月別アーカイブ: 2016年10月

庭のクロオオアリの半日

季節が進んで庭に長時間いても苦痛ではなくなりました。これまでは暑さと蚊がとても不快でしたが、適度な温かさになり、蚊に刺されることもほとんどなくなり、何時間でも気持ちよく庭で過ごせるようになってきました。
昨日10月15日、B巣のすぐ近くに蜜器を置いておきました。人為的にB巣のクロオオアリに蜜器の場所を知らせる事はしませんでしたが、巣の近くなのでその内に蜜に気づくのではないかと期待していました。けれども、15日の夕刻になってもクロオオアリは訪れず、やって来たのはクロヤマアリでした。

今日16日、9時過ぎに蜜器のところへ行ってみると、クロオオアリが1匹来ていて、クロヤマアリが少しいました。蜜はほぼ無くなっています。そこで、蜜を5mL付け足しました。

5mLの蜜を補給した直後 9時11分撮影

5mLの蜜を補給した直後 9時11分撮影

その蜜を飲んで巣に帰ったのでしょう、B巣からぞくぞくと働きアリが出てきました。

連なるように続々と出てきた

巣穴から連なるように働きアリが続々と出てきた

蜜を付け足してからわずかな時間で、クロオオアリが蜜器にたくさん集まりました。

9時18分撮影

9時18分撮影(蜜を付け足してから7分後の様子)

ところで、たくさんの働きアリが蜜器の方面へ歩いていったのですが、その蜜器の場所を越えて歩いていくアリたちがいました。なぜだろうと思っていると、蜜器からほんの少し離れた場所に数匹の働きアリが一ヶ所にかたまって何かをしていました。そこには、クモの死体がありました。実は、この場所の蜜器を最初に見に来た時に、クモの巣に引っ掛かり、その時は、クモの巣を払っただけでしたが、付け足す蜜を持ってきた時に、地面を這っているそのクモを見つけ、足で踏みつけて殺していました。そのクモの死体だったのです。

クモの死体を処理するクロオオアリ

クモの死体を処理するクロオオアリ 9時20分撮影

やがて、解体したクモの一部を運んでいくクロオオアリを見つけました。

解体したクモの一部を運ぶクロオオアリ

解体したクモの一部を運ぶクロオオアリ 9時21分撮影

巣の中に運び込む 9時23分撮影

クモを巣の中に運び込む 9時23分撮影

更にもう一匹がクモの死体を運んでいきました。

9時25分

9時25分撮影

巣穴に入るところ 9時30分撮影

巣穴に入るところ 9時30分撮影

ふと足下を見ると、緑色のものを銜えて歩いているクロオオアリがいました。以前にもよく見た風景でしたので、アリが銜えているものが幼虫であることがすぐに分かりました。

緑色の幼虫を狩してきたクロオオアリ

緑色の幼虫を狩してきたクロオオアリ

どこに帰るのか後を追ってみると、先ほどの巣穴とは違う穴の中に入っていきました。

別の巣穴

別の巣穴

クモを解体して巣へと運んでいったことや、緑色の幼虫を狩したことから、この時期もたんぱく源を必要としていることが分かります。
そうこうしている内に、蜜器の蜜がなくなってしまいました。

10時38分撮影 30分も経たない内に5mLの蜜が飲み干された

10時38分撮影 30分も経たない内に5mLの蜜が飲み干された

再び、蜜を補給しました。

補給直後の様子 10時40分撮影

補給直後の様子 10時40分撮影

さて、アリの道の道しるべについて、10月12日のブログで、「ところで、仲間無しで1匹だけで、地面に道しるべを付けながら花壇脇の蜜器まで行ったクロオオアリがいました。どこの巣から来たものなのかは確かめていません。1匹だけで道しるべを付けながら歩いていくのを見るのは初めてのことです。このようなことはよくあることなのか、またどのような意味があるのか、今後の観察で明らかになればと思います」と記しましたが、この単独で道しるべを付けながら蜜器へと向かう働きアリを短時間に3匹、目にしました。

腹部を曲げて道しるべを付けながら、単独で進むクロオオアリ

単独で腹部を曲げて道しるべを付けながら蜜器へと進むクロオオアリ

この場所の蜜器の先客はクロヤマアリでしたが、クロオオアリが来るようになってからは、クロヤマアリは全てではないのですが、追い払われています。中にはクロオオアリにかみ殺されたものもいます。追われたりして危険を感じると、蜜器から飛び降りるものもいます。境界杭の麓周辺には、クロオオアリとクロヤマアリがいて、クロヤマアリが杭を登るのをクロオオアリが防いでいるようにも見えます。

クロヤマアリが蜜のあるところへ行くには一苦労

クロヤマアリが蜜のあるところへ行くには一苦労 11時18分撮影

小さなアブのような生き物がやって来ていました。ノヒラマメヒラタアブのオスのようです。

ノヒラマメヒラタアブのオスのようだ

ノヒラマメヒラタアブのオスのようだ

高速道路」を見ると、いつもはクロオオアリが行き来しているのですが、姿がありません。日常的にこの「高速道路」を利用しているのが、今蜜器にたくさん集まっているB巣のアリたちです。極く近くで蜜が得られることになったので、わざわざ遠くの庭の外の林まで、蜜を求めて出かける必要がなくなったのでしょう。

コンクリートの溝の縁を歩くクロオオアリの姿はなかった 11時56分

コンクリートの溝の縁を歩くいつものクロオオアリの姿はなかった 11時56分

ところで、B巣の巣口と蜜器までの歩行直線距離を測ってみました。50cm弱でした。

巣口と蜜器までの直線歩行距離は50cm弱

巣口と蜜器までの歩行直線距離は50cm弱

午後になり、一つ確かめておきたいことがありました。緑色の幼虫を運び込んだ巣穴のコロニーと、蜜器の蜜を吸っているコロニーは、同じコロニーなのかということです。
巣口は1.1m程離れいます。

左が幼虫を運び込んだクロオオアリの巣口、右が蜜を吸いに来ているクロオオアリの巣口

左が幼虫を運び込んだクロオオアリの巣口、右が蜜を吸いに来ているクロオオアリの巣口 約1.1m離れている

もし、同じコロニーなら、幼虫を運び込んだ巣口から出てきたアリを蜜器へ人為的に移動させれば、帰りは元の巣口(写真の左)に帰らずに、右の巣口(蜜を吸いに来ている巣口)に帰るかも知れません。そこで、左の巣口から出てきたと思えるクロオオアリを捕らえて、空間移動させて(人為的に)蜜器へと運びました。

手前右から2体目が左の巣のクロオオアリ

手前右から2体目が左の巣のクロオオアリ

蜜器では、他のクロオオアリから受け入れられていて、喧嘩は起こりませんでした。これだけでも、同じコロニーのアリであることが実証されたようなものですが、はたしてどの巣口に戻るのでしょうか。やがて腹部が膨らむと、地面へと下りて行きました。歩き方や歩く方向が、他の回りのアリとは違っています。このアリは、大体は右の巣口の方面へと上っていきましたが、迷っている時の歩き方をしていて、巣口の辺りを通り越して、更に上へと斜面を登っていきました。帰路が全く分からないようです。同じコロニーのアリなら、仲間が既に作っている道しるべが分かると思うのですが、全くその道しるべに気づかないのか、利用しなかったのです。
ずいぶん辺りを迷って歩いた後、おそらく偶然に、元の左の巣穴の場所が分かったようです。左の巣穴に入っていきました。再び出てきて、蜜器へと向かうのではないかとしばらく見ていましたが、確かめるまでには至りませんでした。もし、先ほどのアリが出てきたとしても、あれほど迷って歩き回っていたのですから、蜜器へたどり着けはしないでしょう。もちろん、道しるべを付けながら歩いていたのでもないのですから、なおさらです。

左右の巣口のクロオオアリは、同じコロニーのようには思えるのですが、確かな検証をしてみることにしました。両方からクロオオアリを捕らえ、試験管の中で出会わせました。

喧嘩が起こらなかった

喧嘩が起こらなかった

喧嘩は起こりませんでした。更に念押しになったのですが、2匹のアリを1匹ずつ元の試験官に戻し、試験管に入っている状態で、試験官の口を巣口に近づけ、巣口に入っていくところを観察しました。その際、上写真左側の頭部の大きなアリは左の巣口のアリでしたので右の巣口に、右の頭部の小さい方のアリは右の巣口のアリでしたので左の巣口に、試験官の口を近づけました。どちらもすんなりと巣の中に入っていき、慌てて飛び出してくるということはありませんでした。
更に別の働きアリをそれぞれの巣口近くで捕らえ、同じことを繰り返しました。結果は同じでした。

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左右の巣口近くで採集したクロオオアリ 喧嘩をしない この後、採集した巣口とは違う巣口へ戻したところ、すんなりと巣の中に入っていった

庭のB巣C巣D巣が別のコロニーか調べる

これまでに庭には7つのクロオオアリのコロニーが棲息していることが分かっています。

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その内、比較的早くから棲息していることが分かっていたA巣・B巣・C巣・D巣が、互いに別のコロニーかどうかについては、未だに検証していませんでした。もっと早い時点ですべきであったのですが、本日やっとその検証をすることにしました。
検体は、それぞれの巣の近くを歩いている働きアリです。小型の小さめのキャップ付きの試験官に入れ、キャップを外して試験官の口同士を合せます。こうすることで異なる巣の働きアリ同士が出会うようにします。

B巣とC巣では:

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B巣とC巣の働きアリ

C巣の働きアリは、小さな幼虫を銜えて巣に戻る直前に捕らえられました。その幼虫を銜えたまま、試験管の中でB巣の働きアリに出会いました。その事があってかどうかは分かりませんが、C巣の働きアリの方から攻撃していました。激しい喧嘩にはならず、両者ともに怪我はしませんでした。

C巣とD巣では:

C巣とD巣の働きアリ

C巣とD巣の働きアリ

B巣とC巣の場合と同じく、どちらかがほぼ一方的に攻撃していました。この場合も、激しい喧嘩にはならず、両者ともに怪我はしませんでした。

B巣とD巣では:

B巣とD巣の働きアリ

B巣とD巣の働きアリ

とても激しい喧嘩になりました。B巣の働きアリの方が体が一回り大きく、B巣の働きアリの方から喧嘩をしかけ、常に優勢でした。短時間でD巣の働きアリは深手を負い、歩けなくなりました。

以上の実験から、B巣・C巣・D巣の3つのコロニーは、別のコロニーである事が分かりました。ちなみに、A巣についていえば、巣の出入り口があった場所の地面が崩れて以来、姿を見なくなっています。死滅したとは考えてはいないのですが、今日も働きアリの姿がありませんでしたので、検証できませんでした。また、先日の10月12日に見つけたG巣については、しばらくの間巣口からの働きアリの出入りを待っていましたが、働きアリは現れませんでした。A巣とG巣については、またの機会に検証する事になります。

アンテネストの長所

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S/N:B15017の片面

2014年7月13日開発のアンテネストで飼育しているクロオオアリのコロニーは2家族あります。
一つは、2015年5月27日採集のクロオオアリのコロニー(S/N:B15017)で、同年6月10日のブログ「新女王アリの穴掘り」に登場するコロニーです。アンテネストでの生活は1年と4か月になります。

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S/N:B15017のもう片面

とても大きな空洞が作られています。

もう一つは、2012年6月14日採集のクロオオアリのコロニー(S/N:B120614-86)で、2014年7月からアンテネストで飼育しています。

 

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S/N:B120614-86の片面

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S/N:B120614-86のもう片面

どちらのコロニーも順調に家族を増やしています。特に後者の方は、大家族になっています。

アンテネストは、巣穴を観察するために作られた人工巣ですが、実際に飼育してみて他の人工巣とは違う長所が見えてきました。その長所とは、飼育器の中が汚れにくいという点です。土を使わない飼育器では、アリの排泄物(昆虫の食べかすや仲間の死骸や繭の殻等ではない)がたまって目立つようになりますが、アンテネストではその汚れが目に付きません。おそらく、土は小さな粒の集まりですから、一粒の表面積は小さくても、それが無数に集まることで、土全体の表面積は無限に広くなるのでしょう。そのため、排泄物が土の粒の表面に薄く広がり、微生物等で分解されるのでしょう。
また、昆虫の食べかすや仲間の死骸や繭の殻等のゴミは、上部の活動室に運ばれれば、良く乾燥した土に混ざり、腐敗しにくくなるようです。飼育者は、ゴミと混ざったこの土を取り除けば、飼育器内が清潔に保たれます。

活動室の様子 運び出された土は良く乾燥している

活動室の様子 運び出された土は良く乾燥している

アンテネストは、飼育器の中が汚れにくいという長所の他に、常時水を与えなくても良いと言う長所もあります。土は常に適度に湿っている必要はありますが、乾燥気味になった時に土に水を含ませれば良いので、かなり長い間水を与えなくてすみます。他の人工巣のようにペットボトルのキャップなどに入れた水が腐るということはありません。その点で、手間が省けるのです。

関連ブログ
2年目のアンテネストのその後の様子」(2016年7月3日)
2年目のアンテネスト」(2016年4月21日)
新女王アリの穴掘り」(2015年6月10日)
新しいアリの飼育器を開発(オオアリ用)」(2014年7月13日)
新しい飼育器を開発しています」(2014年7月5日)

カラスノエンドウの保護区を作る

10月9日のブログ「野外蜜器を設置」の中で、次のように記した部分「春にはアリの蜜源になっていたカラスノエンドウなども、雑草用に特設する場所を除いて除草します」がありましたが、この〈雑草用に特設する場所〉を庭に2ヶ所作っています。

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もう既にカラスノエンドウはここまで育っています。

10月13日撮影

10月13日撮影

庭で7番目になるクロオオアリの巣を発見

高速道路」の脇に設置した蜜器へ通うクロオオアリは、溝の上面のコンクリートの上を歩いていますが、溝の底を歩いているクロオオアリがいました。腹部は十分に膨れていて、蜜を吸っての帰りのようです。少し不審に思い、後を追ってみると、溝の底面と側面との境の穴の中に入っていきました。

溝の底面と側面の境目のすき間に巣の出入り口があるようだ

溝の底面と側面の境目のすき間に巣の出入り口があるようだ

まもなく、もう一匹が溝の底を歩いて近づいてきました。このアリも先ほどと同じ箇所で姿を消しました。確かにそこはアリの巣の出入り口です。
この場所はD巣に近く、D巣である可能性がありますが、別のコロニーの巣の可能性もあります。そこで、取り敢ずこの巣をG巣と名付けることにします。この巣は庭の7番目に発見した巣になります。
このG巣から出てきたアリの後を追うと、「高速道路」の脇に設置した蜜器へ行きました。この蜜器には既にB巣のクロオオアリが来ていましたから、喧嘩になると考えられますが意外にも喧嘩は起こっていませんでした。花壇脇の蜜器では喧嘩が起こっていたことを考えると、とても不思議な感じです。

下の図は、庭のクロオオアリの7つの巣の位置図です。

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蜜器へ別の場所からやって来た

玄関前の蜜器から戻ってくるクロオオアリが、C巣へと下る方向へ向きを変えずに、まっすぐに歩いていくところを見つけました。後をつけてみるとD巣に戻りました。

中央がD巣の出入り口

中央がD巣の出入り口

C巣とD巣は別のコロニーと考えていますので、これはたいへん奇妙なことです。
玄関前の蜜器を人為的に見つけさせたのはC巣のクロオオアリだったので、D巣のクロオオアリが、C巣より更に遠くにある餌器を偶然見つけることは考えにくいことなのですが……。

花壇脇の蜜器でもある事変が起こっていました。働きアリ同士が喧嘩をしているのです。

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最初は花壇に定住したF巣のクロオオアリに人為的に蜜の在りかを教えていたのですが、その翌日にはC巣のクロオオアリが来るようになっていました。ところが喧嘩が起きたと言うことは、C巣以外からもこの蜜器にやって来たと言うことになります。そのC巣以外のアリがどこからやって来たのかについては確かめられませんでしたが、F巣ではないことは分かっています。

以上のことは観察で分かった事実ですから、どうやら、私が思っていたよりも、クロオオアリは蜜を探し出す能力に長けていると言えそうです。

道しるべ

11日の午後3時過ぎに、クロオオアリの「お出かけ」を見ました。いわゆる行列ですが、自宅の庭でお出かけを見かけるのは初めてでした。

写真では5匹のクロオオアリが写っている

写真では5匹のクロオオアリが写っている

先頭に付いて歩いて行く一塊は5匹ですが、後方にもクロオオアリがいましたので、お出かけしているのは5匹以上なのかも知れません。その場所は、玄関前に設置している蜜器へ行くのに使われていた道と同じ道でした。この行進の場合も、先頭の1匹のアリだけが、リズミカルに腹部の先を地面につけて歩いていました。行き場所を確かめるために後をつけてみると、やはり玄関前の蜜器にたどり着きました。
これまで幾度となく自宅の庭以外で同様の行列を見てきましたが、いずれもその行列の起因までははっきりしませんでした。というのは、隊列を組んで不特定の餌を探しに行っているのか、それともある場所にあらかじめ餌があることが分かっていてその場所に行っているのか、そのどちらなのか確証できていなかったのです。けれども今回の観察からは、特定の場所へ特定の餌(この場合は蜜)を求めて、先頭のアリが仲間を案内したことが分かります。
翌日の12日にも、「お出かけ」を見ています。この場合は、D巣(「庭のクロオオアリの巣の位置図」参照)から出てきて花壇脇の蜜器へと向かいました。

12日11時0分撮影

12日11時0分撮影

ところで、仲間無しで1匹だけで、地面に道しるべを付けながら花壇脇の蜜器まで行ったクロオオアリがいました。どこの巣から来たものなのかは確かめていません。1匹だけで道しるべを付けながら歩いていくのを見るのは初めてのことです。このようなことはよくあることなのか、またどのような意味があるのか、今後の観察で明らかになればと思います。

12日10時51分撮影

1匹だけで腹部の先で道しるべを付けながら蜜器へと向かうクロオオアリ 12日10時51分撮影

関連ブログ
クロオオアリの行列の起因は?」(2016年5月14日)
アリの道」(2016年4月14日)
マーキングを撮る」(2013年6月12日)

F巣に蜜を与える

10月11日の午後3時前に、F巣を見てみると、人工巣を取り除いた後の窪みにクロオオアリの働きアリが2匹いました。そこで、この日新たに作った蜜器を近くに設置して、人為的にこの2匹を蜜器の蜜に気づかせました。

蜜を飲むF巣の働きアリ 15時3分撮影

蜜を飲むF巣の働きアリ 15時3分撮影

2匹を捕らえた場所は巣のあるところで、蜜器はそこから80cm程離れていましたから、迷わずに巣に帰れるか心配でしたが、2匹ともに迷う様子もなく巣へと帰りました。

巣穴のある場所に戻ったところ 15時10分撮影

巣穴のある場所に戻ったところ 15時10分撮影

その後何度か蜜を吸いに来ていました。

15時36分撮影 オオズアリもやって来ている 左上方には兵アリの姿もある

15時36分撮影 オオズアリもやって来ている 左上方にはオオズアリの兵アリの姿もある

翌日の12日、11時ごろ見るとたくさんのクロオオアリの働きアリが蜜器に集まっていました。

12日11時3分撮影

12日11時3分撮影

けれども、これらのアリは、F巣の働きアリではないことが分かりました。F巣の巣穴から出入りする働きアリの姿は、終日しばしば見て回りましたが、目にすることは終にありませんでした。

玄関近くに蜜器を置く

前日に蜜器に集まっていたオオズアリは、蜜器を玄関前の洗い場の水切りの上に置いておくと、一晩の内にいなくなっていました。

10日の午後3時半過ぎに、1匹のクロオオアリが玄関前の芝生の中を歩いているのを見つけました。そこで、このアリを捕らえ、見つけた場所に蜜器を設置し、蜜を見つけさせました。

15時46分撮影

人為的に蜜を見つけさせた 15時46分撮影

やがて蜜をいっぱい吸うと、帰り始めました。このアリはいったいどこの巣のアリなのでしょうか。後をつけてみました。するとC巣(「庭のクロオオアリの巣の位置図」を参照)に戻りました。しばらくして、同じこの個体と思われるクロオオアリが巣から出てきて、蜜器まで戻ってきました。

再び蜜器に戻ってきたクロオオアリ

再び蜜器に戻ってきて蜜を吸い始めたクロオオアリ 16時10分撮影

蜜器から巣までの距離はかなりありそうです。測って見ると歩行距離は17m強でした。往復すれば34m強になります。三度戻ってくるところまでは観察して、この日の観察は終えました。

翌日10月11日、朝の7時半頃見ると、4匹が蜜器に集まっていました。前日の1匹が仲間を呼び寄せたようです。

午前7時28分撮影

午前7時28分撮影

更に9時ごろには、もっとたくさん集まっていました。

午前8時59分撮影

午前8時59分撮影

野外蜜器を設置

10月8日のブログで、クロオオアリの2つのコロニーが自宅の庭への移植に成功していたことを書きましたが、この2つのコロニーの今後の繁栄を考えると、蜜源を巣の近くに確保する必要がありそうです(たんぱく源はこれらのコロニーにも容易に確保できそうです)。以前から庭に巣があるクロオオアリに関して言えば、今年の6月14日のブログ〈クロオオアリの行動範囲とアリの「高速道路」〉で書いているように、庭を出て隣接する林の中で蜜源を確保していますが、他方これらの2つのコロニーはまだ家族の規模が小さく、おそらくそれほど遠くへは遠征できないでいると思われます。

ところで、庭の環境についてですが、今年の春から大きく植栽を変えています。これまで庭に植わっていたほぼ全ての樹木を伐採し、新たに40本を越える果樹を植え、ガザリアなどの花やミント・イチゴ・野菜などを植えています。また、庭全面に芝が広がるようにしています。そして、今後は雑草が生えないように庭全体を管理します。これまで、春にはアリの蜜源になっていたカラスノエンドウなども、雑草用に特設する場所を除いて除草します。このことは、庭に隣接して林があるとは言え、以前から庭に棲み付いていた大家族のクロオオアリにも大きな影響を与えることになります。

このような事情から、10月9日、庭のクロオオアリたちに人工的に蜜を与える試みをしてみることにしました。
蜜を入れる器は、地面に直置きせずに、少し高めにして設置します。そこで、プラスチック製の境界杭を使い、その頭の部分に自家製のアクリルの蜜器をはめ込むことにしました。

野外蜜器の全体像

野外蜜器の全体像

蜜を入れる部分は、縦横3.1cm高さ1cmで、容積としては最大9.61mLあります。

蜜を入れたところ

蜜を入れたところ 17時7分撮影

ただ蜜は5mL入れることにしました。屋根に当たる部分はとても簡易的なつくりですが、雨水が入りにくくなっています。また、杭の頭の部分の縦横は30mmなので、蜜器の下部の内壁は縦横31mmにしていて、杭とは容易に脱着ができるようにしています。

蜜器の図面

蜜器の図面

蜜器はB巣のクロオオアリ(「庭のクロオオアリの巣の位置図」を参照)が日常的によく使っている道のすぐ横に設置しました。それから、設置場所の近くまで来た往きのクロオオアリを捕らえ、蜜器に置きました(上の2つの写真はその時の様子)。やがて、蜜を腹部いっぱいに吸って境界杭を伝って下りていきます。このクロオオアリは、蜜器の設置場所より更に先へ方へと向かっていましたし、いきなり蜜器の上に置かれたのですから、帰り道が分かるかどうか心配でしたが、すんなりと迷うことなく帰路につきました。巣までかなりの距離がありますから、再び蜜器に戻ってくるまでには時間がかかりそうでした。
ところが、ほんのしばらくすると、オオズアリが蜜器にたくさん集まってきました。

蜜器に集まったオオズアリ まだ大型の働きアリは来ていない 17時17分撮影

蜜器に集まったオオズアリ まだ大型の働きアリは来ていない 17時17分撮影

そこで、蜜器を杭から取り外し、今日の観察はここまでとしました。

庭にクロオオアリが定住

今年の4月にいくつものアリのコロニーを庭に移植したことについては、既に4月のブログで触れています。

蟻を庭に放つ その1(4月12日)4コロニー
蟻を庭に放つ その2(4月16日)1コロニー
蟻を庭に放つ その3(4月23日)4コロニー
蟻を庭に放つ その4(4月30日)13コロニー

これらの移植の成否を知るために、10月8日、地面に埋込んでいた飼育器を取り出しました。すると、4月12日に移植した4つのコロニーの内、クロオオアリの2つのコロニーだけが移植に成功していました。今年移植を試みた全22コロニーの内のわずかに2コロニーだけですが、今回は、2010年に最初に移植を試みて以来の初めての成功になるかも知れません。(これまでも移植に成功したかにみえたことはありましたが、数年に渡って棲みつくことはありませんでした)

この2コロニーの定住の要因については検証できていませんが、他に移植したコロニーの場所とは違って、極く近くに春から初夏にかけてカラスノエンドウが生えていました。また、飼育器はカップ型のコンクリート人工巣で、地中に埋められた後も棲み易かったと考えられます。但し、「これらは、採集からの飼育年数は長いのですが、家族の規模が小さいコロニーです」(4月12日のブログからの引用)と書かれているように、良く繁栄していたコロニーではありませんでした。

SIMSMA01057 巣穴から外を伺っている個体も見られる

SIMSMA01057 巣穴から外を伺っている働きアリも見られる E巣と名付ける

NESTCON02005 まだ人工巣を使っていた 繭も見える しばらくして全て地中へと移動した

NESTCON02005 まだ人工巣の中にもいた 繭も見える しばらくして全て地中へと移動した F巣と名付ける

巣の名称については「庭のクロオオアリの巣の位置図」を参照