカオオアリの場合、結婚飛行のため巣から出てきた直後に採集して、交尾をさせないで飼育すると、いつまでも翅を落とさず、何日も生き続けます。つまり、トゲアリも同様だとすれば、交尾を済まさないと翅を落とさないので、今回見つけたトゲアリの女王アリは交尾をしていないことになるのですが、それでもある期間生き続けることができるのです。やはり、巣から飛び立つところを見なければ、結婚飛行の日を特定することはできないように思えます。

ただ、それは、この日見つけた2匹のトゲアリが結婚飛行に飛び立った日を特定できないと言うことであり、結婚飛行が、この日行なわれなかったと断定しているわけではありません。オオアリの場合も、ひとつの巣から何日かにわたって結婚飛行に飛び立ちます。トゲアリの場合もオオアリと同様なのかも知れません。同じ日に飛び立たない方が、リスクを分散できるからでしょう。

クロヤマアリに襲われるトゲアリの女王アリ

傷を負って地面を歩いていたトゲアリの女王アリをこれまでに4匹採集していますが、この日、襲われている現場に出会いました。
9月19日、午前・午後に渡って大量にトゲアリの女王アリを採集したその日の午前のこと、それまでによく採集していた道の反対側の側溝のところに、何やらたくさんのクロヤマアリがいました。特に群れているところを見ると、トゲアリの女王アリがいました。

クロヤマアリに襲われるトゲアリの女王アリ

クロヤマアリに襲われるトゲアリの女王アリ

更にほんの少し離れたところの3箇所でも、クロヤマアリに襲われているトゲアリの女王アリを見つけました。

上記の左側で

上記の左側で

更に左側で

更に左側で

側溝の壁でも

側溝の壁でも

下の写真では分かりにくいのですが、右、中央より少し左、左、溝の向こう側面の4箇所です。(一番右にも女王アリが映っていますが、これは襲われていません。)

拡大してご覧下さい

拡大してご覧下さい

トゲアリの女王アリは、地上を歩く際に、こんなリスクがあるのです。クロヤマアリに襲われれば、クロヤマアリは大きいアリですし、数も多いですし、とても機敏に動き回るアリですので、逃げ切れないのでしょう。
けれども私は、この4匹のトゲアリが、どの程度負傷しているかを調べるために、採集することにしました。そして、食い付いているクロヤマアリを摘み殺して、助け出しました。救出した時点で、1匹は瀕死の状態でした。後の3匹は無傷でした。

ところで、襲われていた女王アリの他にもこの1ヶ所で2匹を採集しましたので、少なくても6匹いたことになります。今朝この近くから女王アリが出てきたのかも知れません。この側溝には、上の写真でも分かるように、落ち葉がたまっていましたので、ひょっとすると、この落ち葉の中に潜んでいた女王アリが、朝から出てきているのかも知れません。そこで、この落ち葉の中を見てみることにしました。

落ち葉の中を見た後

落ち葉の中を見た後

けれども、トゲアリの姿はありませんでした。既に出てしまっていたのか、元々落ち葉の中にはいなかったのか、分かりませんでした。

トゲアリの女王アリを多数採集

本日19日に、トゲアリの女王アリを65匹採集しました。研究には必要以上の数になりましたので、希望の方に、有償としますが、お分けすることにしました。
採集の様子など詳しいことは、後日改めて書こうと思います。

トゲアリの女王アリをご希望の方は、こちらをご覧下さい。

トゲアリの女王アリをストック ! ?

今年の観察の中で、トゲアリの女王アリは、結婚飛行後、何日にも渡って、地上などを歩き回っているように思われるのですが、それだけのエネルギーの蓄積はあるのでしょうか。

クロオオアリやムネアカオオアリの女王アリのことを考えてみると、結婚飛行後に羽を落とし、ほとんどその日の内に簡易な巣を作り、およそひと月半程、水だけを摂取して子育てをします。この間のエネルギーは、効率良く使われていると考えられ、女王自身の生命維持と子育てに使われています。そのエネルギー源は、羽を落として不要となった胸部の筋肉であったりすると言われています。クロオオアリやムネアカオオアリの場合、およそひと月半以降に、外部から餌の摂取ができるようになると考えられます。

ところが、トゲアリの女王アリの場合は、コロニーの創設は寄生を以て始めるのですから、子育てのためや自分のためにエネルギー源を体に蓄積しておく必要がないことになります。けれども、トゲアリとて、結婚飛行のために使う筋肉はあるわけですから、エネルギー源の蓄積ではオオアリと差異はないと考えるのが自然でしょう。

ところで、1996年の8月号の『インセクタリゥム』に、酒井春彦氏が「トゲアリの生活」という小論文を寄稿しています。そこに「従来の研究からわかっていること」として、何点かの記述があるのですが、その中の一つに、このエネルギーのことに関係する項目があります。それは、「6)冬季採集で朽木の中や下から越冬中のメスが見つかっており、春になってから寄主の巣に入る可能性がある。」という記述です。

なるほど、そういう個体もあるとすれば、トゲアリのエネルギー源は、子育てに使わない分、自身の生命維持に使っていると考えられます。しかも、そのエネルギー源は、子育てに使わないからと言って少ないのではなく、長期間単独でも生き延びられるよう、十分に用意されていなくてはならないと言うことになります。

いずれにせよ、寄生生活をするにも関わらず、トゲアリの体に生きていく上の栄養が蓄積されているとすれば、オオアリの女王アリ以上に、水だけで長生きできると考えてよいでしょう。

以上のように考えて、まだ実験に使っていないトゲアリの女王アリが、実験をしない内に死んでしまうのではないかと心配していたのですが、かなりの間単独で飼育できそうです。

〈ストックするトゲアリの女王アリ〉
いずれも採集時、負傷していたトゲアリにしました。
T1:9月12日採集 右触角鞭節途中無し 右前脚伸ばせなくなっている
T2:9月12日採集 左後脚転節以下無し
T3:9月17日採集 左触角不自由
T4:9月17日採集 左後脚不自由

トゲアリの女王アリを働きアリだけの巣へ

トゲアリの女王アリを、女王アリがいるクロオオアリやムネアカオオアリの巣に入れての結果がほぼ出てきた日の翌日(16日)の夕刻から、新たな実験を始めました。
今度は、女王アリのいないクロオオアリとムネアカオオアリの働きアリの中へトゲアリの女王アリを入れます。既に、昨年の1例の観察や、既述の⑷(S/N:SIMSMA 01028)の例から、この場合は、トゲアリの女王アリは死なずに、働きアリの集団の中に入り込むであろうと予想できました。そこで、追加の実験をして検証することにしたのです。
ところで、どのようにして女王アリのいない働きアリだけの集団を得るかという問題がありました。これを解決したのが、コンクリート製の人工巣にセットしておいた「W拡張蓋」でした。

W拡張蓋

W拡張蓋

既にコンクリート製の人工巣にW拡張蓋を設置していましたので、それらの中から、適当な数の働きアリがこのW拡張蓋の中に入っているのを使いました。

⑥クロオオアリ(S/N:NESTCON 01001)28匹
⑦クロオオアリ(S/N:NESTCON 01004)23匹
⑧クロオオアリ(S/N:NESTCON 01005)29匹
⑹ムネアカオオアリ(S/N:NESTCON 01025)12匹 (注)15日ブログ記述の⑴と同一の巣
⑺ムネアカオオアリ(S/N:NESTCON 01029)17匹 (注)15日ブログ記述の⑵と同一の巣

トゲアリの女王アリを侵入させた直後の様子ですが、宿主の女王アリがいる場合との違いがありました。宿主に女王アリがいる場合は、かなり短時間に女王アリを見つけて攻撃を始めたわけですが、今回の実験には宿主の女王アリがいませんので、トゲアリは比較的長い間歩き回っていました。周囲の働きアリには気を留めていないようにも見えました。働きアリに関わるよりも、女王アリを探すことを優先しているかのようです。

この実験の18日正午ごろの様子は次のようです。(以下の動画は全て16日に撮影したものです)

⑥17日にはかなり攻撃を受けていて、18日には死んでいました。

CON1001W

侵入後19分後から30秒間の様子 働きアリを抱きかかえている

⑦17日には死んでいました。

CON1004W

侵入後14分15秒から30秒間の様子 攻撃を振り切って逃げる

⑧17日は攻撃を受けていないように見えました。18日には攻撃を受けながらも、働きアリを抱きかかえています。

侵入後19分15秒から30秒間の様子 体を舐められている

侵入後19分15秒から30秒間の様子 体を舐められている

⑹17日にはかなり攻撃を受けていましたが、18日には働きアリを抱きかかえていて、攻撃は受けていないようです。

CON1025W

侵入後6分30秒後から30秒間の様子 トゲアリは死んだかのようにじっとしている

⑺当初、働きアリが1匹殺されました。18日、トゲアリは自由に歩き回っています。

侵入後8分40秒後の様子 瀕死の働きアリが中央近くに見える

侵入後8分30秒後から30秒間の様子 瀕死の働きアリが中央近くに見える

既述の⑷(S/N:SIMSMA 01028)も自由に歩き回っていますし、昨年の1例も入れて考えると、トゲアリは7例の内5例でまだ健在だと言えます。割合としては7割ぐらいになります。現時点では、宿主に女王アリがいない時と比べると、高い確率で生存していることがわかります。

トゲアリの結婚飛行はなぜ秋口なのか?

トゲアリは、ここ野田山では、今年は9月12日には結婚飛行を終えていました。昨年は、9月28日に女王アリを1匹、地面を歩いているところを採集しています。ちなみに、クロオオアリやムネアカオオアリは、この野田山では、5月に結婚飛行をしています。
結婚飛行を行なう時期は、もちろん種によって違っているわけで、その適時にはそれぞれの要因があるのでしょう。トゲアリのついては、結婚飛行の時期について、良く耳にする通説があります。それは、「宿主のオオアリの活動が少し鈍る頃が、侵入するのに都合が良い」というものです。しかし、この間、トゲアリの女王アリを採集する中で、それは違うのではないかと思うようになってきました。

9月12日に初めてトゲアリの女王アリを7匹採集し、13日には5匹、14日には6匹、そして台風を挟んで17日には5匹採集しました。いずれも、午後2時頃から採集していますが、この時間帯に採集ができるということではなく、この時間帯で採集したということです。4日間にわたって、同一場所でほぼ同じ数採集できているのですが、このことは、12日以前にも採集できたと考えられますし、これからも採集できると考えられます。もちろん、結婚飛行は既に終わっているのです。ですから、この間も新たに結婚飛行をしているわけではないのです。それなのに、幅のある期間で採集できるということは、何日にもわたって、トゲアリの女王アリは、何かの目的を持って地上を歩き回っているのです。その目的とは、オオアリの巣を探すことでしょう。(トゲアリの女王アリの様子を観察すると、早歩きをしている時と窪みに頭部などを突っ込んでいる時があります。後者は、オオアリの巣穴を探しているかのように見えます。)

穴を探しているように見える

穴を探しているように見える

ところで、トゲアリの結婚飛行が真夏だとしたら、どうでしょう。とても暑い中で、特に地面はとても暑くなっているのです、そんな中で何日も歩き回ってオオアリの巣を探すとすれば、体力を消耗し、のどが渇き、命にかかわることです。ちなみに、社会寄生をしないクロオオアリやムネアカオオアリは、結婚飛行を済ますと、ほとんどの場合、その日の夕刻から新居の穴掘りを始めます。相手を探す必要がないので、自分で適当な場所を探せば良いわけで、何日も探し歩くことはないのです。
それでは、春の終わりから初夏にかけてはどうなのかということになるのですが、5月から6月にかけては、宿主のオオアリが結婚飛行をする時期に当たり、巣の入り口には羽蟻や働きアリが多く見られます。それを突破することができないではないでしょうが、トゲアリにとっても宿主の種の繁栄は願うべきところでしょう。撹乱の要因にならないのが得策です。また、梅雨に入れば、地面を歩き回るには不都合なことでしょう。だから、トゲアリの結婚飛行の時期は、夏が去っていく9月ごろからなのでしょう。

このように考えれば、うまく説明できそうなのです。秋口にトゲアリが結婚飛行をするのは、「探し回りやすい気候と宿主のオオアリの保護」が主因なのでしょう。ただ、このような説は、実証するのが困難なように思えます。何か、実証的な研究方法があればよいのですが。

蛇足ですが、宿主のオオアリの活動が鈍る頃は、トゲアリにとっても活動が鈍る頃のはずです。やはり、この説明には少し無理がありそうです。

トゲアリの女王アリはなぜ相手に傷を負わさずに死んでいくのか!

前回のブログの最後に、侵入したトゲアリを殺した巣のクロオオアリやムネアカオオアリの女王アリが無傷であったと書きましたが、それはなぜなのか少し気になっていました。
トゲアリの戦法が、相手の首に咬みつくことだから、と説明できるのですが、ではなぜそのような戦法になったのかという点を考えたいと思ったのです。
というもの、戦法としてはいろいろあってもよいのです。例えば、初めにオオアリの女王アリの触角を切断するとか、脚を切り落とすとか、いろいろありそうです。

そこで、こんな仮定をしてみましょう。トゲアリが敗北したとしましょう。ですが、オオアリの女王アリも深手を負ったとします。そして、深手を負った女王アリもやがて体が弱り、死んでしまったとします。この場合、トゲアリが子孫を残せなかっただけでなく、オオアリの巣もやがて消滅してしまいます。このことは、誰にとっての不都合かといえば、オオアリだけでなく、トゲアリ自身の不都合でもあるわけです。つまり、トゲアリは、後に続く仲間の寄生先を失うことになるからです。
このように考えれば、トゲアリとオオアリの戦いは、どちらかの完全勝利が望ましいということになります。そして、多くの場合、オオアリが無傷で完全勝利するのです。

トゲアリの強さについて

13日に実験を始めてから、今日(17日)で5日が経過しました。現時点で考えられることをまとめておきます。
以下は、トゲアリの女王アリの生死です。

①クロオオアリ(S/N:NESTCON 01021) 死亡
②クロオオアリ(S/N:NESTCON 01024) 死亡
③クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01016) 死亡
④クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01024) 闘争中
⑤クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01089) 死亡(クロオオアリの女王アリも死亡)

⑴ムネアカオオアリ(S/N:NESTCON 01025) 闘争中
⑵ムネアカオオアリ(S/N:NESTCON 01029) 死亡
⑶ムネアカオオアリ(S/N:SIMSMA 01007) 死亡
⑷ムネアカオオアリ(S/N:SIMSMA 01028) 生存
⑸ムネアカオオアリ(S/N:SIMSMA 01033) 死亡

上記の内⑤は、クロオオアリの女王アリは実験を開始する前から弱っていましたから、トゲアリの女王アリの方が優勢であったことは当然であるといえます。ですが、クロオオアリの女王アリが死んだ後で、トゲアリの女王アリも死んでしまいました。その死因はよくわかりません。とにかく、⑤は、データから外します。
⑷の場合は、元々ムネアカオオアリの女王アリは死んでいて働きアリだけでしたから、これもデータから外します。
すると、トゲアリとクロオオアリとの場合は、4例の内現時点では3例が死亡したことになり、死亡率は75%となります。
トゲアリとムネアカオオアリの場合は、これも4例の内現時点では3例が死亡したことになり、死亡率は75%となります。
つまり、クロオオアリの場合もムネアカオオアリの場合もほぼ同じで、トゲアリの死亡率は共に75%となります。
「トゲアリの女王アリは、その大多数がオオアリの女王アリとの戦いに破れる」という仮説は、サンプル数が絶対的に少ないとは言え、少しばかりなら、これらから説明ができるようになりました。まだ、現在闘争中の2例がありますから、それ次第では、100%の死亡率となるやも知れません。
ところで、トゲアリと戦ったクロオオアリやムネアカオオアリの女王アリは、負傷していないのでしょうか。上記の8例を見てみると、いずれも女王アリは負傷していません。無傷なのです。これは、トゲアリがクロオオアリやムネアカオオアリの女王アリの首をねらって咬みつくからなのでしょう。

トゲアリの女王アリは強いのだろうか? つづき

前回からの続きです。以下は、ムネアカオオアリの巣にトゲアリの女王アリが侵入した時の様子です。

⑴の様子
トゲアリの女王アリは、ムネアカオオアリの女王アリに食い付き、優勢でした。15日の夕刻にもまだ食い付いていて、依然優勢です。

ムネアカオオアリの女王アリの首に食い付いている

ムネアカオオアリの女王アリの首に食い付いている

⑵の様子
トゲアリの女王アリの侵入直後にムネアカオオアリの女王アリとの激しい戦いが起こり、トゲアリの女王アリは短時間で敗北しました。トゲアリの女王アリの方から、ムネアカオオアリの女王アリに近づいていきましたが、どちらから攻撃を始めたかわからないほどの瞬時に、取っ組み合いが始まり、初めからムネアカオオアリの女王アリの方が優勢でした。トゲアリの女王アリは、この日の内に死んだようで、15日には確かに死んでいました。

ムネアカオオアリの女王アリの方が優勢

ムネアカオオアリの女王アリの方が優勢

⑶の様子
トゲアリの女王アリは、ムネアカオオアリとの当初の戦いの中で、左前脚の転節以下を失いました。侵入してから1時間経たない内に、トゲアリはかなり劣勢となっていて、働きアリに取り囲まれて攻撃を受けていました。15日には死んでいました。

SIM1007s3.5

侵入後の20分間の様子を3分50秒に編集した動画です

⑷の様子
このムネアカオオアリの巣は、巣作り2年目になる今年の6月に女王アリが死んで、働きアリのみとなっていました。ですから、女王アリ同士の戦いはないのですが、死んだ女王アリの死体はそのままにしていましたので、その死体にトゲアリがどんな反応を示すかは関心事の1つでした。トゲアリは侵入すると、働きアリを捕らえて、働きアリの体表の分泌物を前脚の刷け状の器官でふき取って、自分の体に塗り付けていました。ただ、死んでいる女王アリには、全く関心を示しませんでした。

1分間の動画です

1分間の動画です

⑸の様子
トゲアリの女王アリは、巣のケースの中に入る前に、フィルムケースの中に入ってきた働きアリを捕らえて殺しました。ムネアカオオアリの女王アリとの戦いは30秒強で終わり、トゲアリは、右の前脚を負傷し、不自由になりました。この後は、両者共に相手を避けるようにしていました。これは夕刻の出来事ですが、同日の深夜には、トゲアリは倒れて僅かに脚をピクピクさせていました。15日には既に死んでいました。

SIM1033s3.3

侵入直後の3分30秒の動画です

トゲアリの女王アリは強いのだろうか?

昨年採集したトゲアリの女王アリは、ムネアカオオアリの女王アリとの戦いで敗れ、死んでしまいました。この戦いでは、ムネアカオオアリの女王アリは無傷でした。では、トゲアリの女王アリは、どの程度強いのでしょうか。

一時的社会寄生をするトゲアリは、オオアリの女王アリとの戦いで勝つことで、家族を創設することができます。そして、オオアリの巣を乗っ取れば、他のアリのような家族の創設時に死滅することはほぼないと考えられます。そこで、圧倒的にトゲアリの女王アリが強いとすれば、トゲアリの女王アリの数だけ、トゲアリの巣ができることになりますが、実際にはそうはなってはいません。
ですから、トゲアリの女王アリは、その大多数がオオアリの女王アリとの戦いに破れると考えられます。これが、今回の実験に当たっての仮説となります。

12日に引き続き、13日には、前日5匹を採集した同じ場所で、午後2時半頃から3時頃までの半時間の間に、新たにトゲアリの女王アリ5匹を採集しました。以下の実験に使ったのは、この両日に採集した体が負傷していない10匹のトゲアリの女王アリです。また、クロオオアリとムネアカオオアリの家族は、いずれも2012年に女王アリを採集した2年目のコロニーです。

①クロオオアリ(S/N:NESTCON 01021) 13日 18:15に入れる
②クロオオアリ(S/N:NESTCON 01024) 13日 09:50に入れる
③クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01016) 13日 16:30に入れる
④クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01024) 13日 17:45に入れる
⑤クロオオアリ(S/N:SIMSMA 01089)女王アリ弱っている 13日 18:00に入れる
⑴ムネアカオオアリ(S/N:NESTCON 01025) 13日 15:45に入れる
⑵ムネアカオオアリ(S/N:NESTCON 01029) 13日 18:30に入れる
⑶ムネアカオオアリ(S/N:SIMSMA 01007) 13日 11:45に入れる
⑷ムネアカオオアリ(S/N:SIMSMA 01028)6月18日女王アリ死亡 働きアリ21匹 13日 13:30に入れる
⑸ムネアカオオアリ(S/N:SIMSMA 01033) 13日 17:20に入れる
※「NESTCON」はコンクリート人工巣 「SIMSMA」は簡易小型飼育器アンテキューブ

①の様子
トゲアリの方が優勢と思われましたが、15日には巣穴の外で死んでいました。

働きアリを捕らえています

働きアリを捕らえています

女王アリを背後から襲っています

女王アリを背後から襲っているところ

②の様子
トゲアリの方が優勢と思われましたが、15日には巣穴の外で死んでいました。

出会った働きアリと極短時間組み合っていた

出会った働きアリと極短時間組み合っていた

クロオオアリの女王アリの首に側面から食い付いている

クロオオアリの女王アリの首に側面から食い付いている

③の様子
クロオオアリの巣に侵入後、働きアリの攻撃を受けて、身動きが自由に取れないでいました。10分ほど経ってやっと女王アリの首に咬みつきました。しかし、同日の深夜には明らかに敗北していて、仰向けになって脚をぴくぴくとけいれんさせていました。

2本の脚に噛みつかれていて、自由に動けない

2本の脚に咬みつかれていて、自由に動けない

クロオオアリの女王アリの首に噛みついたところ

クロオオアリの女王の首に咬みついたところ

④の様子
トゲアリの女王アリは、ほとんど障害なくクロオオアリの女王アリの首に咬みつきました。15日の夕刻でもトゲアリの女王アリは無傷で、クロオオアリの女王アリから離れ、歩いていることもありました。その際、働きアリからの攻撃はないようでした。その後で、またクロオオアリの女王アリの首に咬みつきました。クロオオアリの女王アリはまだ生きています。

3分間の動画です

侵入後の16分間の様子を3分間に編集した動画です

⑤の様子
この巣の女王アリは、原因が不明ですが、大変弱っていて、そのままにしておいても、数日で死んでしまいそうでした。この巣の中にトゲアリの女王アリを入れました。トゲアリは、ほとんど障害なくクロオオアリの女王アリの首に咬みつきました。15日の夕刻には、既にクロオオアリの女王アリは死んでいました。トゲアリは無傷で、時々働きアリに咬まれていましたが、特に反撃はしていませんでした。働きアリたちは、死んだ女王アリを囲んで、その体を舐めていました。

2分間の動画です

侵入後の6分間の様子を2分間に編集した動画です

(次回につづく)

トゲアリの女王アリとの再会

昨年、自宅の近くの野田山で、偶然にもトゲアリの女王アリを見つけたのは9月28日でしたから、もうそろそろあれから1年になります。今年こそは、たくさんの女王アリを採集しようとこの季節が来るのを心待ちにしていました。まだ結婚飛行には少し早いだろうと思いながらも、トゲアリの巣がある場所へと出かけました。
いつもの樹の洞を見てみると、今年の5月にはトゲアリが群がっていたのですが、その時と比べると僅かしか群がっていません。

ND4_0033

トゲアリがいた3本の樹の内、道の下方にあるC巣

別の樹の洞を見ると、ここには全くいないようです。

ND4_0039

トゲアリがいた3本の樹の内、道の中ほどにあるB巣

更に別の樹を見ると、やはり僅かに群がっている程度です。

ND4_0040

トゲアリがいた3本の樹の内、道の上方にあるA巣

結婚飛行の季節を直前にして、たくさんのトゲアリが群がり、羽蟻がその中にたくさんいるのではないか、と思っていたので、いやな思いがよぎりました。「ひょっとしたら、もう結婚飛行が終わってしまったのかも知れない。今年は、昨年と比べてずいぶんと早かったのであろうか。」 そして、クロオオアリとムネアカオオアリの結婚飛行の場合も、今年は例年よりも1週間から2週間程早かったのを思い起こしました。

もし、結婚飛行が終わってしまっていたとしても、とにかく注意深く地面を見ることにしました。すると、まもなく、A巣がある樹の近くの地面で、早歩きをしている少し小柄な光沢のある蟻を見つけました。

ND4_0124

トゲアリの女王アリです。午後2時半頃のことでした。近くに他にもいるかも知れないと思い、探すことに。すると、この場所の少し上方で更に4匹もの女王アリを見つけることができました。

A巣のある樹より上方に5〜6m程離れたところ

A巣のある樹より上方に5〜6m程離れたところ ここで4匹の女王アリを見つけた

他にも、ここから少し上方へ歩いたところで1匹を、下方に歩いたところで1匹を採集し、この日は4時頃までに合わせて7匹を採集しました。

やはり、トゲアリは結婚飛行を終えていたのです。雄アリの死体なども見出せませんでしたので、それがいつであったかを推測できるような痕跡はありませんでした。ところで、採集した7匹のトゲアリの女王アリの内、A巣より離れた別々の場所で採集した2匹は、負傷を負っていました。1匹は、右前脚を失ってはいないものの不自由になっていました。もう1匹は、左後脚の転節以下を失っていました。既に戦いがあったのでしょうか。

左後脚の転節以下を失っている

左後脚の転節以下を失っているトゲアリの女王アリ