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結婚飛行後の翌々年になっても単独で子育てが可能

かつて、クロオオアリとムネアカオオアリの単独女王アリが、「年を越して再度の子育てに成功するか?」を記録しています。結果は7例の内2例が「年を越して再度の子育てに成功」しています。
この例では、結婚飛行後、同年中に子育てに失敗し、翌年に子育てに成功しています。では、子育てに失敗していて、結婚飛行の翌々年に、再度の子育てに成功するのでしょうか。この対象となるクロオオアリの単独女王アリがいましたので、観察していました。
2021年の5月23日に蒜山高原で新女王アリを採集したSN:BH210523-28です。
この女王アリの記録を見ると、同年5月30日には産卵数が8個(新女王アリ20匹の平均値5.8個)になっていて、産卵能力があったことが分かります。ただ8月1日時点で働きアリが1匹(同上平均値11匹)しかいませんでした。
その翌々年の今年の2月8日時点でも働きアリが1匹(越冬幼虫なし)いましたが、その後、いつなのかの記録はありませんが、単独女王アリになっていました。
今年の春以降に産卵があり、8月14日、働きアリが1匹羽化しました。

2023年8月14日20時6分撮影

今年の春以降、この単独女王アリに蜜を与えていましたが、蜜を飲んでいるところは見ていませんし、与えた蜜の量が減っているようにも見えませんでしたので、糖分を摂取していなかったのかもしれません。また、タンパク源は与えていませんでした。
この観察から、クロオオアリの女王アリは、結婚飛行後の翌々年になっても単独で子育てができることが分かります。その条件を限定すれば、
① 人工的な飼育環境
② 結婚飛行後の翌々年の春
③ 翌々年の越冬時には働きアリがいる
④ 翌々年越しの越冬幼虫はいない
⑤ タンパク源は不要
となります。

T20220910-16の死

8月2日の時点で、直短寄生のトゲアリのコロニーT20220910-16では、働きアリが12匹になる見込みでしたが、8月6日までに2匹が死に、働きアリが10匹になっていました。

餌器の中に働きアリの死体が2体ある 8月6日撮影

また、7月29日に与えた蛾はそのままになっていました。この間、幼虫にタンパク源を給餌していないようです。
8月14日、T20220910-16が死亡していました。働きアリは10匹共に生きていました。女王アリの死因は不明です。

女王アリが死んでいた 8月14日撮影

昨年から行っている直短的社会寄生の試みは5例でしたが、T20220910-16が死亡したことで、残るは1例(T20220910-18)のみとなりました。

一時的社会寄生のトゲアリ5例の様子(8月2日)

トゲアリの寄生の試み 1 (BH210523-18にT20220910-53が寄生 )

T20220910-53では、既に1匹が羽化していましたが、死んでいます。写真の1匹のトゲアリは、その後に生まれたのでしょう。

トゲアリの寄生の試み 2 (BH210523-19にT20220910-54が寄生 )

一時的社会寄生のトゲアリ5例の中で最初に羽化があったコロニーです。卵の他、小さな幼虫が多数います。トゲアリが幼生虫の世話を始めているようです。

トゲアリの寄生の試み 3 (BH210523-21にT20220910-65が寄生 )

まだ羽化したトゲアリはいない
となりの部屋にも繭があった

トゲアリの寄生の試み 4 (BH210523-23にT20220910-44が寄生 )

7月26日から羽化が始まりました。それから1週間後(8月2日)には働きアリが4匹になっています。

トゲアリの寄生の試み 5 (BH210523-29にT20220910-67が寄生 )

繭がない
トゲアリの卵だが、孵化していない

5月27日の時点でも卵でした。少なく見積もっても、8月2日までには、67日あり、2ヶ月以上になります。直短寄生のT20220910-18では、5月30日に卵を2個観察していて、この場合も卵の期間が2ヶ月以上になっています。

羽化が進んで働きアリが増える(T20220910-16)

7月28日に、新たに幼生虫を投入したトゲアリT20220910-16のその後の様子です。
翌日の29日には、働きアリが1匹増えて6匹になっていました。働きアリが羽化介助をしたようです。この日の夕刻、更に1個の繭の羽化を介助していました。

7月29日16時22分撮影
16時27分撮影

タンパク源として、前日に蛾を1匹入れておきましたが、分解していませんでした。
ですが、更に蛾を2匹入れました。また、砂糖水をほんの僅か与えました。

新たに蛾を2匹と砂糖水(写真下方左寄り)を与えた 16時34分撮影

今度も蛾にはほとんど関心を示しませんでした。砂糖水は1匹が飲み始めましたが、他の働きアリは、砂糖水を触角で触っても立ち去りました。
19時半頃に見ると、働きアリが7匹になっていました。無事に羽化できたようです。

7月31日になると、働きアリは8匹になっていました。

働きアリが8匹になっていた 7月31日19時30分撮影

そして更に8月2日になると働きアリが10匹になっていて、観察した時点では、羽化中の働きアリが1匹いました。7月28日に、繭を7個取り入れましたので、7個の繭が羽化すれば働きアリが12匹になります。まだ羽化していない繭が1個ありましたので、羽化が順調に進んでいることが分かります。

羽化中と羽化がまだの繭で働きアリが12匹になる見込み 8月2日19時48分撮影

クロオオアリの新女王アリの誕生時期は?

B15006では今年も新女王アリが誕生しています。
7月27日の時点では、女王アリの繭が後2個残っていました。

1個目の女王アリの繭 7月27日撮影
2個目の女王アリの繭 7月27日撮影
羽化したばかりの新女王アリ 7月27日22時45分撮影

8月1日、それら2個の繭が無くなっていました。

羽化して暫く経った新女王アリ 8月1日20時4分撮影

昨年は、この同じB15006のコロニーで、7月25日に女王アリの羽化が全て完了しました。

このコロニーのこの2年間に限ってのことですので、現時点の限られた知見ではまだ一般化は難しいものの、飼育下でのクロオオアリの新女王アリの誕生時期は、7月上旬頃から7月下旬頃と言えそうです。

直短寄生のT20220910-18 巣から出る

直短寄生のトゲアリT20220910-18(直前のブログ)は、飼育器の中の人工巣を巣にしていましたが、8月1日、巣から出てきていました。

なぜそのようになったのかは不明です。
ちなみに、今年の5月30日には既に産卵を開始していましたが、卵はまだ孵化していません。

卵はまだ孵化していない