日別アーカイブ: 2015年6月10日

新女王アリの穴掘り

クロオオアリの新女王アリは結婚飛行を済ませると、地上に下りてきて翅を落とし、地上を歩き回って、おそらく多くの場合はその日の日が暮れるまでには、穴を掘り始めます。

結婚飛行を終えた次の日の朝の様子 この写真には2匹の新女王アリの巣穴が写っている

結婚飛行を終えた次の日の朝の様子 この写真には2匹の新女王アリのまだ掘りかけの巣穴が写っています

この最初に掘る巣穴は、どんな巣穴なのでしょうか。それを知るには、「アンテネスト」を使えばよいことはわかっていたのですが、作り置きを切らせていたので、ついつい出来ずじまいになっていました。
やっと先日作り終え、新女王アリを「アンテネスト」に入れてみました。

アンテネストの中の女王アリと卵

アンテネストの中の女王アリと卵

既に卵を18個産んでいます。時期としてはもう遅すぎたようです。入れる際に散らばった卵を一ヶ所に集めて、卵のそばにじっとしています。巣穴を掘る様子はありません。
空気の流れがないと、巣穴の中の環境に近くなり、その場に落ち着いてしまいがちなので、活動室を兼ねた蓋はしないで、穴あきのアルミ板で蓋をしました。このまま、しばらく観察をしようと考えていますが、新女王アリが巣穴を掘るのは、産卵までの期間で、産卵後は穴掘りはしないのではないかと思います。別の言い方をすれば、産卵を開始すると言うことは、そこを巣穴と見做したと言うことであり、だからもう穴掘りはしないのだと考えてもよいでしょう。

2年目の単独の女王アリ

昨年採集したクロオオアリの中で、女王アリ単独で今も生きているのが2匹います。
その内の1匹(S/N14033)は、交尾後1ヶ月程経って卵を産み、7月の中旬には10個程の卵がありました。12月の越冬に入る時点で幼虫が5匹いて、今年の3月には幼虫が3匹になっていました。この3月に他のコロニーから幼虫を3匹加えましたが、6月の現時点では、幼生虫は1匹もいなくなっています。
もう1匹(S/N14091)は、採集以来一度も卵を観察した記録が無く、この1年間、幼生虫を持たなかった個体です。ところが、先日卵を産んでいるのに気付きました。卵は12個のようです。この女王アリは、子育てをすることができるのでしょうか。
そのまま、観察することも考えられますが、今回はこの女王アリに他のコロニーの幼生虫を与えることにしました。女王アリが死亡したクロオオアリの3つのコロニーから、合わせて繭を5個、幼虫を8匹取りだし、S/N14091に与えました。これまでの幾度かの実験からわかっていたように、この女王アリは、他のコロニーの幼生虫を(違和感なく)受け入れました。

他のコロニーの幼生虫を受け入れています

他のコロニーの幼生虫を受け入れています

ちなみに、ここで紹介した2匹の女王アリには、昨年から特製の蜜を与えています。今まで生きていられたのは、この蜜の餌を食べていたからでしょう。