月別アーカイブ: 2015年6月

新女王アリの穴掘り

クロオオアリの新女王アリは結婚飛行を済ませると、地上に下りてきて翅を落とし、地上を歩き回って、おそらく多くの場合はその日の日が暮れるまでには、穴を掘り始めます。

結婚飛行を終えた次の日の朝の様子 この写真には2匹の新女王アリの巣穴が写っている

結婚飛行を終えた次の日の朝の様子 この写真には2匹の新女王アリのまだ掘りかけの巣穴が写っています

この最初に掘る巣穴は、どんな巣穴なのでしょうか。それを知るには、「アンテネスト」を使えばよいことはわかっていたのですが、作り置きを切らせていたので、ついつい出来ずじまいになっていました。
やっと先日作り終え、新女王アリを「アンテネスト」に入れてみました。

アンテネストの中の女王アリと卵

アンテネストの中の女王アリと卵

既に卵を18個産んでいます。時期としてはもう遅すぎたようです。入れる際に散らばった卵を一ヶ所に集めて、卵のそばにじっとしています。巣穴を掘る様子はありません。
空気の流れがないと、巣穴の中の環境に近くなり、その場に落ち着いてしまいがちなので、活動室を兼ねた蓋はしないで、穴あきのアルミ板で蓋をしました。このまま、しばらく観察をしようと考えていますが、新女王アリが巣穴を掘るのは、産卵までの期間で、産卵後は穴掘りはしないのではないかと思います。別の言い方をすれば、産卵を開始すると言うことは、そこを巣穴と見做したと言うことであり、だからもう穴掘りはしないのだと考えてもよいでしょう。

2年目の単独の女王アリ

昨年採集したクロオオアリの中で、女王アリ単独で今も生きているのが2匹います。
その内の1匹(S/N14033)は、交尾後1ヶ月程経って卵を産み、7月の中旬には10個程の卵がありました。12月の越冬に入る時点で幼虫が5匹いて、今年の3月には幼虫が3匹になっていました。この3月に他のコロニーから幼虫を3匹加えましたが、6月の現時点では、幼生虫は1匹もいなくなっています。
もう1匹(S/N14091)は、採集以来一度も卵を観察した記録が無く、この1年間、幼生虫を持たなかった個体です。ところが、先日卵を産んでいるのに気付きました。卵は12個のようです。この女王アリは、子育てをすることができるのでしょうか。
そのまま、観察することも考えられますが、今回はこの女王アリに他のコロニーの幼生虫を与えることにしました。女王アリが死亡したクロオオアリの3つのコロニーから、合わせて繭を5個、幼虫を8匹取りだし、S/N14091に与えました。これまでの幾度かの実験からわかっていたように、この女王アリは、他のコロニーの幼生虫を(違和感なく)受け入れました。

他のコロニーの幼生虫を受け入れています

他のコロニーの幼生虫を受け入れています

ちなみに、ここで紹介した2匹の女王アリには、昨年から特製の蜜を与えています。今まで生きていられたのは、この蜜の餌を食べていたからでしょう。

片翅を付けたままの産卵

5月27日に採集したムネアカオオアリの女王アリの中に、片方だけ翅が付いているのがいます。
翅を付けて地上を歩いているところを見つけたのですが、見つけたその時から、翅を落とそうとしていました。左側の翅は根元から落ちたのですが、右側の翅は、体を曲げて、後ろ足を使って、幾度も落とそうとしているのですが落ちませんでした。私の方も、その時、この1匹に時間を割くわけにはいかないので、取り敢ず採集して持ち帰って観察することにしました。翅は、それ以後も落ちませんでした。

この女王アリは、それでも翅を落とそうとしていたのですから、交尾を済ませているとは思うものの、確信がありませんでした。ところが、今日になって、卵を8個程産んでいるのに気付きました。やはり、この片翅の女王アリは、交尾を済ませていたのでしょう。

産卵した片翅の女王アリ

産卵した片翅の女王アリ

クロヤマアリ紹介

現在、クロヤマアリを3コロニー飼っています。
1つは、2012年7月25日に白山で採集した女王アリとその家族です。働きアリが14匹、繭なし、幼虫と卵が少数あります。

K120725

K120725

2つ目は、2013年6月17日に北杜市の清里の森で採集した女王アリとその家族です。働きアリが5匹、繭のない蛹が2匹と幼虫です。卵はありませんでした。

K130617

K130617

3つ目は、2013年8月5日に北海道の十勝岳の麓の白金温泉で採集した女王アリとその家族です。働きアリが20数匹で、幼生虫はありませんでした。

K130805

K130805

ミカドオオアリの様子

昨年の9月1日に紹介したミカドオオアリですが、今年も昨年とほぼ同じ時期に同じ場所で採集しました。1匹は、彦根市内の千鳥ケ丘公園で4日早い15日に、もう一匹は、6日早く採集しています。ただ後者は、翅が取れていない状態で見つけて採集しましたので、今現在も生きていますが産卵はしていません。

M150527

M150515 今年採集したミカドオオアリの女王アリ 6月2日現在7個卵を産んでいる

ミカドオオアリの卵は、ミカン色をしています。

ミカン色のミカドオオアリの卵

ミカン色のミカドオオアリの卵

ここで、昨年採集したミカドオオアリの現在の様子を紹介しておきます。

M140519 働きアリ6 繭2 幼虫8 卵3

M140519 働きアリ6 繭2 幼虫8 卵3

M140602-01 働きアリ2 繭0 幼虫3 卵10

M140602-01 働きアリ2 繭0 幼虫3 卵10

M140602-02 働きアリ8 繭1 幼虫7 卵3

M140602-02 働きアリ8 繭1 幼虫7 卵3

いずれのコロニーも、昨年の12月4日に観察した時点と働きアリの数は同じでした。

2013年寄生のトゲアリの様子

昨年の9月1日から9ヶ月経過しての2013年寄生のトゲアリの様子です。(※ )の記述は昨年の9月1日のブログ「まもなく1年を迎えるトゲアリの様子」からの引用です。

T130912-04(SIMSMA01024 宿主クロオオアリ)には、トゲアリの働きアリはいません。クロオオアリの働きアリはおよそ30匹います。大きく育った幼虫が目立ち、卵もあります。(※トゲアリの働きアリはいません。幼虫と卵が多数あります。繭と大きめの幼虫がいますが、下記「7月・8月の記録」のクロオオアリの繭と幼虫と思われます。)

T130912-04

T130912-04

T130913-01(NESTCON01025 宿主ムネアカオオアリ)には、トゲアリの働きアリが20匹程度、繭が十数個、それに幼虫がいます。卵は見当たりませんでした。ムネアカオオアリの働きアリも、十分な数います。繁栄していると言えます。(※トゲアリの働きアリはいません。小さな幼虫が多数います。)

T130913-01

T130913-01

T130913-04(SIMSMA01028 宿主ムネアカオオアリ)には、トゲアリの働きアリが30数匹いますが、幼生虫(ここでは昆虫の卵・幼虫・蛹の総称 筆者の造語)はいません。ムネアカオオアリの働きアリの数は少なく7匹です。なお、トゲアリの働きアリの死体が1体ありました。トゲアリの働きアリの数を見る限りでは繁栄していると言えますが、この時期に幼生虫がいないのは意外です。(※トゲアリの働きアリは30匹程度います。たくさんの幼虫もいます。)

T130913-04

T130913-04

T130919-01(SIMSMA01089 宿主クロオオアリ)には、卵と幼虫がいます。トゲアリの働きアリはいず、クロオオアリの働きアリは9匹います。下の写真に写っているのが全部の幼生虫です。(※トゲアリの働きアリはいません。小さな幼虫が多数います。)

T130919-01

T130919-01

T130921-09(NESTCON01030 宿主クロオオアリ)には、トゲアリの働きアリが20匹弱、クロオオアリの働きアリが6匹います。特徴的なのは、蛹が5個ありますが、いずれも繭を作っていない点です。昨年の9月の蛹には全て繭がありました。(※トゲアリの働きアリは12匹のようです。卵や幼虫もたくさんあります。女王アリと働きアリが天井にぶら下がって卵や幼虫を抱えています。)

T130921-09

T130921-09

T130924-13(SIMSMA01043 宿主クロオオアリ)には、トゲアリの働きアリはいず(死体がある)、クロオオアリの働きアリが14匹います。繭が3個ありますが、卵と少なめの数の幼虫がいます。(※トゲアリの働きアリは1匹だけです。卵や孵化したばかりの幼虫がたくさんあります。繭が2個ありますが、下記「7月・8月の記録」のクロオオアリの繭と思われます。)

T130924-15(NESTCON01001 宿主クロオオアリ)には、トゲアリの働きアリが11匹と、繭1個と、少ない数の幼虫と卵があります。クロオオアリの働きアリは、30匹程度います。(※トゲアリの働きアリは11匹のようです。たくさんの卵や孵化したばかりの幼虫がいます。)

T130924-15

T130924-15

2014年寄生のトゲアリの様子

昨年の11月30日を最後に報告をしてこなかった、昨年寄生をしたトゲアリについて、それから半年が経過した現時点での様子を記録しておきます。13匹が寄生に成功したわけですが、その内1匹は死んでしまいました。現在12匹がコロニーを作りつつあります。

T140902-01(トゲアリの女王アリの個体番号 宿主はクロオオアリ)は、繁栄が見込まれます。卵・幼虫ともに多く、特にまだ小さな幼虫はとてもたくさんいます。繭は1つありました。昨年の11月30日には宿主の幼生虫(ここでは昆虫の卵・幼虫・蛹の総称 筆者の造語)はありませんでしたので、これらの幼生虫たちは、全てトゲアリの幼生虫と考えられます。

T140902-01

T140902-01

T140903-01(宿主はクロオオアリ)も、繁栄が見込まれます。相対的に卵が多く、大きく育った幼虫もいます。11月30日時点でクロオオアリの少量の小さな幼虫がいたことと、この時期クロオオアリの巣では、幼生虫が大きく育った幼虫になっていたり、蛹になっていたりすることから、この大きく育っている幼虫が、トゲアリの幼虫なのか、クロオオアリの幼虫なのかは断定できません。

T140906-03

T140903-01

T140906-03(宿主はムネアカオオアリ)には、繭4個、大きめの幼虫10匹以上、卵多数があります。11月30日時点では、ムネアカオオアリの幼虫が2匹でしたから、これらの幼生虫はほとんどがトゲアリの幼生虫だと言えます。このトゲアリのコロニーも繁栄しそうです。

T140906-03

T140906-03

T140906-39(宿主はクロオオアリ)には、卵と小さな幼虫が多数あります。11月30日にはクロオオアリの幼生虫はいませんでしたから、これらの幼虫は全てトゲアリの幼虫だと言えます。

T140906-39

T140906-39

T140906-40(宿主はクロオオアリ)には、繭が16個と卵が多数あります。幼虫はいません。11月30日の時点で、クロオオアリの幼虫が多数いましたので、16個の繭はクロオオアリではないかと思われます。このトゲアリの女王アリは、最近になって産卵するようになったと考えれば、卵と蛹の間の幼虫がいないことが説明できます。

T140906-40

T140906-40

T140906-04(宿主はムネアカオオアリ)には、幼虫が7匹と卵が多数あります。11月30日の時点で、ムネアカオオアリの幼虫が15匹いましたので、幼虫はムネアカオオアリかも知れません。

T140906-04

T140906-04

T140906-13(宿主はクロオオアリ)には、卵が多数と幼虫がいます。11月30日の時点で、幼虫はいませんでしたので、これらの幼生虫は全てトゲアリだと考えられます。卵から孵化しつつあります。

T140906-13

T140906-13

T140906-18(宿主はクロオオアリ)は、働きアリが3匹になっています。卵は5つですが、その内2つはへこんでいます。11月30日には、働きアリが26匹、幼虫が15匹いました。

T140906-18

T140906-18

T140906-21(宿主はムネアカオオアリ)は、幼生虫はほとんどが幼虫です。2匹ほど繭を作りかけています。11月30日には幼虫が2匹でしたから、これらの幼虫のほとんどがトゲアリの幼虫だと考えられます。

T140906-21

T140906-21

T140908-02(宿主はクロオオアリ)は、既に死んでいます。

T140908-26(宿主はクロオオアリ)は、1匹の大きな幼虫とまだ小さな十数匹の幼虫がいます。11月30日には7匹の幼虫がいましたから、大きな幼虫がクロオオアリなのかも知れません。

T140908-26

T140908-26

T140908-27(宿主はクロオオアリ)は、卵だけが多数あります。11月30日には、幼虫はいませんでした。

T140908-27

T140908-27

T140916-01〜04(宿主はクロオオアリ)は、羽化したばかりの幼虫が多い中で、大きな幼虫もいます。11月30日には幼虫はいなかったので、これらの幼生虫はトゲアリと考えられます。

T140916-01〜04

T140916-01〜04