日別アーカイブ: 2014年6月18日

子育ての経過

今年採集した女王アリの子育ての経過を記録しておきましょう。

★クロオオアリ

5月19日採集
○ 5月22日以前 産卵開始
○ 6月12日以前 幼虫へ孵化

 

6月12日

6月12日 クロオオアリ

○ 6月18日以前 蛹へ蛹化

6月18日

6月18日 クロオオアリ

5月28日採集
○ 6月1日以前 産卵開始
○ 6月18日以前 幼虫への孵化が始まる

6月2日・3日採集
○ 6月18日 孵化なし

★ムネアカオオアリ

5月28日・29日・30日採集
○ 6月1日以前 産卵開始
○ 6月18日以前 幼虫への孵化が始まる

6月2日・3日採集
○ 6月18日 孵化なし

以上の記録と、実際に観察したことから、次のようにまとめることができます。
○ 産卵は交尾後、翌日から始める個体もあり、交尾の日を入れて4日以内には、ほぼ産卵が始まる。
○ 20日前後で孵化する。
○ 1週間程度で蛹化する。

孵化するまでにはかなり時間がかかっていますが、孵化してから蛹化するまでの幼虫の期間は、短いことがわかります。

女王アリは、エアコンを使っている部屋で育てています。気温が高ければ、より早く孵化・蛹化するのではないかと思いますが、対照実験はしていませんので、あくまでも気温については予想に過ぎません。

寄生虫 その後

6月7日のブログ「女王アリの死因を考える」で触れた寄生虫ですが、その後、ムネアカオオアリの腹部から抜け出し、容器内を盛んに這い回るようになりました。

容器内を這い回る寄生虫

容器内を這い回る寄生虫

ところで、2体の内1つを見ると、女王アリの死体にカビが生えているようでした。

カビが生えているように見える

カビが生えているように見える

けれどもこれは、カビではなかったのです。実体顕微鏡で見ると、無数の半透明な細長い生き物が動いていました。ムネアカオオアリの腹部から抜け出した寄生虫が蛹になっているようでしたが、この蛹にもこの細長い生き物が付いていました。

湯気が立ち上っているようにも見える

湯気が立ち上っているようにも見える

これは、寄生虫よりも更に小さな生き物で、もはや昆虫でもなさそうです。私は、気持ちが悪くなり、ケースを丸ごと処分しました。

幸い寄生虫がいるもう1体には、このとても小さな生き物は発生していませんでした。この寄生虫の正体を知るには、残った1体だけで十分です。

下の写真は、今日の様子です。幼虫が蛹になり始めています。やはり、この寄生虫は、完全変態をする昆虫のようです。

蛹になっている

蛹になりつつある

蛹の拡大写真

蛹の拡大写真

どんな成虫が出てくるか楽しみです。

新女王アリの死亡率

今年、これまでに採集したクロオオアリとムネアカオオアリの女王アリの数をまとめてみます。

5月16日 彦根市             0(クロ)  2(ムネ)
5月19日 彦根市   10      0
5月28日 駒ケ根市    3      4
5月29日 駒ケ根市    0      2
5月30日 駒ケ根市    1      7
6月  2日 駒ケ根市  69       17
6月  3日 駒ケ根市  50       16

クロオオアリは全部で133匹、ムネアカオオアリは48匹です。(ムネアカオオアリの数については、6月4日のブログ「採集の旅」で報告している数の51匹とは違います。これは、そのうちの3匹が、ムネアカオオアリの女王アリによく似ていますが、一回り体が小さく、違う種かもしれないからです(6月12日ブログ参照))。

6月12日の時点で、死亡したのはクロオオアリが20匹、ムネアカオオアリが9匹で、割合にすると(死亡率)、

クロオオアリの女王アリ      15%(20 ÷ 133)
ムネアカオオアリの女王アリ 19%(  9 ÷   48)

になります。

今回の採集に当たっては、採集時に傷を負っていることがわかった場合は、採集しませんでした。ただその時は気付かなくて、傷を負っている女王アリも採集しています。
傷を負ったクロオオアリで生きているのが17匹、死んだのが7匹です。同じく傷を負ったムネアカオオアリで生きているのが1匹、死んだのが0匹です。

そこで、今度は、傷を負っている場合の女王アリの死亡率を考えてみましょう。ここでは、ムネアカオオアリはサンプル数が少ないので、クロオオアリのみで考えることにします。クロオオアリの女王アリで、負傷していない個体の死亡率と、負傷している個体の死亡率を比較すると、

負傷していない個体の死亡率 12%(13 ÷ 109)
負傷している個体の死亡率  29%(  7 ÷   24)

になります。このことから、傷を負っていると死亡率が高いことがわかります。
ですが、見方を変えれば、今年のクロオオアリの場合、傷を負っていても、71% の女王アリが生きているとも言えます。