「私が住むこの辺りでは、クロオオアリやムネアカオオアリの結婚飛行の時期が訪れている」(5月16日ブログ)ので、今年こそは、この近辺で女王アリの採集を試みることにしていました。
これまで、しばしば観察に出かけていた「野田山」は、上水道タンクの新設工事のため、山への入り口で通行止めになっていて、入れません。また、クロオオアリの巣がある市内中心部の公園の主要な部分は、造成工事中で、立ち入ることができません。そこで、市街地にある小山(通称「水道山」)に出かけることにしました。
この山には園地もあり、私の子どもが小さい時に時々利用していたこともありましたが、もうずっと長い間、訪れていませんでした。まずはクロオオアリやムネアカオオアリが棲んでいるのかを確かめることから始めました。これは、この山に登り始めるとすぐにわかりました。クロオオアリがいました。しかし、しばらく歩いても、巣を見つけることはできません。それほど、クロオオアリが多く棲んでいるようではありませんでした。
ところが午後2時半ごろになって、クロオオアリの巣を1ヶ所見つけることができました。小高くなった所にある休憩舎の横の壊れたベンチの近くでした(標高102m)。
巣穴から顔(頭部)を出して外を伺っている羽アリの女王アリ
巣穴をのぞき込んでみると、雄アリや翅のある女王アリがいることがわかりました。まだ、結構飛行を終えていないようです。新女王アリを採集できることがわかり、期待が膨らみました。
辺りを探してみると、先ほど通り過ぎた所にも巣があることがわかりましたし、また別の所にも巣がありました。
それから、10分ほどして、女王アリが巣から出てくるところを見ました。ただし、たった1匹だけで、後に続くものはなく、飛び立ちました。
やがてこの1匹だけで飛び立ちました
それから10分ほど経つと、どこの巣でも羽アリが巣穴から出てくるようになり、3時半から4時ごろにかけて、最も盛んに羽アリが飛び立ちました。
たくさんの羽アリが地上に出てきました
草によじ登って、飛び立とうとしています
意外なことに、この時間になって、それまで気付かなかったところからも羽アリが出てきました。確かに、そこにも見落としていた巣穴がありました。結構な数の巣がこの狭い一角にあったのです。
いよいよ、新女王アリの採集です。辺りをくまなく探してみましょう。最初に見つけたのは、4時20分ごろで、新女王アリとなって翅を落として地面を歩いていました。
新女王アリの誕生です
ところで、この一角にある複数の巣から飛び立った女王アリの数を推測することはできませんが、はたしてそのうち何匹を採集することができるでしょうか。
その際、気になるのは、羽アリがどの程度まで飛んでいくのかという点ですが、わたしにはよくわからないのです。ですが、それほど遠くへは行かない思っていて、飛び立った巣の極く近くに降りて来る個体もあると考えています。
ただ、たとえ近くに降りてきた女王アリがいたとしても、採集するにはあまりにも困難があります。地面が道や開けた草の少ない場所でないと、歩いている新女王アリを見つけることはできません。そうした見つけやすい地面の割合は普通は極く少なく、ほんのわずかな数の新女王アリしか見つけられないのです。
この日は、結局1匹と10匹を採集しました。
右の1匹は一回り体が小さい
この内10匹がクロオオアリなのですが、1匹はクロオオアリではありません。ムネアカオオアリの女王アリだと思われますが、一回り体が小さいのです。このサイズのムネアカオオアリの女王アリは、これまでに見たことがありません。女王アリの場合には、さほど大きさに個体差はないように思うのですが……。
なお、これら11匹は、研究用に飼育することにしています。