7月31日に移植したコンクリートブロックを使った「移植」のその後と結果について、8月6日の時点でまとめてみます。
移植翌日の8月1日、クロオオアリのコロニーでは、20コロニーの内1コロニーを除いて、クリーンカップから出て、真砂土に穴を掘って移動していました。1コロニーは、女王アリがクリーンカップの中で死んでいました。
B20200603-095 クリーンカップから真砂土の中に移動していた 巣への出入り口は小さい 14時12分撮影
女王アリが死んでいた B20200603-079
ムネアカオオアリのコロニーでは、10コロニー全てが、真砂土に穴を掘っていませんでした。
R20200603-048 クリーンカップから出てはいたが、真砂土の地面に止まっていた 14時52分撮影
蛾を与えてみた B20200603-054
8月2日、異変が起こっていました。コンクリートブロックのクロオオアリの箇所では、前日、アクリル板の蓋を外していたのですが、その多くで、庭のA巣と思われるクロオオアリがクロオオアリのコロニーを襲っていました。巣の出入り口を拡張して、巣の中に押し入っているようです。
20200603-179の様子 複数のA巣から来たと思われるクロオオアリが巣口を拡張していた 8時6分撮影
新巣から逃げ出した女王アリもいました。
9時7分撮影
侵入者に食い付いた働きアリもいました。また、幼虫を咥えて逃げ出した働きアリもいました。
9時7分撮影 体の大きさの差は歴然
9時11分撮影 体の大きさから襲われた方の働きアリだと分かる
この2日の冒頭の写真のB20200603-179では、ついに侵入者が女王アリがいる箇所まで到達したのでしょう、女王アリが大型の働きアリに捕らえられていました。
9時17分撮影
その後、女王アリが死んでいるのを見ましたが、12時過ぎに見ると、その死体はなくなっていました。襲った複数のクロオオアリもいませんでした。
B20200603-179 12時6分撮影
移植したクロオオアリの20コロニーのほとんどが、この日、A巣から来たと思われるクロオオアリに襲われ、滅んだようでした。ムネアカオオアリの10コロニーは、アクリル板で蓋をしていたため、襲われずにすみました。
移植後の捕食者として、小型のアリが来ないように警戒していたのですが、同種のクロオオアリも捕食者となることが分かりました。A巣のクロオオアリにしてみれば、コンクリートブロックの移植場所は、A巣に近い所(最短で3m強)にあり、「なわばり」の中のような場所だったのでしょう。(クロオオアリに「なわばり」のようなものがあるのかについては知見がありませんが、複数のクロオオアリ同士が戦っているところは時々目にします。これが「なわばり」のようなものなのかも知れません。)
8月6日、ムネアカオオアリの10コロニーを見たところ、全てのコロニーが死滅していました。岡山での梅雨明けは7月30日で、30日と31日には雷雨がありましたが、その後はとても暑い日が続いていました。ムネアカオオアリは10コロニーとも、この間も地中へは穴を掘らずにいましたので、アクリル板の蓋は被せたままにしていました。そのため、コンクリートブロックには、直接日光が長時間直接当たる環境でしたので、熱死したのだと考えられます。すでに、蓋とコンクリートとのとてもわずかな隙間を通って、小型のアリがコンクリートブロックの穴のスペースに入り込んでいました。
コロニーは全滅している 小型のアリが見られる R20200603-088 9時24分撮影
R20200603-048 9時25分撮影
ほんのしばらく経つと、ムネアカオオアリの幼虫や遺体が運び出されていました。
幼虫が運ばれて行く 9時34分撮影
働きアリの死体が運ばれて行く 9時35分撮影
女王アリの頭部が運ばれて行く 9時37分撮影
ムネアカオオアリの移植に失敗したのはとても残念なのですが、このことで、分かったことがあります。7月25日に行った移植でも、ムネアカオオアリの場合は、例えば、31日にはR20200603-037は、W拡張蓋の底面の下へ移動していましたが、土を掘って地中へ移動したわけではありませんでした。
R20200603-037 W拡張蓋の底面の下へ移動していたが、土を掘って地中へ移動したわけではない 7月31日撮影
今回は10コロニーの全てが、地中へ穴を掘りませんでした。このことから、これら2つの移植の際の条件下では、ムネアカオオアリは地中に巣を作らないようです。ただ、実際の自然観察では、コンクリート等の隙間も含めて、地中に巣があるのを見かけています。