日別アーカイブ: 2013年9月24日

異常な個体差

クロオオアリやムネアカオオアリをまとまった数飼育していると、個体差について考えさせられることがあります。同じ条件で飼育していても、コロニーの大きさにかなりの程度差が出てきます。
ここではその中で、生命にかかわる異常な事例を挙げます。
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何か黒いものが見えますが、これは繭の中で死んでしまった蛹です。今年採集のクロオオアリの女王アリの飼育ケース内です。このクロオオアリの女王アリは、採集時に左の触角の鞭部の先端がありませんでした。しかし、子育ては順調にしていました。アリの場合、蛹が羽化する時には、働きアリが介助して誕生させます。必ずこの介助がなければ、羽化はできないのです。巣の創設時に、最初の働きアリが生まれる際には、働きアリはいないので女王アリが羽化の介助をしなければなりません。どうやら、この女王アリは、その介助ができないらしいのです。羽化の時期を迎えて、おそらく羽化できないままに死んでしまった繭を、1ヶ所に捨ててしまいます。それが上の写真なのです。9月2日には繭がいくつか残っていましたが、死んでいるはずです。

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触角が負傷していると先程書きましたが、触角を負傷している他の複数の女王アリではこのようなことはありませんでした。ですから、触角を負傷していることが原因だと考えるには無理があります。この女王アリは、本能から羽化の際の介助というプログラムが欠如していたのでしょう。

次は別の事例です。下の写真は9月24日に撮ったものです。

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黒っぽく大きく見えるのはクロオオアリの女王アリの死体です。その他には働きアリの死体が見られますが、全滅してからかなり経ちますので、全体にカビが生えています。この家族も今年採集した女王アリの家族でした。子育ても順調に行き、コンクリート製の人工巣に移して飼っていました。ところが、8月20日に気付いた時には、女王アリまでが死に、働きアリは5匹残されました。死因は明らかでした。糖分を全く受け付けなかったのです。特製の蜜を与えたのですが、この家族だけが全くその蜜を食べようとしなかったのです。

アリも食べ物については学習をしていきます。例えば、固形の砂糖粒を与えた場合、最初はそれを食べ物とはわからずに無関心なのです。砂糖も水分を含んで初めて甘いのです。というのは、固体には味はなく、液体になって初めて味があるわけです。ですから、舐めてみなければ味が分からないのですが、やがて、その固体を舐める者が出てきて、その砂糖粒が食べ物であることを知ります。そうして学習すると、次からは砂糖粒を見つけると、その場ですぐに舐めたり、舐めもしないのにくわえて仲間のところに運んだりするようになります。
特製の蜜は、液体ですから固体よりも早く食べられると気付くようです。最初は少し警戒しているようにも見えますが、やがてすぐに飛びつくようになります。この蜜には、アリにも分かる匂いがあるようで、蜜が近くで与えられたことを触角を立てて察知します。

話を元に戻しますが、この家族は、家族ぐるみで拒食状態でした。途中、砂糖粒を与えたこともありましたが、これも食べていなかったようです。単に食べ物の好き嫌いではないように思えます。
女王アリは6月16日に採集しており、それから2ヵ月強水分の他は何も口にしなかったことになります。働きアリは、8月上旬に生まれていますから、それから徐々に衰えていったことになります。とても残念に思います。