月別アーカイブ: 2015年5月

寄生虫

昨年の2回のブログ(「女王アリの死因を考える」6月7日、「寄生虫 その後」6月18日)で取り上げたクロオオアリやムネアカオオアリの腹部にいた寄生虫ですが、昨年、この寄生虫の正体を知る為に観察を行いました。完全変態をする昆虫であることはわかりましたが、羽化しなかった為に、結局この寄生虫の正体を知ることはできませんでした。
羽化しなかった原因として、ケースの中が乾燥した為と考えていますが、観察をあきらめたずっと後まで蛹のままだったのかも知れません。

実は、今年もこの寄生虫に出会いました。クロオオアリの新女王アリで8体、ムネアカオオアリで3体が、31日、この寄生虫の為に死んでしまいました。

腹部が膨れて死んでいる

腹部が膨れて死んでいました

腹部を拡大したところ ウジ虫状の幼虫が多数見える

腹部を拡大したところ ウジ虫状の幼虫が多数見えます

この1匹はまだ生きていました 腹部から寄生虫がはい出しています

この1匹はまだ生きていました 腹部から寄生虫がはい出しています

結婚飛行を終えてわずかに4日から5日間で、この寄生虫は大変大きくなっています。驚異的です。
これらの女王アリは、1匹が卵を1個産んでいただけで、後の10匹は卵を産んでいませんでした。
ちなみに下の写真は通常の死んだ女王アリです。

普通の死体

普通の死体

今年こそ、この寄生虫の正体を知りたいと思います。ケースの中が乾燥しないように気をつけて、一ヶ所に集めて観察します。

寄生虫が宿る11体

寄生虫が宿る11体

新女王アリを多数採集

昨日(5月27日)、クロオオアリとムネアカオオアリの新女王アリを多数採集しました。
26日、気温がぐんぐん上がり、30度を越したところも多かったようです。案の定、女王アリが出たと言う知らせをいただき、その日の夜遅く現地へ向かいました。車の中で夜を明かし、早朝4時頃から再び移動し、現地に着きました。
広々とした駐車場を確かに羽を落とした女王アリが何匹も歩いていました。その周辺も含めて、クロオオアリが14匹、ムネアカオオアリが15匹、採集できました。これらの女王アリは、前日の26日に結婚飛行を終えたものと思われます。その大部分は、巣穴がまだ掘れずに歩き回っていたのでしょう。一部は、既に巣穴を掘り始めていた女王アリも含まれています。巣穴を壊して採集しました。
別の場所に移動しました。そこはテニスコートがある場所で、毎年、ここでも新女王アリが採集できていました。午前中いっぱいその場所にいましたが、例年になくとてもたくさんの女王アリが採集できました。その周辺を含めクロオオアリが98匹、ムネアカオオアリが30匹です。
午後からは、別の公園に行き、午後2時過ぎごろから1時間程度で、クロオオアリの新女王アリを38匹、ムネアカオオアリの新女王アリを9匹採集しました。
午後4時過ぎになって、再び早朝に訪れた公園に行きました。ここでは、ムネアカオオアリの新女王アリが多く、44匹とクロオオアリを4匹採集しました。
その他にも採集しており、合わせるとクロオオアリの新女王アリは154匹、ムネアカオオアリの新女王アリはちょうど100匹採集していました。1日で254匹もの新女王アリを採集したのは、今回が初めてでした。
結婚飛行が行われるこの時期は、巣の出入り口がとても広くなりますが、結婚飛行が終わってしまうと、巣の出入り口は狭くなります。27日の夕刻の巣穴の様子は、出入り口が大きいままでしたが、羽アリを見かけない巣穴の方が多いように感じました。このことから、結婚飛行を終えてまだ間もないコロニーが多いと思われます。
ただ、夕刻5時半頃、クロオオアリの巣穴を見ると、羽アリがまだたくさんいる巣もありました。この地域の結婚飛行は、まだ完全には終わっていないと言うことになります。

結婚飛行を終えていないクロオオアリのコロニー

結婚飛行をまだ終えていないクロオオアリのコロニー 巣の出入り口がとても広い

ルリアリの異様

ルリアリを実体顕微鏡で観察していて、意外なことを目にしています。
まず、下の写真をご覧下さい。

扇のような模様が見える

扇のような模様が見えます

これは幼虫ですが、たたんだ扇のような模様が見えます。ここには写っていませんが、同じ模様が蛹にも見られました。とりわけかなり多くの幼虫に同じような模様が見られるのです。模様は皮膚と一体化しているように見え、本当に皮膚の模様のように見えるのです。いったいこれは何だろうとかなり長い間、不思議に思っていました。
ところが、今日、やっとそれが何なのか思い当たりました。餌として与えているガの鱗粉なのではないか……、そう思い、確かめて見ることにしました。巣の中の床を見ると、

これは鱗粉です

これは鱗粉です

同じ模様のものが、無数にありました。これは明らかにガの鱗粉です。幼虫などに見られた模様は、やはりガの鱗粉だったのです。

実体顕微鏡で見ると、もうひとつ、不思議なものが見えます。体の中の白い塊です。

幼虫や蛹の体の中に白い塊が見える

幼虫や蛹の体の中に白い塊が見えます

成虫の腹部の中にも白い塊が見えます

成虫の腹部の中にも白い塊が見えます

いったいこれは何なのでしょうか。脂肪の塊?、つまり栄養源なのでしょうか。ちなみに、羽化したばかりの成虫を見ると、やはり胸部と腹部に白い塊が見えます。

羽化したばかりの成虫 やはり白い塊が見えます

羽化したばかりの成虫 やはり白い塊が見えます

ブドウの幹の中から女王アリが

5月2日、庭の「ピオーネ」というブドウの幹の中から、女王アリを採集しました。
この時期、ブドウは新しい芽を出すのですが、途中から葉が出てこない幹があり、その幹にはスカシバというガの幼虫(蛹)が入り込んでいるのです。葉が出ない冬の間はわからないのですが、春になるとスカシバが入っていることがわかります。
こうなると、幹を切り落として、スカシバを退治しておかなくてはならないのですが、そうした幹の一つから、これまで見たことがない女王アリを見つけました。
スカシバがいたと思われる幹の空洞の中に、幼虫や蛹とともに女王アリがいました。同じ箇所に働きアリもいたので、それも採集しました。

ブドウの幹の中から見つかった女王アリ

ブドウの幹の中から見つかった女王アリ

働きアリの姿もある 左上

働きアリの姿もある 左上

女王アリからは、種は特定できませんでしたが、働きアリを見ると四つ星があり、シベリアカタアリのように思えました。
この働きアリは、8匹採集していましたが、不思議なことに何日経っても女王アリと一緒にならないのです。そこで、この働きアリと女王アリは、たまたま同じ場所で採集した別種であると考え、働きアリの方を取り除きました。
5月26日、働きアリが1匹生まれていました。

働きアリが1匹生まれていました

働きアリが1匹生まれていた

やはりこの女王アリは、シベリアカタアリではなかったのです。シリアゲアリのようです。種は特定できませんが、シリアゲアリ亜属のアリです。女王アリには、働きアリにはある刺(前伸腹節刺)がありません。

女王アリには刺がない

女王アリには刺がない

特製の蜜をすぐそばに置きましたが、飲まずに木片を被せてしまいました。

アミメアリを捕獲

5月17日午後、千鳥ケ丘公園で塊を作っているアミメアリを見つけました。

アミメアリの塊

アミメアリの塊

産卵の為に寄り集まっているのではないかと思い、採集して観察をしようと思いました。フィルムケース2個を両側から挟み込むようにして、一度に大量のアミメアリを採集しました。ほんのわずかながら、幼虫の姿はありましたが、卵は見当たりませんでした。
カップ型コンクリート製人工巣用のW拡張蓋がちょうど空いていましたので、その中に入れました。しかし、餌器を入れ忘れていましたので、次の日にはパイプでアンテアダプターを繋げて巣を拡張しました。

巣を拡張したところ

巣を拡張したところ この写真は拡張した後の21日の写真

すると、アンテアダプターの方へ移動してしまいました。狭い空間の方が、お気に入りのようです。
案の定、産卵が始まりました。下の写真は、採集からわずか3日後に撮影したものです。もうこんなにも卵が増えています。

アクリル製の上蓋に置かれた多数の卵

アクリル製の上蓋に置かれた多数の卵

アミメアリは女王アリがいないアリで、働きアリが産卵することは知識では知っていましたが、確かにそうでした。
この卵は、アクリル製の上蓋にくっつくように置かれていましたので、実体顕微鏡でよく観察できました。

5月21日撮影

5月21日撮影 クリックすると写真が拡大します

5月26日撮影

5月26日撮影 クリックすると写真が拡大します

卵の中が透けて見えています。よく見ると粒のようなものが見えます。これは一体何なのでしょうか。

ちなみに、以下は飼育器の中のアミメアリの生活の様子です。

水を飲む

水を飲む

ガを食べる

ガを食べる

蜜を飲む

蜜を飲む

新たにトゲアリ発見

前述のブログにある千鳥ケ丘公園(通称「ドングリ山」)で、クロオオアリを観察する前に、実はトゲアリの巣を見つけました。これまでにも、何回か通っていた場所でしたので、気付かなかったのか、以前にはそこにいなかったのかわかりませんが、あまり目立たない、小規模なコロニーでした。

樹洞にトゲアリがいました

樹洞にトゲアリがいました

この木は、野田山のトゲアリと同様に、桜の木です。

桜の木

桜の木

9月の上旬頃に羽アリが飛び立つかも知れません。

今年初 クロオオアリの女王アリを採集

午前10時過ぎに、庭で水やりなどをして部屋に入ると、何やら虫のようなものが服に付いていました。よく見ると、それはクロオオアリの雄アリでした。

クロオオアリの雄アリ

クロオオアリの雄アリ

一昨年と昨年のいずれも5月の下旬頃に、庭の捕虫器の中に死んだクロオオアリの雄アリが入っていましたので、庭にやってきたクロオオアリの雄アリに出会うのは、今年で連続3回目になります。以前もそう思ったのですが、やはり近くにクロオオアリの巣がありそうです。そこで、庭の回りや、すぐ近くの団地の公園を丁寧に探してみましたが、クロオオアリの働きアリの姿はありませんでした。
このところ、良い天気が続いていて、予想していた時期よりも早くクロオオアリの女王アリが巣立っているのかも知れません。そこで、市内の千鳥ケ丘公園(通称「ドングリ山」)に午後から行ってみました。
昨年、クロオオアリの結婚飛行を観察した場所に行ってみると、羽アリが巣穴から外を伺っていました。

巣穴から外を伺う羽アリ

巣穴から外を伺う羽アリ

この場所には、複数のクロオオアリのコロニーがありますが、少なくとも複数のコロニーで羽アリを見ました。
やがて、その内の一つのコロニーだけ(下の写真の石の下に巣があります)、新女王アリが巣から出てきて、飛び立ちました。

この石の下に一つのコロニーがある

この石の下に一つのコロニーがあります

巣から出てきた新女王アリ この写真には雄アリも写っている

巣から出てきた新女王アリ この写真には雄アリも写っています

飛び立った瞬間

飛び立った瞬間

こうして、午後2時50分ごろから、徐々に新女王アリが飛び立ち始め、観察を終えた午後5時30分ごろまでの間に、数えてはいませんがおそらく20匹ぐらいの新女王アリが飛び立ちました。雄アリも飛び立ちましたが、意外なことに、その数は飛び立った新女王アリの数よりも、少なく感じました。

雄アリも飛び立ちましたが、数は少ないように感じました

雄アリも飛び立ちましたが、その数は少ないように感じました

4時半頃にはたくさんの羽アリが見られました 4時35分撮影

4時半頃にはたくさんの羽アリが見られました 4時35分撮影

ところで、これまでの観察からわかっていますが、クロオオアリの場合、結婚飛行は、ある日一度で終えてしまうのではなく、何日かに渡って行われます。また、同じ日に近くの複数のコロニーからも羽アリが出て来ます。このことから考えると、今回結婚飛行を行ったコロニーは、他のコロニーに先立って結婚飛行を行い、やがては近くのコロニーからも羽アリが飛び立つようになって、複数のコニーで同時に結婚飛行が行われるようになるのでしょう。
これまで「結婚飛行は、地域ごとに同じ日に行われる」とただ単に思っていました。そこで、複数のコロニーが、どのようにして結婚飛行の日を同じ日に決めるのか、どんな申し合わせなり、伝達の手段があるのかと不思議に思っていました。しかし、そのように考えるのではなく、それぞれのコロニーが、天候等の要因を基にして、個別に結婚飛行を行い、その結婚飛行の日が重なる期間がある(重ならない期間もある)というように考えるのが正しいようです。
さて、飛び立った新女王アリは、どこへ行くのでしょうか。何匹かの新女王アリを飛び立った瞬間から、目で追ってみました。すると、離陸地点の上方を不完全な形の螺線を描くように上昇し、上方から少しそれたところで、肉眼では見えなくなりました。結局どこへ行ったのかわからないのですが、かなり高く上っていくことがわかります。ですから、巣の上方のそんなに高くない空間を群れて飛び回るというわけではありません。なのに、いったいどのようにして、空中で交尾をするのでしょうか。不思議です。
結婚飛行の後は、地上に下りてきて羽を落として歩き回ります。新女王アリの採集の機会です。今回は、観察した限りでは、1つのコロニーからだけ新女王アリが飛び立ったのですから、採集はあまり期待できないかも知れません。巣から半径30mぐらいの範囲をかなり丁寧に2度ほど探しましたが、羽を落とした新女王アリは見つかりませんでした。ところが、4時45分頃、新女王アリが飛び立った場所の極く近くで羽を落として歩いている新女王アリを見つけました。

羽を落とした新女王アリが歩いていた

羽を落とした新女王アリが歩いていました

この1匹が、今年採集した初めての新女王アリとなりました。