午前10時過ぎに、庭で水やりなどをして部屋に入ると、何やら虫のようなものが服に付いていました。よく見ると、それはクロオオアリの雄アリでした。
クロオオアリの雄アリ
一昨年と昨年のいずれも5月の下旬頃に、庭の捕虫器の中に死んだクロオオアリの雄アリが入っていましたので、庭にやってきたクロオオアリの雄アリに出会うのは、今年で連続3回目になります。以前もそう思ったのですが、やはり近くにクロオオアリの巣がありそうです。そこで、庭の回りや、すぐ近くの団地の公園を丁寧に探してみましたが、クロオオアリの働きアリの姿はありませんでした。
このところ、良い天気が続いていて、予想していた時期よりも早くクロオオアリの女王アリが巣立っているのかも知れません。そこで、市内の千鳥ケ丘公園(通称「ドングリ山」)に午後から行ってみました。
昨年、クロオオアリの結婚飛行を観察した場所に行ってみると、羽アリが巣穴から外を伺っていました。
巣穴から外を伺う羽アリ
この場所には、複数のクロオオアリのコロニーがありますが、少なくとも複数のコロニーで羽アリを見ました。
やがて、その内の一つのコロニーだけ(下の写真の石の下に巣があります)、新女王アリが巣から出てきて、飛び立ちました。
この石の下に一つのコロニーがあります
巣から出てきた新女王アリ この写真には雄アリも写っています
飛び立った瞬間
こうして、午後2時50分ごろから、徐々に新女王アリが飛び立ち始め、観察を終えた午後5時30分ごろまでの間に、数えてはいませんがおそらく20匹ぐらいの新女王アリが飛び立ちました。雄アリも飛び立ちましたが、意外なことに、その数は飛び立った新女王アリの数よりも、少なく感じました。
雄アリも飛び立ちましたが、その数は少ないように感じました
4時半頃にはたくさんの羽アリが見られました 4時35分撮影
ところで、これまでの観察からわかっていますが、クロオオアリの場合、結婚飛行は、ある日一度で終えてしまうのではなく、何日かに渡って行われます。また、同じ日に近くの複数のコロニーからも羽アリが出て来ます。このことから考えると、今回結婚飛行を行ったコロニーは、他のコロニーに先立って結婚飛行を行い、やがては近くのコロニーからも羽アリが飛び立つようになって、複数のコニーで同時に結婚飛行が行われるようになるのでしょう。
これまで「結婚飛行は、地域ごとに同じ日に行われる」とただ単に思っていました。そこで、複数のコロニーが、どのようにして結婚飛行の日を同じ日に決めるのか、どんな申し合わせなり、伝達の手段があるのかと不思議に思っていました。しかし、そのように考えるのではなく、それぞれのコロニーが、天候等の要因を基にして、個別に結婚飛行を行い、その結婚飛行の日が重なる期間がある(重ならない期間もある)というように考えるのが正しいようです。
さて、飛び立った新女王アリは、どこへ行くのでしょうか。何匹かの新女王アリを飛び立った瞬間から、目で追ってみました。すると、離陸地点の上方を不完全な形の螺線を描くように上昇し、上方から少しそれたところで、肉眼では見えなくなりました。結局どこへ行ったのかわからないのですが、かなり高く上っていくことがわかります。ですから、巣の上方のそんなに高くない空間を群れて飛び回るというわけではありません。なのに、いったいどのようにして、空中で交尾をするのでしょうか。不思議です。
結婚飛行の後は、地上に下りてきて羽を落として歩き回ります。新女王アリの採集の機会です。今回は、観察した限りでは、1つのコロニーからだけ新女王アリが飛び立ったのですから、採集はあまり期待できないかも知れません。巣から半径30mぐらいの範囲をかなり丁寧に2度ほど探しましたが、羽を落とした新女王アリは見つかりませんでした。ところが、4時45分頃、新女王アリが飛び立った場所の極く近くで羽を落として歩いている新女王アリを見つけました。
羽を落とした新女王アリが歩いていました
この1匹が、今年採集した初めての新女王アリとなりました。