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「移植」を試みる

昨年の4月に数回に渡って、合わせてクロオオアリで9家族、ムネアカオオアリで13家族のコロニーを庭に「移植」しました。(詳しくは「蟻を庭に放つ その1」「蟻を庭に放つ その2」「蟻を庭に放つ その3」「蟻を庭に放つ その4」参照) その結果については、今年4月2日のブログ「『移植』組が地上に出てきた」で触れています。
これらの「移植」は、既にコロニーができている飼育中の家族を庭に移住させていました。しかし、この方法とは別に、既に昨年から、結婚飛行を終えたばかりの新女王アリを直接庭に放って、創巣期から巣作りをさせたいとも思っていました。だだ、昨年は極端に採集数が少なかったため、この「移植」に回せる数の女王アリがいませんでした。そこで、今年こそはと思っていたのですが、幸いまとまった数のクロオオアリの女王アリが採集できましたので、この方法での「移植」を試みました。

前日の21日に採集したクロオオアリ10匹を22日の夕刻に「移植」しました。
まず直径25cm、深さ15cm程の穴を掘ります。

次に、中目の篩をかけた真砂土を入れ、軽く押して、水で引き締めます。

更に地面の高さまで真砂土を入れて、再び水を含ませて、地面は完成です。

女王アリを真砂土に移し、クリーンカップを被せます。

女王アリを移植したばかりの頃 この女王アリはクリーンカップの上まで上がってきている 15時46分撮影

日差しを避けるため、お皿などを被せておきました。

お皿などを被せて日差しにカットした (この写真は翌日に撮影したもの)

五時半頃にみると、複数の女王アリが穴を掘り始めていました。

穴を掘り始めた女王アリ 17時23分撮影

つぎの表は、「移植」した個体のシリアル番号と、その後の様子です。25日までには、全ての女王アリが、穴を掘って地中に巣を造ったようです。
(※24日は終日雨のため、記録なし)

S/N 5/23 07:15 穴掘りの様子 5/23 17:45 穴の中 5/25 穴の中
B17036  ×  ○  ○
B17037  ○  ×   ○
B17038  △ ×   ○
B17039  △   ○
B17040  ○   ○
B17041  ○   ○
B17043 ×  ○   ○
B17044  ○   ○
B17045 ×  ×   ○
B17046 ×  ×   ○

蒜山高原へ

今回の採集の舞台となるヒルゼン高原センター付近

5月19日(金)の天気予報では、20日と21日は気温が上がり、蒜山(岡山県北)でも30℃近くになるとのことでした。ここまで気温が上がると、オオアリの羽アリが結婚飛行を行う可能性がとても高くなると思われます。そこで、急遽、蒜山高原へ採集旅行に出かけることにしました。
20日の午前中に自宅を出、11時過ぎに現地に着きました。昨年、ムネアカオオアリが1匹採集できたヒルゼン高原センター近くの場所で、オオアリの女王アリを探していると、運良く1匹見つけました。クロオオアリの女王アリです。同じ種のクロオオアリの働きアリから攻撃を受けていました。

クロオオアリの働きアリに右触角を咬まれている 11時41分撮影

既にこの場所ではクロオオアリの結婚飛行が始まっていたことが分かります。午前中の発見ですから、この女王アリは昨日結婚飛行をしたのでしょう。
辺りを詳しく探しましたが、女王アリはこのクロオオアリの女王アリ1匹だけでした。
その後、夕刻まで、昨年オオアリの女王アリが採集できた蒜山高原内の他の箇所を回ってみましたが、1匹も採集できませんでした。
夕刻になって、再びヒルゼン高原センター付近に行ってみると、羽アリが巣口から出ていました。巣が密集しているところでは、およそ10mの範囲に複数の巣口がありました。

複数の巣口の一つ 16時39分撮影

複数の巣口の一つ 16時48分撮影

複数の巣口の一つ 樹の根元から出ていた 16時54分撮影

5時半頃になると、よりたくさんの羽アリが出てくるようになりました。

直前の写真と同じ場所 羽アリの数が増えてきている 17時23分撮影

幹を上っていく女王アリ 17時23分撮影

ところで、その間に奇妙なことに出会いました。その一帯を歩いて女王アリを探していたのですが、翅の付いたムネアカオオアリの女王アリが地面を歩いていました。

腹部が無くなっている 17時4分撮影

よく見ると、腹部が全くないのです。それでも元気に歩いていました。どうしてこのようなことになったのでしょう。この1匹だけかと思っていましたが、次々と同じことに出会うのです。

3匹採集した時点で撮影 17時15分撮影

結局この日、同様に腹部を失って地面を歩いていたムネアカオオアリを22匹も見つけました。見つけた場所は、このブログ冒頭の写真に写っている歩道兼自転車道と、下写真の道路を隔てた広々とした駐車場です。

駐車場 写真右奥には使われなくなった更に広い駐車場がある

広範囲に亙って見つかったこと、また駐車場も含めムネアカオオアリの巣がない場所で見つかったこと、翅を落とした腹部のない女王アリは見つからなかったことから、巣口で何者かに狙われたのではなく、飛行中に襲われたと考えられるでしょう。それにしても、他に体に怪我もなく、見事なほどに腹部のみがないのです。

翌日21日は、早朝から採集を始めました。気温は12°前後でした。

5時38分の気候

ヒルゼン高原センター周辺を大きく一回りしました。そうすることで分かったことは、前日にオオアリを採集した付近が最もクロオオアリの巣の密度が高いということと、近くに雑草や樹のない芝生のみの箇所では、クロオオアリの働きアリはほとんど見られないということです。逆に、下の写真のような環境(雑草や樹がある)にはクロオオアリが棲息していました

こうした環境(雑草や樹がある)のところにはクロオオアリがいた

さて、2日間を通してクロオオアリとムネアカオオアリの女王アリを合せて55匹採集しました。採集した箇所のほとんどは冒頭の写真の箇所で、写真に写っていない反対側の歩道と自転車道を含みます。歩道と自転車道の横には雑草が生えていますが、そこでは採集していません。そこにも、翅を落とした女王アリがいるとは思いますが、雑草に隠れて姿が見えないのでしょう。
不思議に思うのは、道路を隔てた広々とした駐車場には、1匹も翅を落とした女王アリがいなかったことです。歩いていれば、とても簡単に見つけられますから、本当にそこにはいなかったと言えます。結婚飛行で、空中高く飛び上がれば、交尾後どこにでも地面に落ちてくるように思うのですが、そうなってはいなかったのです。これは、今回の偶然なのでしょうか。
また、比較的数多く女王アリが採集できた箇所は、既述のおよそ10m程の範囲ですが、空中高く飛び上がったとすれば、この場所に降り立つことはないでしょう。考えられることとしては、他巣が近くにあるため、空中高く飛び上がることなく交尾をしたのではないかということです。
長野県でクロオオアリの巣が密集している場所で採集した際も、クロオオアリの巣の極く近くで翅を落とした女王アリを多数採集しました。どうしてこのようになるのか、とても興味深いことです。

ついに結婚飛行

昨日は午後遅くから雨が降りだし、今日はよく晴れた日になりました。今日からはしばらくの間、良い天気が続き、気温も上がるとのことでした。いよいよ、クロオオアリの結婚飛行が行われそうです。少なくとも明日以降の金・土・日の間には、結婚飛行が行われると思っていました。
午後になってからは、飼育しているアリの世話をしていて、午後3時半頃になって、庭に出てB巣の様子を見に行きました。
すると、既に結婚飛行が始まっていました。たくさんの羽アリが出てきていた巣口は2ヶ所でしたが、「いよいよ結婚飛行の季節」で書いている巣口とは違っていました。以前のその巣口が6日前に何者かに襲われたので、別の巣口を利用するようになったのでしょう。(「何者かに襲われたクロオオアリの巣」参照)

15時37分撮影

上写真の巣口とは違う同じB巣の巣口 15時53分撮影 クリックして動画を見る(30秒間のタイムラプス動画)

庭の別のクロオオアリの巣では、羽アリが出てきていたのは、C巣のみでした。

わずかに雄アリの姿があった 15時58分撮影

1ヶ所から、わずかに雄アリが出てきていただけで、飛び立つ様子ではありませんでした。

塚山公園にも出かけました。大変期待をして出かけたのですが、「結婚飛行が始まった」で触れている巣は、結婚飛行を行っていませんでした。他の場所にあるクロオオアリの巣口もひっそりとしていました。注意深く公園内を歩いて、翅を落として地面を歩く新女王アリを探しましたが、見つかりませんでした。

巣口に羽アリが見えるが出てくる様子はなかった 16時21分撮影

5時前に自宅に戻り、B巣の様子を見ると、既に結婚飛行を終えているようでした。

結婚飛行を終えているようだ 16時54分撮影

結婚飛行を終えているようだ 16時55分撮影

今日飛び立った新女王アリが翅を落として地面を歩いているでしょうか。自宅の庭の地面を注意深く探しましたが、全く見つかりません。遠くへ飛んでいったのでしょう。
まだ見つけたことがないのですが、もし自宅周辺にクロオオアリの巣があるとすれば、今日結婚飛行を行った可能性があります。そこで、自宅周辺の山道を歩きましたが、やはり新女王アリの姿はありませんでした。

結婚飛行が始まった

5月14日、今日は雨が上がって2日目、晴れて気温も高くなり、結婚飛行が行われても良い気候です。庭のB巣の出入り口は、一昨日、何者か(カラス?)によって掘り起こされたため、今日もその修復中のようにみえました。羽アリが巣口に出てこないので少し心配です。
4時近くになって、近くの塚山公園に行ってみました。昨年来、観察をしているクロオオアリの巣の巣口には羽アリの姿はありませんでした。
そこで、他の箇所にも行ってみました。公園の小高い丘を上り、北側の階段を下りると少し幅のある平坦な道があります。

平坦な道 西方を望む

その道を東方面へ少し歩いたところで、クロオオアリの巣を発見しました。1つのコロニーですが、3ヶ所ほど大きめの穴が空いていて、そこには羽アリの姿がありました。

道のすぐ横にクロオオアリの巣があった 縁石に沿うように巣口が3ヶ所ある

巣口から姿を現した新女王アリ 16時31分撮影

しばらく観察した後、その平坦な道を更に東へと歩いていくと、そこにベンチがありました。ふと気づくと座面に黒い昆虫が横たわっています。よく見るとクロオオアリの雄アリで、生きてはいましたが死にかけていました。

ベンチ

ベンチの座面にクロオオアリの雄アリが横たわっていた 16時35分撮影

確かにこの近くでは結婚飛行が始まっているようです。
このベンチの更に東方には野球が伸び伸びと出来るほどの広い球技場があり、その広場を歩きながら、翅を落としたクロオオアリの女王アリが歩いていないか注意深く探しましたが、その姿はありませんでした。
もう一度、先程のクロオオアリの巣へ引っ返し、観察を続けることにしました。
4時半を過ぎる頃から、幾匹もの新女王アリが巣から出て行くようになりました。

巣から出てきた新女王アリ 奥手に少し高めの樹がある 16時46分撮影

少し高めの樹(中央)

いずれの新女王アリも、申し合わせたようにある一定の方角へ歩いていきます。その方角には少し高めの樹があり、全ての女王アリではありませんでしたが、その樹に上っていきました。

少し高めの樹に上っていく新女王アリ 16時57分撮影

飛び立とうとしているところ この新女王アリは飛び立ちはしましたが、この樹にぶつかって落下しました 16時59分撮影

結局、空へと飛び立つのを目撃できたのは、たった1匹でした。幾匹かは、巣から出て再び巣に戻っていましたが、巣から出て行った数と戻って来た数を比べれば、出て行った数の方が多いように思います。
これまでの経験では、巣から飛び立って1時間もしない内から、翅を落とした新女王アリが地上を歩いていましたから、路上に限りますが、辺りを注意深く探しました。しかし、新女王アリの姿はありませんでした。
ところで、このコロニーの巣から出てくる羽アリは女王アリばかりでした。雄アリの姿さえ巣口にはありませんでした。とても特異なことです。ただ、観察を終えて引き上げようと考えていた頃になって、雄アリを見つけました。たった1匹でしたが。

たった1匹だけ見つけた雄アリ この雄アリは飛び立たなかった

今日はまだ、本格的な結婚飛行の時期が始まったばかりなのでしょう。明日以降が楽しみです。

何者かに襲われたクロオオアリの巣

昨日のブログ「いよいよ結婚飛行の季節」で取り上げたクロオオアリのB巣が何者かに襲われたようです。朝、庭を見ていて気づきました。

B巣の出入り口が荒らされていた 下の昨日の写真と見比べるとよく分かる 8時1分撮影

昨日の同じ場所の写真 5月11日13時33分撮影

この近くの他の巣穴も荒らされているようです。いったい何者の仕業なのでしょうか。
確言はできませんが、掘り起こされた穴の様子から大きめの鳥のように思えます。おそらくカラスなのでしょう。この様子を発見する直前に、2羽のカラスが、少し離れたところからでしたが飛び立ちました。B巣の近くのイチゴの実がもぎ取られてもいました。

夕刻になって、更にC巣にも異変があることに気づきました。

c巣の様子 2ヶ所大きく掘られている 17時20分撮影

上の写真の左右の2ヶ所が掘られていました。やはり、くちばしのようなもので掘られたように見えます。こちらもカラスの仕業なのでしょうか。

カラスがクロオオアリの巣を襲ったのだとすれば、これは初耳です。巣を襲えば、巣の中からクロオオアリがたくさん出てくるでしょうから、効率的にアリを食べることもできるでしょう。2ヶ所のアリの巣を襲ったのが、いずれもカラスだとすれば、カラスのこれらの行為は、単なるいたずらか、アリを食べることが目的の行為であったのではないかと思われます。カラスには、そのような習性があるのかも知れません。

いよいよ結婚飛行の季節

いよいよクロオオアリの新女王アリの旅立ちの季節が訪れたようです。
今日は暑い日になり、岡山市で最高気温が26.6℃でした。昨日は終日曇で、その前日には雨が降りました。
さて、庭の中で最も大きなコロニーと思われるB巣のクロオオアリたちは、この間盛んに活動を行っていましたが、巣口は大きくはない状態でした。ところが、今日になって巣口が広げられていました。

いくつか巣口があるが 左にある巣口が特に大きい 11時33分撮影

左側の巣口を拡大 中央左の頭部が大きい個体は新女王アリ? 中央右の頭部が小さい個体は雄アリ!

巣口を広げるのは、結婚飛行を行う時期の特徴です。結婚飛行が間近に迫ってきたことが分かります。
自宅の近くにある塚山公園にも行ってみました。この公園には3日前の5月8日にも行っています。この時、すでに巣口が大きく拡張されているクロオオアリの巣がありました。

巣口がかなり大きいが、羽アリの姿はなく、働きアリもほとんど見られなかった 5月8日15時13分撮影

今日見た同じ巣口にも、3日前と同じく、羽アリの姿はなく働きアリの姿もほとんどありませんでした。

5月11日 15時27分撮影

自宅のB巣を午後5時頃見ると、たくさんのアリが巣口に集まっていました。

雄アリがはっきり写っている 17時3分

翅のある新女王アリが写っている 17時8分

今日は、巣口から外へ出てくる羽アリはなく、結婚飛行は行われませんでした。