「オオアリ同士の異種間共存」では、これまでに11回ブログに書き起こしてきました。
今回は、次のような2つのコロニーの共存を試みます。
S/N:R200603-021
2020年6月3日に駒ケ根市内で採集したムネアカオオアリの新女王アリ
7月12日現在 働きアリ無 卵僅か 幼虫・蛹無
2020年8月22日には働きアリが17匹いた
S/N:BH240518-23
2024年5月18日に蒜山高原で採集したクロオオアリの新女王アリのコロニー
7月7日に女王アリが死亡 この時働きアリは2匹・幼生虫あり
7月12日現在 働きアリ5匹 幼生虫あり

両者が急速に接触しないように、円形のクリアカップに工夫を施すことにしました。BH240518-23が入っているクリアカップとは別の同じカップを用意し、側面に穴を空けました。

この穴を空けたカップをもう1つの同じカップの中に入れて、BH240518-23をカット綿ごと内側のカップに引越させ、蓋をしました。


BH240518-23がカップの中で落ち着いた頃、カップの蓋を外して内側のカップだけをクリアケースミニの中に入れました。

翌日の7月13日、前日と変化がないように見えました。そこで、クロオオアリのコロニーをクリアカップからカット綿ごと取り出し、クリアケースミニの中に入れ直しました。すると、すぐさま、ムネアカオオアリの女王アリが、クロオオアリのカット綿の方にやって来て、咬みあう寸前にまでになりましたが、女王アリが元の場所に戻って行き、戦いは回避されました。


それから3時間ほど経ってから見ると、カット綿には女王アリがいて、卵しか残っていませんでした。



クロオオアリのカット綿の上にあった幼生虫が、別の場所へと運び出されていたことについては、女王アリが移動させたのではなく、クロオオアリが運んだと思われます(BH240518-23が含まれていた別の多数のサンプルでの観察から)。
クロオオアリの働きアリは4匹死んでいました。

※1の写真に写っている黒い繭が羽化したのでしょう、女王アリが羽化した直後のクロオオアリを介助していました。

その後の様子ですが、14日には幼生虫が2箇所に分けて置かれ、15日には大多数の幼生虫がクロオオアリのカット綿に運ばれていました。



7月17日になると、異種間の合併コロニーとして、安定してきたように見えました。女王アリの周りに、3匹のクロオオアリの働きアリが集まり、幼生虫も女王アリたちの下に集められていました。


ところがその翌日の7月18日、女王アリが死んでいました。死因は不明です。

なぜか、死んだ女王アリと栄養交換のような行動が見られました。


このオオアリ同士の異種間共存の試みは、女王アリが死亡したため続けることができなくはなりましたが、ここまでの観察の限りでまとめると、次のようになるでしょう。
0.合併するムネアカオオアリとクロオオアリのコロニーのそれぞれの構成は既述の通り
1.合併当初からいるクロオオアリの働きアリは、ムネアカオオアリの単独女王アリに殺される可能性が高い。
2.ムネアカオオアリの単独女王アリは、クロオオアリの幼生虫を受け入れる。
3.新たに羽化したクロオオアリの働きアリは、ムネアカオオアリの単独女王アリに受け入れられる。