月別アーカイブ: 2016年8月

年周期を迎えるトゲアリの現状

今年も、トゲアリの女王アリが結婚飛行をする時期になりました。
科学的授業実践研究会では、現在13家族のトゲアリのコロニーを飼育しています。そのコロニーの様子をまとめてみます。

トゲアリの13のコロニー

トゲアリの13のコロニー(中央の棚)

記号の説明
TW:トゲアリの働きアリ BW:クロオオアリの働きアリ RW:ムネアカオオアリの働きアリ
TQ:トゲアリの女王アリ M:繭(蛹) Y:幼虫 T:卵
前後:⇅ 以上:↑ 以下:↓
(例)M3Y20⇅T有:M3個 Yは20前後 Tはいくつか有る MYT多:MもYもTも多い MY0T有:MとYは無い Tはいくつか有る

2013年寄生のコロニー
1. S/N:T130912-04
TW10 BW4 M2YT有 TQ左前脚不自由
2013年9月12日採集 2013/09/13:クロオオアリの巣SIMSMA01024(2012/06/14採集)に侵入

2014/02/28:TQ比較的腹膨らむ BW18 Y8
2014/06/19:Q1 BW10のみ
2014/07/05:2つのクロオオアリのコロニーの幼虫16匹と23匹、繭5個と4個を入れる
2014/09/01:トゲアリの働きアリは無 幼虫と卵が多数 繭と大きめの幼虫がいるが、クロオオアリの繭と幼虫と思われる
2015/06/02:トゲアリの働きアリは無 クロオオアリの働きアリはおよそ30匹 大きく育った幼虫が目立ち、卵もある
2015/07/17:TW5 他記録無
2015/11/14:TW10 BW13
2016/06/22:TW10 BW5 M0Y0T有

2. S/N:T130913-01-2Q
TW17⇅ RW60⇅ MYT0 2匹のトゲアリの女王アリが共存 ともに無傷
2013年9月13日採集 2013/09/13:ムネアカオオアリの巣NESTCON01025(本巣 RQ有 2012/06/14採集)に侵入

2014/09/01:TW0 小さな幼虫が多数
2015/06/02:TW20⇅ RW多 M10数個Y有T0 繁栄している
2015/09/04:※TW既死? T15082806を入れる R15070のM1Y23を入れる (※この時はTWが見当たらないので死んだと思っていたが、実は死んでいなかった)
2015/09/05:M1が見当たらない Yはいくつもあり、全トゲアリが回りに寄り添っている
2015/11/14:TW多 RW多
2016/06/22:Q2 TW多 RW多 M0YT有

3. S/N:T130913-04
TW23 MYT多 Q無傷
2013年9月13日採集 2013/09/13:ムネアカオオアリの巣SIMSMA01028(容器は拡張蓋 RQの死体有り 2012/06/14採集)に侵入

2014/02/28:RW21Y0
2014/09/01:TW30⇅ Y多
2015/06/02:TW30⇅(死体1) RW7 MYT0 トゲアリの働きアリの数を見る限りでは繁栄していると言えるが、この時期に幼生虫がいないのは意外
2015/09/19:トゲアリだけのコロニー MY有
2015/11/14:TW30 RW1
2016/06/22:TW19 RW0 M10Y有T0?

4. S/N:T130921-09
TW40〜50 MYT多 Q無傷
2013年9月21日採集 2013/10/03:クロオオアリの巣NESTCON01030(本巣 2011/06/08採集)に侵入

2014/09/01:TW12 YT多 女王アリと働きアリが天井にぶら下がって卵や幼虫を抱えている
2015/06/02:TW20↓ BW6 蛹が5個ありますが、いずれも繭を作っていない 昨年の9月の蛹には全て繭があった
2015/11/14:TW20 BW0
2016/06/22:TW24 BW0 MYT有

5. S/N:T130924-15+T14
TW40⇅ BW10 M7Y3T4? Q左右前脚爪無 左中脚転節以下無 左後脚爪無
2013年9月24日採集 2013/10/03:クロオオアリの巣NESTCON01001(本巣 2011/06/08採集)に侵入

2014/09/01:TW11 たくさんの卵や孵化したばかりの幼虫がいる
2015/06/02:TW11 BW30⇅ M1YT少
2015/11/14:TW5 BW14
2016/06/22:T130924-15(2013/10/03寄生)のTQ1TW2BW15M0Y0T有とT140902-01のTQ無(2015/09/20既死)TW27BW0M多Y有T0を合併

2014年寄生のコロニー
6. S/N:T140906-03
TW30⇅ RW9 MYT多 Q右中脚・後脚基節以下無
2014年9月6日採集 2014/09/10:ムネアカオオアリの巣NESTCON01027(2012/06/14採集)に侵入

2014/11/30:RW100⇅ RY2
2015/06/01: M4Y大きめ10↑T多(これらの幼生虫はほとんどがトゲアリの幼生虫) 繁栄しそう
2015/07/02:TW4
2015/07/10:TW11
2015/07/17:TW 13
2015/11/14:TW10匹ちょっと RW9
2016/06/22:TW13RW10M0YT有

7. S/N:T140906-21
TW24 M0Y1T3 Q左前脚付節以下無
2014年9月6日採集 2014/09/11:ムネアカオオアリの巣ANTECB02003(2013/06/05採集 Q健在)に侵入

2014/11/30:RW36 RY2
2015/06/01: 幼生虫はほとんどが幼虫 2匹ほど繭を作りかけている これらの幼虫のほとんどがトゲアリの幼虫
2015/07/17:TW3
2015/07/26:TW5
2015/11/14:TW20 RW10 (女王アリ右触角柄節のみ)
2016/06/22:TW20RW5M有Y0T有

8. S/N:T140906-39
TW11 BW5 M1YT多 Q無傷
2014年9月6日採集 2014/09/11:クロオオアリの巣NESTCON01022(2012/06/14採集 Q健在)に侵入

2014/11/30:BW150 BY0
2015/06/01: 卵と小さな幼虫が多数(これらの幼虫は全てトゲアリの幼虫)
2015/07/10:TW0
2015/07/17: TW1
2015/11/14:TW17 BW9
2016/06/22:TW15BW6M0YT有

9. S/N:T140906-40
TWとても多い BW15 Q傷 確かめられない
2014年9月6日採集 2014/09/11:クロオオアリの巣NESTCON01024(2012/06/14採集 Q健在)に侵入

2014/11/30:BW150 BY多
2015/06/01: M16Y0T多 11月30日の時点で、クロオオアリの幼虫が多数いたので、16個の繭はクロオオアリではないかと思われる このトゲアリの女王アリは、最近になって産卵するようになったと考えれば、卵と蛹の間の幼虫がいないことが説明できる
2015/07/10:TW0
2015/07/17:TW0
2015/11/14:TW多数 BW多数
2016/06/22:TW23BW31MYT多

S/N:T140906-40

S/N:T140906-40

10. S/N:T140908-26
TW23⇅ BW7 M2Y多T0 Q無傷
2014年9月8日採集 2014/09/14:クロオオアリの巣SIMSMA01079(2012/06/14採集 Q冷凍死死体有り)に侵入

2014/11/30:BW25 BY7
2015/06/01: 1匹の大きな幼虫とまだ小さな十数匹の幼虫がいる 11月30日には7匹の幼虫がいたので、大きな幼虫がクロオオアリなのかも知れない
2015/07/17:TW 0
2015/07/26:TW0
2015/11/14:TW0 BW3 (幼生虫無)
2016/05/10:TQのみ生 T140903-01(TQ無 TW14BW18S1YT有 2014/09/04NESTCON01005に寄生)とT140908-27(TQ無 BW1TW2 2014/09/14SIMSMA01047に寄生)と合併

2015年寄生コロニー
11. S/N:T150828-03
TW2 RW40〜50 M12Y多T0 Q無傷
2015年8月28日採集 2015/09/04:ムネアカオオアリの巣R15051(2015年5月27日採集)に侵入

2015/11/14:TW0 RW20 (幼生虫有)
2016/06/22:TW0 BW40 M1YT有
2016/08/22:TW0 羽化介助できない?

12. S/N:T150920-03
TW数えきれないほど多数 BW50⇅ MYT数えきれないほど多数 Q傷 確かめられない
2015年9月20日採集 2015/09/20:クロオオアリの巣NESTCON01010(2011年6月08日採集)に侵入

2015/11/14:TW0 BW多
2016/06/22:TW0 BW多  MY多T有

nd4_3735

S/N:T150920-03

13. S/N:T150920-05
 TW0 BW17 RW5 M2YT有 右触角鞭節先端無
2015年9月20日採集 2015/09/20:クロオオアリの巣NESTCON01021(2012年6月14日)に侵入

2015/11/14:TW0 BW多数
2016/06/22:TW0 BW21 MY無T多
2016/07/09:R15-10RのRM10を加える

シリアゲアリの女王アリが初産卵

今年の7月31日、自宅の2階で小さめの女王アリらしいアリを見つけました。実体顕微鏡で見ると胸部に翅を落とした跡があり、女王アリです。シリアゲアリの女王アリでしょう。
それからほぼ1か月後の8月26日、卵を4つ産んでいるのに気づきました。コロニーが形成されるのが楽しみです。

頭部の上方に卵が4つある

頭部の上方に卵が4つある 8月26日撮影

アリの巣の同居人

オオアリの巣にはとても小さな生き物が同居しています。この生き物は、アリが食べ残している昆虫があると多く見かけますので、昆虫の死骸を食べているようです。乾燥した箇所にもいて、腐ったものを食べているようではありません。
自然発生するかのように現れるため、この生き物の発生を防ぐ術はまだ見つかっていません。

ND4_3577

左に写っているのがアリの巣の同居人

アリが砕いた昆虫の残滓を食べているところ

アリが砕いた昆虫の残滓を食べているところ

この生き物は、ダニの仲間ではなく昆虫のようです。体は頭部・胸部・腹部から成り、肢は6本あります。また、この昆虫には翅がありません。この昆虫は、体の大きさは様々ですが、どれも同じ姿をしているので、不完全変態をしていると言うよりも無変態のようです。
アリはこの昆虫に気づかないようです。また、この昆虫は、アリに危害を与えてはいないようです。
手元に『アリの巣の生きもの図鑑』『アリの巣のお客さん』という本がありますが、いずれにもこの昆虫は載っていなかったため、それ以上のことは分かりませんでした。
そこで、次のいずれかではないかと考えています。

その1:この昆虫は、アリの巣に寄生したり、共生したりする昆虫ではなく、言い換えれば、アリの巣の中で暮らすというわけではない。たまたま、アリの巣の中に昆虫の死骸があったので出現したに過ぎない。
その2:この昆虫は、アリの巣の中にいる固有の種で、昆虫の死骸を食べる昆虫である。アリの巣の中で暮らすことで、安全に暮らせ、かつ昆虫の死骸を提供される。アリにとっては、無害・無益な同居人で、片利共生となっている。

何年来か、いつもブレンドして作っている蜜を紹介します。
材料は次の7つです。

◇ グラニュ糖
◇ トレハロース
◇ シルクパウダー
◇ メープルシロップ
◇ 蜂蜜
◇ 黒みつ
◇ ローヤルゼリー

ND4_3606

トレハロースは、最近ではデパートなどの地階に出店している「富澤商店」や、製菓材料を販売している店に置いています。トレハロースは、糖の一種で、昆虫の体液中に蓄えられていて、活動する際にブドウ糖に変えて使われます。
シルクパウダーは、カイコの絹糸から作られた加水分解物でたんぱく質でできています。ネットから購入できます。(詳しくは2014年6月8日のブログ「画期的なたんぱく源」を参照)

ブレンドの手順ですが、初めにグラニュ糖とトレハロースとシルクパウダーを少量の水で溶きます。

グラニュ糖とトレハロースとシルクパウダーを少量の水で溶いたもの

グラニュ糖とトレハロースとシルクパウダーを少量の水で溶いたもの

次に、残りのメープルシロップと蜂蜜と黒みつとローヤルゼリーを加えますが、加える順番は前後しても構いません。(つまり、粉物は先に水で溶き、液類はその後で加えます)

ブランドし終わった蜜

ブレンドし終わった蜜

こうして作られた蜜は、糖分の他たんぱく質も含まれていますが、1年以上の長期に渡って、この蜜だけで飼育したオオアリのコロニーはありません。飼育に当たっては、常に昆虫も与えています。ですから、この蜜に加えているシルクパウダーの効用については不明のままです。
また、ローヤルゼリーも加えていますが、その効用についても検証できていません。

関連ブログ:
ローヤルゼリーの効用は」2011年8月10日
年を越して再度の子育てに成功するか」2013年3月31日
蜜作り」2013年4月16日
その後の蜜作り」2014年4月26日
画期的なたんぱく源」2014年6月8日

ミシマアリ やっと羽化

昨年の10月27日に庭で採集し、冬を越して今年の5月上旬に産卵を始めた種名不明の女王アリのコロニーに、8月1日、初めての働きアリが誕生しました。8月12日現在、働きアリが1匹、繭が1個、幼虫が3匹、卵が1個あります。

ND4_3566

8月12日撮影

この女王アリは、仮称「ミシマアリ」の女王アリによく似ていることが分かりましたので、以下、このミシマアリという名称を使います。
このミシマアリは、結婚飛行から産卵までに半年以上間があり、また、卵から羽化するまでに3か月を要しています。とても、子育てがゆっくりしています。

これが、この個体に例外的な特例なのか、この種の特性なのかは分かりません。

関連ブログ
2015年10月27日採集の種名不明の女王アリが産卵」2016年5月10日
仮称『ミシマアリ』のコロニーに女王アリがいた」2016年5月11日

新女王アリの家族が地中に入る

創巣期用のアンテネストで飼育している6コロニーの内、B16013が8月1日に地中に入りました。それから5日後の8月6日には、B16021が地中に入っていました。

8月1日に地中に入ったB16013のコロニー

8月1日に地中に入ったB16013のコロニー 8月8日撮影

8月6日に地中に入ったB16021のコロニー

8月6日に地中に入ったB16021のコロニー 8月8日撮影

まだ地上に留まっているB16018のコロニー 巣穴が掘られている

まだ地上に留まっているB16018のコロニー 巣穴が掘られている 8月8日撮影