月別アーカイブ: 2018年6月

同じコロニーの2度目?の結婚飛行

梅雨空の曇天で、小雨が僅かに降ったり止んだりしていました。庭を歩いていてふとB巣の近くでクロオオアリの有翅女王アリを見つけました。更に辺りを見ると有翅女王アリが数匹歩いています。そこで、A巣の方はと思い見ると、かなりの数の有翅女王アリと雄アリが巣から出て歩いていました。結婚飛行です。更に、もしかしてと思い、C巣を見ると、数は少ないのですが、有翅女王アリと雄アリの姿がありました。
5月16日にA巣とB巣で結婚飛行が行われたことは、既にブログに書きましたが、今日はC巣でも結婚飛行が行われようとしていました。これまでの観察から、クロオオアリの場合、結婚飛行が数日に渡って行われることが分かっていますが、5月16日の結婚飛行がメインだと思っていましたので、今回の羽アリの数の多さは意外でした。また、曇天で小雨も僅かですが降っている中での結婚飛行ですから、このことも意外でした。ちなみに気温は25℃程でした。
A巣とB巣の結婚飛行を見たのは今回が2度目ですが、観察できていない日もあったかも知れません。それにしても、5月16日からは、22日も日を空けて結婚飛行が行われたのですから、これも意外なことです。

A巣の様子 15時31分撮影

C巣の様子 15時35分撮影

画面左上から外気温 その下は湿度

栗の花にもクロオオアリが

これまでに、庭の果樹にやって来るクロオオアリを紹介してきましたが、栗の花にもクロオオアリが来ていました。

地味な花ながら蜜が出ているようだ 16時54分撮影

体に花粉がついている 花粉を媒介することになる 16時57分撮影

体に花粉がついているクロオオアリもいましたから、受粉を媒介することもあるのでしょう。

過去の関連ブログ(今年の庭の果樹)
庭の果樹とクロオオアリ」(4月17日)
柿の花にも蜜が」(5月18日)
桑の実とサクランボの花外蜜腺」(6月4日)

移植後のBK17207の生存を確認

今年になって庭に移植したクロオオアリのコロニーの中で、また新たに生存しているコロニーを見つけました。東南フェンスに4月1日に移植したBK17207です。このコロニーは移植時は働きアリが10匹いました。

庭に設置している蜜器に蜜を配っていたところ、偶然にもある蜜器の中にクロオオアリがいました。そのクロオオアリは小柄でしたので、おそらく今年移植したコロニーの働きアリだろうと思いました。そこで、蜜を吸った後、帰路を追ってみると、案の定、今年移植した場所にある小さな穴の中に入っていきました。

同じクロオオアリが2回目に訪れているところ 帰路につく直前 16時36分撮影

再び巣に戻ったところ 巣穴に入る瞬間 16時37分撮影

ヘウレーカ! なぜアリは行列するのか?

6月6日に、NHK制作の「又吉直樹のヘウレーカ! 『なぜアリは行列するのか?』」という番組が放送されました。アリの行列に関してのテレビ放送としては、昨年の4月15日にも、NHKの Eテレで「なりきり! むーにゃん生きもの学園『アリになりきり』」が放送されています。その際にも、放送内容について、ブログで書いていますのでご参照下さい。

今回の放送では、次のようにアリの行列ができる仕組みを説明しています。

実例としては、モリシタケアリ(クサアリの一種)を取り上げていて、このアリは「いつも行列を作っているアリ」として紹介されています。つまり、上記のアリの行列の説明は、「いつも行列を作っているアリ」の場合としています。NHKの Eテレ放送の「なりきり! むーにゃん生きもの学園『アリになりきり』」では、特定の習性を持ったアリの行列についてと言う断りがなく、アリ一般の行列の仕組みを説明しているかのように受け取れますが、この点で、今回の放送との違いがあります。
上記のアリの行列の説明は、確かに理屈が通っているように思えます。ですが、良く吟味すると引っかかるところもあります。たとえば、「近くでふらふらしていたアリたちもフェロモンに気づき」「エサへと向かう」と説明していますが、フェロモンには方向性はないと考えられますから、どちらにエサがあるかは分からないでしょう。この場合は、出会う仲間に歩く方向を教えてもらうのでしよう。細かなことについては、更に吟味する余地がありそうです。

とは言え、この番組の最も大きな問題点は、アリの行列ができる仕組みを図で説明して終わっていることです。つまり、実写がないのです。アリの行列の説明を観察なしでしているとすれば、それは仮説に過ぎません。

これまでのブログで、いずれもクロオオアリに関してですが、幾度もアリの行列について書いてきました。仮説を立て、実際に観察で確かめてもいます。

マーキングを撮る(2013年6月12日)
アリの道(2016年4月14日)
クロオオアリの行列の起因は?(2016年5月14日)
道しるべ(2016年10月12日)
「ありの行列」を考える その1(2017年4月06日)
「ありの行列」を考える その2(2017年4月06日)
NHK Eテレ なりきり! での道しるべのこと(2017年4月17日)
「ありの行列」を考える その3(2017年4月18日)
「ありの行列」を考える その4(2018年4月10日)
「ありの行列」を考える その5(2018年4月20日)

再録になりますが、 Eテレ放送の際に書いた仮説を引用しておきましょう。

⑴クロオオアリは、自分たちの生活圏内で餌探しをしているので、餌を見つけた時には、道しるべはなくても、自分の巣に帰ることができる。つまり、餌探しをしながら、帰路のために道しるべを付けているのではなく、その必要もない。
ミツバチは、餌を探す際、空中に道しるべを付けようがなく、それでも、餌を見つけて自分の巣に帰ることができるが、アリの場合も同様と考える。

⑵ 餌を探し当てて巣に帰る際にも、道しるべは付けない。帰路は、餌を探していた道とは違った場所を歩いていて、かなり迷っていることもあるが、いずれにしても腹部を地面をつける行為は見られない。
それでも、帰路に道しるべを付けているとした場合、説明しにくいことがある。というのは、餌を見つけて戻ってきたアリが、仲間を連れて再び出かけるまでに10分から15分程経過する。例えば、真夏のかんかん照りの日だったなら、その間にフェロモンはほとんど蒸発してしまうのではないだろうか。

⑶ 仲間を連れて再び出かけるクロオオアリは、観察によれば、直前に戻ってきた道に沿って歩かない。先程の帰路よりは、多くの場合近道になっている。この再度餌場に出かける時に、初めて地面に道しるべを付ける行為を見ることができる。その道しるべを付けながら餌場に向かうアリは、数匹の中の必ず1匹のみで、先頭を行くアリである。この1匹のアリが、先程餌を見つけたアリだと考えられる。
先導する1匹のアリに数匹が右往左往しながら付いていくわけだが、その時に道しるべフェロモンが道しるべとして使われている。仲間が1匹の先導者の直後についていくのだから、フェロモンはまだ蒸発しないで感知できるのだろう。アリの視力はとても悪いようなので、他の動物のように、先を歩く仲間の姿は見えず、フェロモンが唯一有効なのでないだろうか。

「いつも行列を作っているアリ」に関しては、NHKの放送内容が正しいのか、それとも「いつも行列を作っているアリ」もクロオオアリと同じようにして行列を作るのか、とても興味深いところです。

アンテグラウンドⅠ型

「アリたちの広い活動スペースを作りたい。その中には、いつも水があり、蜜のある植物も育っている」─ そんな構想を、かなりの以前から持っていました。それをどんな形で実現するかを最近になって考えてきました。そうしてできあがったのが、「アンテグラウンドⅠ型」です。

アンテグラウンドⅠ型全体像

大きさは、450mm×600mm規格のアクリル板を使って、底面積が最大の大きさになるように作りました。
このアンテグラウンドⅠ型は、大きくは4つの部分から構成されています。
○本体(水色の部分)
○クリーナーボックス(黄色の部分)
○リフト(下の茶色の部分)
○プラントライト架台(外側の部分)

本体・クリーナーボックス・リフトの正面図

本体・クリーナーボックスの側面図

本体の中には15cm立法の水槽を入れ、濾過器をつけてメダカを飼います。

メダカは5匹入れた

この水の中にアリが廃棄物を入れたとしても、メダカの餌になって、水は腐らないでしょう。これで、アリが水を汚すことによる水変えは、必要でなくなります。またこの水は、アリの飲料水になります。水が飲みやすいように、水槽には水面に達する木製のスロープを取り付けています。

木製のスロープ クロオオアリは水辺が好きなようだ

その水槽の中のメダカに餌を与える際、蓋を開けることなく給餌できるように、蓋に穴を空けてガラス製のロートを設置しました。また、水槽の水を補給する際にも使います。

本体の蓋に径6mmの穴を空けロートを通している ロートの穴はシリコン栓で塞いでいる

水槽からは、絶えず水蒸気が出ているはずです。ところが、アクリルは水を容易に吸収し、湾曲します。すると、飼育ケースにすき間ができやすい状態になります。そこで、本体の空気を換気することにしました。取り付けたのは、4cm四方の小さなミニ送風機です。これは、コンピュータ用の冷却ファンで、USB電源で動きます。

ケースの中の空気を吸い出すようになっている

この他に何も取り付けない蓋もある

ミニ送風機の下のアクリル板には、1.5mm径の穴を多数空けています。この穴の大きさでは、クロオオアリの働きアリはくぐり抜けることができません。
ところで、ケースの中に何か物を入れる際に便利なようにある工夫をしています。それが、右側の蓋にあるアントピットです。これは傾斜のある落とし穴になっていて、例えば脱走したアリなども楽にケースの中に落とし入れることができます。

傾斜の角度は60°になっている

もちろんこのアントピットには、ケースの中から出てこられないように穴を塞ぐ蓋もついています。
さて、冒頭に書いた「蜜のある植物」も本体の中に入れています。

イチゴの苗 土の替わりになっているのがハイドロボール 肥料としては水耕栽培に有効な液肥を使っている

植物の選定には少し迷いました。本体ケースの高さの内法は22cmですから、背が高くなる植物は入りません。花外蜜腺のある植物なら、長い間蜜が集められそうでしたが、背が低い植物は見当たりませんでした。そこで、長い間に渡って花が咲き、花に蜜があり、実もできる植物として、品種名が「トスカーナ」という赤花イチゴにしました。
そのイチゴを育てるために、プラントランプを使います。2つ前の写真には、プラントランプの光がアクリル板に反射して写っています。
ところで本体の底面には1.5mmの穴を空けています。

本体底面には1.5mm径の穴が多数ある

自然界では雨が降って汚れが流されますが、同様に、本体が汚れた時に水で洗うためです。汚れを含んだ水は、この1.5mm径の穴から下へと流れ落ちます。その水を受けるのがクリーナーボックスです。クリーナーボックスは、本体の下部21mmの部分の周囲を囲んでいて、水が決して外には漏れ出さないようになっています。クリーナーボックスに水が溜まると、クリーナーボックスを本体から離して水を捨てると便利です。それには、本体を上方へ持ち上げて固定すれば良いわけです。

本体を持ち上げた時

最初から2番目の図と比べて見て下さい。上図の濃い茶色の部分は非固定の木材で、リフトと本体との間に挟むことで、本体を30mm持ち上げることができます。こうすることによって、クリーナーボックスを本体下から取り出せるようになり、その中の水を捨てることができるようになります。
このアンテグラウンドⅠ型には、左右にそれぞれ2つのアクリルパイプがついていて、クロオオアリのコロニーとホースで繋ぎます。右側にあるアクリルパイプの1つには、S/N:B110608-07のクロオオアリのコロニー(2011年6月8日に新女王アリを採集)を、左側のパイプには、S/N:B15006のクロオオアリのコロニー(2015年5月27日に新女王アリを採集)を繋げました。これまで、人工飼育下では、一つの空間を2つのコロニーが共有するということはありませんでしたので、何か新しい発見があるかも知れません。

桑の実とサクランボの花外蜜腺

クロオオアリの食性についての直近のブログとしては、「柿の花にも蜜が」で蜜を集めるクロオオアリの様子に触れましたが、庭の桑の木にもクロオオアリがやって来ていました。ちょうど今は、桑の実がとてもたくさん実っていて、その実の果汁がお目当てのようです。

桑の実の果汁を吸いに来たクロオオアリ 腹部が膨らんでいる 小型のクワガタムシの雌雄もいた 6月3日18時01分撮影

次は、今日のサクランボ(品種名は「さおり」)の様子です。ここにもクロオオアリが来ていました。葉柄に花外蜜腺があるようです。

花外蜜腺を舐めるクロオオアリ 6月4日13時50分撮影

6月4日13時53分撮影

ただ、この花外蜜腺からは、あまり蜜は出ていないようです。クロオオアリは、枝から葉柄へと進み、この花外蜜腺をほぼ必ず舐めるのですが、それはとても短い時間で、蜜を吸っているとは思えません。現に、その時サクランボの木に訪れていたクロオオアリの腹部は、どの個体も膨らんでいませんでした。ところが、そのように思っていると、サクランボから下りていくクロオオアリがいて、その個体の腹部は膨れていました。

巣へ帰りかけたところ 腹部が膨れている 6月4日13時54分撮影

この木にはアブラムシは付いていないので、サクランボの花外蜜腺から、僅かだと思いますが、蜜(樹液)が出ているようです。

トゲアリの直短的社会寄生 初めての産卵

トゲアリの直短的社会寄生の試みでは、8例扱いましたが、その内の4例は昨年9月11日に採集した新女王アリです。その内、現時点では2例(S/N:T17003とT17004)が生き残っていますが、6月3日、T17004が産卵していることに気づきました。

卵が見える 6月3日17時7分撮影

産卵を確認できたことの意味は大変大きく、この方法(直短的社会寄生)でトゲアリのコロニーを人工的に作ることができることを意味しています。ただ、今の時点では、1例のみなので一般化することはできませんし、この後、卵から成虫まで育つのか分かりません。今後の経緯を見守りたいと思います。