今年の6月3日から4日かけて長野県で新女王アリを採集したコロニーを、7月25日、庭に「移植」 しました。今回は3通りの方法で移植しています。
① W拡張蓋 を使って コンクリート製の人工巣用に作成していたW拡張蓋を使いました。
このW拡張蓋を移植に使う利点としては、底面の下に空間があることです。径7mmの穴を潜れば、広々とした土の上に移動できます。その後、巣穴を掘ることになりますが、掘り出した土も、この空間に置くことができます。この空間は、外部からは閉ざされていますから、捕食者に襲われることなく巣作りができます。また、上部は開閉式の蓋になっていますので、餌を補給できます。 このW拡張蓋を使って、クロオオアリを10コロニー、ムネアカオオアリを5コロニー移植しました。
クロオオアリ:共通シリアルナンバーは(B200603) 以下は (-下3桁) -021 -031 -032 -047 -060 -074 -090 -094 -137 -147 ムネアカオオアリ:共通シリアルナンバーは(R200603 ) 以下は (– 下3桁 )-012 -018 -029 -037 -042
移植する前のクロオオアリのコロニー
移植する前のムネアカオオアリのコロニー
設置したところ W拡張蓋の周囲に土を寄せ、容易に外部から捕食者等が侵入できないようにしている
遮光の目的でベニヤ板を被せた(※ ベニヤ板を被せても、2枚の蓋が合わさる両端の側面には僅かに隙間ができるので、そこからとても小さなアリは入って来そうだ。)
ムネアカオオアリの営巣場所としては、「木の腐朽部」が多いようです。腐朽部と言っても、木は生きていることが多く、大木の腐朽した空間に巣を作っています。ただ、地面に巣を作っているムネアカオオアリも幾度か見ていますので、ここでは地面に移植しました。(こちら を参照)
② 素焼植木鉢皿を使って ダイソー(DAISO)で販売されている「素焼植木鉢皿」を使いました。直径7.5cmの浅い皿で、これを逆さにして地面に被せ、2箇所から皿の中に入れるように地面に隙間を作ります。飼育しているクリーンカップの蓋を取り、皿の横にそのまま置きます。それから透明のプラスチック製のクリアケースを逆さにして被せます。クリアケースの周りに土を僅かに盛り、外部から遮断します。取り敢ず、皿の中に引越すれば成功です。 この素焼植木鉢皿を使って、クロオオアリを10コロニー庭に移植しました。
クロオオアリ:共通シリアルナンバーは(B200603) 以下は (-下3桁) -007 -160 -162 -165 -172 -175 -177 -181 -183 -185
設置したところ プラスチック製のクリアケースの周囲に土を寄せ、容易に外部から捕食者等が侵入できないようにしている
遮光の目的で、1×4材で作った覆いを被せた
この方法は、これまで飼育してきたクリーンカップのまま移植できるところが利点でしょう。営巣後も、給餌する時以外は小箱を外さなければ、外部からの捕食者の侵入をある程度防げるでしょう。
③ 小型移植器を使って かなり以前に移植器として製作していた小型移植器を使いました。
小型移植器
内法が48mmの方形の中が、3室に区切られています。3室の仕切壁には径3mmの穴があり、各部屋間を行き来できます。また、外部への出入り口(外部から移植器の中に入りにくくするため、出入り口は、一段と高くしています) 、餌器(地中への営巣後も、餌器に蜜などを与えることができます) 、地中への出入り口があり、上部には観音開きになる2分割された蓋(移植器によっては蓋に僅かな隙間のあるため、極小型のアリなどの捕食者は、移植器の中に侵入できるかもしれません) があります。 女王アリと幼生虫は上図の設計図の黄色の部屋に入れます。 この小型移植器を使って、クロオオアリを10コロニー庭に移植しました。
クロオオアリ:共通シリアルナンバーは(B200603) 以下は (-下3桁) -020 -023 -028 -036 -039 -040 -044 -049 -058 -077
移植前の様子
設置したところ 小型移植器の周囲に土を寄せ、容易に外部から捕食者等が侵入できないようにしている
遮光の目的でベニヤ板を被せた
移植後の全景 手前からW拡張蓋、素焼植木鉢皿、小型移植器を使った移植の様子