昨年は3回に渡って、「ありの行列」について言及してきました。今年は、主にビデオを活用して「ありの行列」について考察していきたいと考えています。
「ありの行列」を考えるブログシリーズの仮説
⑴最初に餌を見つけたクロオオアリは、帰路道しるべを付けずに巣に戻る。
⑵⑴のクロオオアリは、仲間を連れて餌場へ向かう。その際、道しるべを付けながら進み、その匂いを追いながら、仲間がついてくる。
⑶その帰りも、いずれのクロオオアリも道しるべは付けずに帰巣し、その後餌場へ向かう際、新たな仲間を引き連れて出かける際には、道しるべを付けながら進み、その匂いを追いながら、新たな仲間がついてくる。
今回のブログでは、上記仮説の⑴⑵に言及します。
まず、今回のフィールドについて、下の写真をご覧下さい。
観察を行ったのは4月10日です。上の写真では、奥に餌場があり、手前に巣の出入り口があります(両者は直線距離で3.8m離れています)。次の動画では、餌場を見つけた1匹のクロオオアリが、蜜を吸っているところから動画が始まります。
この蜜場は、当日初めて設置したものです。そのようにしたのは、アリの今回の行動が、過去の何らかの行動に影響されないようにするためです。今回の観察では、上記の仮説を一般化するため、「クロオオアリが、初めての場所で餌を見つけた時、どのように行動するか」を調べています。
さて、上の動画からは、次のことが分かります。
①帰路と往路は同じ道にはなっていない。
蜜を吸い終わったクロオオアリは、蜜器から下りると巣のある方に向かって土の上を歩き始めます。ところが、往路では、蜜器に近づいた時、散水ホースを越えて(12分46秒の時点)コンクリートブロックの上を歩いて蜜器に到達します。
また、巣口近くでは、帰路では清水白桃の苗木を植えている周りの土の上を歩いています(3分6秒の時点)が、往路では、土のある場所には踏み入らず、芝生の上を歩いています。
また、全体的に、帰路と往路の道はずれています。
②往路の時のみに道しるべを付けている。
帰路の際には、道しるべを付ける動きはありませんが、往路では、先頭のアリが芝や地面に腹部をリズミカルに曲げて歩く様子が見られます。(先頭のアリが4匹のクロオオアリを誘導しています)
帰路と往路が一致していれば、帰路の際に道しるべを付けているのではないかと考えられますが、観察の結果は、帰路と往路は一致していません。ですから、道しるべは、②のように、往路の際のみに付けていると考えるのが妥当です。
なお、この観察では、蜜を見つけたアリが、往路を先導したアリでもあると考えてはいますが、これは、これまでの経験上そのように考えてのことです。蜜を見つけたアリに何らかの印をつけたわけではないため、厳密には断定はできません。