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小型水槽に開放蓋と大気圧式パイプ給餌給水器を設置

小型の水槽の中に人工巣を入れて飼育しているオオアリのコロニー(「生き続ける2011年採集の女王アリ」等参照)は、現在13あります。これらの小型の水槽の蓋は、3分割した密閉蓋になっています。

小型水槽の蓋

この度、新たに開放蓋を作り、13コロニー全てに開放蓋を設置することにしました。

小型水槽用の開放蓋

開放蓋の内側にはベビーパウダーに無水エタノールを加えて塗ります。

開放蓋の内側にベビーパウダーを塗る
小型水槽に開放蓋を設置したところ このコロニーはトゲアリT180919 1月28日10時57分撮影

更に、小型水槽用に給餌・給水器を作ることにしました。

小型水槽開放蓋用大気圧式パイプ給餌給水器
給餌給水器のベースの部分 写真は逆さにしたところ 裏の区分内にベビーパウダーを塗る

アリ返し(高さ2cm)は2箇所になっています。本来ならアリ返しを方形に囲むように更に2箇所付ければ良いのですが、利用済の3分割密閉蓋を再利用してカットして使ったため、長辺方向に湾曲があり、接着が困難でしたので2箇所になりました。

給餌給水器を設置したところ このコロニーはクロオオアリB200603-075 1月29日13時55分撮影
給餌・給水部を拡大 水はパイプいっぱいに入れてある

200mL大気圧給水器用に留水器を作成

25日のブログで、200mLの大気圧給水器をアンテグラウンド内に設置したことについて書きましたが、27日、その給水器から水が漏れ出ていました。給水器内にあった100㎤の空気が膨張したのが原因のようでした。大気圧給水器に水を100mL入れた時点では室温がとても低く、その後エアコンを点けるなどして気温差が大きくなったからでしょう。
寒い季節以外は起こらないと考えましたが、通年のことを考え、溢れ出た水がアンテグラウンド内に直に流れ出ないように、留水器(注:造語)を作ることにしました。
容器の底面を10cm×10cmの正方形とし、高さを2cmとすれば、容積は200mLとなります。大気圧給水器の最大容量は200mLですから、この容器の高さですれすれよいわけです。ですが、オオアリの水死を防ぐために、留水器の底に部材を敷くことにしましたので、留水器の高さを2cmよりも高くすることになります。
部材としては、かなり特殊な玄関マットを使うことにしました。厚みは1cmですが、スポンジよりも更に隙間の多い構造です。

玄関マット 10cm×10cmにカット

10cm×10cmにカットした玄関マットの体積を量るため、玄関マットを平形の100mLマスに入れて、100mLマスがいっぱいになるまで水を入れ、その水の重さを量りました。

平形の100mLマスと玄関マット
水を入れない状態で0gにする
マスいっぱいに水を入れると78gだった

水の重さは78gでしたので、玄関マットの体積は22㎤であることが分かります。そこで、玄関マットを底に敷いた方形の容器に、200mLの水を溢れないように入れるには、2.22cmの高さが必要になることがわかりました。
このことを考慮して、留水器の高さを2.5cmとして製作しました。

10×10×2.5cmの留水器を4個作った
大気圧給水器と留水器 クロオオアリのコロニーB15006のアンテグラウンドⅠ型の中 1月28日13時52分撮影

200mL大気圧給水器

アンテグラウンドシリーズ(Ⅰ型Ⅱ型Ⅲ型)には、中にキューブ型の小型水槽を常設し、オオアリが常に水分補給ができるようにしていました。小型水槽にはポンプ式の水循環濾過器を入れていて、更に水質浄化液を注入していましたので、水質は良い状態で保たれていました。

クロオオアリのコロニーBK170530-081用のアンテグラウンドⅢ このコロニーの働きアリは、冬場でも少数ながら水辺に集まっている 1月24日16時51分撮影

長くて4年半程、キューブ型の小型水槽を使い続けてきましたが、デメリットを2点ほど感じていました。
1つは、オオアリが昆虫を解体した後の残滓や仲間の死体を水に捨てる習性があり、水質が保たれていても、濾過器や水槽を取り出して掃除をする必要がありました。
もう1つは、オオアリは水辺を好む習性があり、夏場は特に、常に多数のオオアリが水槽に群がり、(そのことで濾過器や水槽をアンテグラウンドから取り出す際に支障となるだけでなく、)水面に飛び出して泳ぎ始め、濾過器で水を循環していることもあり、陸に上がれなくなって水死することがありました。

群れになって水に浮かんでいる 生きていたので救出した 1月24日16時55分撮影

そこで、これまでとは給水の仕方を変えて、大気圧式の給水器を製作・設置することにしました。

200mL大気圧給水器

最大給水容量を200mLとしました。これだけ容量があれば、自然蒸発がし難い構造ですから、かなりの期間水を補給しなくてもよいでしょう。4側面の内2側面の下方に1.6×2.0mmの切り込みを入れていて、水が流れ出るようにしています。吸飲箇所の幅は4mmです。ただ水がどの程度腐敗するかは今は分かっていません。底面には脚を4箇所付けていて、給水器をアンテグラウンドの中に置く際、オオアリを挟まないようそれぞれ脚幅を短めの15mmにしています。
大気圧給水器に水を入れる際に便利な器具も作りました。

左が200mL大気圧給水器 右が大気圧給水器に水を入れる際の器具

大気圧給水器に水を入れる際は、給水器を逆さにして、底面の径10mmの穴にロートを差し込みます。

大気圧給水器に水を入れる

2側面の下方の切り込みをとても狭くしたので、水が出難かったようです。翌日になって、適量の水が出ていました。

水がほぼ出てきていない 1月24日17時18分撮影
翌日になると水面が見えた 1月25日19時48分撮影

1月25日、残り3個のアンテグラウンドの中の水槽を取り出し、この日製作した200mL大気圧給水器を残り3箇所にも設置しました。

アンテシェルフ用に開放蓋式アンテフィーダーを作る

クロオオアリのコロニーB200603-067は、2020年の6月3日に新女王アリを採集したコロニーです。比較的順調にコニーが大きくなり、昨年の5月3日に大型のコンクリート人工巣(カブトムシの飼育容器を利用)に引越させていました。
それ以後も、働きアリが増えていきましたので、この度、コンクリート人工巣から、更に居住空間が広いアンテシェルフに引越させることにしました。併せて、アンテシェルフに外付けで餌器を取り付けます。

引越後の大型のコンクリート人工巣 このコンクリート人工巣は2005年に製作
引越専用にしている衣裳ケースの中 引越先のアンテシェルフを入れている 1月14日13時51分撮影
越冬幼虫がかなりいる 13時52分撮影

翌日の朝、引越は既に完了していました。ちなみに、引越先を暗くしておくのがよいように思われがちですが、今回はその必要はなかったようです。

引越が完了したようだ 1月15日8時20分撮影
8時24分撮影

新たに作る餌器は、クロオオアリのコロニーB110608-07の引越の際に作った「開放蓋式アンテフィーダー」より一回り大きなものです。木製の台の上にアンテシェルフと一緒に載せます。

上面図 向かって右がアンテシェルフ 左が開放蓋式アンテフィーダー
開放蓋式アンテフィーダー側面図
開放蓋

開放蓋の裏面に、ベビーパウダーを無水エタノールで練って塗りました。

1月15日9時3分撮影
9時4分撮影
9時5分撮影

生き続ける2011年採集の女王アリ

現在飼育しているクロオオアリのコロニーの中で、一番採集年が古い女王アリは、2011年に結婚飛行を了えた女王アリです。B110608-06とB110608-07とB110608-11です。何れも6月8日に長野県の駒ヶ根市内で採集しています。
結婚飛行後既に11年が経過し、新女王アリの誕生時期(羽化)が6月の末から7月にかけてだとすれば、12年以上生きていることになります。
ネット情報になりますが、昆虫の成虫の寿命でとても長いとされているのは、ある種のシロアリの女王アリ(100年)ですが、どのように検証したのかは触れられていませんでした。また、ある種の甲虫(51年)がとても長く生きていたと言う話もありましたが、例外的な記録のようです。

B110608-06 1月11日撮影
越冬幼虫は極く僅か
女王アリB110608-06
B110608-07 1月11日撮影
越冬幼虫が多数見られる
B110608-07の女王アリ
B110608-11 1月11日撮影
越冬幼虫は見当たらない
B110608-11の女王アリ

トゲアリの寄生の試み その後(1月9日)

以下は1月9日の様子です。何れも、寄生が順調なようです。

トゲアリの寄生の試み 1 (BH210523-18にT20220910-53が寄生 )

T20220910-53 1月9日17時1分撮影

トゲアリの寄生の試み 2 (BH210523-19にT20220910-54が寄生 )

T20220910-54 1月9日17時3分撮影

トゲアリの寄生の試み 3 (BH210523-21にT20220910-65が寄生 )

T20220910-65 1月9日17時4分撮影

トゲアリの寄生の試み 4 (BH210523-23にT20220910-44が寄生 )

T20220910-44 1月9日17時5分撮影

トゲアリの寄生の試み 5 (BH210523-29にT20220910-67が寄生 )

T20220910-44 1月9日17時7分撮影

直短寄生2例のその後(1月9日)

今年のトゲアリの直短的社会寄生の試みについては、前回のブログで書いたように、11月13日の時点で、3例目のT20220910-16と4例目のT20220910-18の2例のみが生き残っていました。
12月10日には、働きアリがT20220910-16では4匹、T20220910-18では2匹死んでいて、今日(1月9日)観察すると、それぞれ働きアリが1匹死んでいました。
今日までに生き残っている働きアリの数は、T20220910-16が8匹、T20220910-18が24匹でした。両者の働きアリの数には3倍の差ができていました。

T20220910-16 水が入ったペットボトルの蓋に多数が集まっていた 1月9日16時26分撮影
T20220910-18は2箇所に分散して集まっていた 女王アリがいる集団 16時26分撮影
T20220910-18は水場にも集まっていた 女王アリがいない集団 16時29分撮影
蜜を与えると2例とも摂取した 写真はT20220910-18 16時49分撮影

女王アリの寿命 B120614-86の場合

これまでクロオオアリの女王アリの寿命については、「おめでとう! 結婚10年記念日」と「11歳女王アリのコロニーを再生」で触れてきています。「11歳女王アリのコロニーを再生」は、2012年に新女王アリを採集したコロニーですが、もう一つ2012年に採集したコロニーがあります。B120614-86です。
このコロニーの女王アリは、6月14日に長野県の駒ヶ根市内で採集しています。その7年後の2019年(10月19日)には、その時飼育していたクロオオアリのコロニーでは一番働きアリの数が多いコロニーでした。2000年の9月4日に、活動室としてアンテグラウンドⅢに繋いだのですが、同年10月から11月にかけて、働きアリが大量に死んでしまいました。
後に、アンテグラウンドⅢから外し、アンテネストリトルアンテシェルフで飼育していました。
アンテネストは自然巣を観察するように作られていますが、巣房の中の様子が見難くなっていたことと、アンテシェルフの中も清掃する必要がありました。そこで、コロニーを飼育器から取り出し、アンテシェルフを洗った後、その中に戻すことにしました。
その過程で、コロニーの状態が把握できました。働きアリは多数、雄アリは4匹、越冬幼虫は極く僅か、だったのですが、女王アリはいませんでした。
生きていれば11歳だったのですが、昨年の11歳になる6月14日に女王アリが生きていたかどうかは調べられていません。それは、前述のようにアンテネストの巣房の中の様子は全ては見られなかったからです。
けれども、越冬幼虫が僅かながらもいたのですから、女王アリが産んだものだとすれば、夏ごろまでは生きていたことになります。したがって、新女王アリの誕生時期(羽化)が6月の末から7月にかけてだとすれば、11年間生きていたことになります。
今年の春以降、越冬幼虫が成長して成虫になった時、その成虫の中に働きアリがいるなら、この推察が正しかったことになるでしょう。その一方、その成虫が雄アリばかりだった場合、女王アリが産卵したのか、働きアリが産卵したのか分かりませんから、女王アリがいつまで生きていたのかも特定できなくなり、この推察が正しかったとは断言できなくなるでしょう。

引越の様子 2023年1月8日撮影
雄アリ4匹の内の1匹