月別アーカイブ: 2014年4月

ダニ

アリの巣の中にはしばしばダニがいます。昆虫の食べ残しがあれば、ほとんどの場合、そこにはダニがいると思ってもよいでしょう。肉眼では気付かないことが多いのですが、実体顕微鏡などを使えば、はっきりとその姿をとらえることができます。

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実体顕微鏡でとらえたダニの姿

このダニは、ほとんど自然発生をして現れたかのように思えます。実際には、餌として与える昆虫のどこかについているのでしょう。このダニの発生は防ぎようがありません。大量に発生させないためには、昆虫を食べ残さないよう少なめにアリに与えること、食べ残しているようなら、早めに取り出すことです。

上の写真は、死んで干からびたクロオオアリの幼虫に付いていたダニです。この1つ前のブログ(「クロオオアリの不可解な行動」)の下の写真の左上に写っている幼虫が、その死んでいる幼虫です。このように、このダニは、クロオオアリやムネアカオオアリの死んだ幼虫や卵にもついていることがあります。

以前、クロオオアリに少し大きめのガの幼虫を与えたところ、働きアリたちがその幼虫を巣穴の中に運び込み、そのまま腐敗したことがありました。この時、実に大量のダニが発生し、極く小さな白っぽい点が死んだ幼虫の周りにいっぱい見られました。この状況は、かなりの時間をかけてなくなりました。

ダニといえば、寄生性のものを思い浮かべますが、ダニ目の大部分は寄生性はありません。このダニも、アリには危害を与えていないようで、死んだ昆虫を食べる腐食性と思われます。ひょっとしたら、アリの餌になっているかも知れません。また、人間にも危害を与えないようですから、アリを飼育する上で、健康上特別に配慮することはないようです。

クロオオアリの不可解な行動

昨日、クロオオアリのコロニーで、今までに見たことのない行動が観察されました。
1匹の大きく育った幼虫の体を何匹もの働きアリが盛んに咬んでいました。舐めているのではありませんでした。

女王アリも咬んでいます

女王アリも咬んでいます

女王アリも同じく幼虫を咬んでいました。咬まれても幼虫は痛そうではなく、口や尻から体液を出したりはしていませんでした。また、咬まれても体膜が破れるということもなく、したがって傷口が開き体液が出てくるということもありませんでした。

この行動は、気付いた時点からでもおよそ1時間程度続きました。いったい何のための行動なのでしょうか。

しばらくするとこの行動はなくなりました。次の日(本日)見てみると、この幼虫は極く普通に他の幼虫と同じように置かれていて、生きているようです。

右上の幼虫が昨日咬まれていた幼虫

右上の幼虫が昨日咬まれていた幼虫

不可解な行動でした。

その後の蜜作り

2013年の4月16日のブログで、新たに考えた蜜について書きましたが、それ以後、さらに新しい蜜を使っています。

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以前と違う点は、トレハロースを加えたことと、黒砂糖の代わりに黒みつにしたことです。
トレハロースというのは、動物ではエビや昆虫類に含まれています。バッタ、イナゴ、蝶、ハチなど多くの昆虫の血糖はトレハロースです。分解酵素・トレハラーゼによってブドウ糖(グルコース)に変えて利用しています(Wikipediaに拠る)。カブトムシ用などの昆虫ゼリーにはこのトリハロースが含まれているようです。

作り方ですが、入れ物としてフィルムケースを用意し、この中にグラニュ糖(商品名:「ヨーグルト用のお砂糖」)とトレハロース(商品名:「トレハ」)を入れ、少量の水で溶かします。これに黒みつや蜂蜜、メープルシロップを加えますが、それぞれ分量は適当でよく、加える順序も適当です。最後にローヤルゼリーを加えて、ローヤルゼリーが満遍に溶け込むようにします。これで完成です。

蜜をアリに与える時には、シリンジ(注射器)を使います。作り置きの蜜は、冷蔵しておきます。

昆虫がほぼ姿を消す晩秋から春になるまで、この蜜のみを与えてきました。春先からクロオオアリやムネアカオオアリの幼虫が成長し始めましたが、昆虫を与えなくても、大きく育ちましたので、この蜜を養分にして幼虫が育ったとも考えられます。ただ、対照実験をするなど、厳密に検証したわけではありませんので、この蜜の効用については断定はしないでおきます。

羽化までの日数(月数)

前回のブログで、クロオオアリのコロニーで羽化が始まったことを書きましたが、この羽化した働きアリが卵で生まれたのはいつごろだったのでしょうか。

このことを実証するのに、ちょうどよいサンプルがあります。ここではムネアカオオアリの写真を用意しましたが、クロオオアリの場合にも同じことが言えます。

NESTCON01025のトゲアリの巣

NESTCON01025のトゲアリの巣 この巣から働きアリの羽化までの日数(月数)がわかります

この巣は、昨年トゲアリの女王アリがムネアカオオアリの巣に寄生したコロニーです。たくさんのムネアカオオアリの繭と幼虫があります。この巣にトゲアリの女王アリが侵入したのは、昨年の9月13日でしたから、それ以後はムネアカオオアリの女王アリは産卵していないことになります。
つまり、今いる繭や幼虫は、それ以前に生まれていたということになります。短く見ても、9月13日から今現在まで、およそ7ヶ月以上かけて繭(蛹)になっているのです。この巣でも、もうそろそろ羽化が始まると思いますので、働きアリの卵・幼虫・蛹の期間が7〜8ヶ月ということになります。とても長く感じます。

ちなみにこの春に産卵された卵は、比較的早く成虫になると考えられます。これについては、今後の観察が待たれます。

羽化開始

2010年6月8日採集のクロオオアリの巣では、羽化が始まったようです。3月3日に巣全体で4個の繭を観察していましたが、その後、なかなか羽化を確認できませんでした。
本日、繭の抜け殻が初めて観察できましたので、羽化が始まったことがわかりました。

繭の抜け殻

繭の抜け殻

ちなみに、この春産卵された卵もたくさん見られます。

卵

餌用に昆虫を採集する

昨年の10月1日のブログで、昆虫を捕獲するのに「シュアー捕虫器 MC-24MB」を購入したことを書きましたが、今年も少し前から使い始めていました。
この捕虫器に最初にガが入ってきたのは、4月5日のことでした。捕虫器の設置場所は、屋根だけある自転車置き場で、庭ではありませんので、周りに生き物がたくさんいるわけではありませんから、別の場所だともっと早い時期からガが採集できたかも知れません。
まだまだ、採集できる昆虫の数は少ないのですが、蚊が比較的多く入ってくることに気付きました。

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蚊はどれも雌です。蚊の越冬について調べてみると、アカイエカの場合、雌のみが成虫で越冬するようです。なるほど、採集の結果と一致しています。

トゲアリ 残りの3個体も産卵

15日にトゲアリの飼育環境を変えたことを書いたばかりですが、その翌日の16日、小型簡易飼育器の「アンテキューブ」で飼っていた「SIMSMA01024」「SIMSMA01028」「SIMSMA01043」の3個体が産卵を始めました。これで産卵していないトゲアリは「SIMSMA01089」の1個体のみとなります。

SIMSMA01024

SIMSMA01024

SIMSMA01028

SIMSMA01028

SIMSMA01043

SIMSMA01043

産卵を始めた3個体を含む4個体は、コンクリート製の人工巣と繋げはしたものの、まる2日経ってもいっこうにコンクリート製の人工巣へ引っ越ししようとはせず、アクリル製の人工巣の中に留まっています。

飼育環境を変えた次の日に産卵を始めたのですが、環境の変化との因果関係はなさそうです。もともと、次の日から産卵を始めたのでしょう。

ルリアリは大家族に

昨年(2013年)の6月9日のブログで、5月17日に庭で採集したルリアリの家族のことを書きましたが、それから順調に家族が増えていきました。

採集した時は働きアリもわずかでしたが、既に昨年から働きアリの数を数えることができないほど、大家族になっています。

写っているのはほんの一部

写っているのはほんの一部

ただし、今も小型簡易飼育器の「アンテキューブ」で飼っています。大家族になったとは言え、ルリアリはとても小さなアリなので、まだまだアンテキューブ単独で十分なのです。

餌は蜜と昆虫を与えていますが、特に昆虫が好きなようで、適度な大きさの昆虫だと食べ残すことがありません。

トゲアリの飼育環境を変える

4月2日のブログ「トゲアリの女王アリが産卵」で、7匹のトゲアリの女王アリの内、3匹が産卵を始めたことを報告しました。その後の卵の様子ですが、2週間以上経った15日現在も孵化していないようです。

後の4匹のトゲアリの女王アリですが、依然として産卵をしていません。産卵した女王アリと産卵していない女王アリの環境の違いで、第一に思い当たるのが、前者はコンクリート製の人工巣で、後者はアクリル製の人工巣だという点です。第二に思い当たるのは、前者は比較的コロニーが大きく、後者は比較的コロニーが小さいという点です。(前者は2011年採集が2コロニー、2012年採集が1コロニー、後者はいずれも2012年採集の4コロニー)

産卵の有無の要因を考察するにはサンプル数が少なく、また、今回はその点の対照実験を意図していなかったので、何とも言えませんが、環境を変えるとひょっとしたら産卵を始めるのではないかということで、産卵をしていない女王アリのコロニーをコンクリート製の人工巣に移すことにしました。ただ、強制的に移すと思わぬ影響や事故が起こる可能性があるので、自然に引っ越しする方法をとりました。

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左からSIMSMA01028、SIMSMA01089、SIMSMA01043、SIMSMA01024 どれも穴で下部に繋がっています

試しに、2つはコンクリートの部分を暗くしました。しかし、夜になっても4つともに引っ越しはしていません。昨年来の栖の方がお気に入りのようです。

食物の貯蔵とリサイクル

どうやらアリの世界では、共食いは常識?の文化らしいのです。

2010年6月から飼い始めているクロオオアリの家族は、コロニーもかなり大きくなり、まだ羽化はしていないものの、たくさんの繭が見られるようになりました。また、繭も幼虫もかなり大きいものがあります。
この巣で、もう1ヶ月ほど前からでしょうか、働きアリの死骸が目立つようになりました。
この死骸は、明らかに食べられた後です。

まだ形はのこっていますが、体の中は空洞です

まだ形は残っていますが、体の中は空洞です

とてもたくさんの分割された死骸

とてもたくさんのバラバラの死骸

仲間のアリ以外にアリを食べるものはいませんから、やはり仲間のアリが食べたとしか考えられません。そこで、普通はせめて仲間が死んだので食べたと思いたいところですが、実はそうではないようなのです。

あちこちで、まだ生きている仲間に食いついている働きアリがいます。食いつかれている方のアリは、抵抗していません。たまにピクリとしますが、それは強く咬みつかれた時のようです。

1匹を取り囲んでいる

1匹を取り囲んで食いついている

ムービーでご覧下さい

こちらはムービーでご覧下さい(2分)

この行動は、違う巣の働きアリを他の巣に入れた時とよく似ています。入れられたアリは、取り囲まれて体をなめられたり食いつかれたりしますが、そのアリはほとんど抵抗しません。そのうちに食べられてしまいます。

この同じ巣の仲間を食べるという行動をどう考えたら良いのでしょうか。この時期、確かにたんぱく源はないので、その補充をしているとすれば、この「アリ食いアリ」の行動は意味あることになります。

実証的に観察をしたわけではないのですが、私は次のように考えています。
ほぼ寿命を迎えた働きアリは、他の個体から何らかの信号で区別されるようになります。例えば、その家族特有の分泌物に変化が起きるのかも知れません。そうした信号で区別され、仲間の働きアリに、食べるという行動を促すのです。
春先に起こる行動とは限らないのですが、この時期は特に「アリ食いアリ」の行動は意味がありそうです。なぜなら、幼虫はこの時期にとてもたくさん育つのですが、まだたんぱく源は狩りができない時期だからです。
冬からの蓄えは、腹部に貯蔵している主に糖分と考えられます。そこで、クロオオアリやムネアカオオアリの世界では、糖分は腹部に貯蔵し、もう一方の栄養であるたんぱく源は生きた働きアリの体で貯蔵していると考えてはどうでしょうか。これほど新鮮なたんぱく源はこの時期他になく、しかも、これはある意味で完全な食物のリサイクルとなるのです。古い家族の個体が、次の世代の栄養源になる、人間の世界に置き換えて考えなければ、なんとも合理的に営みです。

ですが、この仮説が、アリの世界にとって合理的なものと考えるには、食される働きアリが、ほぼ寿命を迎えた働きアリであることを実証する必要があります。そのためには、個体を区別するために羽化後に何らかの印をつける必要があり、働きアリの平均寿命がわかっていて、生きている期間その印が消えないようにしておく必要があります。働きアリの寿命はだいたい2〜3年ぐらいのように思いますが、その間、印が消えないようにするにはどうすれば良いのでしょう。なんとも、これはお手上げです……。

2014年 新女王アリ 予約受付開始

新春恒例企画  クロオオアリ・ムネアカオオアリの2014年新女王アリ 予約受付開始!

ご提供価格
クロオオアリ1200円/匹
ムネアカオオアリ1500円/匹
送料着払い(送料別)

2014年5月下旬から6月中旬に採集する予定です。 採集後すぐにお送りいたします。子育ての初めから観察できます。

販売条件:

①採集できる女王アリの個体数は、年によって大きく変動します。予約順で配付致しますので、お届けできない場合もございます。(ムネアカオオアリの女王アリの方は、個体数が少なくなる見込みです。)

②人工飼育におけるクロオオアリとムネアカオオアリの女王アリの生存率はそれぞれ87%と80%、子育て成功率(働きアリが1匹でもいる家族の割合)はそれぞれ73%と74%(2012年採集のクロオオアリ56匹、ムネアカオオアリ35匹のデータ 交尾から80日経過時点)です。したがって10匹の内3匹弱は、子育てに失敗する可能性があります。このことをご了承の上お申し込み下さい。更に詳しくは、こちらをご覧下さい。(2013年採集のデータはこちらですが、2012年のデータの方が、今年の採集条件に近くなる予定です。)

③プラスチック製のクリーンカップに脱脂綿を敷いた状態でお届けいたします。この容器のままで、最初に働きアリが羽化するまで飼育できます。

④届いた時点、あるいは届いた日を入れて3日以内に女王アリが死んだ場合は、電話またはメールにてご連絡下さい。送料無料で女王アリをお送りいたします。但し、お買い上げの個体数を上限に1回のみと致します。(例:3匹お求めで、届いた日を入れて3日以内に3匹とも死んだ場合、日をまたがっても、3匹まで送料無料で女王アリをお送りいたします。)

⑤女王アリを採集した時点で、メールにてお知らせ致します。ご入金が確認でき次第、送料着払いにて順次発送致します。(ゆうちょ銀行へのお振込となります。振込手数料をご負担下さい)。

⑥予約のお申し込みは、こちらでお受け致します。

トゲアリの女王アリが産卵

昨年、クロオオアリやムネアカオオアリの巣に侵入し、寄生が成功していた7匹のトゲアリの女王アリの内、3匹が産卵を始めました。この3匹は、NESTCON01001とNESTCON01025とNESTCON01030で、いずれもコンクリート製の人工巣に寄生したトゲアリです。

初めて気付いたのは3月31日ですが、その前から産卵が始まっていたと思われます。29日と30日は外出していましたし、その直前の数日間も忙しくしていましたから、気付かなかったとも考えられます。4月2日時点で、卵の数は20個から30個はあるようです。

NESTCON01001 クロオオアリの巣

NESTCON01001 クロオオアリの巣

NESTCON01025 ムネアカオオアリの巣

NESTCON01025 ムネアカオオアリの巣

NESTCON01030 クロオオアリの巣

NESTCON01030 クロオオアリの巣

昨日(4月1日)、昨年トゲアリの女王アリをお分けした方から、メールがありました。
「昨年頂いたトゲアリを女王アリがいなくなったクロオオアリのコロニーに投入して6か月が経ちました。コロニーは順調に生育し、先日、少ないですが産卵しました。ワーカーは1匹も死んでおらず、トゲアリも非常に元気な様子です。」
とても嬉しい知らせです。順調にコロニーが大きくなればと思います。