月別アーカイブ: 2014年9月

識別成分塗布

トゲアリの女王アリは、オオアリのコロニーに寄生する際、オオアリの働きアリを捕まえて、働きアリの体表面の成分を、前脚の刷毛のような形状のところを使って、自分の体に塗るのですが、この行動をここでは仮に「識別成分塗布」ということにします。
これまで、飼育環境で寄生させた際は、識別成分塗布を常に観察してきましたが、自然界ではどのように行われているのでしょうか。ここでは、3例を紹介します。

例1

大型の働きアリが寄ってきていました 9月8日12時47分撮影

大型の働きアリが寄ってきていましたが…… 9月8日12時47分撮影

大型の働きアリはもういません 同日12時48分

大型の働きアリはもういませんでした 同日12時48分

例2

キイロシリアゲアリから攻撃されています 9月13日5時50分撮影

キイロシリアゲアリから攻撃を受けています 9月13日5時50分撮影

2時間以上経ってもまだその場にいました 同日8時7分撮影

2時間以上経ってもまだその場にいました 同日8時7分撮影

例3

9月17日6時9分撮影

9月17日6時9分撮影

同日6時16分撮影

同日6時16分撮影 もう1匹トゲアリの女王アリが歩いていました

例2の場所は、9月6日のブログ「トゲアリの女王アリを大量に採集」と同じ場所で、クロオオアリの巣口の横です。例3の場所も、すぐ横にクロオオアリの巣口がありました。また、トゲアリの女王アリが、クロオオアリの働きアリを抱きかかえているところの写真は撮れていませんが、その識別成分塗布をしていたトゲアリのすぐ横にも、クロオオアリの巣口がありました(下の写真)。

識別成分塗布が行われていた場所 クロオオアリの巣口がある 9月17日6時5分撮影

識別成分塗布が行われていた場所 すぐ横にクロオオアリの巣口がある 9月17日6時5分撮影

このように、例1は不明ですが、識別成分を塗布しているトゲアリを見つけた場所には、すぐ横にクロオオアリの巣口がありました。トゲアリの女王アリは、クロオオアリの巣口に近づいて、あるいは偶然巣口の近くを通った時、クロオオアリの働きアリに出会って、識別成分塗布を始めたのでしょう。

ちなみに、歩いているトゲアリの女王アリを追っていた時、女王アリとクロオオアリが出会うことがありましたが、女王アリは慌てて逃げました。数多く見ていないので確言できませんが、通常はトゲアリの女王アリはクロオオアリと出会うと逃げていくようです。

ところで、識別成分塗布の後のトゲアリの行動ですが、見て確かめることはできませんでした。ですから、状況からの判断ですが、例3と直前の写真の例では、トゲアリの女王アリはクロオオアリの巣に入ったと思われます。いずれも、識別成分塗布の時間は、時単位ほど長くはなく、10分とか20分とかその程度のようですので、キイロシリアゲアリから攻撃を受けていた例2のトゲアリは、寄生に失敗していたのだろうと思います。

トゲアリの羽アリ

9月8日の早朝に初めて巣口にいる羽アリを見たのですが、雄アリについては地上も含めて見たこともありませんでした。
9月9日の早朝の観察では、車のムーンルーフ(天窓)から道側のB巣を間近に見ることができましたので、ピンセットで雄アリを1匹捕らえました。

ND4_4889

ND4_4894

ND4_4884

円の目盛りは1目盛り0.5mmです。雄アリの体長はおよそ8mmぐらいであることがわかります。

雌アリは10日の深夜に、巣口から離れて幹を下ってきていた1匹を捕らえました。

ND4_5016

方形の1目盛りは1mmです。羽がとても長いことがわかります。

雌雄の羽アリは、無水エタノールに浸けて標本にしています。

トゲアリ同士の化粧

トゲアリ同士で化粧をし合っているところを見つけました。

9月17日7時1分撮影

9月17日7時1分撮影

飼育しているオオアリの巣に、複数匹のトゲアリの女王アリを入れた際に、同様なことを見たことはありましたが、自然界で見るのは初めてでした。
なぜこのようなトゲアリ同士で化粧し合うことが起こるのか、それがどのような意味を持つのか、謎です。人類よりも遥かに長い間をかけて進化してきたはずなのに、是正されなかった本能の欠陥のように思えるのですが、それとも何か積極的な意味でもあるのでしょうか。

トゲアリの休憩

トゲアリの女王アリは、いつも地上を歩き続けています。見つけた時にはいつも歩いているのです。ですが、それは、歩いているから見つけやすいのかも知れません。

たまたま、次のような場面を見つけることができました。女王アリが落ち葉の陰に入り出てこないようになりました。

落ち葉の陰で休憩 9月8日12時23分撮影

落ち葉の陰で休憩 9月8日12時23分撮影

そっと落ち葉を取り除いても、そのまま休憩していました。

リラックスしている 同日12時32分撮影

リラックスしている 同日12時32分撮影

交尾後に地上を歩く日数(3)

マーキングの実験は、もう一ヶ所でも行っています。去年も今年もよく女王アリを見かける側溝です。
17日、午前8時前から、そこにいた11匹の女王アリの内10匹にマーキングしました。
18日、午前9時前後に見ると、マーキングのある女王アリが2匹、マーキングのない女王アリが3匹いました。19日の午前11時半頃には、マーキングのあるなしともに全く姿を見ませんでした。

以上の実験と観察から、「交尾後何日か地上を歩いている」という仮説は、正しかったようです。(下記のようにまとめると割合としては少ないようです。)

1日24時間相当 40匹中10匹 25%
2日48時間相当 40匹中3匹 7.5%
3日72時間相当 40匹中1匹 2.5%

ただ、更に大きな疑問が湧いてきます。それでは、トゲアリの女王アリは、数日の間にどこへ消えてしまったのだろうか、という疑問です。死んだのではないかと言うことについては、昨年飼育して検証していますが、数日で自然死することはありません。だとすれば何かに襲われて死んだのでしょうか、それとも宿主の巣へと入り込んだのでしょうか。
ちなみに、どこかで仮住まいを始めて、年を越して春になってから、宿主へ寄生すると言う説もありますが、女王アリは単独では、長くは生きられないことを昨年度の実験により確かめています

交尾後に地上を歩く日数(2)

13日にマーキングを施した5匹のトゲアリの女王アリは、その後、地上を歩いているでしょうか。
16日にそのうちの1匹をマーキングしたほぼ同じ場所で見つけました。

マーキングした女王アリが歩いていた

マーキングした女王アリが歩いていた 8時23分撮影

マーキングの模様からM3であることがわかります。3日=72時間ぶりの再会です。このM3にマーキングした時、その日に交尾を了えたとは断定できませんので、このM3は少なくみても72時間以上地上に留まっていたと言えます。夜間どうしているかの観察はできていませんので、ずっと歩き続けていたのかどうかはわかりません。

この16日は、早朝に結婚飛行が行われたらしく、たくさんの女王アリが歩いていました。そこで、まず、歩いているところをフィルムケースを使ってその場に捕らえました。

フィルムケースを被せて捕らえたところ 8時51分撮影

フィルムケースを被せて捕らえたところ 8時51分撮影

それから、捕らえた場所でマーキングを施しました。上の写真には、20ケースありますが、更に5匹を加えて、併せて25匹になりました。

次の日17日に調べてみると、まだ日の出前の午前5時半頃から、ペンキがついた女王アリを7匹見つけました。いずれも前日マーキングを施した場所で見つけ、その周辺も探してはみましたが見当たりませんでした。ちなみに、マーキングしていない女王アリも6匹いました。
18日の午前9時前後には、やはり同じ場所で調べてみると、マーキングしている女王アリは2匹、マーキングしていない女王アリは3匹いました。19日は午前11時半頃に調べましたが、マーキングしていない女王アリも含めて、女王アリの姿は全くありませんでした。(ちなみに、21日には同じ場所の別の箇所で女王アリを3匹見つけています。)

つづく

交尾後に地上を歩く日数(1)

ところで、トゲアリの女王アリは、交尾後地上を歩いているのですが、その日歩いている女王アリは、その日に結婚飛行を終えた女王アリなのでしょうか。午前中の大体同じ時間帯でも、日によって採集できる女王アリの数には大きな差があります。天候により、結婚飛行が行われたり、行われなかったりする日があると思うのですが、それでも、わずかながら地上を歩いている女王アリがいるのです。

クロオオアリの女王アリの場合、結婚飛行は夕刻頃行われ、通常は日が暮れる頃には穴を掘り始めて、土の中に入っていきます。ですが、中には、穴を掘る場所を探し続けたり、何らかの事情で穴掘りを途中であきらめたりして、次の日も歩き続けている女王アリもいます。このような日をまたいて歩いている女王アリは、途中でいろんな危険に出会ってよく怪我をしているものです。(トゲアリの女王アリの場合、少量見つける際も、怪我をしている女王アリはほぼありませんが、これは、トゲアリの女王アリは敵に襲われても怪我をしにくい体つきをしているからだと考えます。)

私は、予てから、トゲアリの女王アリは、交尾後何日か地上を歩いているのではないかと考えていました。いつ採集しても怪我が少ないことについては、既述のように説明できます。交尾後何日か地上を歩いていると考えるのは、他のアリと違って、トゲアリの女王アリの場合は、自分で巣穴を掘ったり、既成の空間を巣にしたりしないので、巣となる場所(寄生する巣)を探さなくてはならず、それに時間を要するからです。

そこで、この仮説を検証することにしました。地上を歩いている個体を識別するために、カー用品の小さな刷毛付きのタッチペンペンキを使いました。

9月12日、まずは、トゲアリの女王アリを捕まえずに歩いているところをマーキングすることができるかやってみました。

1例目 腹部に上手にマーキングできました

1例目 腹部に上手にマーキングできました

2例目 ペンキを付けすぎてしまいました

2例目 ペンキを付け過ぎてしまいました 苦しんでいました

このようにマーキングはできることがわかりましたが、マーキングすることで死んでしまうようなら、仮説を検証することにはなりませんので、ペンキを付けすぎたトゲアリは持ち帰り、様子を見ることにしました。このトゲアリは、長生きしていて、9月25日現在も生きています。

9月13日には、早朝に5匹のトゲアリの女王アリにマーキングしました。

M1

M1

M2

M2

M3

M3

M4

M4

M5

M5

つづく

トゲアリの結婚飛行に出会いたくて(7)

9月16日は、朝の8時少し前から観察に出かけました。1時間強留まりましたが、この間にトゲアリの女王アリを24匹採集し、別の25匹にペンキでマーキングしました。つまり、この日の朝は大量に女王アリが歩いていたのです。
このことから、16日に結婚飛行が行われたと考えました。
そこで、このことを確かめるために、次の17日の早朝に観察に出かけました。
道とは反対側のB巣の巣口を見ると雄アリが1匹いましたが、その1匹だけのようでした。そして、1分後には、その雄アリも巣の中に入ったらしく、羽アリは見当たりませんでした。

4時59分撮影 雄アリが1匹いた

4時59分撮影 雄アリが1匹いた

5時ちょうど撮影 1分後には羽アリは見当たらなかった

5時ちょうど撮影 1分後には羽アリは見当たらなかった

これは、明らかに13日の早朝の様子とは違います。やはり、結婚飛行は終わってしまったようです。
C巣の様子を見てみると、その時は気付きませんでしたが、写真には羽アリが1匹写っていました。けれども、この巣も、結婚飛行はもう既に終わっているようです。

C巣 5時38分撮影 よく見ると羽アリが1匹写っていた

C巣 5時38分撮影 よく見ると羽アリが1匹写っていた

今年こそは、トゲアリの結婚飛行を見ようと思い、また見ることは可能だと思って楽しみにしていたのですが、結局のところ、「少しの気のゆるみ」のような次第で、結婚飛行を見ることができませんでした。ただ、トゲアリは1日の時間のいつごろ結婚飛行を行うのかと言う、最も重要な研究テーマには、実際に結婚飛行に出会うことはできなかったものの、結婚飛行は極く早朝に行われると言うことは分かってきました。来年の研究へと繋げたいと思います。

トゲアリの結婚飛行に出会いたくて(6)

ところでC巣の様子ですが、朝を迎えても、ほぼ羽アリの姿を見ることはできませんでした。このことから、この巣では、既に羽アリが飛び立つ日を過ぎてしまったと考えられます。残念なことですが、念願のトゲアリの結婚飛行を見る機会を1つ失ったことになります。

わずかに1から2匹羽アリがいます

4時1分撮影 わずかに1から2匹羽アリがいる

4時17分 この時には羽アリの姿はなかった

4時17分 この時には羽アリの姿はなかった

6時50分 この時も羽アリの姿はない

6時50分 この時も羽アリの姿はない

そして、これ以後も、羽アリの姿は見ませんでした。

 

トゲアリの結婚飛行に出会いたくて(5)

日付が変わって13日(日の出時刻5時37分)は、午前4時頃から観察を始めました。

午前4時台のB巣の様子

道側のB巣の巣口 4時ちょうど撮影 羽アリがたくさんいる

道側のB巣の巣口 4時ちょうど撮影 羽アリがたくさんいる

道側のB巣の巣口 4時23分撮影

道側のB巣の巣口 4時23分撮影 やはり羽アリがたくさんいる

道と反対側のB巣の巣口 4時ちょうど撮影 ここにも羽アリの姿がある

道と反対側のB巣の巣口 4時ちょうど撮影 ここにも羽アリの姿がある

巣口から離れて、下の方へ歩いていく羽アリも見かけました。

4時29分撮影

4時29分撮影

4時32分撮影 樹の根元にも巣口があり、その近くまで下りてきた羽アリ

4時32分撮影 樹の根元にも巣口があり、その近くまで下りてきた羽アリ

午前6時台のB巣の様子

6時38分撮影 日の出から1時間が経っている

6時38分撮影 日の出から1時間が経っている

6時55分撮影 羽アリがたくさん見られた

6時55分撮影 羽アリがたくさん見られた

ちなみにB巣では5時台も羽アリが出ていました。

午前7時台・8時の様子

7時19分撮影 少なくなったが、まだ羽アリの姿があった

7時19分撮影 少なくなったが、まだ羽アリの姿があった

8時5分撮影 羽アリはいない

8時5分撮影 羽アリはいない

8時5分撮影 ここにも羽アリはいない

8時5分撮影 ここにも羽アリはいない

トゲアリの結婚飛行に出会いたくて(4)

早朝や深夜そして、午前中や午後にかけての時間帯での観察はできたので、今度は夕刻の様子を見に行くことにしました。12日の午後4時頃の様子です。

B巣 16時10分撮影

B巣 16時10分撮影

C巣 16時10分撮影

C巣 16時10分撮影

いずれの巣口にも羽アリは見当たりません。

そして、この日、いよいよ夜間を通してトゲアリの巣の様子を観察することにしました。12日の午後8時から13日の午前8時頃にかけての半日です。

B巣 20時8分撮影 羽アリを見かけなかった

B巣 20時8分撮影 羽アリを見かけなかった

A巣があった樹 羽アリが幹を歩いていた

A巣があった樹 羽アリが幹を歩いていた 20時11分撮影

午後8時頃は、羽アリはまだあまり出ていないようでした。
下の写真は、日付が変わる頃のC巣の様子ですが、2日前の10日の同時刻とは違って、羽アリの姿は見えませんでした。

C巣 23時57分撮影

C巣 23時57分撮影 羽アリを見かけなかった

他方、B巣の方は、羽アリが出ていました。

B巣 23時55分撮影 羽アリがいる

B巣 23時55分撮影 羽アリがいる

トゲアリの結婚飛行に出会いたくて(3)

日の出前後の早朝のトゲアリの巣の様子は、前日の9日に観察できました。羽アリが多数いたわけですが、それでは、この羽アリたちは早朝になって巣口に出てくるのでしょうか。
それではと言うことで、10日は午後11時過ぎに観察に出かけました。

C巣 巣から離れたところにも羽アリがいる

C巣 前日同様、巣から離れたところにも羽アリがいます 23時12分撮影

案の定、やはり羽アリを多数見かけました。

B巣 また1ヶ所巣口を見つけました

B巣 また1ヶ所巣口を見つけました 23時29分撮影

上の写真のB巣は、この日新たに見つけた巣口の様子です。8日に新たに見つけた同じ幹の少し下の反対にありました。道の反対側の面でしたので、これまで気付かなかったのです。この巣口から幹を伝って下へと働きアリが移動していて、羽アリの姿もありました。

巣口下方の離れたところです

巣口下方の離れたところです 23時22分撮影

羽アリは深夜にはもう巣から出てきているのです。

トゲアリの結婚飛行に出会いたくて(2)

次の日の9日も、トゲアリのいる野田山へ朝早く出かけました。午前4時半頃から午前6時過ぎまで観察しました。

B巣 午前4時35分撮影 たくさんの雌雄の羽アリが見られる

B巣 午前4時35分撮影 たくさんの雌雄の羽アリが見られる

同じくB巣 午前5時37分 日の出から2分経った 樹の背後が明るい

同じくB巣 午前5時37分 日の出から2分過ぎた 樹の背後が明るい

C巣 午前4時56分撮影

C巣 午前4時56分撮影

C巣 午前6時15分 日の出から40分過ぎたが、羽アリが1匹写っている

C巣 午前6時15分 日の出から40分過ぎたが、羽アリが1匹写っている

この日も飛び立つ羽アリは見ませんでした。ただ、巣から離れて歩く羽アリをしばしば見かけました。見た限りでは、巣に戻ってきていました。

巣から離れて、上方を歩いている

巣から離れて、上方を歩いている 午前5時2分撮影

トゲアリの結婚飛行に出会いたくて(1)

既に6日には大量にトゲアリの女王アリを採集したわけですが、トゲアリの羽アリはどんな時間帯に交尾のために飛び立つのでしょうか。その飛び立つところを是非とも見たいと思いました。
今年の場合も女王アリが採集できた2日、3日、そして6日も、午前10時台から午後1時過ぎにかけて、巣に羽アリの姿はありませんでした。ですから、考えられるのは、夕方か、日が暮れてからか、深夜か、早朝のいずれかなのでしょう。
8日、観察しに早朝に出かけました。この日の日の出の時刻は、午前5時34分頃です。観察地点に着いたのは、まだ暗い午前4時半頃でした。巣を見ると、羽アリの姿がありました。

A巣 午前4時49分撮影

A巣 午前4時49分撮影

B巣 午前5時1分撮影

B巣 午前5時1分撮影

C巣 午前4時38分撮影

C巣 午前4時38分撮影

上の写真の「B巣」はこれまでに観察していた箇所ではなく、同じ樹の地面から分かれている別幹にある巣です。この箇所にも巣口があることは、今まで気がつきませんでした。辺りが暗かったので、照明が当たってわかったのですが、そもそも昼間は働きアリが群がっていなかったのでしょう。
飛び立つ前のトゲアリの羽アリを見るのは、これが初めてでした。

トゲアリの女王アリに関する野外観察終了

昨日の19日で、この秋のトゲアリの女王アリに関する野外観察を終了しました。屋内での実験・観察は引き続き行っています。

ここでは、野外観察をした日時と採集したトゲアリの女王アリの数をメモしておきます。(このメモは、後ほどアップする予定の種々のトゲアリの女王アリに関するブログの参考資料となります。)なお、時間は、最初に写真を撮った時刻と最後に写真を撮った時刻で表しています。また、採集した女王アリの数は、日によって、その日見つけた全てを採集した場合の数と、サンプル的に採集した数の両方があります。

9月2日(火) 10:38〜10:52 1匹採集
9月3日(水) 13:12〜13:34 3匹採集
9月4日(木) 採集に出かけず(日中小雨)
9月5日(金) 13:47〜13:48 (午前雨)
9月6日(土) 11:52〜12:58 44匹採集(深夜・午前天気が良い)
9月7日(日) 10:25〜10:55 2匹採集(地面が濡れている 朝まで雨)
9月8日(月) 04:36〜06:02 2匹採集  11:50〜13:04 25匹採集
9月9日(火) 04:29〜06:15
9月10日(水) 23:06〜23:38 1匹採集(羽アリの女王アリを巣から捕る)
9月11日(木) 採集に出かけず
9月12日(金) 16:10〜16:31 1匹採集(ペンキを塗りすぎた個体)
同日〜13日(土) 夜間通し観察
20:08〜20:14 23:54〜23:57 03:59〜08:07 早朝1匹採集(うずくまっていた)
9月13日(土) 11:16〜11:27 3匹採集
9月14日(日) 10:53〜11:00
9月15日(月) 採集に出かけず
9月16日(火) 07:58〜09:06 24匹採集
9月17日(水) 04:42〜07:52 4匹採集
9月18日(木) 08:41〜9:14
9月19日(金) 11:23〜11:33 1匹も見つけられない

111匹採集

彦根 2014年9月(日ごとの値) 主な要素
平均
気圧
降水量
平均
気温
最高
気温
最低
気温
平均
湿度
日照
時間
6時〜18時
18時〜翌日6時
1
1002.3 5.0 23.0 24.4 22.0 85 0.1 雨時々曇 曇一時雨
2
1002.7 24.8 29.1 20.9 78 7.0 晴後薄曇 曇後一時晴
3
1002.2 0.0 25.1 29.3 21.6 69 1.4 ) 曇後時々雨
4
1000.8 0.5 25.1 27.0 23.4 75 0.0 雨時々曇 曇時々雨
5
1001.8 40.5 24.5 27.3 22.9 90 1.4 大雨時々曇、雷を伴う 曇後一時晴
6
1001.8 14.0 23.9 29.5 19.8 85 3.8 曇後一時雨、雷を伴う 雨後時々曇
7
997.8 0.5 23.8 30.0 19.9 75 11.1 晴後一時曇
8
994.7 22.8 28.0 18.8 76 4.8 曇後晴 晴一時曇
9
995.7 24.6 28.9 20.8 69 10.6
10
999.0 23.6 27.4 19.7 75 3.8 晴後曇 曇後一時雨、雷を伴う
11
1000.0 0.5 23.1 28.0 19.5 71 9.0 晴一時雨、雷を伴う 快晴
12
1001.7 22.4 27.0 16.6 60 8.9 晴後薄曇 曇後晴
13
1001.8 22.7 27.1 17.9 63 10.6 晴一時薄曇 快晴
14
1002.9 22.7 28.0 17.5 68 11.7 快晴 晴後曇
15
1002.5 22.5 26.9 18.3 70 2.5
16
1002.3 23.2 28.3 19.2 67 11.1
17
1003.3 21.4 25.6 17.3 66 3.2 曇時々晴 曇後一時晴
18
1003.0 21.3 25.7 18.7 54 6.9 晴時々曇
19
1003.6 19.6 22.9 16.7 62 0.2

トゲアリの女王アリを大量に採集

この日は朝から大変良い天気でしたので、少し期待して採集に出かけました。
案の定、午前11時40分頃から午後1時10分ごろにかけて45匹のトゲアリの女王アリを見つけ、44匹を持ち帰りました。(44匹の内43匹は怪我がありません。残り1匹は、右の前肢が不自由です。)

持ち帰った44匹のトゲアリの女王アリ

持ち帰った44匹のトゲアリの女王アリ

ところで、11時50分ごろ、いつもよく女王アリを見つける溝の辺りで、クロオオアリが群がっているのが目に入りました。

トゲアリの女王アリの姿があった

そこにはトゲアリの女王アリの姿がありました

よく見るとトゲアリの女王アリがいます。クロオオアリたちに捕まったようです。クロオオアリに囲まれているところは、始めてみましたので、運悪く捕まったのか、と思いました。……が、この後、まもなくしてわかったのですが、ここにクロオオアリ巣口があったのです。

クリックするとムービーが見られます

クリックするとムービーが見られます

どうやら、このトゲアリの女王アリは、このクロオオアリの巣に侵入しようとして捕まっているようです。これまでに出会ったことがない貴重な機会となりました。この後、このトゲアリがどうなったかは、うまく観察できませんでした。

さて、このクロオオアリの巣に、今採集したばかりの別のトゲアリの女王アリを侵入させてみましょう。

クロオオアリの巣穴のすぐ前に置いています

クロオオアリの巣穴のすぐ前に置いています

3例で侵入を試みさせましたが、2例はクロオオアリの巣口を恐れるように慌てて逃げていきました。ただ1例は、何の迷いもないかのように、あっという間に巣穴に入っていきました。あまりにも速かったので、巣口から侵入する瞬間を写真に撮ることができませんでした。巣口にはクロオオアリの働きアリがいたのですが、侵入を巣口で防げなかったようです。

この日、トゲアリの女王アリを45匹見つけて1匹少ない44匹を持ち帰ったのは、そういうわけです。

更にトゲアリの寄生の試み

昨日採集した3匹のトゲアリの女王アリをクロオオアリの巣に入れました。

①T14090301をNESTCON01005に入れる

クロオオアリの女王アリの首に咬みついている

クロオオアリの女王アリの首に咬みついている

クロオオアリの女王アリは、コンクリート製人工巣のW拡張蓋の中にいたので、トゲアリは素早くクロオオアリの女王アリに近づくことができたようです。働きアリが攻撃する間もなく、一目散に駆け寄ってクロオオアリの女王アリの首に咬みつきました。寄生の第1段階に成功したようです。
NESTCON01005は、2011年6月8日採集の女王アリとその家族です。昨年3度、寄生の試みをしています。そのうち最初の2回は、女王アリがいないW拡張蓋の中の働きアリの中にトゲアリの女王アリを入れました。また、3回目は、女王アリがいる本巣の中に入れていて、いずれもトゲアリの女王アリの方が死んでいます。

②T14090302をNESTCON01006に入れる

近づいてきたクロオオアリの働きアリを捕まえました

近づいてきたクロオオアリの働きアリを捕まえたところ

トゲアリに捕まっていた働きアリ 傷は負っていないようだ

トゲアリに捕まっていた働きアリ(中央) 傷は負っていないようだ

一度だけ一瞬クロオオアリが攻撃した

一度だけ一瞬クロオオアリが攻撃した

トゲアリからの攻撃がなく、共存している

トゲアリからの攻撃がなく、また働きアリからの攻撃もなく共存している

働きアリから攻撃される

しばらくして、働きアリから攻撃される

T14090302は、両翅の一部が残っているトゲアリです。このトゲアリの女王アリは、自分からクロオオアリの女王アリにかかっていきませんでした。翅が残っていたことと、トゲアリの方から攻撃しなかったこととは、何か関連があるのかも知れません。
NESTCON01006は、2011年6月8日採集の女王アリとその家族です。昨年もトゲアリの女王アリを1度侵入させています。結果は、トゲアリが殺されています。

③T14090303をNESTCON01007に入れる

働きアリから攻撃を受ける

働きアリから攻撃を受ける

巣の中でも攻撃を受ける

巣の中でも攻撃を受ける

この後、女王アリがいる下の部屋へ行きますが、やはり働きアリから攻撃されていて、女王アリとは戦わない内に、上の部屋へ連れ戻されました。

また攻撃を受ける

上の部屋に連れ戻されて、また攻撃を受ける

NESTCON01007には、これまでにトゲアリの女王アリを入れたことはありません。採集日は、2011年の6月8日です。

今回は、3例の内1例のみ第1段階の寄生に成功しそうです。

トゲアリの女王アリを3匹採集

昨日9月3日は、朝から曇っていて良い天気ではありませんでしたが、前日に引き続きトゲアリの女王アリを探しに野田山へ出かけました。午後1時過ぎのことです。
A巣とC巣を見てみると、昨日よりも群れが小さいようでした。

A巣

A巣

B巣

C巣

なお、B巣があった場所には、やはりトゲアリはいませんでした。

昨年トゲアリの女王アリを多く見かけた溝を見ていると、トゲアリの女王アリを見つけました。午後1時20分頃のことです。

S/N: T14090301

S/N:T14090301

更に同じ場所でもう1匹見つけました。

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この女王アリは、両方の翅が少し残っていました。
更に道を少しあがった場所の大きな樹の麓で1匹見つけました。

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昨日よりも多く採集できたのは、確実に季節が進んでいるからでしょうか。

トゲアリの寄生 今年最初の試み

昨日9月2日に採集した1匹のトゲアリの女王アリを、クロオオアリの巣に侵入させることにしました。
宿主はシリアル番号NESTCON01003で、昨年は、9月24日に採集したトゲアリの女王アリを10月3日に侵入させ、トゲアリの女王アリが6日に死亡したクロオオアリのコロニーです。このコロニーは、2011年の6月8日に女王アリを採集したもので、当研究会作成の旧型の2部屋式コンクリート製人工巣で飼育しており、現在は働きアリがかなりの数(数えられません)います。

午前10時25分ごろに侵入できるようにしました。トゲアリは、クロオオアリの働きアリに出会っても、トゲアリの方からは攻撃しようとしないで、逃げるように歩き回り、10分ほどで巣の中に侵入し、女王アリがいる部屋へと下りました。この部屋は、働きアリが密集しており、様子を把握しにくかったのですが、まもなく、トゲアリがクロオオアリの女王アリの首に咬み付いているのが見えました。

首に咬み付いている

首に咬み付いている

まずは第1段階の寄生に成功したようです。

トゲアリの女王アリを採集

今日はよく晴れた秋晴れです。久しぶりに昨年トゲアリの女王アリを多数採集した「野田山」に出かけました。
トゲアリの巣があった3ヶ所の桜の樹を見ると、2ヶ所でトゲアリの群れがありました。

A巣 群がっている

A巣 群がっている

B巣 トゲアリがいない

B巣 トゲアリはいない

C巣 たくさんトゲアリが群がっている

C巣 たくさんトゲアリが群がっている

トゲアリの群れが見られたのは、A巣とC巣ですが、どちらにも羽アリの姿は見られません。これまでにトゲアリの羽アリを巣の中で見たことがありませんので、予想に過ぎませんが、羽アリの結婚飛行の時期には、群れの中に交じって姿を現すように思います。それが、羽アリの姿が見られないのですから、まだ、結婚飛行は先なのかも知れません。

樹を見た後、昨年トゲアリの女王アリをよく見た辺りを注意深く調べてみましたが、案の定、女王アリはいませんでした。ところが、しばらくして10時50分ごろ、トゲアリの女王アリを見つけたのです。

たった1匹だが、女王アリが歩いていた

たった1匹だが、女王アリが歩いていた

辺りを何度も見回しましたが、この1匹だけでした。もう結婚飛行がわずかのようですが、始まっているようです。