月別アーカイブ: 2020年4月

食糧はどこから

高速道路」を使って食糧を巣へと運んでいたクロオオアリたちは、どこで食糧を得ているのでしょうか。庭の外の草地だとは思うのですが、確かめに行ってみましょう。

フェンス下のコンクリートブロックの礎石を上るクロオオアリ 腹部が膨れている 16時01分撮影

早速、フェンス下のコンクリートブロックの礎石を上るクロオオアリを見つけました。腹部が膨れているので帰路のようです。草地からの帰りなのでしょう。
草地のカラスノエンドウを見ると、花外蜜腺を吸っているクロオオアリがいました。

カラスノエンドウの花外蜜腺を吸うクロオオアリ 16時03分撮影
はっきりと腹部が膨れているクロオオアリもいた 16時05分撮影

小道を横切る緑色の幼虫を運んでいるクロオオアリもいて、フェンス下のコンクリートブロックの礎石の方へと向かっていました。

緑色の幼虫を運んでいた 16時08分撮影

この緑色をした小さな幼虫は、草地のどこにいるのでしょうか。カラスノエンドウの葉が、何者かによって食べられた跡はあるのですが。

あちこちの葉が食べられている

以前から気にはなっていたのですが、今回も見つけることができませんでした。その小さな幼虫に代わりに、大きな緑色をした幼虫を見つけましたが、これは別の種のように思います。

かなり大きな幼虫 16時11分撮影

「高速道路」を歩く速さ

「高速道路」で運ばれる食糧を調べている際に、この高速道路を歩く速さを、帰路のクロオオアリの場合で測ってみました。
散水ホースの長さは5mですが、クロオオアリが実際に歩く起点から終点までの距離は4m40cmでした。

起点はホース端から50cm程手前
終点はホース端から10cm程手前

4例測定しました。この距離をクロオオアリが歩くのにかかった時間は、それぞれ46秒、46秒、45秒、59秒でした。
そこで、秒速に直すと、一番速い例で、9.8cm/秒となります。これは、分速では5.87m/分、時速では352m/時となります。人間の歩く速さの10分の1弱の速さということになります。
アリにとっては、やはりこの散水ホースの道は、「高速道路」と言えそうです。

「高速道路」で運ばれる食糧

散水ホースを使って、A巣の巣口と蜜器を繋げ、更にフェンスの塀まで繋げた「高速道路」について、4月5日のブログに書きましたが、その高速道路で運ばれる食糧を調べてみました。
観察した時間は、14時22分から15時46分までの1時間24分です。この時間内に帰路として高速道路を利用したクロオオアリの数は25匹で、その内訳は次のようでした。
◎ 緑の幼虫を運んだ匹数:6匹(以下クロオオアリの匹数)
◎ナナホシテントウの幼虫を運んだ匹数:3匹
◎腹部が膨らんでいた匹数:12匹
◎腹部の膨らみが見られなかった匹数:4匹

緑の幼虫
ナナホシテントウの幼虫
腹部が膨らんでいる
腹部が膨らんでいない

移植2コロニーのその後

4月4日(S/N:BM19013)と5日(S/N:B16012)に庭に移植した2つのコロニーのその後の様子です。

◎BM19013

BM19013の地上への出入り口

BM19013の唯一の地上への出入り口であるシリコンパイプの周囲の様子を見ると、地中から土を運び出した跡が見られません。移植した時のまま容器の中に留まっているか、移植器から地中へ穴を掘っているとしても、その時に出る土を移植器の中に留めているのでしょう。
そこで、移植器の中がどうなっているか、そもそもまだ生きているか、など確かめるために、土を掘り起こすことにしました。

掘り起こしてみると

生存していることが確認できました。働きアリの数は数えませんでしたが、腹部は適度に膨れているようです。
ところで、卵が4個あることに気づきました。移植時には卵はなかったように思いますので、この間に産んだのでしょう。
ちなみに、同じ日に同じ場所で採集したクロオオアリの新女王アリのコロニーを6コロニー飼育していますが、越冬幼虫が2匹いて卵がない1コロニーを除いて、他のコロニーの卵の数は、18、10、8、7、6個でした。(クロオオアリの幼生虫は、小さな幼虫で越冬しますので、これらの卵は最近産卵されたものです)
飼育器から地中へと巣を拡張できるように、径9mmの穴が側面と底面にあるのですが、土が飼育器の中にもないことから、まだ地中への巣穴は掘られていないことも分かりました。

写真中央が底面の穴 その下方の側面にも径9mmの穴がある

◎B16012
移植3日後の様子です。土を巣から運び出しています。

巣から運び出した土が多く見られる 4月8日11時43分撮影
アクリルパイプの巣口近くに蛾を置いてみた 4月8日15時19分撮影

 その翌日(4月9日)、とても小さなアリが、飼育器の餌器の径1.5mmの穴から出入りしているのに気づきました。この日の少し前に、餌器に蜜を与えましたので、その蜜を小さなアリが見つけたのでしょう。取り敢ず、爪楊枝の先で穴を塞ぎました。

餌器の1.5mmの穴を爪楊枝の先で塞いだ

ところが、この小さなアリは、餌器と側壁との僅かな隙間からも飼育器の中に侵入していました。これはもう簡単には防げないと思い、そのままにしておきました。
それから10日経ったのですが、B16012の様子には、特に異常がないようです。

4月19日の様子 働きアリの姿が見られる

アクリルパイプの巣口は塞がっていました。

巣口のアクリルパイプが土に埋もれている

以前にも雨が降った後、同じことがありました。雨のために流れてきた土で巣口が埋まっているようでした。その時は、近くに落ちいてた細い枝で巣口を塞いでいる土を取り除き、中から働きアリが出て来るところを確かめました。
ただ今日は、そのままにしておきました。

ちなみに、BM19013の巣のことをP巣、B16012の巣のことをQ巣と呼ぶことにします。

2020年 クロオオアリとムネアカオオアリの新女王アリの予約販売受付開始

2020年の5月から6月にかけて採集する予定のクロオオアリとムネアカオオアリの新女王アリの予約受付を開始致しました。

今年もクロオオアリとムネアカオオアリの新女王アリの採集を行います。多数採集できますと、研究に必要な数以上になった女王アリを提供致します。有償とはなりますが、ご希望の方はお申し込み下さい。
5月20日までにご予約をいただきますと、新女王アリに30日間の保証(届いた時点、あるいは届いた日を入れて30日以内に女王アリが死んだ場合は、送料無料で女王アリを再送)をお付け致します。それ以後は15日間の保証となります。また、新女王アリを研究用等でまとまった数お求めの場合は、別途割引料金を適用致します。詳しくは、こちらhttp://www.kajitsuken.net/新女王アリ.html)をご覧下さい。

梅「豊後」への訪問者

C巣と蜜器とを「高速道路」で結ぶことにしました。先日のA巣でも同様のことをしましたので、この高速道路のことを「第2高速道路」と名付けます。第2高速道路は全長が4mで、巣口のある辺りから蜜器を通り、更にフェンス塀までを繋ぎます。

写真左にC巣の巣口がある 11時46分撮影

午後になって、第2高速道路の辺りとは別に、芝生を歩くクロオオアリがいることに気づき、その方面にある梅「豊後」を見ると、クロオオアリが複数匹来ていました。何を目当てに来ているのだろうと思いながら、しばらく見ていると、アブラムシが密集している細い枝を見つけました。そこにクロオオアリがいました。

アブラムシとクロオオアリ 13時44分撮影

これだけ多くのアブラムシが付いている枝は他にはありませんでしたが、アブラムシが付いている新葉がいくつかありました。

アブラムシが付いている新しい葉 13時45分撮影
アブラムシはまだ大発生はしていないようだ 13時47分撮影

アブラムシは、今は駆除しないことにしました。
第2高速道路の経由地を変えることにしました。巣口と蜜器を繋ぐルートはそのままにして、豊後を経由することにしました。

変更した第2高速道路の経路 13時56分撮影

しばらくすると、例外的ではありましたが、早速高速道路を利用するクロオオアリがいました。

蜜器から巣へと向かうクロオオアリ 14時1分撮影

ところで、豊後の木でナナホシテントウを目にしていましたが、少し時間を置いて、改めて捜してみました。すると、2匹見つかりました。その内、1匹は産卵を終えた後でした。

15時24分撮影
産卵を終えていた 15時27分撮影

N巣の生存を確認

N巣は、S/N:B16015(2016年6月11日に蒜山高原で採集した新女王アリのコロニー)のクロオオアリで、昨年の6月19日に庭への移植を開始した巣です。昨年の7月1日のブログで、その後の引越の様子を記録しています。
ところが、昨年の10月28日時点では、N巣は生存確認が取れないようになっていました。
それが、今日、N巣の極近くに設置している蜜器にクロオオアリが来ているのを見つけました。

N巣の巣口は、踏み石代わりになっている上から2つ目のコンクリートブロックの手前辺りにあった

帰路を追ってみると、案の定、昨年N巣の巣口があったほぼ同じ場所で姿を消しました。

11時23分撮影

この場所から出て来たと思われるクロオオアリが蜜器へ行ったり、また蜜器からの帰路、同じ場所で姿を消すところも複数回見ました。

散水ホースで「高速道路」を作る

A巣の近くには、測量杭の上に蜜器を置いていて、巣口から蜜器までをクロオオアリが往復しています。ただ、その間は芝地なので、針葉の間を歩くことになり、早足では進めません。そこで、4月5日、散水ホースで巣口と蜜器を繋げ、更にフェンスの塀にまで繋げました。全長5mの「高速道路」の出来上がりです。

ホースの手前がA巣の巣口があるところ フェンス塀まで繋がっている 4月5日撮影

今日見ると、早速この高速道路を利用しているクロオオアリがいました。

フェンスに近いところ 13時56分撮影
蜜器への往復に高速道路を利用しているようだ 13時58分撮影
緑色をした幼虫を運んでいる 14時1分撮影

ですが、これまで通り、芝地を歩くクロオオアリもいました。

梨の花に集まる昆虫たち

庭に植えてある2本の梨の内、二十世紀梨は満開近くになっています。そこにいろいろな昆虫が集まっていました。

13時30分撮影
クロヤマアリ 腹部が膨れている 13時35分撮影
西洋ミツバチ 庭で飼っている 13時39分撮影
シリアゲアリ 腹部をピクピクと上下に動かしていた 13時43分撮影
ハナバチの仲間 後脚に花粉がついている 13時46分撮影

やがて、クロオオアリもやって来ました。歩く様子を見ると、何らかの目的があって、この梨の木にやって来たようではありませんでした。

クロオオアリ 13時49分撮影

B16012を「移植」

昨日に引き続き、庭にクロオオアリのコロニーを「移植」しました。このコロニーは、2016年6月11日に蒜山高原の百合原休憩園地で新女王アリを採集したコロニーです。採集時から、研究用に製作した創巣期観察用アンテネストで飼育していました。
今回は、このアンテネストをそのまま地中に埋めます。

地中に埋める創巣期観察用アンテネスト

上の写真のように、側面の上下2箇所にシリコン栓で栓をした内径6mmのアクリルパイプが付いています。また、上部には2箇所の開閉蓋があり、それぞれに直径7mmの穴があり、シリコン栓で塞いでいます。蓋横(写真の本体上部左)には、取り外し式の餌器があります。
このアンテシェルフの高さは23cm強ありますので、地面をおよそ23cmの深さまで掘って埋めます。埋める場所は、昨日「移植器」を使って移植したのと同じ花壇です。
埋める際には、側面下側のシリコン栓のみを外しました。

埋めている途中 側面下のシリコン栓は外してある 14時54分撮影
埋め終わったところ 側面上のアクリルパイプの箇所は埋めていない 15時9分撮影

当面の出入り口として、側面上のアクリルパイプの箇所は埋めませんでした。明日以降にシリコン栓を外す予定です。

花壇の全景 左右に見える測量杭は蜜器の台 蜜器を設置した

庭の外の草地へ

午後3時頃、庭の外のフェンス越しの場所で、クロオオアリを見つけました。この場所でクロオオアリを見るのは、今年初めてです。ちなみに昨年は4月5日に、その年初めてこの同じ場所でクロオオアリを見ましたので、今年は昨年より1日早く、この場所でクロオオアリを見たことになります。

庭の外のフェンス越しの場所
小道を進むクロオオアリ 帰路と思われる 15時7分撮影
フェンスの土台になっているコンクリートの礎石(2m以上の高さ)を上る 15時7分撮影

この2匹のクロオオアリは、いずれも帰路のようでしたが、腹部は膨れていませんでした。カラスノエンドウなどが密生している草地からの帰りと思われますが、蜜が得られなかったようです。昨年の4月5日に観察した時には、帰路のクロオオアリの腹部は膨れていました。
緑色をした幼虫を運んでいるクロヤマアリを複数見ました。草地から出てきたのでしょう。

15時9分撮影
15時22分撮影
15時30分撮影

フェンスの土台になっているコンクリートの礎石を下るクロオオアリがいましたので、その後を追ってみると、小道を横切り、草地の中に入って行きました。やがて、昆虫の死骸に行き着きました。ミツバチの死骸です。

ミツバチの死骸があった 15時28分撮影

既にもう一匹のクロオオアリが来ていました。
カラスノエンドウを見ていると、クロオオアリがいました。

15時32分撮影

蜜の交換をしているところも見ましたので、少しは蜜を得ているようです。しかし、依然としてアブラムシはいないようです。
ナナホシテントウがアブラムシの繁殖を抑えているのかも知れません。

ナナホシテントウの幼虫 15時41分撮影

先程通路になっていたコンクリートの礎石から幾程か離れた場所にある、コンクリートブロックの礎石にも、上って行くクロオオアリがいました。よく見ると、何かを咥えているようです。

帰路、何か小さなものを咥えている 15時44分撮影

何を咥えているのかは、調べませんでした。

4月4日の天気:最高気温21.2℃(14時20分)

今年初めての「移植」 新方式「移植器」

今年の1月25日のブログで紹介した「移植器」で、クロオオアリのコロニーを庭に「移植」することにしました。
今回移植するコロニーは、昨年の6月3日に新女王アリを採集したコロニー(S/N:BM19013)です。

簡易飼育器の蓋を取って、移植器の中に入れた状態
移植器の全体の様子

移植する場所は、キイチゴを植えている花壇にしました。以前2016年4月にクロオオアリとムネアカオオアリのコロニーを移植した場所です。地面を20cmの深さに掘り、その中に移植器を入れ、土を被せました。

穴は20cmの深さ 11時11分撮影
移植器を設置した花壇 右に白く見えている所が出入り口 11時24分撮影
今日は地上への出入り口は、シリコン栓をしたままにしておいた

地下20cmの場所であることと、移植器の構造から、コロニーを脅かす生き物が巣の中に入り込んでくるリスクは、非常に小さいと思われます。それでも、地上での活動中のリスクは大きく、また食糧をどれだけ獲得できるかが、生存の能否を分かつでしょう。

梅の木のアブラムシとクロオオアリ

先日は桃の木に登っているクロオオアリを見つけましたが、今日は、C巣の近くにある露茜という品種の梅の木で、クロオオアリを見つけました。クロオオアリの動きを追っていると、新芽にアブラムシが付いていて、そこへクロオオアリが行きました。

16時22分撮影
16時29分撮影

今年になって初めて、クロオオアリがアブラムシの甘露を吸っているところを見ました。露茜には、数多くの新芽が出ていますが、アブラムシが付いている新芽はまだ限られていましたので、クロオオアリの蜜源を確保するため、アブラムシは駆除しませんでした。アブラムシが多くなってから、アブラムシの数を調整することにします。