トゲアリの女王アリは、オオアリのコロニーに寄生する際、オオアリの働きアリを捕まえて、働きアリの体表面の成分を、前脚の刷毛のような形状のところを使って、自分の体に塗るのですが、この行動をここでは仮に「識別成分塗布」ということにします。
これまで、飼育環境で寄生させた際は、識別成分塗布を常に観察してきましたが、自然界ではどのように行われているのでしょうか。ここでは、3例を紹介します。
例1
例2
例3
例2の場所は、9月6日のブログ「トゲアリの女王アリを大量に採集」と同じ場所で、クロオオアリの巣口の横です。例3の場所も、すぐ横にクロオオアリの巣口がありました。また、トゲアリの女王アリが、クロオオアリの働きアリを抱きかかえているところの写真は撮れていませんが、その識別成分塗布をしていたトゲアリのすぐ横にも、クロオオアリの巣口がありました(下の写真)。
このように、例1は不明ですが、識別成分を塗布しているトゲアリを見つけた場所には、すぐ横にクロオオアリの巣口がありました。トゲアリの女王アリは、クロオオアリの巣口に近づいて、あるいは偶然巣口の近くを通った時、クロオオアリの働きアリに出会って、識別成分塗布を始めたのでしょう。
ちなみに、歩いているトゲアリの女王アリを追っていた時、女王アリとクロオオアリが出会うことがありましたが、女王アリは慌てて逃げました。数多く見ていないので確言できませんが、通常はトゲアリの女王アリはクロオオアリと出会うと逃げていくようです。
ところで、識別成分塗布の後のトゲアリの行動ですが、見て確かめることはできませんでした。ですから、状況からの判断ですが、例3と直前の写真の例では、トゲアリの女王アリはクロオオアリの巣に入ったと思われます。いずれも、識別成分塗布の時間は、時単位ほど長くはなく、10分とか20分とかその程度のようですので、キイロシリアゲアリから攻撃を受けていた例2のトゲアリは、寄生に失敗していたのだろうと思います。